担当者必見「BtoB-EC連携」の3つの方式を事前に理解する

原材料費や物流コストなどの相次ぐ上昇により、企業を取り巻くビジネス環境は不透明さと不安定さを増しています。このような厳しい環境下では、受発注業務にかかるオペレーションコストを抑えるとともに、現場で必要な取引データを迅速かつ正確に把握し、経営判断や業務の迅速な意思決定へとつなげられる体制を構築しておくことが重要になります。

そのために不可欠となるのが、BtoB-ECサイトと、社内の基幹システム(ERP)をはじめとする各種業務システムとの連携です。

システム間で受注データ、在庫数、取引先情報(与信・顧客マスタ)などをシームレスに同期できれば、手入力や転記作業による人的コスト・入力ミスを削減できるだけでなく、常に最新の取引状況を社内の各業務へリアルタイムで活用しやすくなります。

しかし実際のBtoB取引の現場では、長年にわたって自社固有の商習慣に合わせて改修を重ねてきた基幹システムがそのまま稼働し続けているケースも少なくありません。本来外部システムとの接続を想定して設計されていない基幹システムでは、BtoB-ECとのデータ連携のために大規模な追加開発やデータ変換処理が必要となり、構築・改修コストが高額化してしまう傾向があります。また、システム全体の仕様や処理能力によっては、現場が求めるリアルタイムでのデータ同期が技術的に難しい場合もあります。

BtoB-ECとこうした外部システムを接続する主なデータ連携方式としては、主に以下の3つが挙げられます

① API連携
② ファイル連携
③ DB連携

どの方式を採用できるかは、BtoB-ECシステムと基幹システム双方の技術仕様や、業務上必要とされる連携頻度(リアルタイムかバッチ処理か)、対象となるデータ項目によって異なります。特に既存の基幹システムをそのまま継続利用する場合は、そのシステムが持つ拡張性や連携のしやすさが、BtoB-EC導入後の業務効率化の成否を左右することになります

将来的に基幹システムを刷新したり、BtoB-ECを新規構築したりする際は、単にシステムをクラウド化して移行するだけでなく、APIなどを介して外部システムと自在に接続しやすい柔軟な構成にしておくことが重要であると筆者は考えます。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当する筆者が、BtoB-ECと基幹システムを連携する3つの代表的な方式と、具体的に連携すべきデータ項目、そしてシステム連携プロジェクトを失敗させないための実践的なポイントについて詳しく解説します。

代表的なBtoB-ECの連携方式は3つ「API連携」「ファイル連携」「DB連携」

まずは、BtoB-ECと基幹システム(ERP等)を接続する代表的な3つの連携方式について詳しく解説します。以下の比較表で、各方式の全体像や違いをつかみましょう。

◆3つの連携方式の比較

① API連携 ② ファイル連携 ③ DB連携
連携例 ECで受けた注文を基幹の受注データにリアルタイムで反映し、在庫も即時に引き当てる 受注データや商品データをCSV等でやり取りし、バッチ処理で定期的に取り込む 基幹の販売管理DBとECのDBを直接接続し、受注・在庫・顧客データを統合する
コスト 既存APIを利用できれば抑えやすい。APIの新規開発やデータ変換が必要な場合は高くなる 比較的コストを抑えやすい。ただし、ファイルサーバの運用保守費が別途必要 実装・構築費用、運用保守コストともに高額になりやすい
リアルタイム性 高い(常に最新データを利用できる) 低い(バッチ処理のため定時反映になる) 高い(ほぼタイムラグなしで同期できる)
向いているケース 基幹システムがAPI接続に対応しており、在庫や価格の即時反映が必要な場合 基幹システムがAPI非対応の場合や、大量の取引データを定期的にまとめて処理する場合 API非対応のレガシーな独自基幹システムで、大量データを高速処理したい場合

システム連携における現在の開発潮流としては、「API連携」が主流な方式となっています。ただし、連携対象となる自社の基幹システム側に「API-OUT(外部へデータを自動出力する機能)」の連携インターフェースが備わっていないなど、API方式に対応できない場合はAPI連携を採用することができません。そのようなケースでは、ファイル連携やDB連携といった代替手法を選択することになります。

つまり、どの連携方式が自社にとって最適であるかは、「自社が連携させたい既存の基幹システムや販売管理システムが、どの接続方式に対応しているか」というシステム側の受入条件によって決まるのが実情です。

連携方式① API連携:リアルタイムで最新データを同期

API連携は、システム同士が標準的なデータ形式と通信プロトコル(HTTP/HTTPS、JSONなど)を用いてデータを相互に受け渡す方式です。OSやプログラミング言語が異なるシステム間でもスムーズに接続しやすく、システム拡張性に優れている点が大きな特徴です。

◆API連携のイメージ

API連携イメージ

出典(画像):筆者作成

API連携は、データが発生または必要になった「その瞬間」にシステム同士を連動させやすいため、高いリアルタイム性が求められる業務プロセスに適しています

◆BtoB-ECでAPI連携がよく使われる場面

・注文データを基幹システムへ即時に登録する
・基幹システムの最新在庫数をBtoB-ECへリアルタイム反映する
・取引先ごとの個別契約価格や掛け率をログイン後の注文画面に表示する
・取引先の与信限度額や利用可能枠を注文手続き時にリアルタイム確認する

特に、在庫数や取引先別の個別単価など、ユーザーの「注文手続時点」で最新情報を確認・確定させる必要がある業務において、API連携は高い効果を発揮します。

一方で、APIを提供するサーバに障害やネットワーク不通が発生すると、連携しているシステム全体へ影響が及ぶリスクがあり、仕様変更に伴う定期的なシステムアップデートやメンテナンスも必要となります。また、大前提として「接続相手となる基幹システム側がAPI機能に対応していること」が必須条件となります。

連携方式② ファイル連携:CSVファイルを定期的に受け渡す

ファイル連携は、CSVやExcelなどのデータファイルを、FTP/SFTPサーバなどを介してシステム間で転送・受け渡しする接続方式です。IT業界で古くから用いられてきた方法であり、システム構造や運用設計がシンプルで分かりやすい点が特徴です。

◆ファイル連携のイメージ

CSV連携イメージ

出典(画像):筆者作成

ファイル連携は、一定の時間間隔でデータをまとめて一括処理する「バッチ連携」に適しています。リアルタイム性という面ではAPI連携に劣るものの、連携元となる既存基幹システム側の改修コストを比較的低く抑えやすく、標準のAPI機能を備えていない古い型のシステムとも接続できる場合があります

◆BtoB-ECでファイル連携がよく使われる場面

・ECで発生した注文データを、一定時間ごとに基幹システムへ一括取り込みする
・商品マスタや取引先マスタを夜間バッチで更新・同期する
・取引先ごとの個別価格リストを毎日、または週単位で反映する
・出荷実績データや配送伝票番号をまとめてBtoB-EC側へ書き戻す
・取り扱う大量の商品情報をCSV等で一括登録・一括改訂する

EC上で注文が発生した直後の即時在庫引き当てまでは求められず、数十分〜1日程度の更新タイムラグがビジネス上許容される業務であれば、ファイル連携でも十分な成果を得られるケースが多く存在します。

ファイル連携における注意点は、ファイルの書き出しや取り込み作業を手作業で行ってしまうと、日々の業務が煩雑化し、ヒューマンエラーのリスクが高まる点です。そのため、ファイル連携を採用する場合は、ファイルの転送からシステムへの自動取り込みまですべてのプロセスを自動化することを前提に設計し、人間の手動介入を最小限に留める必要があります。

連携方式③ DB連携:データベース同士を直結する

DB連携は、BtoB-ECシステムと基幹システムなどの外部システムが、相手方のデータベース内に保存された情報を直接参照・更新したり、DB間で必要なデータを直接同期したりする接続方式です。

◆DB連携のイメージ

DB連携イメージ

出典(画像):筆者作成

DB連携では、わざわざ中間ファイルを生成・転送して受け渡すステップを挟まずにデータベースレベルでダイレクトにアクセスできるため、低遅延で大容量のデータを高速処理しやすいという技術的メリットがあります。

基幹システムとBtoB-ECを同一のサーバ環境やプライベートクラウド上で統合運用している場合や、独自のデータベースを駆使する大規模基幹システムなどで採用されることがあります。

◆BtoB-ECでDB連携が使われる場面

・数万点〜数十万点に及ぶ大量の商品・在庫データを高い頻度で相互参照する
・基幹システム側で厳格管理されている複雑な取引先情報、個別契約、価格テーブルを直接参照する
・オンプレミス環境で稼働する独自の基幹システムとBtoB-ECを直結させる

ただし、連携処理の通信スピードが速くとも、それが常に企業にとって最良の選択肢になるとは限りません

DB連携は、接続先となるデータベースのテーブル構造に依存するため、基幹システム側のDB構造がバージョンアップや改修で変更されると、BtoB-EC側の連携プログラムにも修正作業が必要になるという密結合のリスクを抱えています。

また、アクセス制御の権限設計、専用通信経路の敷設、DBへの負荷分散、システム障害発生時のリカバリー手順までをゼロから構築する必要があり、開発費・運用保守コストともに高額になりやすい傾向があります。

例えば、「在庫情報を1日に数回更新できれば十分に業務が回る」というビジネス要件であれば、高速であっても高額なDB連携を構築することは費用対効果が見合いません。まずは自社が求めるデータの更新頻度やデータ量を客観的に整理し、API連携やファイル連携ではどうしても要件を満たせない場合に選択肢として検討するのが、リスクを抑える現実的なアプローチであると筆者は考えます。

自社の基幹システムと業務要件に合わせて連携方式を選ぶ

解説した3つの連携方式は、データのリアルタイム性、開発コスト、既存システムへの影響度、導入後の運用保守の負担がそれぞれ異なります。そのため、単純に処理速度の速さだけで優劣を比較するのではなく、「何のデータを」「どの程度の頻度で」「どれだけのデータ量を連携するのか」という業務要件を社内で明確にした上で、最適な方式を選定することが重要です。

特にBtoB業界では、長年運用されてきたオンプレミス型の古いシステムが現在も稼働しているケースが多々存在します。接続対象となる既存システムが外部との連携を想定して設計されていない場合、利用できる連携方式が制限され、接続のための追加開発費や保守運用に多大なコストが発生してしまうリスクがあります

BtoB-ECとのシステム連携を、一時的な個別開発で終わらせず、将来的な他システムの追加やビジネスモデルの変更にも柔軟に対応できるようにするためには、あらかじめ「外部システムと接続しやすい開かれた連携基盤」を整えておくことが不可欠です。

将来的に基幹システムの全面刷新を行ったり、BtoB-ECを新しく構築したりする際は、単にシステムをクラウド環境へ移行するだけでなく、「APIによる外部接続を前提としたシステム設計」や、「必要なデータを安全かつスムーズに外部へ取り出せるデータ構成」を初期段階から検討しておく必要があります。

こうした拡張性の高い基盤を整えておくことこそが、現場の手作業によるコスト削減にとどまらず、常に最新の取引データを経営判断や現場の迅速な意思決定へフル活用できる環境を構築するための最善のアプローチになると筆者は確信しています。

BtoB-ECで連携する主なデータは7つ

BtoB取引において、BtoB-ECサイトと基幹システムをはじめとする社内外部システムの間で連携すべきデータ項目は、主に7つ存在します。これらを実際の取引プロセスに沿って整理すると、「受注前に必要な3つ」「受注時に必要な1つ」「受注後に必要な3つ」の3つの局面に分類できます。

◆BtoB-ECで連携する主なデータ項目一覧

局面 連携するデータ 含まれる情報
受注前 ① 商品情報 品番、スペック、販売価格、画像、関連資料
② 顧客情報 得意先、担当者、掛け率、与信、承認フロー
③ 在庫情報 在庫数、引き当て状況、入荷予定
受注時 ④ 受発注情報 注文番号、商品、数量、金額、納品先
受注後 ⑤ 出荷・配送情報 出荷実績、伝票番号、納期回答
⑥ 請求情報 請求金額、締め日、請求先、支払期限
⑦ 入金情報 入金日、入金額、支払い方法、売掛金消込

以下に、それぞれのデータ項目の役割と連携の重要性について詳しく解説します。

① 商品情報

品番(SKUコード)、仕様スペック、販売価格、画像など、BtoB-ECサイト上に商品を掲載するための基本データです。基幹システム側では「商品マスタ」として管理されています。

BtoB取引における商品情報はBtoCよりも複雑化しやすい特徴があります。取り扱う品目数が膨大であることに加え、製品のCAD図面や取扱説明書・仕様書といった添付資料、顧客ごとの特注仕様まで含めると、管理すべきデータ範囲は広がります

商品データ量が膨大で、かつ複数の販売チャネルや社内部門で同じデータを使い回している場合は、単なる基幹システムとのデータ連携にとどまらず、商品情報そのものを一元管理する仕組みが必要になるケースが見られます。

② 顧客情報

得意先企業や発注担当者の基本属性データに加え、BtoB特有の取引条件である「顧客別の個別掛け率」「取引単価」「与信限度額」「購買承認フロー」といった高度な情報を含みます。

これらは主に基幹システム側の「得意先マスタ」で管理されており、BtoB-ECとリアルタイム連携させることで、ECサイトへログインした顧客ごとに「その企業専用の正しく適用された契約価格と取引条件」を画面上に自動表示させることが可能になります。

BtoCと大きく異なるのがまさにこの点であり、BtoBでは同じ商品であってもログインする顧客企業によって販売価格や購入条件が変動します。そのため、顧客情報の連携にエラーやタイムラグが生じると、誤った価格での受注という致命的なトラブルに直結するリスクがあります。

③ 在庫情報

顧客が注文ボタンを押した瞬間にシステム上で引き当てられ、常に最新の正確性が求められるデータです。BtoB取引では1回の発注で大量の数量が動くケースが多く、在庫データのわずかなズレが「欠品による出荷遅延」や「実在庫以上の過剰受注」に直結し、事業運営や取引先からの信用に悪影響を及ぼします。

理想としてはリアルタイム性の高いAPI連携等でのデータ同期が望ましいですが、採用するシステム連携方式によっては、日次や定刻ごとのタイムラグを伴う更新運用になる場合もあります。

④ 受発注情報

BtoB-EC上で確定した注文データを、基幹システム側の受注データとして反映させるためのデータです。注文番号、購入商品コード、受注数量、確定金額、指定納品先住所などが含まれます。全7つの連携データの中で、導入による業務改善効果が大きく表れるのがこの受発注情報です。

このデータ連携が自動化されていない場合、受注担当者はECの管理画面に届いた注文内容を目視で確認しながら、基幹システムへ手入力しなければならなくなります。これは受注件数の増加に比例して社内工数が雪だるま式に増大し、入力ミスの発生頻度も跳ね上がります。

「BtoB-ECを導入したのに現場の業務が一向に楽にならない」という不満が生じる主な原因は、従来からの電話やFAXによるアナログな受発注運用をそのまま放置していたり、受発注システム同士のデータ連携が中途半端で手作業の転記が残っていたりすることにあります

逆に言えば、この受発注情報のシームレスな自動連携さえ実現できれば、受注処理業務の大部分を無人化・自動化しやすくなります。システム連携プロジェクトの優先目的である「業務効率化」の核として位置付けられる重要データです。

⑤ 出荷・配送情報

倉庫での出荷処理実績、配送会社の伝票番号、確定納期回答などがこれに該当します。基幹システムや倉庫管理システム(WMS)側で出荷完了処理が行われた結果データを、BtoB-EC側へ書き戻す方向の連携です。

ここが自動連携されていれば、顧客企業はBtoB-ECのマイページ画面上で「自分の発注データが現在どの出荷ステータスにあるか」を24時間いつでも確認できるようになります。ここが連携されていない場合、「商品はいつ届くのか」という問い合わせが営業担当者やカスタマーサポートへ個別殺到することになり、EC導入による省力化・問い合わせ削減効果が薄れてしまいます。

⑥ 請求情報

確定請求金額、請求締め日、請求先コード、支払期限、請求書の発行・送付状況などのデータです。主に基幹システム内の販売管理モジュールや独立した会計システムで管理されています。

BtoB取引では、注文の都度クレジットカード等で決済するBtoCとは異なり、一定期間の取引実績を締め日に一括集約して請求する「掛け売り(後払い)運用」が一般的です。受注や出荷の最新データを会計側へ自動連携させることで、締め日における請求金額の集計作業や、請求書作成に伴う手入力の手間を削減できます

⑦ 入金情報

実際の入金確定日、入金金額、決済方法、未入金残高、請求データに対する「入金消込結果」などの情報です。主に会計システムや債権管理システム内で管理されています。

請求情報と入金情報を相互に連携させることで、銀行口座に振り込まれた大量の入金データがどの請求書に対するものかを突合する「消込作業」や、支払期日を過ぎた未入金企業の特定業務を効率化できます。

入金消込のリアルタイムな進捗状況をBtoB-ECや基幹システムへ反映することで、社内で取引先ごとの最新の売掛債権状況を把握できるようになり、「未入金のまま放置されている企業から追加の注文を自動で受け付けてしまう」といった貸し倒れ回収不能リスクを未然に防ぎやすくなります

連携するデータの性質によっても向いている方式は変わる

すでに解説した3つの連携方式は、接続先となる基幹システム側の対応状況によって選ばれると説明しましたが、連携対象となるデータそのものが持つ性質によっても適した方式は変わります。

最適な連携方式を見極めるための判断基準は、きわめてシンプルに「1つ」です。「そのデータが古いまま画面に表示されたり、反映処理にタイムラグが生じたりした際に、自社のビジネスや取引先との信頼関係へ悪影響を及ぼすかどうか」という観点です。

◆データの即時性で連携方式を選ぶ基準

・即時性が高いデータ(古いままだと事業に直接影響する)=> API連携
・即時性が低いデータ(まとめて更新すれば足りる)=> ファイル連携

なお、DB連携という手段は、「データの即時性要件」だけで選ばれるというよりも、「高速なデータ連携を必要としながらも、接続先の基幹システム側がAPI機能に対応していない場合」の技術的選択肢として検討されるのが一般的です。そのため、ここでは主に「API連携」と「ファイル連携」の2つの軸で整理・判断するのが現実的です。

例えば、「在庫情報」「受発注情報」は、古いデータのまま取引手続きが進行してしまうと、欠品トラブル、過剰販売、出荷指示の混乱、請求処理の遅れといったビジネス障害に直結するため、リアルタイム性に優れた「API連携」で接続するのが基本原則となるでしょう。

一方で、「商品情報」などは、毎日のようにリアルタイムで仕様変更が発生するわけではなく、基本的には「新商品の発売タイミング」や「定期的な価格改定の実施日」などに合わせてデータを一括反映できれば十分であるため、夜間バッチ等による「ファイル連携」でも安定した運用が可能です。

また、「顧客情報」「出荷・配送情報」「請求情報」「入金情報」の4つについては、自社のビジネスモデルや日々のオペレーション運用によって求められる即時性のレベルが変化します。例えば、得意先ごとの個別の取引条件や与信枠を日常的に頻繁に変更する運用であれば即時性が高くなり、一方で月末締めなどでまとめて請求管理を行う運用であれば即時性は低くて済みます。これらは自社の現行の業務フローに合わせて最適な方式を選択します。

このように、BtoB-ECにおけるデータ連携方式の選定は、「① 基幹システム側の受入・接続対応状況」と「② 連携するデータそのものが求める即時性」という、2つの側面から総合的に照らし合わせて決めていくことになります。

連携を失敗させないための5つのポイント

ここでは、BtoB-ECと基幹システム(ERP等)のシステム連携を推進する上で、事前に確認しておくべき「5つのポイント」について詳しく解説します。

採用する連携方式が優れていても、これらの確認事項を曖昧にしたまま開発へ突入してしまうと、プロジェクト途中で想定外の追加開発費用が発生したり、システム稼働後も現場にアナログな手作業が取り残されたりする失敗に陥ってしまいます。

ポイント① 連携先システムがレガシーシステムかどうか確認する

多くの場合、BtoB-ECの連携相手として指定されるのは既存の基幹システムですが、最初に確認しておきたいのが、その基幹システムが老朽化した「レガシーシステム」に該当するかどうかという点です。

長年運用されてきた古い基幹システムには、外部へデータを安全かつ自動で送信するための「API(API-OUT機能)」が用意されていないケースが多く見られます。この場合、リアルタイムでデータを同期できる「API連携」を採用することは不可能です。その結果、選択肢はバッチによる「ファイル連携」か、構築・保守ともに高額なコストがかかる「DB連携」のいずれかに狭められ、システム連携の実現ハードルは高くなります

この老朽化問題は、一部の企業に限られた特殊なトラブルではありません。経済産業省が発表した「DXレポート」では、老朽化したレガシーシステムを無理に保守・運用し続けることによる企業の損失を「技術的負債」と定義し、本来であれば新事業やDX等の攻めのIT投資に回すべき予算とIT人材が、旧システムの維持・保守費に浪費され続けている現状を警告しています。

同レポートの推計によると、2025年には稼働から21年以上が経過した基幹系システムが全体の約6割に達し、こうしたレガシーシステムを放置した場合、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が発生する可能性があると指摘されています。

引用:経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」(平成30年9月)

そのため、BtoB-ECとのスムーズな連携を安定して進めるためには、デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として基幹システムそのものを根本から全社刷新することが求められる場面も少なくありません。

とはいえ、全社基幹システムの刷新はすぐに実行できるものではありません。まずは現実的な第一歩として、自社の現行基幹システムが前述した「3つの連携方式」のうちどれに対応できるかを確認することから着手するのが鉄則です。

◆連携方式ごとの事前チェック項目

・API連携:外部連携用のAPIが用意されているか。用意されている場合、連携仕様書が存在するか。

・ファイル連携:CSVなどの形式でデータを出力/取り込みできるか。バッチで自動実行できるか。ファイル受発信用のサーバを用意できるか。

・DB連携:データベースに直接アクセスできるか。VPNや専用回線などのネットワーク環境を構築できるか。予算とリソースを確保できるか。

なお、これら3つの方式すべてに共通して優先して確認すべきなのが、「その基幹システムを保守・管理しているシステムベンダーが、現在も改修対応できる体制にあるか」という点です。

長年運用されてきたシステムでは、「開発当時の担当社内エンジニアが既に退職している」「システム仕様書や設計書が社内に1枚も残っていない」「システム会社との保守契約が何年も前に終了している」といったトラブルが日常茶飯事として起こります。この場合、技術的な実現可能性を論じる以前に、「コードを触って対応できる人間がどこにも存在しない」という問題に直面することになります。

ポイント② 連携する範囲を先に決める

次に決定すべきなのは、前述した「7つのデータ領域」のうち、どこまでの範囲を連携対象とするのかという業務範囲です。例えば、「受発注情報」だけをAPI連携させれば受注処理自体は自動化できますが、その後の「請求処理」や「出荷通知」が手作業のまま放置されていれば、バックオフィス全体で見た業務効率化のインパクトは限定的なものにとどまります。

一方で、最初から7つのデータ領域すべてを同時連携させようと企てれば、初期のシステム構築費用も開発期間も膨れ上がってしまいます。そのため、ビジネス上の費用対効果(ROI)を踏まえ、優先順位をつけて段階的に連携範囲を拡張していく進め方が現実的かつ安全です。

ただしその場合であっても、「将来的にどこまでのデータ領域まで連携を広げる予定なのか」という全体ロードマップを最初の設計段階で確定させておくことが必要です。

将来的な拡張前提を考慮せずに初期のデータベースやシステムを設計してしまうと、あとから連携範囲を広げようとした際に初期の設計構造が制約となり、システムを一から作り直すような追加改修費用が発生してしまうリスクがあるためです。

ポイント③ データ項目とコード体系の違いを洗い出す

システム連携プロジェクトがストップする原因として特に多いのが、BtoB-EC側と連携先システム側とでデータの持ち方が食い違っているケースです。

◆現場で頻発するデータの持ち方の食い違い例

・商品コードの桁数、使用可能な文字種、採番ルールがシステム間で異なる
・数量単位の表記が異なる(個・ケース・箱・kg・g等)
・基幹システム側(またはEC側)にしか存在しない独自の入力必須項目がある

このようなデータの非互換性がある場合、一方のシステムから吐き出されたデータをそのままもう一方のシステムへ直接流し込むことは不可能です。必ずどちらかのシステム内で、相手方のフォーマットに合わせたデータ変換処理を挟まなければなりません。

ここで問題となるのは「そのデータ変換処理をどのシステム層で行うか」という点です。基幹システム側を改修してEC側のフォーマットに合わせる方法もありますが、基幹システムの改修は全社の他業務へ影響を及ぼすため、変更のハードルやテストリスクが高くなります

そのため、「BtoB-ECサイト側のシステムで、高度なデータ変換処理に柔軟に対応できるかどうか」が成功の決定的な分かれ目となるでしょう。データ変換機能を持たない柔軟性の低いECシステムを採用してしまうと、データ連携のたびに個別追加開発が必要となり、開発費用と工数が積み上がってしまいます。

なお、取り扱う商品データが膨大な量に及び、複数の販売チャネルや社内部門で日常的に使い回されているような企業においては、商品情報そのものを一元的に集中管理する専用の「PIM(Product Information Management:商品情報管理システム)」をデータ基盤として導入することも有効な戦略的選択肢となります。

PIMを利用した商品情報管理の詳細については、ぜひ以下の徹底解説記事もあわせてご一読ください。

関連記事:商品担当者が「PIM(ピム)」を10分で理解するプロの徹底解説

ポイント④ システム連携が止まったときの運用を決めておく

システム連携の運用設計においては、「稼働後に連携処理が何らかの原因で一度は停止する」という事態をあらかじめ想定して運用フローを組んでおくことが重要であると筆者は考えます。

例えば、ファイル連携において夜間に自動実行されるはずだったバッチ処理が何らかのエラーで失敗した場合、翌朝の業務開始までその事実に気付かなければ、昨日の古い在庫数や受注データに基づいて配送業務が進んでしまい、出荷障害が発生します。リアルタイムなAPI連携であっても、ネットワーク通信障害やメンテナンスによってデータが同期されないタイムラグは発生します。

システム連携の運用は、すべてのプロセスが全自動で完結することを前提に設計します。その上で万が一エラーや通信障害が発生した際には、「障害を検知して担当者へ通知する仕組み」と、「復旧後に未送信データを安全に再送する標準手順」をあらかじめシステムと運用ルールの中に組み込んでおく必要があります。障害発生時に人間が手作業でカバーを行う場合でも、その作業範囲は最小限に留める設計にすべきです。

この緊急時の復旧ルールを事前に定義していない場合、トラブルが発生するたびに現場の担当者とIT部門が個別対応に追われ、EC運用の安定性が損なわれることになります。

ポイント⑤ EC側が自社の基幹に合わせられるかを確認する

BtoB-ECのシステム連携において接続相手となる基幹システムは、全社あらゆる部門の基幹業務を支えている企業の心臓部です。そのため、ECサイトの仕様に合わせて基幹システム側を安易に改修することは、コスト面・リスク面から考えて現実的ではありません

したがって、実際のBtoB-EC構築プロジェクトの現場では、「既存の基幹システムの仕様や都合に対して、ECシステム側がどれだけ柔軟にカスタマイズ対応できるか」という構図になります。

この時、導入するECシステム側が対応できる連携方式が限定されていたり、データ変換機能や自社独自の業務フローに対応する拡張性を備えていなかったりすると、連携設計全体がEC側のシステム的制約を受けて頓挫してしまいます。契約前に以下のポイントをECシステム会社へ確認しておく必要があります。

◆ECシステム側の導入前に確認しておきたい評価軸

・API連携だけでなく、CSVファイル連携やDB連携といった多様な接続方式に柔軟にカスタマイズ対応できるか
・データ項目名やコード体系の違いを、EC側で自動マッピング・データ変換できるか
・自社固有の「複雑な承認フロー」「請求締め処理」「顧客別掛け率」といったBtoB商習慣に合わせた柔軟なカスタマイズ調整が可能か

特に近年増えているSaaS型のECシステムの中には、「標準機能の仕様に企業側の業務を合わせること」を前提として設計されているものが少なくありません。そうしたシステムでは、自社固有の柔軟なカスタマイズや基幹連携に対応できないケースがあります。

自社の基幹システム側を変えられない以上、「選定するECシステム側にどこまでの柔軟なカスタマイズ力があるか」こそが、BtoB-EC連携プロジェクトの実現性と成功を決定づける鍵になると筆者は確信しています。

連携を前提にBtoB-ECを選ぶなら「EBISUMART」

原材料費や物流コストの相次ぐ上昇など、企業を取り巻くビジネス環境が不透明さを増すなか、受発注業務の人的コストを最小限に抑え、経営の迅速な意思決定へつなげていくためには、BtoB-ECサイトと基幹システムとの高度なデータ連携が重要な意味を持ちます。

ただし、自社で長年稼働している既存の基幹システムの接続仕様によっては、システム連携のために大規模な追加開発や改修コストが発生してしまうリスクが存在します。

そのため、新たにBtoB-ECシステムを選定する際は、現在の基幹システムとの接続性はもちろんのこと、クラウド基盤や「APIファースト」の設計思想を取り入れ、将来的な他システムの追加やビジネスモデルの変更にも柔軟に対応できる拡張性を事前に確認しておく必要があります。

株式会社インターファクトリーが提供するクラウドEC構築システム「EBISUMART(エビスマート)」は、こうした高度なシステム連携・カスタマイズ要件に対応できるBtoB-EC構築の有力な選択肢です。

EBISUMARTは、常に最新機能へアップデートされるSaaS型でありながら、導入企業ごとの個別要件に合わせて大幅な機能カスタマイズができるよう独自設計されており、従来のフルスクラッチ開発と同規模の高度な個別カスタマイズにも対応可能です。

汎用SaaSのようにパッケージ側の標準仕様へ自社の業務フローを無理やり合わせる必要はなく、自社で長年培ってきた既存の業務フローや基幹システム側の諸事情に合わせてECシステム側を自在に合わせ込む調整が可能です。

そのため、承認フローや締め処理といったBtoB特有の社内運用ルールを崩さずにEC化を実現できます。もちろん、基幹システムとの接続についても、最新のAPI連携から実績豊富なCSVファイル連携まで多角的な方式に標準対応しています。

さらに、EBISUMARTにはBtoB特有の複雑な商習慣に適応できる豊富な機能が用意されています。

◆EBISUMARTのBtoB向け機能(一部)

  • 会員別商品価格
  • 承認制会員登録
  • ロット・入数対応
  • ボリュームディスカウント
  • 得意先管理
  • 法人管理
  • 受注データ管理
  • 見積もり管理
  • 請求管理

既存ECサイトからの大規模なリプレースにおいても、既存基幹システムとの引き継ぎ連携はもちろん、将来的に導入されるシステム(PIMやWMS、新ERP等)との拡張連携まで見据えた柔軟なシステム構成を実現できます

「現在すでにBtoB-ECを運用しているが、基幹システムとのデータ連携が上手くいかず手作業が残っている」「既存システムを改修できずEC化がストップしている」といった課題をお持ちの企業様は、ぜひ下記の公式サイトをご覧いただき、お気軽に資料請求・ご相談をご検討ください。

公式サイト「EBISUMART(BtoB向けECサイト構築・導入)」

セミナー情報

ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。