ECにおけるAI需要予測の活用方法とは?メリットや導入手順を解説

ECの在庫管理において、AI需要予測は過去の勘や経験に依存せず欠品や余剰在庫を防ぐ手段として、導入を検討している方も多いのではないでしょうか。

月額数万円から利用できるSaaSも普及し、中小規模の事業者でも手が届きやすくなりました。しかし、いざ導入するとなると自社の運用にどう組み込むべきか迷うところも多いでしょう。

この記事では、導入の前提となるデータ要件とAI需要予測の活用方法について、メリットや具体的な手順を交えて解説します。

目次

① ECの需要予測にAIを活用する4つのメリット
② AI需要予測を活用できるECでの3つの施策
③ EC向けAI需要予測システムの4つの導入ステップ
④ AI需要予測をECに導入する際の注意点

ECの需要予測にAIを活用する4つのメリット

ここからは、実際の業務にAIを取り入れることで得られる具体的な変化を見ていきましょう。

長年の経験と勘に頼ってきた発注作業も、データに基づく予測へ移行することで、在庫の偏りや属人的なミスを防ぎやすくなります。

メリット① 高精度な予測による欠品・余剰在庫の削減

ECサイトの運営において、在庫の過不足は利益を直接圧迫する悩みの種になりがちです。ここをAIに任せることで、過去の販売実績などをベースにした緻密な数量予測が可能になります。

従来の経験や勘に頼った手動での発注作業では、どうしても担当者によって予測のブレが生じてしまいます。AIの学習モデルを活用すれば、各商品の売れ行きパターンを客観的かつ高い精度で計算し、適切な発注量を導き出せます。

これにより、欠品による販売機会の損失を未然に防ぐと同時に、売れ残りによる倉庫の保管コスト増加も抑えられます。まずは現状の在庫一覧を見直し、どの商品でどの程度のロスが発生しているか、一度棚卸しをしておくのがおすすめです。

メリット② 気象・SNSなど多様な外部データとの連携

過去の売上実績をどれだけ分析しても、急な気温変化や突発的なブームによる売上のブレに悩まされることは少なくありません。人の経験則や社内のデータだけでは、どうしても限界があります。

AI需要予測の強みは、天気予報や気温の推移、SNSでの特定キーワードの話題量といった外部データを自動で取り込んで学習できる点です。これらの情報と販売履歴を掛け合わせ、「来週末の冷え込みでこの商品の需要が何%伸びるか」といった複雑な変動を高い精度で導き出します。

これにより、季節商品やトレンドアイテムの急激な需要変化を事前に察知し、的確な在庫補充ができるようになります。まずは自社の主力商品が天候とトレンドのどちらに影響されやすいか、傾向を確認しておくと良いでしょう。

メリット③ 発注業務・在庫管理の自動化と効率化

予測精度の向上は、現場の作業負担を減らす仕組みづくりにも直結します。AIが過去の実績や季節変動をもとに商品の適正な発注数を自動提案するため、これまで数時間かけていた手作業を大幅に短縮できます。品数が増えても計算ミスが起こりにくくなるのは、日々の在庫管理に追われる方にとって非常に心強い変化と言えるでしょう。

とはいえ、すべての発注をいきなりAIに任せきりにするわけではありません。突発的なキャンペーンなどのイレギュラーな場面では、AIの提案値をベースにして人が最終的な微調整を加えます。まずはAIで発注業務の土台を自動化し、浮いた時間を販売戦略の立案など、売上に直結する業務へ振り向けてみてください。

メリット④ ダイナミックプライシング(価格変動)への応用

AI需要予測で得られたデータは、商品の価格を動的に変える「ダイナミックプライシング」にも直結します。

在庫状況や競合の動き、季節性などをAIがリアルタイムで分析し、その時々の最適な価格を自動で算出する仕組みです。閑散期やシーズン終盤には価格を下げて売り切りを早めたり、需要が高まる時期には適正な価格へ戻したりすることで、無理な値引きによる粗利の削りすぎを防ぎます。

とはいえ、価格が頻繁に上下しすぎると、購入時の不信感につながる恐れがあります。そのため、最初は価格変動の上限と下限を設定し、適用するカテゴリを一部に絞るなど、無理のないルールを設計しながら運用を進めるのが安全な方法です。

関連記事:ダイナミックプライシングとは?事例と3つの活用方法を解説

DX/EC支援なら「EBISU GROWTH(エビス グロース)」 資料をダウンロードする

AI需要予測を活用できるECでの3つの施策

メリットが見えてきたところで、実際にどのような場面でAIを組み込めるのか具体的なイメージを固めていきましょう。

日々の運営では、主に3つのシーンで役立ちます。まずは現在の課題に近いものから確認してみてください。

施策① 新商品・季節商品の需要予測

過去の実績データが乏しい新商品や季節商品こそ、AI需要予測が実力を発揮する領域です。今までなら担当者の勘に頼るしかなく、欠品や余剰在庫を抱えやすかった部分ではないでしょうか。

新商品の場合、AIはカテゴリ全体の需要トレンドや、類似商品の初速データを学習して初期の発注量を算出します。季節商品であれば、気象情報やカレンダーといった外部要因を掛け合わせることで、需要のピークと見切りのタイミングを可視化します。

いきなりすべての予測を任せる必要はありません。まずは主力となる季節商品など、一部の対象に絞ってAIの予測値とこれまでの発注量を比較してみるのが手堅い進め方です。

施策② セール・キャンペーン時の在庫最適化

通常期とは異なる急激な需要変動が起きるセールやキャンペーンは、在庫管理の難易度が跳ね上がるタイミングです。ここを見誤ると、せっかくの集客が欠品による機会損失に終わるか、過剰在庫として重くのしかかりかねません。

AIを活用すれば、過去のキャンペーン実績だけでなく、割引率や開催期間、連動する広告の出稿量といった複数の要因を掛け合わせた予測が可能です。まずは直近のセールで特売の目玉にした数品目について、予測値と実際の結果を照らし合わせてみるのが効果的です。

これにより、セール初日に集中しやすい需要の波を事前につかみ、欠品を防ぎつつイベント終了後の不良在庫を抑える適正な仕入れ量を算出できます。

施策③ 返品率の予測と物流リソースの最適化

セールや新商品の販売だけでなく、返品対応もAIの予測が生きる領域です。返品は突発的に発生する印象が強く、現場の負担が見えにくくなりがちではないでしょうか。

AIを活用すれば、過去の購買履歴や商品の特性から、返品率を事前に予測できます。これにより「来週は返品受け取りや検品作業がどのくらい発生するか」をあらかじめ数値化し、必要な作業枠を見積もることが可能です。

返品数が予測できれば、倉庫内の人員配置や再庫入れまでのスケジュールを無駄なく組めるようになります。まずは返品件数がかさみやすい特定カテゴリに絞り、予測と実績のズレを確認する運用を試してみてください。

DX/EC支援なら「EBISU GROWTH(エビス グロース)」 資料をダウンロードする

EC向けAI需要予測システムの4つの導入ステップ

具体的な施策が見えたら、実際のシステム導入に向けて準備を進めましょう。

導入作業は、目的の整理から現場での運用開始まで4つの段階に分けて行います。最初から完璧を求めず、まずは小さな範囲で試していくことが失敗を防ぐポイントです。

ステップ① 導入目的と解決すべき課題の明確化

AI需要予測を導入する際は、最初に「欠品を減らしたいのか」「過剰在庫を圧縮したいのか」といった目的を一つに絞ります。この最初の工程を曖昧にしたままツール選びに進むと、自社の業務に合わず運用が頓挫しかねません。まずは自社が抱えている一番の課題を特定し、方向性を定めます。

目的が決まったら、現在の欠品率や廃棄ロス率、発注業務にかかっている時間などの数値を算出します。導入前の数値を基準として定量化しておくことで、AI導入後にどれくらい改善されたかを正確に測定できるからです。最初は小規模な範囲に限定して、確実な効果検証ができる土台を作っておくと安心です。

ステップ② 過去の販売データ・顧客データの収集とクレンジング

導入の目的が決まったら、AIに学習させるための基盤となるデータを用意します。ECサイトの購買履歴やPOSデータなど、直近2~3年分の実績を集められれば、季節変動も捉えやすくなります。ここは地道な作業ですが、後回しにするとPoC(概念実証)の段階で手間が増えやすい部分です。

集めたデータはそのままでは使えないため、欠損値の補完や重複の削除、半角・全角の統一といったデータクレンジングを行います。表記ゆれが残っていると、AIが誤った規則性を学習して予測の精度が落ちてしまいます。

AIの導入において、このデータ整備は全体の工数の大半を占めることも珍しくありません。まずは自社に蓄積されたデータがすぐ使える状態にあるか、一度棚卸しをしておきましょう。

ステップ③ AI予測ツールの選定とPoC(概念実証)の実施

ツールの選定では、自社のデータ量や必要な予測精度に合わせてサービスを比較します。最近は現場で扱いやすいSaaS型のシステムも増えていますが、気象やSNSといった外部データを取り込めるかが選定時の分かれ目になります。

導入ツールが決まったら、いきなり全社へ展開するのではなく、対象を絞ってPoC(概念実証:AIの試行検証)を実施します。すべての商品を一斉に扱うより、まずは廃棄の多い一部のカテゴリから小さく試すほうが無難です。

PoCの期間は一般的に2〜3か月ほど確保し、AIの予測値と実際の販売実績にどの程度ズレが生じるかを確認してください。この期間にパラメータを細かく調整し、業務に耐えうる精度が出るかを見極めてから本番の運用へ移ります。

ステップ④ 現場オペレーションへの落とし込みと運用開始

PoC(概念実証・効果検証)で手応えをつかんだら、実際の業務フローへシステムを組み込んでいきます。ここは曖昧にすると、せっかく導入したAIが現場で使われずに終わるリスクが高い部分です。まずは特定の商品カテゴリからトライアル運用を始め、担当者が「予測データをどう見て、いつ発注を確定させるか」という具体行動をマニュアル化します。

新しい仕組みを根付かせるには、現場の不安を取り除きながら進めるプロセスが効果的です。運用開始後は、週次や月次で予測値と実際の販売数のズレを振り返る場を設けます。MAPE(平均絶対誤差率・予測の精度を測る指標)を確認し、システムの調整と現場の判断基準をすり合わせながら、対応範囲を広げていく体制を整えましょう。

DX/EC支援なら「EBISU GROWTH(エビス グロース)」 資料をダウンロードする

AI需要予測をECに導入する際の注意点

システムを入れれば自動的に予測精度が上がるわけではなく、いくつか直面しやすい壁があります。

ここを甘く見ると、想定した効果が得られず慌てかねません。データ収集から運用体制まで、事前に確認したい3つのポイントを見ていきます。

学習用データの質と量の確保

AIによる需要予測の精度を上げるためには、ツールの性能だけでなく学習用データの質と量が重要です。ここは導入準備のなかでも意外と見落とされがちで、後からつまずきやすい部分でもあります。

AIが正確な予測モデルを構築するには、販売日時や数量・価格・プロモーションの有無といった過去の実績データが不可欠です。季節による需要の変動を正しく学習させるためには、一般的に過去2〜3年分のデータ量が求められます。

さらに量だけでなく、データの欠損や商品名の表記揺れがないといった「質」も欠かせません。まずは自社のカートシステムや販売管理システムに、いつからどのようなデータが蓄積されているかを一度確認しておきましょう。

AIの予測結果に対する過信と人的判断のバランス

AIの需要予測は強力なツールですが、算出された数値をそのまま鵜呑みにするのは危険です。ここをすべてシステム任せにしてしまうと、思わぬ在庫トラブルを招きかねません。

AIは過去のデータから傾向を導き出しますが、突発的な事象まですべてを織り込めるわけではありません。たとえばSNSでの予期せぬバズや仕入れ先の状況変化などは、AIだけでは予測しきれない部分です。こうしたイレギュラーな要素は、担当者が最新情報を加味して判断する必要があります。

あくまで「AIは精度の高い提案をしてくれるアシスタント」と位置づけるのが運用を軌道に乗せるコツです。最終的な発注量や在庫の調整は、市場の空気や発注条件を知る人間がチェックする体制を残しておきましょう。

運用開始後の継続的なモデルチューニングの必要性

AIによる需要予測は、一度システムを構築して運用を始めれば完了ではありません。ここで放置してしまうと、時間の経過とともに予測が当たらなくなり、現場に混乱を招きかねません。

精度低下の主な原因は、市場環境や消費者トレンドの変化で学習データと実態がずれる「データドリフト」という現象です。これを防ぐには、予測値と実際の販売実績を比較する予実管理を業務に組み込み、定期的にAIを再学習させるチューニング作業が求められます。

近年は、手動での調整だけでなく、自動チューニング機能を備えた予測ツールも登場しています。運用フェーズにおけるメンテナンス体制やベンダーのサポート有無も、あらかじめツールの選定材料に加えておきましょう。

DX/EC支援なら「EBISU GROWTH(エビス グロース)」 資料をダウンロードする

まとめ

ECへのAI需要予測の導入は、欠品や余剰在庫を防ぐだけでなく、日々の発注業務にかかる手間を大きく減らしてくれます。これまで在庫管理に取られていた時間を、本来注力すべき販促企画やサイト改善へと回せるようになるはずです。

とはいえ、いきなり大がかりなシステムを稼働させる必要はありません。まずは「どの商品の在庫切れを防ぎたいか」など、解決したい課題を1つに絞るのが無理なく進めるコツです。そのうえで、過去の販売データが手元にどれくらい残っているかを把握するところからスタートしましょう。

今のデータ状況が分かるだけでも、導入に向けた具体的な道筋ははっきりと見えてきます。勘や経験による業務から抜け出すためにも、まずは簡単なデータの棚卸しから手をつけてみてください。

もし、ECサイトの運営でお悩みのことがございましたら、インターファクトリーのEC支援サービス「EBISU GROWTH」までお問い合わせください。経験が長い、弊社のコンサルタントが貴社ECサイトを成功に導きます。

◆EC支援サービス「EBISU GROWTH」の提供サービス

✓マーケティング
✓サイト構築
✓集客
✓CRM
✓アクセス解析・運用改善提案
✓運用代行・制作代行

サイト分析から、Instagramを使ったSNSの運用まで多くのノウハウがございます。まずは下記サイトをご覧いただき、お気軽に資料請求をしてみてください。

<資料ダウンロード>EC支援サービス「EBISU GROWTH」

セミナー情報

ABOUT US
首藤 沙央里
2019年9月、株式会社インターファクトリーに入社。 マーケティングチームにてオウンドメディア運用を担当し、年間40本以上の記事を掲載。 社内広報、採用広報に加え、EC業界やクラウドコマースプラットフォーム「EBISUMART」についての情報発信も行う。