越境ECの市場規模は年々拡大しております。市場拡大のそもそもの要因は、世界中にスマートフォンが普及したことにあります。スマートフォンにより人々は、いつでもオンラインに繋がることができ、ECサイトにより誰でも、いつでも買い物ができるようになりました。
世界中で自国にはない品質の良い商品をECサイトで安く購入する動きが活発となり、越境ECの市場規模は2024年は約152兆円(2024年の年間平均レート:1ドル150.6円換算)と推計され、さらに2034年予想ではおよそ1,012兆円(同レート換算)の市場になると経済産業省の下記レポートに報告されています。
この記事で紹介するデータや図・表は、特に指定がない場合、経済産業省の最新の調査結果より引用:「令和6年度 デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」(経済産業省)
本日は越境ECの市場規模について、インターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者が経済産業省のレポートに基づき越境ECの市場規模について詳しく解説いたします。
2034年には世界の越境ECの市場規模は約1,012兆円に成長する!
まずは世界の越境ECの市場規模を紹介します。下記は2025年8月に経済産業省から発表された「令和6年度 デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」の表に赤字で日本円換算(2024年の年間平均レートの150.6円で試算)を付け加えたものです。
◆世界の越境EC市場規模の拡大予測
中国を中心に越境ECの世界の市場規模は急激に成長すると予測されております。2024年の152兆円から1,012兆円ですから、実に7倍近くの規模になると予測されております。
この背景には、PCとスマートフォンが世界中で普及したことにより、海外の商品であっても、誰でも手軽に購入できるインターネット環境が整ってきたことや、中国人ユーザーの高い消費意欲が世界の越境EC市場を牽引していることが挙げられます。
2024年度の日本・アメリカ・中国の越境EC市場規模
まずは、下記の経済産業省のレポートの図をご覧ください。
◆日米中3ヵ国間の越境EC市場規模(2024年推計値)
※この図の読み方
A国 ← B国(A国の消費者がB国から購入、つまりお金の流れです)
「中国国内から、越境ECで日本から2兆6,372億円購入した」
この図を見ると、日本・アメリカ・中国の3ヵ国間では、日本の商品は越境ECによって、中国・アメリカからの購入金額が多いのに対して、日本から、アメリカ・中国への購入が極端に低いことがわかります。
日本は越境EC市場においては販売国でありながら、日本人は越境ECでの購入が3ヵ国の中で特に少ないのが特徴です。
これは言語による問題や、海外で商品を購入することに抵抗があることが要因です。一方で中国やアメリカからの越境ECによる日本製品の購入額は高く、特に中国からの日本製品の購入額は2兆円を超えており、越境EC市場の大きさが伺えます。
中国人向けの越境ECの動向はインバウンド(訪日外国人旅行者)に関係している!
2019年に日本を訪れた中国からの旅行者は959万人でした。そして中国人訪日旅行者は2014年あたりから、急激に増加していることがわかります。しかし、2020年には107万人、2021年にはさらに減少し4.2万人と、コロナ渦の影響により、かつてないほど落ち込みました。
しかし、2024年においては698万人と見事なV字回復を果たし、インバウンドがコロナ前の水準に戻ってきました。
◆訪日外国人(中国・米国)の推移
かつてのコロナ禍の際には、「インバウンドが減れば、その分、越境ECで買い物する人が増える!」と考える事業者も少なくなかったのですが、実はそう単純な構造ではありません。
中国人旅行者が越境ECを使う理由が、インバウンドと密接な関係があることが調査によってわかっています。下記グラフの青枠の中をご覧ください。
出所:経済産業省「我が国における駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
日本を訪れた中国人の約35%が、自国に戻ってからも越境ECによってリピート購入を行います。さらにそれだけではなく、訪日経験者のSNSや口コミによって、商品の評判が中国国内で広がることも珍しくはありません。
◆中国人が越境ECで日本製品を購入するまでの一例
① 中国人が日本を訪れ、日本の商品を購入
② 中国に帰ってからも、越境ECを使って、中国国内から日本製品をリピート購入
③ 訪日経験のある中国人がSNSや口コミで評判を形成
④ 訪日経験のない中国人も越境ECを使って、日本製品の購入
このような流れで、日本製品のニーズが広がっており、インバウンドが落ち込めば、越境ECにも大きな影響があるのです。ですから越境ECの市場規模は2019年から2021年にかけて伸びてはいるものの、もしコロナ渦の影響がなければもっと伸びていたのではないか?と思われます。
先に述べたように、訪日中国人の人数はコロナ禍前の水準になり、訪日米国人の人数はコロナ禍前の水準をすでに上回っております。それに伴い越境EC市場も急激に伸長するものと考えられます。
中国での主要なECサイト(ショッピングモール)は「天猫(Tmall)」と「京東(JD.com)」「拼多多(pinduoduo.com)」「抖音(Douyin)」の4社
下記は中国のEC市場のシェアを示したものです。中国では「アリババグループ(Alibaba)」、「京東(JD.com)」、そして急激に成長している、2015年開設の「拼多多(pinduoduo.com)」、2016年開設の「抖音(Douyin)」の4社でシュアの8〜9割を独占している状態です。
◆中国における3大EC事業者のシェアの推移(2019年〜2024年)
一般的に中国人は検索エンジンで商品を検索しません。よく使うショッピングモール(アリババグループの「天猫(Tmall)」と「京東(JD.com)」)で商品を検索するのが一般的でしたが、その3強に次いで市場規模を広げてきたのが、「拼多多(pinduoduo.com)」です。拼多多(pinduoduo.com)が成功した要因は
・ターゲットユーザーを低所得者にした
・SNSの要素をECに入れた
・共同購入で安く購入できるようにした
という、今まで1位のアリババグループの「天猫(Tmall)」があまり狙ってこなかったユーザー層に新しい買い物体験を提供したことで、急激にシェアを伸ばしているのです。
そして、近年急激にシェアを伸ばし、天猫、京東、拼多多の3強だった市場に躍り出たのが、「抖音(Douyin)」です。抖音は、いわば中国版TikTokといえる短編動画プラットフォームで、「動画+ライブ配信+決済」がひとつのアプリで完結されている点が大きな特徴です。
中国ではライブ配信で商品を買う文化が既に根付いており、抖音はその流れをプラットフォーム内に完全統合したことで、新しいEC体験をユーザーに提供し、大きな支持を獲得しました。
こういった背景から、中国では自社サイトは普及しておらず日本企業が独自に越境ECを作るよりも「天猫(Tmall)」と「京東(JD.com)」の日本製品専用モールに出店する方が、集客は圧倒的に有利になります。モール出店の場合においても、日本から直送する「直送モデル」と「保税区モデル」の二つがあります。
中国越境ECの2つのスキームの「直送モデル」と「保税区モデル」とは?
中国向けの越境ECの物流についてスキームを組み立てる際、「直送モデル」と「保税区モデル」の2種類を知っておく必要があります。
直送モデル(小規模越境ECの最適)の特徴
・注文があれば、日本から国際スピード郵便(EMS)を使って中国に発送
・小規模の越境ECに向いている
・税関に時間がかかり、商品到着まで10日かかるケースもある
・中国政府が規制する可能性も
・発送費用が高い
保税区モデル(人気商品はこのモデルが最適)の特徴
・中国政府が実験的にはじめた規制緩和の実験区(上海や広州等)
・コンテナ船で商品をまとめて日本から中国に安く輸送
・中国国内の倉庫で商品を保管。
・中国の倉庫から発送するため2日間程度で商品到着
・倉庫使用料や売れ残り商品の日本への返送送料がかかるため、売れ筋商品に最適
・問い合わせ先や返品先が中国だから、中国人ユーザーも安心
保税区モデルは、物流のコストが飛躍的に下がり、しかも中国国内からの発送となるため、商品の到着が早い。さらに中国の2大モールでこのモデルを活用すれば、集客も心配がありません。
しかし、実際には売れ筋商品には「保税区モデル」で、販売数の少ないロングテール商品は「直送モデル」と使い分けているEC事業者が多いようです。
中国とアメリカの主流のEC決済方法とは?
経済産業省のレポートには中国とアメリカの決済方法のデータがありましたので、紹介いたします。
中国の越境EC決済方法は支付宝(アリペイ)等の第三者決済が普及!
◆中国における越境ECの決済方法
中国では不正が多いという理由から、クレジットカードはあまり普及しませんでした。その代わりに普及したのが、キャッシュレス決済の「アリペイ(支付宝)」です。この仕組みについては、以前書いた下記の記事をご覧ください。(このグラフを見ると最近は中国人のクレジットカードの与信枠を持つ方が増えてきた印象です)
アリペイの仕組みはこちら:中国人向けのEC決済システム(中国向け越境EC構築のポイントと実現する3つの方式とは?)
ですから、中国で越境ECでは決済方法に「アリペイ(支付宝)」が使える「天猫(Tmall)」や「京東(JD.com)」などのショッピングモールの方が、中国人ユーザーも安心して商品を購入することができるのです。
アメリカのECサイトの主流決済方法は「クレジットカード」と「デビットカード」
経済産業省のレポートには、越境ECでは限ったものではないですが、アメリカ人がECサイトで使う主要な決済手段のデータがありましたので、紹介します。
◆アメリカのECサイトの決済手段
| 決済手段 | 2015年 | 2016年 | 2017年 |
| クレジットカード | 43% | 47% | 55% |
| デビットカード | 30% | 25% | 25% |
| ペイパル | 14% | 12% | 10% |
| 現金払い | 3% | 4% | 0% |
データ引用:経済産業省「平成 29 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
アメリカは「クレジットカード大国」と呼ばれるくらいですから、ECサイトでも主流であり、2015年以降もそのECサイトでのシェアを高めております。2017年にはデビットカードやペイパル、現金払いのシェアが下がっております。
最近,中国の「アリペイ(支付宝)」や「Wechat Pay」が第三者決済サービスとして注目を浴びていますが、世界最大の第三者決済サービスはPaypalであり世界のイーコマース決済の10%のシェアを持っています。
中国人・アメリカ人が越境ECを使う理由とは?
それでは、中国人とアメリカ人が越境ECを使う理由のデータがありますので、まずは下記グラフをご覧ください。
◆中国人が越境ECを使う理由
◆アメリカ人が越境ECを使う理由
中国もアメリカも、低価格という理由は上位ですが、中国人が越境ECを使う理由の一番は「商品の品質が保証されているから(正規品)」というのは、偽物が多く出回る中国ならではの理由です。
日本の事業者が越境ECを始めるのは実はカンタンな理由とは?
日本商品はあらゆるジャンルで世界中から人気があります。また、コロナ禍においてなかなか日本に来日できない外国人から、日本への海外旅行や日本製の商品を求める声は日増しに大きくになってきております。しかも、2024年現在も続く円安傾向が、その思いに拍車をかけています。
そのような外国人に対して越境ECを検討する際は、ECサイトにおいて外国語対応、決済、配送を考えなくてはなりません。しかし、越境EC対応サービスをECサイトに導入すれば、すぐに越境ECを始めることができます。
なぜなら越境EC対応サービスを導入すれば、自社ECサイトに訪れた海外ユーザーに対してのみ、ポップアップ画面を自動的に表示します。海外ユーザーは英語や中国語で表記されたポップアップをクリックし、代行購入を依頼します。
そしてECサイトで越境EC対応サービスのスタッフが代理購入を行い、海外ユーザーに対しての支払いや配送など全てを代行してくれるのです。
越境ECに取り組んでいる(計画している)国内企業は約6割に!
PayPal社によると、日本国内の中小企業で、すでに越境ECに取り組んでいる、あるいは計画していると回答した企業は58.7%と、6割近くの企業が意欲的に取り組んでおり、コロナ禍を経て、今後も参入企業が増えていくと考えられます。
下記記事でも触れておりますが、もし現在、越境ECへの参入を技術面や人的リソースで躊躇しているのであれば、上で述べたような越境EC対応サービスを活用して積極的に導入していくべきでしょう。
海外転送サービスの利用を検討している方へ
海外転送サービスを利用して越境ECを始めたいとお考えの場合は、インターファクトリーが提供するECプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」も他社とあわせてご検討ください。EBISUMARTでは、標準機能として実装されている海外転送サービス「WorldShopping BIZ for EBISUMART」や、その他の提携サービスを利用して越境ECサイトを運営できます。
参考: 「EBISUMART(エビスマート) - 提携サービス - 越境EC」、「WorldShopping BIZ(株式会社ジグザグ)」
EBISUMARTの海外転送サービスや、国内・海外向けECサイトの開設について相談したい方は、以下の公式ホームページからお問い合わせください。
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