BtoB向けのECサイト特有の機能の1つに「取引先管理」(または「得意先管理」)があります。取引先管理機能では、1つの企業(会員)に対して複数のアカウント(担当者)を登録でき、取引先企業の申請・承認など、発注の決裁に必要な手続き(承認フロー)も管理することができます。
BtoBの取引では、単価が10万円を超える高額の商品やサービスの注文など、発注担当者の一存で注文を確定できない場合には上司などの承認者に申請し、承認を得てから発注しなくてはなりません。
取引先管理機能を備えたECサイトでは、あらかじめ登録してある取引先企業の承認フローに応じて、発注担当者が注文情報の登録完了ボタンを押下したタイミングで、承認者(例えば発注担当者の上司など)に承認申請メールを自動送信できます。承認者が注文情報を確認して承認ボタンを押すと注文手続きが完了し、この時点でECサイト側の受注が確定します。
この記事ではインターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、BtoB向けECサイトで必要な「取引先管理」機能について解説します。
取引先管理機能では、取引先企業の支店や部署、担当者と担当者ごとの権限を管理できる
冒頭でも紹介したとおり、単価が10万円を超える商品やサービスの取引では社内の承認が必要な企業が多いため、ECシステムでも注文情報を登録する担当者と、承認者を区別して管理する必要があります。そのため取引先管理機能には、以下の項目を持つ「取引先マスタ」(データベース)が必要となります。
◆取引先マスタの主要なデータ項目
②支社/事業所名
③部署名
④担当者氏名
⑤担当者メールアドレス
⑥アカウントの権限
②の「支社/事業所名」は、取引先企業の支社や事業所ごとに調達フローが異なる場合には識別情報として必ず必要となる項目です。
また、⑥の「アカウントの権限」は企業の承認フローによっても異なりますが、一般には次の2つの役割に分けて設定します。
◆アカウントの権限
・承認者:決裁権を持つ担当者。「申請者」の権限に加え、承認、却下、差し戻しなどが可能
ECシステム側は、申請者のアカウントで登録された注文情報を、承認者アカウントで承認されたタイミングで「注文手続き完了」(受注)と判断し、次の工程に遷移します。
ECと基幹、どちらのシステムに取引先管理機能を実装すべき?
新たに取引先管理機能を構築する場合には、どの既存システムに実装すべきか検討する必要があります。候補となるシステムは企業によって異なりますが、必ず候補に挙がるのが以下の2つのシステムです。
◆取引先管理機能を実装するシステムの候補
・基幹システム
取引先管理機能をECシステムに実装する場合は、基幹システム実装する場合と比べ開発コストを大幅に抑えることができます。もちろん、ECシステムの開発費用もそれなりにかかりますが、基幹システムを改修する場合には1桁以上多い開発費用が必要になると言っても過言ではありません。
一方で、ECサイトのリプレースを予定している場合や、ECサイトやECシステムを頻繁に更新する可能性がある場合などは、基幹システムに取引先管理機能を実装しておくことで、都度の改修による影響範囲を最小限にとどめることができます。
取引先管理機能をどのシステムに実装すべきかについては、普遍的な正解はありません。自社のシステム運用方針やメンテナンス計画などを確認して、最適な方法を検討しましょう。
筆者としては特別な事情がない限り、中長期的な運用保守コストの削減効果や変更時の影響範囲の特定しやすさなどの理由から、ECサイトで提供する機能はECシステムに実装することをおすすめします。
承認フロー機能は取引条件によってオン/オフを設定できるようにしよう
BtoBの高額取引では承認フロー機能は不可欠ですが、幅広い価格帯の商品やサービスを取り扱うECサイトでは、少額取引では承認フローを省略したいというケースもあります。
◆取引金額によって承認フローのニーズが異なるケース(例)
・発注担当者の決裁権に収まる少額取引では、承認フロー機能を使用したくない
つまりとあるBtoB企業によっては、大口取引先と小口取引先の両方が存在している場合があるのです。
例えば、上記を実現するためには、取引先管理で使用するデータ項目として、「高額取引/少額取引」を判定するための条件をあらかじめ設定しておく必要があります。
取引先企業の発注パターンを十分に理解した上で、必要なシステム要件を定義しましょう。
自社の営業担当が使用する「代理ログイン機能」
「代理ログイン機能」は取引先企業に委任された第三者が、取引先企業の代わりに注文手続きを行うための機能です。
従来の商習慣として営業担当が御用聞きをして注文手続きを代行するというケースもあるため、ECシステムでは取引先企業と自社の営業担当のアカウントをひも付けて管理し、自社の営業担当のアカウントで取引先企業の注文登録を行えるように権限を設定しておく必要があります。
代理ログイン機能を使用する商談では、営業担当は取引先企業と対面や電話、FAX、電子メール等で商談を進め、取引先企業の稟議が通ったあとで注文登録を行うことが多いため、承認フロー機能は使用しない場合が多いです。
アカウントの管理は取引先企業に任せる
BtoBでは、取引先企業の担当者の変更、退職、また昇進など、アカウントの基本情報や権限の変更が頻繁に発生します。会員データの陳腐化を避けるためにも、ECサイトの運用担当や担当営業が対応するのではなく、取引先企業にアカウントの管理を任せられるように機能と運用ルールを設計しましょう。
◆主要なアカウント管理機能
・権限の変更機能
アカウント管理機能は、「承認者」権限を持つアカウントだけに開放するなど、利用者を制限できるようにしましょう。ECサイトの運用担当や営業担当が都度対応するとなると、メンテナンスのために多くの時間を費やすことになります。また繁忙期にメンテナンスの遅れや漏れがあった場合、取引先企業で注文手続きができないなどの事態につながる可能性もあるため、本機能は必ず用意するようにしましょう。
BtoB向けECサイトには、カスタマイズが可能なクラウド型のECプラットフォームが最適
BtoB向けECサイトの新規構築やリプレースには、カスタマイズが可能なクラウド型のECプラットフォームを採用することをおすすめします。
ECサイト(ECシステム)は変更が頻繁に発生する可能性の高いシステムです。そのため、最新のセキュリティ機能やEC機能のアップデートが定期的に配信されるクラウド型のECプラットフォームを採用することで、システムの保守運用コストを抑えることができます。
また、カスタマイズが可能なサービスであれば、企業ごとに異なる個別のニーズもカスタマイズで実現できます。
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