近年の製造業では、顧客ニーズの多様化や製品バリエーションの増加に伴い、社内で管理・運用すべき製品情報(スペック、図面、仕様書など)が急激に増大し、複雑化しています。
一般的に製造業における商品情報管理は、単に社内のデータを整理するためだけの業務にとどまりません。製品情報の他部門への引き継ぎや共有がシステム上のボトルネックによって滞ると、営業資料の作成やECサイトの商品ページへの反映、紙やWebカタログの更新、さらには顧客からの問い合わせ対応など、あらゆるフロント業務の遅延を招く原因になります。結果として、新製品をいち早くマーケットへ届けるための「市場投入までのスピードにも深刻な悪影響を及ぼしかねない」と筆者は懸念しています。
このような製造業特有のデータ管理課題を根本から解決するための有効なアプローチが、PIM(Product Information Management:商品情報管理)の活用です。PIMを導入して製品情報を一元管理するプラットフォームを構築することで、各部門や外部の配信先が常に「同一の最新情報」をリアルタイムに活用できるようになります。
特にBtoBを中心とした製造業においては、PIMの導入により以下の5つのメリットが期待できると言われています。
② 図面・仕様書・画像を製品情報とセットで管理できる
③ Excelでの加工・転記・確認作業を減らせる
④ 顧客別・特注別の複雑な仕様を管理しやすくなる
⑤ 過去製品の情報を検索・活用しやすくなる
筆者の見解として、これらの導入メリットは単に「社内業務の効率化(コスト削減)」につながるだけではありません。製品情報を必要とする全ての部門や配信先へ「正確、かつ迅速に引き継ぐ体制」を作ることは、激しい市場競争の中でタイムリーな営業・販売活動を展開し、企業の売上成長を支える上でも重要な戦略的意義を持つと考えます。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、製造業にPIMが必要とされる具体的な背景や5つの導入メリット、さらにはシステムに求められる機能などについて、実務的な視点を交えながら詳しく解説します。
PIMが必要な理由は、製品情報の引き継ぎが「市場投入までのスピード」を左右するため
一般的な傾向として、製造業における製品情報管理は、販売開始後の営業活動やEC運用だけに関係するものではありません。製品開発から市場投入にいたるまでのプロセス全体において、製品情報の引き継ぎや部門間の調整が遅れると、発売準備や販売開始までのリードタイムに影響を及ぼすことがあります。
BtoBビジネスにおける新製品の開発・発売には、企画、設計、試作、資材調達、製造、そしてマーケティングや営業、CSにいたるまで、数多くの工程と関係部門が複雑に関わります。そのため、前工程で決まった情報が後工程に正しく引き継がれなかったり、変更後の情報が一部の部門にしか共有されていなかったりすると、確認作業や手戻りが発生しやすくなるのが一般的です。
特に製造業では、製品情報が工程ごと、部門ごとに分断されていると、後工程で必要な情報を集め直したり、手作業でデータを整え直したりする負担が生じます。製品の市場投入をスムーズに進めるには、個人の作業効率だけでなく、プロセス全体で情報を正しく引き継げる状態を作ることが重要であると筆者は考えます。
なお、新製品の開発プロセスの重要性を示すデータとして、日経クロステックActiveの調査によると、実に45%の企業が新製品開発の期日を守れていないという実態が報告されています。製品開発そのものはPLMやPDMの領域ですが、製品情報が部門間で分断され、後工程への引き継ぎに時間がかかるという課題を解決するうえで、PIMによる商品情報管理の考え方が今、非常に注目されています。
◆一貫性のある製品情報管理で期待できること
・手作業でデータを集め直したり、組み合わせたりする負担を減らせる
・後工程で利用する情報を整備しやすくなる
・市場投入後に各部門や配信先で使う製品情報を一元管理しやすくなる
PIMは、市場投入に向けて必要となる複雑な製品情報を整理し、後工程のあらゆるチャネルで活用しやすくするための「情報のハブ」として役立ちます。属人的な管理から脱却し、商品情報を正しく引き継いで必要な部門が即座に活用できる状態を作ることは、製造業における業務効率化、ひいては競争力を高めるうえでの重要ポイントであると筆者は考えます。
参考:日経クロステックActive「45%は新製品開発の期日を守れない! 調査が明らかにした守れる企業との差」
製造業におけるPIMとは、製品情報を一元管理して各部門・各チャネルで活用する仕組み
まずは、製造業におけるPIMの基本的な役割について解説します。
一般的にPIM(Product Information Management:商品情報管理)とは、製品に関するあらゆる情報を一元管理し、営業、販促、EC、カスタマーサポートなどの「各部門」や、自社ECサイト、コーポレートサイト、営業資料、紙カタログなどの「各チャネル」へシームレスに配信・活用できるようにする仕組みのことです。
◆製造業におけるPIMの役割・データ連携イメージ
出典:筆者作成
製造業で扱う製品情報は、一般的な小売業(アパレルや雑貨など)と比べて非常に複雑と言われています。単なる商品名や価格だけでなく、製品ごとの詳細な性能値、材質、業界規格、CAD図面、仕様書、取扱説明書、カタログ、外観写真など、管理・ひも付けすべき情報が多岐にわたるからです。さらに、カタログに載っている「標準品」だけでなく、特定のクライアント向けの「顧客別仕様」や「特注仕様」を扱うケースも多いため、製品情報の管理は極めて煩雑になりやすい傾向があります。
PIMを導入することで、これまで部門ごと、あるいは担当者ごとに分散していた製品情報を一つの強固なデータベースに集約できます。すべてのデータが「製品コード」や「型番」をキーとして製品単位で構造化されるため、社内の誰もが必要な情報へ即座にアクセスできるようになります。
また、PIMに集約された情報は、下流工程のさまざまな実務でそのまま二次活用が可能です。社内の各部門や外部の配信チャネルが、常に「同一の最新情報」を参照できる状態を作ることで、確認作業の手間や、部門間での情報の行き違いを大幅に減らしやすくなります。
◆製造業でPIMに集約・一元管理する主な製品情報
| 情報カテゴリ | 蓄積する具体例なデータ例 | 主な活用先・配信チャネル |
|---|---|---|
| 基本情報 | 品番、商品コード、商品名、型番、シリーズ名、JANコードなど | 社内管理台帳、営業資料、ECサイトの商品ページ |
| スペック情報 | サイズ、重量、材質、性能値、各種規格、対応電圧・環境条件など | 営業提案書、ECサイト(スペック検索)、問い合わせ対応 |
| メディア情報 | 商品画像(三面図)、外観写真、パーツ画像、紹介・解説動画など | ECサイト、カタログ、販促パンフレット |
| 書類情報 | 図面、詳細仕様書、取扱説明書、カタログ、各種説明書PDF | 営業、アフターサポート、顧客向けダウンロード |
| 販売情報 | 商品説明文、価格、販売チャネル、公開/非公開ステータス | 自社ECサイト、ホームページ、モール |
| 個別仕様情報 | 顧客別仕様、特注仕様、標準モデルとの差分データ | 営業、設計、アフターサポート |
上表のように、製造業で扱う製品情報は、基本情報や販売情報だけでなく、技術的なスペック情報や各種図面、仕様書、画像、PDF、顧客別仕様などを網羅的に組み合わせて管理する必要があります。
筆者の経験上、これらの情報が現場担当者の使い慣れたExcel、共有フォルダ、あるいは過去のメール添付などに分散していると、「どれが本当に最新で正しいデータなのか」を確認するためだけに、膨大なコミュニケーションコストが発生してしまいます。最悪の場合、設計変更前の古い図面や、誤ったスペックデータを営業資料やECサイトに掲載してしまうといった、企業の信用に関わる重大なリスクにもつながりかねません。だからこそ、製造業のDXを進めるうえでは、製品情報の「唯一の正しい保管場所」をシステムで明確に定義することが極めて重要であると筆者は考えます。
PIMは、複雑な製品情報を一元管理し、関係部門が全て同じ正しい情報をもとに業務を進めるための、強力な情報管理プラットフォームとなるのです。
製造業に「PIMが必要とされる背景」にある4つの課題
一般的に、製造業において商品情報管理に関わる一連の課題は、単なる業務の遅れにとどまらず、新製品の市場投入までのスピード(タイム・トゥ・マーケット)に大きく影響します。
現場でどのようなボトルネックが発生しているのか、特に見られる4つの課題について詳しく解説します。
課題① 顧客ニーズの多様化により「商品バリエーション」が増えている
近年の製造現場では、顧客ごとの用途やこまやかな要望に合わせるため、カタログに載っている標準品だけでなく、仕様違いの派生商品や、個別のカスタマイズ品を扱うケースが一般的になっています。その結果、製品バリエーションは爆発的に増加しています。
バリエーションが増えると、製品ごとの細かな違いを正確に識別し、管理しなければなりません。例えば、同じシリーズの商品であっても、サイズ、材質、性能、対応条件などが異なれば、それぞれのデータを厳密に区別して管理する必要があります。
また、顧客別仕様や特注仕様を扱う場合は、標準モデルとの差分管理も必要になります。こうした個別仕様の情報が各営業担当者や設計者の手元だけで管理されていると、社内での確認作業が頻発し、情報更新の漏れが発生しやすくなります。
商品バリエーションが多い企業ほど、製品情報を中央で一元管理できる仕組みの重要性が増していると筆者は考えます。
課題② スペックや関連資料など「管理する情報」が膨大になっている
製造業が扱う商品情報は、文字データとしてのスペック情報(寸法、重量、定格値など)だけではありません。図面や仕様書、取扱説明書、製品カタログ、画像といった「大容量の関連資料」も全て製品コードにひも付ける必要があります。製品によっては、数十、数百項目に及ぶことも珍しくありません。
さらに、取り扱う商品点数が増えるほど、登録・更新・確認しなければならない情報総量も増えていきます。一般的な話として、製品数や管理項目が一定規模を超えた企業では、従来のマンパワー(手作業中心の運用)だけでデータの正確性を維持することには限界があります。
管理対象がどれだけ増えても、正確に整理し、必要な形へ即座に出力・二次利用できる体制を整えることが重要です。
課題③ 最新情報の所在が分からず「確認作業」が増えている
製品情報が各部門のローカル環境に分散していると、「どれが本当に最新の情報なのか」が誰にも分からなくなるサイロ化が発生します。
例えば、設計部門が図面やマイナーチェンジの仕様を更新したにもかかわらず、その情報が営業資料やECサイトの商品ページにリアルタイムに反映されていなければ、フロント側では古い情報をもとに顧客対応をしてしまうリスクがあります。
最新資料が共有フォルダのどこにあるのか、あるいは誰が最終更新したのかが不透明な状態では、業務のたびに社内で「最新版はどれか」「このデータで本当に正しいか」を確認し合わなければならなくなります。
製品情報の不正確さは、営業提案の失注や、誤ったスペック開示による顧客クレームにも直結するため、情報の保管場所をシステム上で明確に定義することが不可欠であるというのが筆者の見解です。
課題④ Excel運用では「属人化・二重入力・版ズレ」が発生しやすい
Excelは直感的に導入しやすく、項目を自由に追加できるため、製品情報の管理ツールとして多くの現場で長年重宝されてきました。しかし、商品点数や管理項目、関わる部門が増えるにつれて、Excel中心の運用には構造的な限界が出やすくなります。
関係部門がそれぞれ異なるExcelファイルを独自に管理していると、同一の製品情報を複数の台帳へ手作業で入力する「二重入力・三重入力」の手間が発生します。また、ファイルをメール添付やチャットでやり取りしているうちに、部門や担当者ごとに参照しているバージョンが異なってしまう「版ズレ(※)」が頻発し、どれが最新版なのかが分からなくなることもあります。
さらに、更新ルールやファイルの格納場所を特定の担当者だけが把握しているような状態では、業務が属人化します。担当者の異動や退職が発生した場合、情報の引き継ぎがうまくいかず、最前線の運用がストップしてしまうリスクもはらんでいます。
近年では、リアルタイムで同時編集ができるGoogleスプレッドシートなどのクラウド型ツールを商品管理に活用する企業も一般的に増えています。しかし、クラウド表計算ツールへの移行は、製品情報管理における根本的な解決策にはならないと筆者は考えます。スプレッドシートの運用には、主に以下のような特有の重大なリスクが伴うからです。
・情報漏えいのリスク:URL1つで社外の人間にもアクセス権を付与できてしまうため、社外秘である未発表製品の図面や原価、顧客別仕様などの機密データが意図せず流出するセキュリティ上のリスクがある。
・動作の致命的な遅延:製品数やスペックの項目数が数万件規模に膨らむと、クラウド上の処理能力を超えてしまい、ファイルが開かない、あるいは入力のたびに画面がフリーズするといった実務上の限界を迎えます。
Excelは小規模な管理には有効であり、スプレッドシートは一時的な共同作業には非常に便利なツールです。しかし、複数部門で「数千・数万件の正確な製品マスタ」を永続的に運用・配信していく段階においては、どちらの表計算ツールも二重入力やデータ破損、セキュリティ事故の原因になりやすく、PIMの代わりとして運用を続けることには大きなリスクがあるというのが筆者の見解です。
これらの4つの課題が放置されると、営業提案、ECサイトの運用、カタログ制作、カスタマーサポートなど、製品情報を利用するあらゆる業務のスピードと品質に連鎖的な悪影響を及ぼします。
特にBtoBの製造業においては、製品情報のわずかな誤りが取引先との契約トラブルや信用失墜に直結しかねません。古い情報や不正確なデータによる手戻り・修正対応のコストを削減し、強固なコンプライアンスを維持するためにも、PIMのような製品情報の一元管理プラットフォームを構築して、全社で同じ正しい情報を瞬時に共有できる仕組みを整えるべきであると筆者は考えます。
※班ズレ:同じ製品情報や関連資料について、部門や担当者ごとに参照しているバージョンが異なる状態
製造業がPIMを導入する5つのメリット
一般的に、製造業がPIMを導入して製品情報の一元管理を行うことは、単なるデータの整理にとどまらず、販売力やアフターサポートの品質を底上げする多大な恩恵をもたらします。
ここでは、特に製造業において期待できる主な5つの導入メリットについて解説します。
メリット① 各部門が同じ最新情報を参照できる
PIMで製品情報を一元管理することで、社内のあらゆる関係部門が「同一の正しいデータベース」をリアルタイムに参照できるようになります。導入前後における情報共有の一般的な違いを以下にまとめました。
◆PIM導入前後の情報共有における主な違い
| PIM導入前の一般的な状況 | PIM導入後の状態 | |
|---|---|---|
| 最新情報の確認 | 担当者や設計部門へその都度メールや口頭で確認が必要 | PIMを開けば、誰もが即座に最新情報を参照できる |
| 部門間の情報共有 | 各自のExcelやチャット、メール添付のやり取りに依存しやすい | 全社で同一のデータベースを一元的に共有できる |
| 情報の更新・反映 | 部門ごとに台帳があるため、手動更新による反映漏れが頻発 | 1か所を更新すれば、全ての参照先に自動で最新情報が反映 |
| 誤情報発信のリスク | 古い資料や改定前のスペック数値を使う危険 | 常にバージョン管理された正確なマスタデータを参照可能 |
従来のように、部門ごとにExcelや共有フォルダで個別に製品情報を管理していると、実務のたびに「どのファイルが最新なのか」を確認する無駄な時間が発生していました。PIMを活用して、「参照すべき情報のありか」を明確に定義することは、社内のコミュニケーションコストを削減するだけでなく、外部への誤情報発信という大きな経営リスクを未然に防ぐためにも極めて有効な施策であると筆者は考えます。
メリット② 図面・仕様書・画像を製品情報とセットで管理できる
一般的な話として、製造業では、「製品情報(製品マスタ)」と「関連資料(図面とマニュアル)」を別々のシステムでバラバラに管理していると、必要な情報を探す手間が肥大化します。
PIMを活用すれば、図面、仕様書、取扱説明書、画像やPDFなどの大容量関連ファイルを、製品コードや型番にひも付けて一元管理できます。これにより、技術営業向けの提案資料作成や、ECサイトの商品ページの更新、カスタマーサポートでの急な問い合わせ対応など、あらゆるシーンで必要な情報を瞬時に引き出すことが可能になります。
なお、製造業における「図面そのものの履歴管理や共有」については専用の「図面管理システム」を活用する方法も一般的です。PIMは製品にまつわる「情報全体(スペックや販売情報を含む)」を一元化して二次利用しやすくする基盤であり、図面管理システムは図面ファイルの検索性や設計変更の履歴管理などに強みがあります。
図面管理システムの具体的な機能や特徴、選定のポイントについて詳しく知りたい方は、下記の記事ももあわせてご参照ください。
メリット③ Excelでの加工・転記・確認作業を減らせる
先ほどの課題④で触れたとおり、製品情報をExcelやクラウド型スプレッドシートのみで管理している場合、項目の追加、表記の統一、データの置換、一括での計算処理、およびECサイト等へ取り込むためのCSV加工などを、担当者が毎回手作業で行うケースが多々あります。
PIM上で以下のような一括編集やデータ加工の自動化ができれば、従来の表計算ツールによる手作業の限界をきれいにクリアできます。
◆PIMのシステム機能で効率化・自動化できる主な作業例
・特定のシリーズ商品群に対して、商品名や説明文に共通の文言を一括で追加・削除する
・表記ゆれをシステム上で自動的に一括置換して統一する
・入力された数値項目をもとに、システム内で自動的に計算処理を行う
・自社ECサイトや外部の配信チャネルの指定フォーマットに合わせてデータ形式を自動で整えて出力する
・該当する商品画像や関連ファイルを、製品コードをキーにして自動ひも付けする
このように、手作業による加工・転記の手間をPIMによって自動化・削減できれば、業務効率が劇的に向上するだけでなく、担当者ごとの「運用の属人化」や「タイポ(入力ミス)」の発生を仕組みで防ぐことが可能になると筆者は考えます。
メリット④ 顧客別・特注別仕様を管理しやすくなる
BtoBの製造業においては、カタログに載っている標準モデルをベースにしながら、クライアントごとの個別要望に応じた「顧客別仕様」や「特注仕様」を並行して管理する複雑な運用が日常的に発生します。これらを担当者ごとのローカル環境で個別に管理していると、「標準品からどこがどう変わったのか」の差分が見えにくくなり、データの重複登録や手戻りの原因になります。
PIMの優れたデータベース設計であれば、標準モデルの基本データを起点とし、そこから変更点だけを仕様差分としてひも付けて管理できます。これにより、派生品や特注品がどれだけ増えた場合でも、製品情報全体の整合性をきれいに保ちやすくなります。
メリット⑤ 過去製品の情報を検索・活用しやすくなる
製品のライフサイクルが長い製造業においては、すでに販売終了となった旧モデルや廃番商品についても、数年後に部品の問い合わせ、保守対応、過去の仕様確認などが日常的に発生します。そのため、過去製品の情報をすぐに確認できる状態を作っておくことも重要です。
PIMを用いて、過去の全ての製品情報や関連資料をアーカイブしておけば、ベテラン担当者の記憶や個人の古いローカルファイルに依存することなく、社内の「重要な情報資産」として誰もが即座に検索・活用できる状態を作れます。
また、過去の設計思想やスペックデータを瞬時に参照できれば、顧客に対して「後継品へのスムーズな買い替え提案」や新旧の仕様比較をその場で行うことができるため、営業機会の損失を防ぐうえでも極めて有効な導入効果であるというのが筆者の見解です。
このように、PIMを導入することで、製造業のバックヤードが抱える製品情報の確認・更新・共有に関わるあらゆる業務負担を劇的に削減できます。製品情報管理の効率化と高度化は、新製品の市場投入までのリードタイムを劇的に短縮し、激しい市場競争を勝ち抜くための強固な土台となると筆者は考えます。
製造業で求められるPIMの7つの機能
一般的に、市場に数あるPIMの中から自社に最適なツールを選定する、あるいはPIM機能を組み込んだシステムを構築する際は、製造業特有の複雑なデータ構造に対応できるかを見極める必要があります。
ここでは、製造業の商品情報管理において特に求められる「代表的な7つの機能」を解説します。
機能① 製品情報の一元管理機能
製造業のPIMにおいて大前提となるのが、製品情報を信頼できる唯一の情報源として(シングルソース化)、一元管理する機能です。
部門ごとにExcelや共有フォルダで情報が分断されていると、どれが最新情報なのか分からなくなります。PIMで管理対象の全てのデータを一つのWebデータベースに集約できれば、全社でリアルタイムに同じ最新情報を参照できるようになります。
単にファイルを保管するだけでなく、製品コードをキーにして、基本情報や関連資料が強固にひも付いた、「いつでも正しい情報へアクセスできる状態」を作ることができます。
機能② 商品マスタ・管理項目を自社製品に合わせて柔軟に設計できる機能
製造業では、扱う製品カテゴリやシリーズ、あるいは自社のビジネスモデルによって管理・登録すべき項目が異なります。そのため、あらかじめ決められた項目だけで管理するのではなく、自社製品の特性に合わせて「商品マスタの構造や管理項目」を自由に設計・拡張できることが重要です。
例えば、製品によっては商品名や価格だけでなく、サイズ、重量、材質、業界規格、性能値、対応条件など、数十~数百項目の細かなスペック情報を管理する必要があります。これらを自社の運用に合わせて自由に設定できれば、製品ごとの特長を正確に表現できます。
◆自社製品の特性に合った管理項目を設定
出典:筆者作成
また、システム側で入力形式(半角数値のみ等)のバリエーションや必須項目を指定できれば、担当者ごとの入力のばらつきや登録漏れを機械的に防ぎやすくなります。管理対象の情報量が膨大になりやすい製造業においてマスタ構造を柔軟にカスタマイズできるかどうかは、PIM選定における重要なチェックポイントであると筆者は考えます。
機能③ 図面や仕様書などの「関連資料」を自動ひも付けできる機能
製造業の現場において、製品情報(文字データ)と関連資料(図面やPDF)をセットで管理できることは不可欠です。
仮に「製品マスタはExcel、技術資料は共有フォルダ、販促用画像は別のストレージ」という状態であれば、情報を確認するたびに複数の場所を探し回る必要があり、確認作業に時間がかかるだけでなく、古いバージョンの資料を誤って使ってしまうリスクが高まります。
PIMに関連資料を製品単位でひも付けておけば、必要な場面で必要な情報を瞬時に探し出すことができます。
◆自動ひも付けのイメージ(ここまで)
出典:筆者作成
さらに、システム上の機能として、「ファイル名ルールに基づいた画像・資料の自動ひも付け機能」があれば、手作業でファイルを一枚ずつ登録する手間を劇的に削減できます。資料の添付漏れやひも付けミスを物理的に防ぎやすくなる点も大きなメリットです。
機能④ 標準モデルと個別仕様の「差分管理」機能
BtoBの製造業では、カタログに掲載している「標準モデル」をベースにしながら、クライアントごとの「顧客別仕様」や「特注仕様」を並行して管理するケースが多々あります。しかし、標準品と個別仕様を完全に別ファイルで管理すると、共通する基本情報まで重複登録することになり、更新漏れや差分の見落としが起こりやすくなります。
PIM上で「標準情報」を親データとし、そこから「仕様差分(変更点)」だけを子データとしてひも付けて整理できれば、共通情報を生かしながら、個別仕様を効率的に管理できます。特注品や派生品が多い企業ほど、この差分管理機能があるかどうかが、導入後の運用負荷を劇的に左右すると筆者は考えます。
なお、個別仕様の管理方法は企業ごとの独自の業務フローや製品構造によって最適な設計が変わるため、PIMを選ぶ際は、「自社の複雑な特注管理方法に対応できる柔軟性があるか」を事前に確認することが重要であるというのが筆者の見解です。
機能⑤ 権限管理・変更履歴管理・承認ワークフロー機能
製品情報を複数部門で共同編集する場合、誰でも自由にいつでも変更できる状態にしてしまうと、誤更新や他部門による重要データの意図しない上書きが発生しやすくなります。
そのため、PIMには強固なガバナンス機能(権限管理・履歴管理・承認フロー)が求められます。部門や担当者ごとに「閲覧のみ」「編集可能」「価格情報のみ非表示」といった詳細なアクセス権限を設定できれば、情報の取り扱いを安全にコントロールできます。
また、システム内に「変更履歴(ログ)」を残すことができれば、誰が・いつ・何の項目を更新したのかを確認できます。さらに、最終公開の前に責任者の確認を通す「承認ワークフロー」を設けることで、誤った情報や未完成のスペックデータが外部(ECサイトや営業資料)へ反映されてしまうリスクを抑えられます。
製品情報の誤りが企業の社会的信用に直結する製造業において、これらを仕組みで制御する管理機能は不可欠であると筆者は考えます。
機能⑥ データの一括加工・一括整備(置換・計算)ができる機能
製品点数や管理項目が数万件規模に及ぶ場合、一件ずつ管理画面を開いて手作業で情報を修正する運用は現実的ではありません。
PIM上で高度な一括加工やデータ整備ができれば、従来のExcelでの面倒なマクロ作成や転記作業が不要になります。文字の追加、項目の上書き、表記の置換、数値計算、複数レコードの一括編集などをPIM上で実行し、更新作業を効率化できます。
◆PIMのシステム機能で効率化できる加工・整備作業の例
| 機能例 | 具体的な実務での使い方・メリット |
|---|---|
| 複数レコードの一括編集 | 複数製品の材質、サイズ、重量などのスペック変更を、管理画面からまとめて一括更新する |
| 文字挿入 | 特定のシリーズ製品名や商品説明文に対し、共通の文言(例:型番プレフィックスなど)を一括追加する |
| 置換・上書き | 表記ゆれ(全角・半角の混在や古い表現)を見つけ出し、正しい表記へ一括で修正・統一する |
| 自動計算処理 | 通貨価格、価格改定時のパーセント一括変更、税率計算など、一定のルールに基づく数値をシステム内で自動計算する |
| バリデーションチェック | 入力されたデータが「文字数ルール」や「必須形式」に沿っているかをシステムが自動判定し、登録ミスを未然に防ぐ |
例えば、製造上の同じ仕様変更が複数製品に発生した場合でも、材質やサイズなどの該当項目をまとめて一括更新できれば、一件ずつ修正する不毛な手間を減らすことができます。
◆複数レコードの一括編集のイメージ
出典:筆者作成
また、配信先や用途に応じてデータを整える作業をシステム内で一括実行できるため、担当者ごとの作業のばらつきや入力ミスを徹底的に抑えやすくなります。
機能⑦ 各チャネルや外部システムへの「データ配信・自動連携」機能
PIMで一元管理し、きれいに整備された正確なデータは、必要とする全ての配信先へ展開できてはじめて真価を発揮します。
自社ECサイトやコーポレートサイトなどの各チャネルや販売代理店向けポータル、あるいは基幹システムといった外部システムへ自動でAPI連携・配信できれば、同じ製品情報を複数の場所で手作業で二重転記する必要がなくなります。これにより、更新漏れや反映ミスの防止にも直結します。
また、配信先によって必要な項目やフォーマット、表現ルールが異なる場合は、データをそのまま出力するのではなく、「送り先の仕様に合わせてシステム側で加工・変換して出力できる」ことが極めて重要です。
◆配信チャネルに合わせたデータ変換・整備の例
| 機能例 | 内容 |
|---|---|
| 加工フォーマット登録 | 自社ECサイト用、代理店用、カタログ用など、配信先に応じた抽出・加工ルールをシステム内に保存する |
| データ変換 | 送り先の指定するファイル形式(CSV、XML、JSONなど)や、必須項目に合わせてデータを自動で整える |
| ルールの再利用 | 同じデータ変換作業を毎回やり直す必要がなく、マスタデータを更新すれば、各チャネルへ最適な形式で配信される |
自社ECサイト、営業資料、外部の基幹システムなどで必要とされるデータ形式が異なる場合でも、用途に合わせたデータ整備ルールを再利用できれば、運用の手間は劇的に削減されます。
製造業でPIMを活用・構築する際は、社内での一元管理のしやすさだけでなく、「各チャネルや外部システムへ、いかに正確かつ柔軟に連携・配信できるか」の能力まで含めてシステム要件を確認しておく必要があります。
製造業の商品情報管理に活用できる「EBISU PIM」
製造業においてPIMを導入・活用する際、社内でのデータ一元管理と同じくらい重要になるのが「各種販売チャネルや外部システムへの正確、かつリアルタイムなデータ配信」の設計であると筆者は考えます。
製造業の商品情報管理では、関係する各部門が必要な情報を必要なときに最適な形で引き出して活用できる状態を作ることが重要です。
株式会社インターファクトリーが提供する「EBISU PIM(エビス ピム)」は、社内の各部門と柔軟に連携して製品情報を集約し、全社で常に同一の正しいデータを参照・二次利用できるようにするクラウド型の商品情報管理システムです。
◆EBISU PIMを中心とした各部門のデータ連携イメージ
出典:筆者作成
上図のように、EBISU PIMを中心に複雑な製品情報を集約することで、設計、営業、マーケティング、CSなどの各部門が常に同じ最新データをもとに業務を進めやすくなります。部門ごとに別々のExcelファイルや資料を管理するのではなく、全社共通の情報プラットフォームとして活用できる点が大きな特長です。
社内の誰もが最新情報へすぐにアクセスできるようになれば、「最新の図面はどれか」「このスペック数値で合っているか」といった確認作業や、担当者への問い合わせの手間を削減できます。
部門ごとに異なる仕様のExcelファイルを運用したり、チャットやメール添付で情報をやり取りしたりする運用では、どうしても情報の伝達漏れや「版ズレ」が発生しやすくなります。EBISU PIMを活用して強固な一元データベースを構築すれば、データの先祖返りを防ぎ、部門間での情報が分断されるサイロ化の課題を根本から解決しやすくなります。
また、現在取り扱っている現行製品だけでなく、すでに生産を終了した過去の製品情報もアーカイブとして一元管理できます。アフターメンテナンス時の旧製品の仕様確認や部品に関する急な問い合わせが発生した場合でも、担当者の記憶に頼らず必要な情報を瞬時に検索・参照できるため、顧客対応のスピードと品質の向上に直結します。
まとめ
一般的な傾向として、製造業では取り扱う商品点数やスペックの管理項目が増えるほど、製品情報の管理・運用は複雑化していきます。情報管理が煩雑なままでは、営業資料の作成、自社ECサイトの商品ページの更新、カタログ制作、問い合わせ対応などに必要な情報を整えるまでに時間がかかってしまいます。
激しい市場競争の中で、新製品をいち早くマーケットに届ける「市場投入までのスピード」をスムーズに加速させるには、製品情報を正確にデータ化し、必要な部門や配信先へ即座に引き継いで活用できる状態を整えることが極めて重要であると考えます。
PIMを活用すれば、複雑な製品情報を一元管理し、各部門が同じ最新情報を参照できる環境を作ることができます。さらに、関連資料の自動ひも付け、高度なデータの一元加工、セキュリティを担保する権限管理、各種ECサイトや外部システムとのシームレスな自動連携などにより、製造業の商品情報管理をより正確かつ効率的に進めることが可能となります。
もし、現在のExcelやスプレッドシートによる製品管理に限界を感じており、製造業向けのPIMシステム導入を検討されているのであれば、インターファクトリーが提供する「EBISU PIM(エビス ピム)」をぜひご検討ください。
EBISU PIMは、複雑な製品情報を統合して社内データベースを構築し、バックヤードの商品情報管理を効率化するクラウド型の商品情報管理システムです。情報を一つのシステムに安全に集約し、最新情報へのシームレスなアクセスや、詳細な権限設定によるガバナンス強化にも柔軟に対応しています。
EBISU PIMへのお問い合わせや個別のご相談、資料請求は、下記の公式サイトよりお気軽にお申し込みください。
























