大規模ECサイトの商品管理において「深刻化する4つの問題」

ECの商品情報管理をどのように行うかは非常に重要な課題です。膨大な商品データの正確かつ効率的な管理は、売上と顧客体験の向上にも影響するからです。

ECの運用では商品数、SKU数、関与部門、販売チャネルが多くなるほど、商品情報の更新やデータ運用などの作業負荷が高くなり、以下のような問題が発生しやすくなります。

◆商品情報管理における4つの問題

問題① データの更新漏れや表記ゆれ、関連づけの破壊
問題② 部門ごとの情報の分断
問題③ チャネル間での情報の不整合
問題④ データ運用の属人化

上記はいずれも規模の小さいECでも生じうる問題ですが、データの件数と関与する人の多い大規模ECでは影響範囲が広くなるため、問題が深刻化しやすくなります。

そのため大規模ECの商品情報管理では、手作業での個別対応ではなく、膨大な商品データを一元管理し、安定運用を継続できる仕組みづくりが不可欠になります。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、大規模ECの商品情報管理の負荷が高い理由と、PIMの導入効果について解説します。

大規模ECの商品情報管理は作業の負荷が高く、影響範囲が広い

データ更新の基本的なフローは、どの規模のECでも大きく変わりません。しかし、商品数、SKU数、関与部門、販売チャネルが多い大規模ECでは、データ更新などの運用における作業量が多く、影響範囲も広いことから、商品情報管理はより難しくなります。

例えば大規模ECでは、1件の商品情報の更新は、数百〜数千の商品、数千〜数万のSKU、複数の部門とチャネルなどに影響を及ぼします。

◆大規模ECでは、データ更新の影響範囲が広い

大規模ECでは商品情報更新の影響範囲が広い

出典:筆者作成

例えば、カテゴリ再編のような複数の商品に関わる商品情報の更新では、小規模ECでも広範な変更と反映、確認作業が必要になりますが、大規模ECの場合には対象となる商品点数が数百〜数千に及ぶケースもあります。さらにSKU単位での更新確認や関連する全部門・全チャネルでの変更の反映と確認が必要となるため、作業量は膨大になります。

ECの運営規模ごとの、商品情報管理の違いをまとめると下表のようになります。

◆EC規模ごとの商品情報管理の難しさ

規模感 商品点数の目安(※) 商品情報管理の状況 生じうる問題
小規模EC ~1,000点程度 担当者が1つのファイルで管理 属人的な運用に陥りやすく、手作業によるミスやデータ精度の低下が生じやすい
中規模EC 1,000~数万点 複数部門がそれぞれ個別のファイルで管理し始める 多重管理による非効率と、更新漏れや表記ゆれなどによる情報の質の低下が生じやすい
大規模EC 数万〜数十万点 SKUやチャネルごとの管理が必要になり複雑に。複数部門が個別に運用し始める データの変更・反映・確認作業に時間がかかり、影響範囲が広くなるため、多重管理による非効率や情報の質の低下などの問題が深刻化しやすい

※商品点数はあくまで目安です。商品情報管理の難易度は、SKUの構成、販売チャネル数、情報の更新頻度、関与部門の数などによって大きく変動します。

上表からも分かるように、大規模ECではデータ件数と影響範囲が大きくなることで、確認箇所と反映箇所が急増し、問題が深刻化しやすくなります。

商品情報管理で生じる4つの問題

小規模ECでも大規模ECでも、商品情報を更新する際の基本的な流れは同じで、情報を変更・反映し、確認するといった作業が必要になります。

ただし、大規模ECでは商品数やSKU数が多く、更新した情報を反映・確認すべき範囲と関わる部門やチャネルの数が多いため、小規模ECでは運用で吸収できていた見逃しや手戻りが顕在化しやすく、また問題が発生した際はより深刻化します。

ここでは、商品情報管理で起こりがちな4つの問題を解説します。

問題① データの更新漏れや表記ゆれ、関連づけの破壊

データの更新漏れや表記ゆれは、ECはデータ管理上で起こりうる問題です。商品数やSKU数が多い大規模ECの場合には、例えば、あるデータ項目を新しい統一表記に変更した際に、一部だけ旧表記が残っていたりSKU単位との関連づけが壊れてしまったりする場合があります。

特に、カテゴリ名、サイズ表、素材情報、商品説明、SEOといった項目は、複数の商品にまたがる変更が発生しやすい項目です。そのため、変更対象が増えるほど、反映と確認の作業量も増えるので、ミスなどによるデータ更新漏れが表記ゆれ、データの関連づけの破壊などが起こりやすくなります。

問題② 部門ごとの情報分断

データの管理・運用では、データの多重管理はよく起こる問題ですが、大規模ECの場合にはデータの運用部門が多いため、部門やシステムごとに同じ商品に関する情報を保持するデータベースやファイルが乱立しやすくなります。

例えば、販売管理システムでは「SKU・名称・価格」、在庫管理システムでは「SKU・在庫・ロケーション」というように、1つの商品にひも付く情報が、各部門やシステムに散在しているケースも珍しくありません。そうした部門やシステムごとのルールで管理されているデータを、担当者間で必要に応じてデータファイルやメールで共有し合うといった運用を続けているうちに「最終版」のファイルが乱立し、どれが最新情報なのかが分からないという状況に陥りやすくなります。

このように、部門やシステムごとに方法でデータを管理・運用して連携が取れていない状態を「データのサイロ化」と言います。

データのサイロ化のイメージ

データサイロ化のイメージ

出典:筆者作成

データがサイロ化した状況では、同じ情報が、ある部門(システム)では更新されているのに、別の部門では更新されていないといったズレが発生しやすくなります。

特に大規模ECの場合、商品数やSKU数が多く情報の更新頻度も高いため、こうしたズレが生じた際の影響範囲も格段に大きくなります。

データサイロ化については関連記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事:データサイロ化とは部門間の情報が分断され共有できない状態

問題③ チャネル間での情報の不整合

自社EC、ECモール、アプリ、SNS、実店舗といった複数のチャネルで同じ商品について情報の不整合が生じるのは、データ運用に何らかの問題があるからです。

マルチチャネル/オムニチャネルの運用が前提であることが多い大規模ECでは、特に情報の不整合が頻発しやすくなります。例えば、自社ECでは最新情報を掲載しているのに、ECモールでは旧情報が掲載されていたり、アプリだけ一部の情報が更新されていなかったりするというような状態が生じます。

同じ商品についてチャネルによって掲載している情報が違う状態は、顧客を混乱させ、ブランドに対する不信感につながります

問題④ データ運用の属人化

小規模ではカバーできる運用でも、作業量と作業範囲が大きい大規模ECでは、担当者の判断に依存するポイントが多くなることで、手順が煩雑になり、ミスやすれ違いなどによるトラブルが発生しやすくなります

例えば、担当者の知識や経験に依存しやすい判断のポイントとして下記が挙げられます。

◆担当者の知識や経験に依存しやすい判断のポイント

・変更対象の特定
・何を「例外」とし、どのように管理するかといった方針決め
・データ更新後に確認が必要な範囲(対象)の特定
・データ更新後の確認手順とフロー(部門ごとの優先度や確認方法など)
・何の作業や手順でミスが起こりやすいかといった経験値に基づく判断

こうした判断ポイントの運用ルールが明確になっていない場合には、担当者だけが知っているという状況を生み出しやすくなり、その担当者がいなければ業務が回らなくなったり、データの品質を維持できなくなったりします

大規模ECサイトの商品情報管理の精度を決める「SKU管理」

大規模ECでは、商品情報の更新の影響は商品単位ではなくSKU単位に波及するため、小中規模ECに比べ、確認対象が格段に増えます

例えば、カテゴリ名の変更や説明文の変更、素材情報の変更といったシンプルなデータ更新でも、数千~数万のSKUに関連している場合もあり、確認範囲を誤るとトラブルが生じやすくなりますが、SKU数が多すぎて目視で影響範囲を絞り込むことは困難です。また、SKUの管理ルールが曖昧な状況の場合は、担当者ごとに判断が異なることもあり、「どのSKUを同一商品として処理するか」「どのSKUを例外とし、どう処理するか」「確認対象のSKUはどれか」といった判断が担当者によって変わってしまうと、データの精度は不安定になります

大規模ECで精度の高い商品情報管理を行うためには、SKUの構造と管理・運用方法を明確に定義することも重要です。

SKU管理については関連記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事:SKU管理が「複雑になる仕組み」と最適化する5つのポイント

大規模ECサイトの商品情報管理には「PIM(ピム)」が不可欠

ECの商品情報管理における問題は、データの更新・反映・確認の作業負荷が高くなることで起こりやすくなるので、作業負荷を軽減するためにも、商品情報を一元管理するための「PIM(ピム)」の導入が不可欠です。

PIM(Product Information Management:商品情報管理システム)は、多種多様な商品情報を一元管理し、複数の販売チャネルに最適な形で自動配信できるツールです。

◆PIM導入前・後の商品情報管理の変化(イメージ)

PIMによる商品情報管理の変化

出典:筆者作成

上図のように、PIMを使用せず、商品情報を各情報配信元が個別に管理している状態では、情報の授受が複雑になりますが、商品情報をPIMに集約して管理することで、複数の情報配信先に最適な形式で配信できるようになります。

ECの商品情報管理をPIMで行うことで、主に以下のような効果が期待できます。

◆ECの商品情報管理をPIMで行うことで得られる3つの効果

・一貫性のある購買体験を提供できる
・業務効率と情報の反映スピードを高められる
・EC担当者がマーケティングに専念できる

特に大規模ECでは商品数やSKU数だけでなく、部門やチャネルによって異なる商品情報も多くなるため、データの主管を明確にしておかなければ運用はすぐに属人化します

PIMを使うとデータの主管を明確化でき、整合性の取れたデータをいつでも必要な形で利用できる環境を構築できるため、PIMの導入は商品情報管理を行うための必須条件と言っても過言ではないでしょう。

ECの商品情報管理をPIMで行うことで得られる3つの効果については、関連記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事:EC担当者必見「ECとPIMを連携」させて得られる3つの効果

マルチチャネル/オムニチャネルにもPIMは有効

大規模ECの場合には自社ECサイトだけでなく、ECモール、アプリ、SNS、実店舗といった複数チャネルで商品情報を掲載するケースが少なくありませんが、こうしたマルチチャネル/オムニチャネル運用では、商品情報管理がより複雑になります。

なぜなら、同じ商品についての情報でも、チャネルごとの役割に応じて重視される情報が違うからです(下表を参照)。

チャネルごとの役割と重視される商品情報

チャネル 役割 重視される商品情報
ECサイト 顧客の意思決定のサポート 詳細説明、仕様・サイズ、レビュー など
ECモール ECモールの規定に即した情報掲載 規定フォーマット、属性情報、配送条件 など
モバイルアプリ 小さな画面での簡潔な情報伝達とリピートの促進 短い説明、最適化画像(モバイル向けの画像)、クーポン連携 など
SNS 興味喚起と流入促進 ビジュアル、短い訴求、流入導線 など
実店舗 顧客の意思決定と店頭サービスのサポート 店頭価格、在庫情報、接客補助情報 など
店舗POP・サイネージ 一目で商品の魅力・メッセージ、その他必要な情報を届ける キャッチコピー、キービジュアル、特徴訴求 など

例えば、ECサイトでは詳細説明や仕様などの情報が重視されますが、SNSでは短い訴求やビジュアルが重要になり、実店舗では店頭スタッフが接客や在庫確認をする際に使える情報などが求められます。

このように、マルチチャネル/オムニチャネルのデータ運用では、一貫性のある商品情報を、チャネルごとに最適化した形で使用できるようにする必要があります。

特に大規模ECの商品情報管理の負荷が高くなる理由は、商品の基本情報自体が多いうえに、商品情報を掲載するチャネルも多くなることで、管理する対象と範囲が一気に拡大するからです。

PIMで商品情報管理を行うと、共通情報とチャネルごとに必要な情報とを一元管理し、必要に応じて各チャネルに最適な形で情報を配布できるため、煩雑になりやすいマルチチャネル/オムニチャネルのデータ運用を効率化できます。

オムニチャネルにおけるPIMの効果については、関連記事に詳しくまとめていますので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事:オムニチャネルに必要な5つのPIM(ピム)機能とは?

大規模ECサイトでは、商品情報管理の精度が顧客体験の質を左右する

ECの商品情報がSKUやチャネル単位でいつでも取り出せる形で、正しい状態で管理されているかどうかは、顧客体験の質にも影響します。

例えば、ブランドのすべての販売チャネルで、商品説明、サイズ、素材、価格、在庫などの商品に関する情報が一貫していることで、顧客は混乱せずに商品を認識でき、購入判断に移ることができます。逆に、販売チャネルによって発信される情報やブランドイメージが違うと、顧客はどの情報を信じればいいのか分からず、ブランドへの不信を招き、離脱につながる可能性が高まります。

特に大規模ECでは、同じ商品を複数の販売チャネルで展開していくケースが多いため、すべてのチャネルで発信する情報の一貫性は極めて重要になります。

複数チャネルの運営で最も重要なことは、どのチャネルでも顧客が正しい情報を受け取れるように、チャネルごとの特性に適した形式で配信することです。

大規模ECの商品情報管理は、業務効率化の手段というだけではなく、顧客が安心して購入できる体験を生み出すための基盤であるということを念頭に置いておくようにしましょう。

まとめ

大規模ECの商品情報管理では、商品数、SKU数、関与部門、販売チャネルを増やすごとに、データ更新時の確認・変更・反映などの作業負荷も増大します。

商品情報を正確かつ効率的に管理・運用していくことは、業務負荷の軽減だけでなく、売上と顧客体験の向上にも直結します。

特に、数万~数十万規模の商品を扱うような場合には、手作業かつ属人的な運用による商品情報管理は現実的ではありません。SKU単位での管理、複数チャネルへの展開、部門を横断した情報共有が可能な商品情報管理を実現するための仕組みの整備が必要です。

そのために有効なツールが「PIM(ピム)」(Product Information Management)です。

インターファクトリーが提供する商品データ統合プラットフォーム「EBISU PIM(エビス ピム)」では、商品説明、価格、仕様、サイズ、画像、動画など多種多様な商品データを統合管理でき、品番やSKU単位での管理も可能です。

複数のチャネルとのデータ連携もノーコードで設定でき、チャネルごとに異なるフォーマットや画像サイズなどの仕様に対応できるため、商品情報管理の分散化を防ぎ、データ更新作業の負荷を軽減できます。

ECの膨大な商品データを、正確かつ効率的に管理・運用したい場合には、EBISU PIMのようなクラウドサービスを利用して商品情報管理を再構築することが重要です。

EBISU PIMの詳細や資料請求については、下記の公式サイトをご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。

EBISU PIM(エビス ピム)公式サイト

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。