Amazonは世界一のECサイトであり、Amazon Japanも日本国内で売上高が圧倒的に1位のECサイトですから、マーケティング担当者や新規事業の担当者がベンチマークにすべき企業であるのは当然なことです。
Amazonの2021年の日本での売上高は2兆5,355億円で、2021年のECサイトの売上高ランキング2位のヨドバシカメラのECサイトの売上と10倍近くの差をつけており、今後も国内のECサイトにおいて、Amazonにはライバルすらいないという状況と言えます。
世界市場においても2017年11月に中国企業のアリババに時価総額を抜かれることがあったものの、2022年現在では、やはりダントツの業界トップに君臨しています。
本日はインターファクトリーでマーケーティングを担当している筆者が、ECサイトとしてのAmazonを世界と日本の2つの視点で紹介いたします。
世界の主要国でナンバー1のAmazon
まずは下記主要国のEC市場シェアの表をご覧ください。
下記表参照先(PDFファイル):ジェトロ世界貿易投資報告 2022年版
◆主要国のEC市場における動向
中国を除けばシェアナンバー1はやはりAmazonです。しかも、アメリカ・ヨーロッパなどの西側諸国の国ではシェアはほとんど1位です。
しかし、巨大な中国のECサイト市場では、シェアもたった1.3%(2016年当時)しかありませんでした。
中国では苦戦するAmazon!ついに中国市場から撤退!
中国は世界一の巨大市場です。その中国では「天猫(Tモール)」と「京東(JD.com)」の2大モールでシェアをほとんど握っております。中国政府は2大モールとの関係は良好であり、特に中国でのビジネスでは中国政府との関係が、成功の可否を握っておりますから、国内ECモールが優先されるのは当然でしょう。
そのため、中国でシェアを獲得することができなかったAmazonは、2019年4月に中国市場からの撤退を発表しました。
中国人は検索エンジンでは商品検索をせずに「ショッピングモール」から商品検索を行いますから、先にシェアを奪われたAmazonは、中国市場での巻き返しは困難です。
そして「天猫(Tモール)」を運営するアリババとはAmazonは東南アジアでの激しいシェア争いを展開しております。それについては後ほど解説いたします。
Amazonは日本でも圧倒的にナンバー1のECサイト!
まず、AmazonのECサイト売上のランキングを見てみましょう。以下は2021年度のECサイトの売上ランキングのデータです。
引用:ネット担当者フォーラム「【EC売上ランキング2022年版】1位はアマゾン、2位はヨドバシ、3位はZOZO」
※(*)売上高はインプレス社推定
※(◎)は純粋な売上ではなく、サイト全体の流通総額のケースやグループ会社合計値
このランキングからも、1位のAmazonの売上高は2位から30位までの売上高を合計してようやく並ぶほどです。世界ナンバー1のECサイトのAmazonは日本においても、圧倒的なシェアを握っています。
ですから、Amazon1社の動向が世間に与えるインパクトは強く、もはや社会インフラに近い存在になっているのです。では、日本においてのライバルの「楽天」と「Amazon」はどのような違いがあるのでしょうか?
※楽天は出店形式なので上記のランキングには入っておりません。
日本ではAmazonと楽天はほぼ互角!
まず、先ほどの主要国のEC市場のシェアの表をもう一度見てみましょう。下記の赤枠をご覧ください。日本のショッピングモールもシェアに注目します。
この調査によると、Amazonと楽天のシェアにそれほどの差はありません。数年前までは楽天が日本で1位でしたが、現在はAmazonに1位を奪われております。
◆日本でのショッピングモールシェア比較
2位は楽天 25.1%
3位はYahoo!ショッピング 14.2%
つまり、日本においては「Amazon」も「楽天」も拮抗しているのが現状です。ではAmazonと楽天の違いは何でしょうか?違いをまとめてみました。
Amazonは「出品」で楽天は「出店」
Amazonと楽天の違いを知るには、あなた自身が事業者として考えるのが一番理解が早まります。あなたがスニーカーを販売する会社だったと考えましょう。あなたは売上を拡大するために、ショッピングモールへの出店を考えます。
そのときに候補になるのが「Amazon」と「楽天」です。
Amazonで商品を販売する場合は「出品」という形になります。
楽天は「出店」という形になります。
例えば、ナイキの人気スニーカー「エアジョーダン」をAmazonで検索してみましょう。検索結果画面に大差はなく、どちらも画像一覧がでてきます。
◆Amazonで「エアジョーダン」と検索
◆楽天で「エアジョーダン」と検索
しかし、商品詳細画面の大きな違いがあります。下記をご覧ください。Amazonは全商品同じ画面で、商品のスペックや価格が見やすく、ユーザーにはなじみがありますが、一方、楽天の商品詳細は出店する企業ごとにデザインやレイアウトが異なるため、慣れないユーザーにとっては見にくい、調べにくいといった特徴があるのです。
◆Amazonの商品詳細ページ
Amazonはどのページを見ても同じデザイン・レイアウトで、分かりやすいです。
◆楽天の商品詳細ページ
楽天は、最初に出店者の情報が出てきたり配送情報が商品よりも先に表示されるなど、出品する会社により情報がさまざまです。個々の会社のブランディングやマーケティングが優先されるため、分かりにくいケースがあります。
これはどちらが優れているという話ではありません。ビジネスモデルの違いが商品ページにあらわれているのです。Amazonに出店する場合は「出品」となるため、企業の特色を出せません。ユーザーにとっては「Amazonからの買い物」というイメージになります。
一方、楽天の場合は出店になりますから、ユーザーにとっては「楽天モールの中の特定企業からの買い物」というイメージになります。そのため返品対応やトラブルに関しては、楽天ではなく出店企業が対応するため、Amazonの方が安心感があります。
ただし、楽天はとにかく「楽天ポイント」が溜まりやすいため、ポイント狙いのユーザー(主婦層など)から高い支持を得ており、Amazonと楽天のどちらかを検討する場合は、ターゲット層のITリテラシーを基準に考えると良いでしょう。
Amazonの今後の課題は東南アジア!壮絶なアリババとの世界シェア争い!
2017年11月にアリババの時価総額4,700億ドル(約53兆円)がAmazonを一時、上回る出来事がありました。日本経済新聞によると、アリババは中国や東南アジアでのECサイト市場の好調を背景にした結果と伝えています。
この記事からも分かるように、世界のネット市場でAmazonとアリババは熾烈なシェア争いをしております。その中心舞台は東南アジアです。
Amazonは、ネットリテラシーの高いユーザーの多いインドネシアにおいて、最短1時間で配達するサービスの「Amazon Prime Now」の提供をはじめました。東南アジアで展開するのは初めてのことです。
しかし、ライバルのアリババは「タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナム」で展開している東南アジア最大級のショッピングモールのLAZADA(ラザダ)を10億ドルで2016年に買収しており、先行を許しております。
参考:Amazonも苦戦中。東南アジアのeコマース市場に君臨する「LAZADA」とは?(HARBOR USINESS Online)
しかも、東南アジアには中華系ユーザーが5,000万人おり、アリババグループのショッピングモールには、Amazonよりもなじみも親しみもあるでしょう。
東南アジアの多くの国では、まだまだ物流は整っておりません。今後は両社が物流網を構築し、効率の良い商品の配送の仕組みを作っていくことが、シェア争いの勝者を決めることになるでしょう。