帳票ワークフローとは、企業や組織におけるさまざまな帳票(請求書や見積書、申請書など)の作成、承認、配布、保存などの一連の業務プロセスを管理・効率化するための仕組みのことです。専用システムを使って一連のフローを自動化・デジタル化して運用・管理することで、進捗状況や過去の記録も簡単に閲覧できるようになり、業務の効率化につながります。
帳票ワークフローシステムを導入する方法は以下の4種類があります。
◆帳票ワークフローシステムの4つの導入方法
② SaaS型の専用ツールを利用する
③ パッケージで専用システムを構築する
④ 新規開発で専用システムを構築する
この中で、最も安価に実現できるのは②のSaaS型の専用ツールを利用する方法ですが、社内の基幹システムと連携したい場合には、①の既存システムの業務アプリケーションとして追加実装する方法が、最もスムーズなデータ連携を実現できるでしょう。また、BtoBで取引先企業内の注文申請フロー機能を提供したい場合には、BtoB向けECシステムの機能を利用するという方法もあります。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、帳票ワークフローシステムについて解説します。
帳票ワークフローの仕組み
帳票ワークフローシステムを導入することで、自動化による業務効率化、ワークフローの再構築によるDXの促進、そして、デジタル化による環境に配慮した事業運営が可能になります。
下図は、帳票ワークフローシステム導入前の、組織内の見積申請フローのイメージ図です。
◆帳票ワークフローシステム導入前の見積申請フローのイメージ
出典(画像):筆者作成
そして下図は、帳票ワークフローシステム導入後の見積申請フローのイメージです。
◆帳票ワークフローシステム導入後の見積申請フローのイメージ
出典(画像):筆者作成
帳票ワークフローシステムを導入すると、以下のような紙の帳票による運用のデメリットが解消されます。
◆紙の帳票による運用のデメリット
✓回覧の時間とコストがかかる
✓紙文書の保管スペースが必要になる
✓紙文書の取り扱いと管理が煩雑になる
✓紙文書の紛失や破損のリスクがある
✓過去の帳票の探索に時間がかかる
✓変更や修正による再作成が必要になる
✓情報の共有や追跡が難しい
✓環境に配慮した取り組み(ペーパーレス化)に寄与できない
帳票ワークフローシステムの導入は、効率的かつ戦略的で、環境にも配慮した事業運営への転換を図るための基盤となります。
帳票ワークフローの4つの導入方法
帳票ワークフローを導入する場合、以下の4つの方法があります。
◆帳票ワークフローの4つの導入方法
① 既存システムの業務アプリケーションとして追加実装する | ② SaaS型の専用ツールを利用する | ③ パッケージで専用システムを構築する | ④ 新規開発で専用システムを構築する | |
初期費用 | 数千万円~ | 無料~数万円 | 数十~数百万円 | 数千万円~ |
月額費用 | 数十万円~ | 数万円~ | 数万~数十万円 | 数十万円~ |
メリット | ・既存システムの機能として実装されるため連携がスムーズ | ・比較的安価で、すぐに導入できる ・ツール自体の保守運用コストを抑えられる |
・比較的安価かつ短期間で導入できる ・ある程度のカスタマイズが可能 |
・個別要件を自由に実装できる |
デメリット | ・導入/運用における費用とコストが高い ・機能の陳腐化に伴うリプレースが必要になる ・カスタマイズの難易度と費用が高い |
・カスタマイズができない | ・システムの陳腐化に伴うリプレースが必要になる | ・導入/運用における費用とコストが高い ・専門知識や開発ノウハウがない場合には失敗する可能性が高い ・システムの陳腐化に伴うリプレースが必要になる |
出典:筆者の経験に基づき独自に作成
それでは、一つずつ見ていきましょう。
方法① 既存システムの業務アプリケーションとして追加実装する
帳票ワークフローシステムの導入検討では、既存の基幹システムのアプリケーションの一つとして業務オプションを追加実装する方法が検討されるケースも少なくありません。この方法の場合、基幹システムのオプションを利用するため、基幹システムの他のアプリケーションともスムーズにデータ連携できます。
基幹システムで運用・管理されているデータには、以下のようなものがあります。
◆基幹システムで運用・管理されているデータ(例)
・人事給与データ
・顧客データ
・販売受注データ
・在庫物流データ
・製造データ
・購買調達データ
ただし、基幹システムの業務オプションは非常に高額な製品が多く、また既製のアプリケーションですから、複雑な設定変更などの機能は提供されているものの、大規模なカスタマイズには適さず、また、ちょっとしたフロー変更などに柔軟に対応できないという場合もあるので注意が必要です。
また、初期導入コストも高額ですが、定期的なメンテナンスやアップグレードの費用もそれなりにかかり、システムの導入・運用の総コストがかさむ点も、導入時の障壁になります。
方法② SaaS型の専用ツールを利用する
SaaS型の専用ツールを利用することで、社内の既存システムへの影響を抑え、手軽に帳票ワークフローシステムを導入できます。
一番のメリットはコストの低さでしょう。初期費用無料で利用規模に応じた月額料金、という価格体系のサービスも多く提供されています。
◆SaaS型サービスの価格体系のイメージ(例)
上記のようなサービスであれば、従業員の少ない企業もコストを抑えて帳票ワークフローシステムを導入することができます。また、SaaS型サービスの特徴として、最新の機能とセキュリティ環境が自動更新で提供されるため、システム運用の負荷も抑えられる点も大きなメリットの一つです。
ただし、業務フローや帳票レイアウトなどのカスタマイズには対応できない場合が多いです。ツールの設定で対応できる範囲を超える個別要件には対応できないため、SaaS型のシステムやツールを効果的に活用するためには、現行の業務フローやプロセスをツールの仕様に合わせて再構築することが成功の鍵となります。
方法③ パッケージで専用システムを構築する
パッケージソフトウェアとは、自前のサーバにインストールしてシステムを構築する既成ソフトウェアです。ハードウェアやネットワークを用意してサーバを構築する必要があるため、②のSaaS型に比べると、初期費用・保守運用コストともに高くなります。
一方で、必要な基本機能はそろっているため、④の新規開発に比べると、低コストかつ短期間での構築が可能です。また自社のシステムなので、カスタマイズの自由度は高くなりますから、コストを抑えて独自要件を満たしたい場合には有力な選択肢と言えるでしょう。日本では、独自の業務フローや業務プロセスを手放せない企業も少なくなく、SaaS型のツールでは業務にフィットしないケースも多いため、パッケージソフトウェアが重宝されています。
ただし、パッケージソフトウェアは陳腐化するため、通常の保守運用に加え、定期的なアップデート計画も不可欠になります。またインフラの保守運用も自前になりますから、セキュリティ対策も実施していく必要があります。
方法④ 新規開発で専用システムを構築する
帳票ワークフローシステムをゼロ開発で構築する方法です。投入できる予算と技術力の範囲内であれば、理論上は完全に任意の機能を開発することができます。
しかし、導入/保守運用のいずれも莫大なコストが必要なうえ、管理対象システムが増えることで企業全体のIT管理の負荷が増大するため、よほど体力のある企業でなければ保持することが難しくなります。
また、開発担当や保守運用担当の技術者への依存が高まり、システムの導入あるいは運用の成否に影響するため、人材の確保と手順の標準化にも取り組み、万全の体制を構築する必要があります。
開発を外部に委託する場合でも、内製する場合でも、自社でシステムを新規開発する方法であれば、理想のシステムを実現できる可能性は高くなりますが、当然ながら莫大なコストが必要です。そのため、導入方法の選定では、中長期的な視点でのコストシミュレーションに加え、保守運用体制、開発者との関係性の観点からも十分な検討を行うことが大切です。
帳票ワークフローシステムを効果的に導入するためには、事前の準備と現場の協力が不可欠です。以下の3つの注意点を押さえておくことが、導入の成功と業務効率化の実現への近道となるでしょう。
注意点① 業務フローを最適化する
帳票ワークフローシステムの導入前に、自社の業務フローを可視化し、最適化しておきましょう。最初に、どの部門でどのような帳票が使われており、どのようなプロセスを経ているのか、現状の業務フローを作成します。次に、現行のフローやプロセスの無駄や改善の余地を確認して、導入システムをより効果的に活用するための業務フローとプロセスを再設計します。
注意点② 導入プロジェクトに関係部門を関与させる
帳票ワークフローのような複数部署で利用される業務システムの導入では、実際にシステムを利用して業務を遂行する人々の理解と協力が欠かせません。導入プロジェクトにはすべての関係部門からメンバーを招集し、関係者全員が理解できるように進めることで、システム導入後の混乱を防ぎ、最適なワークフローを確立できます。
また、関係部門メンバーにシステムの使い方を熟知してもらい部門で教育してもらうことで、導入後のサポート体制が取りやすくなり、より実務に適したシステム構築や改修も可能になります。
注意点③ 導入後は紙の帳票を使わせないよう徹底する
帳票ワークフローシステムを導入後に紙の帳票を並行して運用していると、データの二重管理や入力の手間が生じやすく、システムの導入効果が半減してしまいます。またシステム利用における例外フローはできる限り少ないことが好ましいので、原則として、紙の帳票を使わないよう経営層が「脱紙」の方針を明示して徹底させるようにすべきでしょう。
システムに完全移行できるようにルールを設定して、関係者全員が新しいシステムを利用した業務に慣れるようにサポートしていくことが重要です。
BtoB向けECで生成される帳票類も、帳票ワークフローで管理しよう
BtoB向けECでは見積書の作成や値引き申請などが必要となるため、多くの帳票が生成されます。これらの帳票は、ほとんどの場合、複数の担当者や担当部署の承認申請が必要になるため、紙の帳票を回覧する方法では時間がかかるうえ、ヒューマンエラーも起こりやすくなります。
BtoB向けECシステムに帳票ワークフロー機能を実装して申請・承認プロセスを自動化することで、必要なタイミングで必要な人に通知が自動送信されるため、回覧の滞りも防止できるようになり、業務の効率化とヒューマンエラーの削減が期待できます。
また、すべてのフローはシステムで管理されるため、過去の記録も簡単に参照できるようになり、トラブルが発生した場合にもスムーズな対応が可能になります。
BtoB向けECには承認フロー機能を備えているサービスもありますが、筆者の印象では、社内の申請・承認フローには専用ツールを利用する事例が多いです。なぜなら、取引先企業ごとに個別の要件が多いため、すべてを網羅しようとするとシステム要件が複雑になり、開発コストが膨れ上がってしまうからです。
BtoB向けECの機能で、取引先の注文申請フローを自動化できる
一方で、取引先向けに注文申請フロー機能を提供する場合は、BtoB向けECシステムの機能を利用すると便利です。BtoB向けECシステムの機能では、例えば、取引先の発注担当者が商品の注文書の登録ボタンを押すと発注担当者の上司に承認申請メールが自動送信され、上司が承認ボタンを押すと商品の注文が確定し、差し戻しボタンを押すと差し戻される、というフローを設定することもできます。
BtoB向けECの専用パッケージや、カスタマイズに対応しているSaaS型サービスでは、取引先企業ごとに設定できる注文申請フロー機能が提供されているので、一度検討してみると良いでしょう。
まとめ
帳票ワークフローの導入によって業務を効率化することで、顧客対応や売上向上のための取り組みにより多くの時間を使えるようになります。
もし、取引先との受発注業務の改善を検討しているのであれば、インターファクトリーの「ebisumart(エビスマート)」がおすすめです。BtoB向けECによる帳票ワークフローの豊富な導入実績を有するebisumartは、数多くのクライアントと一緒にECビジネスの成長を支援しています。
ぜひ本記事とあわせて、下記の公式サイトでebisumartのBtoB事例をご確認ください。
公式サイト:「ebisumart|BtoB向けECサイト構築・導入」