「在庫がいつも合わない」
「季節の終わりには売れ残りが山積みになる」
「人気商品なのに欠品させてしまい、せっかくの売上チャンスを逃してしまった」
こうした在庫管理に関する悩みは、アパレル業界特有の深刻な問題です。近年、ECサイトとの併売や多店舗展開が進むなかで、在庫管理の難しさが増しています。
過剰在庫は倉庫コストや値引きロスを生み、欠品は顧客の信頼を失う致命傷となりかねません。
本記事では、アパレル業界の在庫管理について基礎から具体的な手法まで解説します。
◆この記事を読むと得られるメリット
・欠品と過剰在庫を防ぐ実践的な管理手法が分かる
・自社に最適な在庫管理システムの選び方を習得できる
デジタル化が進む今だからこそ、在庫管理の精度を高めて、ビジネス成果を最大化できるようにしていきましょう。
1.アパレルの在庫管理とは?業界特有の複雑さと課題を理解しよう
アパレルの在庫管理は、衣料品という特殊な商材を扱う以上、他業界とは異なる独自の難しさを抱えています。まずはアパレルの在庫管理の基本概念を押さえ、業界特有の課題を正しく理解しましょう。
② 一般的な在庫管理と異なる「トレンド・季節性・短いライフサイクル」
③ 検品ミスや属人化の問題
④ 在庫管理の失敗が招くキャッシュフロー悪化や機会損失のリスク
1-1.アパレルは商品×サイズ×カラー別の在庫追跡が必要
アパレルの在庫管理では、デザインごとに存在する複数のサイズ・カラーを、個別の管理単位として追跡しなければなりません。
◆在庫追跡における3つの管理軸
・デザイン(型番):デザインや型番ごとに商品を識別し、同一デザイン内でのバリエーション展開を把握します。
・サイズ:同じデザインでもサイズによって売れ行きが大きく異なるため、サイズごとの在庫数を正確に管理する必要があります。
・カラー:カラー展開によって売上の偏りが生じやすく、人気色は早期に完売する一方、不人気色は在庫として残りやすい傾向があります。
たとえばワンピース1型でも、サイズがS・M・L・XLの4種類、カラーがブラック・ネイビー・ベージュの3色あれば、合計12の在庫単位(SKU)が発生します。
1-2.一般的な在庫管理と異なる「トレンド・季節性・短いライフサイクル」
さらに、アパレル商材は、「トレンド・季節性・短いライフサイクル」という3つの特性を持っています。
◆アパレル特有の管理要素
・需要が流行に左右される:ファッショントレンドは数か月単位で移り変わり、昨シーズンの人気商品が今シーズンは売れなくなる事態が常に起きています。SNSやメディアの影響で急激に需要が伸びる商品がある一方、予想外に売れ行きが鈍る商品も出現します。
・季節や天候によって売れ筋が変わる:春夏物と秋冬物では、商品構成がまったく異なります。季節をまたいだ在庫は、値引き処分となることが大半です。季節商品は天候によっても売上が大きく変動します。たとえば暖冬・冷夏などの気候変動リスクは、在庫リスクに直結します。
・商品の販売可能期間が短い:新作の販売期間は数週間から数か月程度と短く、トレンドのピークを過ぎれば急速に売れなくなります。販売期間が短いほど、在庫回転を速めなければなりません。発注から店頭投入までのリードタイムを短縮する工夫が欠かせません。
アパレルは食品や日用品などと違い、需要が安定せず予測が難しいジャンルです。
アパレルの在庫管理では「適量を見極める目利き」と「迅速な在庫調整」が重要ポイントとなります。
1-3.検品ミスや属人化の問題
ここまでに見てきたSKU数の多さ・需要予測難しさという問題に加えて、検品精度や属人的な運用という課題もあります。
◆アパレルの在庫管理の課題
・検品ミスと在庫差異の発生:手作業での検品や棚卸しではヒューマンエラーが避けられず、システム上の在庫数と実在庫が一致しない事態が頻発します。差異が積み重なれば、たとえば「欠品なのに在庫ありと誤認する」というような重大なトラブルにつながります。
・属人的な管理体制:ベテラン担当者の勘や経験に依存した発注・在庫調整が行われている場合、ノウハウが組織内で共有できません。担当者の異動や退職で管理レベルが低下し、組織全体の在庫コントロールが不安定になります。
これらの課題を解決するには、システム化による業務標準化とデータに基づく意思決定が不可欠です。勘や経験だけに頼る管理から脱却し、誰が担当しても一定水準の管理ができる仕組みを構築しなければなりません。
1-4.在庫管理の失敗が招くキャッシュフロー悪化や機会損失のリスク
アパレルの在庫管理にまつわるリスクは、経営が危機に陥りかねない深刻なものです。
◆在庫管理の失敗がもたらす経営リスク
・過剰在庫によるキャッシュ圧迫:売れない在庫を大量に抱えれば、仕入代金の支払いで資金が拘束され、運転資金が枯渇します。倉庫保管コストも継続的に発生し、最終的には大幅値引きでの処分を余儀なくされ、粗利率が大幅に低下します。
・欠品による販売機会の損失:人気商品が欠品すれば、顧客は競合ブランドに流れてしまい、二度と戻ってこない可能性があります。ECサイトで欠品表示が続けば、ブランドイメージが損なわれ、リピーター獲得も困難になります。
・在庫廃棄による損失拡大:賞味期限のない衣料品でも、流行遅れや保管状態の劣化により商品価値がゼロになる場合があります。廃棄処分にはコストがかかるうえ、環境負荷の観点からも企業責任が問われる時代になっています。
在庫管理の精度を高めることは、単なる業務効率化に留まりません。企業の財務健全性と顧客満足度を守る経営課題そのものです。適正在庫を維持できなければ、利益率の低下・資金繰りの悪化・顧客離れという三重苦に陥るリスクが存在します。
2.アパレルの適正在庫を実現する具体的な管理方法
アパレルの在庫管理の重要性をしっかり把握できたら、具体的な管理方法について見ていきましょう。アパレルの在庫管理では、単に在庫数を減らせば良いわけではなく、欠品リスクとのバランスを取りながら最適な水準を見極めることが重要です。
② ABC分析で優先管理すべき商品を見極める
③ ECシステムと連携し在庫の見える化で全体像を把握する
④ バーコード・RFIDによる正確な検品と棚卸し効率化を進める
2-1.適正在庫を回転率と販売予測から算出する
適正在庫の水準を数値化するには、過去の販売実績と在庫回転率を用いた計算が役立ちます。感覚ではなく定量的な指標で在庫量を決めるようにして、過不足のない発注を実現していきましょう。
◆適正在庫を算出する基本的な手法
・在庫回転率を算出する:売上原価を平均在庫金額で割った値が、在庫回転率です。この数値が高いほど在庫効率が良いと判断できます。たとえば年間売上原価が5,000万円、平均在庫が1,000万円なら回転率は5回転となり、約2.4か月で在庫が入れ替わる計算です。
・安全在庫を設定する:需要のばらつきやリードタイムを考慮し、欠品を防ぐための最低在庫水準(安全在庫)を設けます。「平均販売個数×リードタイム日数×安全係数」で計算し、需要変動が大きい商品ほど安全係数を高めに設定します。
・発注点を決定する:在庫が一定水準を下回ったら自動的に発注するトリガーポイント(発注点)を設定します。発注点は「リードタイム期間中の予想販売数+安全在庫」で算出し、この水準を割り込む前に補充発注を行います。
※実際の計算式は企業によっても異なります。
これらの計算を商品カテゴリ別・SKU別に行えば、どの商品をいつ何個発注すべきかが明確になります。一方、計算式はあくまで基準の数値です。実際の発注では季節要因や販促計画も加味して、調整する必要があります。
2-2.ABC分析で優先管理すべき商品を見極める
アパレルの在庫管理には労力がかかりますが、すべてのSKUに同じ労力をかけて管理するのは非効率です。ABC分析を用いて商品を重要度別にランク分けし、メリハリのある在庫管理を実現しましょう。
◆ABC分析による在庫の優先順位付け
・Aランク商品の厳格管理:売上構成比の上位70〜80%を占める主力商品群をAランクとし、欠品させない厳格な管理を行います。発注頻度を高め、週次または日次で在庫をチェックし、需要変動にすぐ対応できる体制を整えます。
・Bランク商品の効率管理:売上構成比15〜20%程度の準主力商品をBランクとし、月次または隔週での在庫確認を基本とします。Aランクほど神経質にならず、ある程度まとめて発注するなど、管理コストとのバランスを取ります。
・Cランク商品の簡易管理:売上構成比5〜10%程度の低回転商品をCランクとし、最小限の在庫で運用します。欠品リスクは許容しつつ、在庫保管コストを抑える方針を取り、場合によっては取り扱い中止も検討します。
ABC分析によってメリハリをつければ、限られたリソースを効果的に配分できます。全商品を均等に管理しようとすれば現場が疲弊するだけですから、重要商品に注力する戦略的な判断をしてください。
2-3.ECシステムと連携し在庫の見える化で全体像を把握する
実店舗・ECなどの拠点ごとに、バラバラに管理していては、全体最適な在庫配置ができません。複数拠点に分散した在庫を統合管理し、全社的な在庫状況をリアルタイムで把握する仕組みが不可欠です。
◆在庫の見える化を実現する3つの施策
・POSとECの在庫データ統合:実店舗のPOSシステムとECサイトの在庫データベースを連携させ、どの拠点でどの商品が何点あるかを一元的に管理します。店舗で売れた商品がリアルタイムでECの在庫数に反映されれば、二重販売のリスクを防げます。
・ダッシュボードでの可視化:在庫状況・売上推移・回転率などの指標をダッシュボード形式で表示し、経営層や現場責任者が直感的に状況を把握できるようにします。異常値のアラート設定をしておけば、問題をいち早く察知できるようになります。
・拠点間における在庫移動の最適化:ある店舗で売れ筋の商品が別店舗では在庫過多になっている場合、拠点間で在庫を融通し合う仕組みを構築します。見える化により最適な移動先が判断でき、全社トータルでの在庫効率が向上します。
在庫の見える化は、適正在庫を維持するための大前提です。どこに何があるか分からない状態では、いくら計算式を使ってもそれを実現できません。
自社ECに在庫連携を実装する具体的な方法は、「EC担当者必見!ECに在庫連携を実装するための3つの方法」にて解説していますので、あわせてご覧ください。
2-4.バーコード・RFIDによる正確な検品と棚卸し効率化を進める
手作業での検品や棚卸しは、ヒューマンエラーの温床となり、在庫差異を生む最大の原因です。バーコードやRFID(無線自動識別)を活用すれば、検品精度が飛躍的に向上し、棚卸し作業も大幅に効率化できます。
◆自動認識技術の活用方法
・バーコード管理の導入:商品タグや納品書にバーコードを付与し、ハンディターミナルでスキャンするだけで入出庫を記録できるようにします。手入力に比べて作業時間が大幅に短縮され、入力ミスも大きく軽減されます。
・RFID技術による一括読取:複数の商品タグを一度に読み取れるRFIDを導入すれば、段ボール箱を開封せずに中身を確認できます。棚卸し作業では、店舗内を歩き回るだけで全商品を素早くカウントでき、作業時間を大幅に圧縮可能です。
・リアルタイム在庫更新:バーコード・RFIDで読み取ったデータを即座に在庫管理システムに反映させれば、タイムラグのない在庫把握が実現します。売れた瞬間に在庫が減り、入荷した瞬間に在庫が増えるため、正確な在庫数を維持しやすくなります。
このような仕組みの導入には初期投資は必要ですが、人件費削減と在庫精度向上のメリットは大きなものです。早期に投資回収できるケースも少なくないでしょう。
3.アパレルの需要予測の精度を高める方法
一方、適正在庫を維持するうえで重要な鍵を握るのが「需要予測」です。ここでは、実務で使える需要予測の具体的な手法とツール活用法を解説します。
② SNSとトレンド情報を活用する
③ 予測ツールとAI活用で精度を向上させる
3-1.過去の販売データから季節トレンドを分析する
過去の傾向を正しく読み解くことが、精度の高い需要予測の第一歩です。販売実績データを時系列で分析し、季節ごとの需要パターンや周期性を把握しましょう。
◆販売データ分析の実践手法
・月別売上推移を可視化する:過去2〜3年分の月別売上データをグラフ化し、春夏と秋冬のピーク時期を特定します。たとえばコート類は11月から急増し2月にピークを迎える、半袖シャツは5月から伸び始め7〜8月が最盛期、といったパターンが見えてきます。
・曜日・時間帯別の購買傾向を把握する:週末や祝日、セール期間中の売上変動を分析し、集客が見込める日時を予測します。たとえば「ECサイトでは週末深夜帯の購入が多い」といったデータも把握して、在庫補充やキャンペーンのタイミング最適化に活用しましょう。
・気温・天候との相関を分析する:過去の気象データと売上を照合し、気温が何度以上になると夏物が動き出すか、降水量が多い日は雨具の売上が何倍になるかなどの相関関係を導きます。気象庁の長期予報と組み合わせ、シーズン前の仕入量調整に役立てましょう。
過去データは宝の山ですが、分析せずに眠らせている企業が少なくありません。蓄積したデータを徹底的に掘り下げれば、勘に頼らない客観的な需要予測が可能です。
3-2.SNSとトレンド情報を活用する
アパレル商品の需要は、SNSでのバズやメディア露出によって急激に変動します。外部情報を常時モニタリングし、トレンドの兆しをいち早くキャッチする体制も重要です。
◆外部情報を活用した予測手法
・SNS上の言及量を分析する:Instagram・X・TikTokなどで特定の色・デザイン・ブランドがどれだけ話題になっているかを追跡します。言及数が急増している商品は、需要が伸びる前兆です。早めに在庫を積み増す判断材料になります。
・インフルエンサーの影響を把握する:フォロワー数の多いインフルエンサーが商品を紹介すると、短期間で爆発的な需要が発生する可能性があります。たとえば自社商品がSNSで取り上げられた場合には、即座に在庫状況を確認し、欠品リスクに備えなければなりません。
・ファッション業界ニュースをチェックする:海外コレクションやセレブのファッション、ドラマ・映画の衣装トレンドなどを定期的にチェックし、今後流行しそうなスタイルを把握しておくことも大切です。
外部情報の活用は、過去データだけでは捉えられない「これから起きる変化」を先読みする手段です。情報収集を日課にし、トレンドの波に乗り遅れないアンテナを張っておきましょう。
3-3.予測ツールとAI活用で精度を向上させる
人間の経験則だけでは限界がある需要予測を補完するためには、AIや専用ツールが役立ちます。
◆AI・予測ツールの活用領域
・機械学習による需要予測モデル:過去の販売データ・天候・SNS情報・セール実施有無などを学習させ、将来の販売数を予測するモデルを構築します。予測精度は初期段階では不完全であっても、データが蓄積されるほど改善されていきます。
・需要予測SaaSの導入:クラウド型の需要予測サービスを使えば、自社でAIを開発する手間をかけずに、高度な予測機能を利用できます。在庫管理システムやPOSデータと連携するだけで、最適な発注量を自動で提案してくれる「FULL KAITEN」や「SENSY MD」などのサービスがあります。
・異常検知アラートの設定:AIが通常の販売パターンから大きく外れた動きを検知し、アラートを発する仕組みを導入します。突発的な需要急増や急減を早期発見できれば、緊急補充や在庫処分の判断を迅速に行えます。
AI活用は、どの企業にとっても重要な技術になりつつあります。ツールに頼りすぎるのは危険ですが、人間の判断を補完する強力な武器として積極的に取り入れていきましょう。
4.大規模で複雑な在庫連携も実現するECプラットフォームはEBISUMARTがおすすめ
ここまで、アパレルにおける在庫管理について、解説してきました。ECサイトが売上の中心となっている企業や、これからECも含めたアパレルビジネスを立ち上げる方にとっては、ECプラットフォームの選定が成否を分ける重要な分かれ道となります。
そこでおすすめしたいのが、インターファクトリーが提供するECプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」です。柔軟かつ拡張性の高いクラウド型で、アパレル特有の複雑な在庫連携もスムーズに実現できます。
参考までに以下は、EBISUMARTと提携している在庫連携サービスです。
| サービス名 | 特徴 | 提供会社 |
| (1)zaiko Robot | 複数のネットショップ間の在庫数を24時間365日自動で連携できる。在庫管理の手間やミスを低減して売り越しリスクを抑えられる | ハングリード株式会社 |
| (2)ネクストエンジン | 受注処理、在庫連携、商品の一括登録などの複数のネットショップ運営を自動化できる。サポートサービスの顧客満足度も極めて高い | NE株式会社 |
| (3)eシェルパモール2.0 | 複数のネットショップの受注、在庫、商品、販売、顧客情報を一元管理できる。標準機能に加え、カスタマイズや外部システムとの連携にも対応している | 株式会社スクロール360 |
| (4)CAM MACS(キャムマックス) | 中小企業向けのオムニチャネル対応ERP。受注から発送、財務会計までを一元管理できる。データ入力コストを削減し、業務効率化や在庫の適正化を支援 | 株式会社キャム |
| (5)TEMPOSTAR(テンポスター) | 楽天市場やAmazonなど複数のECモールと自社ECの受注、在庫、商品情報を一元管理できる。SaaS型であるがカスタマイズ対応が可能なので、事業規模の変動にも柔軟に対応できる | SAVAWAY株式会社 |
出典:筆者作成
EBISUMARTについての資料は、以下よりダウンロードできます。ぜひご参考にご覧ください。
5.まとめ
本記事では「アパレルの在庫管理」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
最初に、アパレルの在庫管理の基礎知識として以下を解説しました。
② 一般的な在庫管理と異なる「トレンド・季節性・短いライフサイクル」
③ 検品ミスや属人化の問題
④ 在庫管理の失敗が招くキャッシュフロー悪化や機会損失のリスク
アパレルの適正在庫を実現する具体的な管理方法は、以下のとおりです。
② ABC分析で優先管理すべき商品を見極める
③ ECシステムと連携し在庫の見える化で全体像を把握する
④ バーコード・RFIDによる正確な検品と棚卸し効率化を進める
アパレルの需要予測の精度を高める方法として、以下を解説しました。
② SNSとトレンド情報を活用する
③ 予測ツールとAI活用で精度を向上させる
アパレルの在庫管理の成否は、企業の収益性を大きく左右します。本記事で解説した内容を参考に、欠品と過剰在庫のない健全な在庫体制を構築していきましょう。






















