「大規模サイト」とは、単にページ数やコンテンツが多いだけのWebサイトを指すわけではありません。もちろん、ページ数やコンテンツの規模も大規模サイトを構成する要素の1つにはなり得ますが、それよりも、「運用体制の規模と複雑さ」が大規模サイトの最大の要素である、と筆者は考えています。
近年は高性能CMSやAIライティングツールが普及しており、それらを使えば個人がレンタルサーバ上に1,000ページを超えるWebサイトを構築することができます。しかし、そうしたWebサイトをエンタープライズ系の大規模サイトと同じ軸で語ることはできないでしょう。
そこで筆者は、例えばYahoo! JAPAN、ZOZOTOWN、楽天市場、ビックカメラ、ニトリ、NHKオンラインなどのように、サイト運営に大勢の人員が携わっており、システム構成が複雑で、1日あたりのトラフィックが著しく多いWebサイトを「大規模サイト」と定義しています。そのため、広告費を除くシステム運用費用(システム維持費+人件費)も大規模サイトを判別する目安の1つとなります。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当する筆者が、大規模サイトの3つの条件と運営における5つのポイントを解説します。
この記事における大規模サイトの定義
「大規模サイト」という言葉が指す具体的な条件についての普遍的な定義はないため、この記事では、下表の3つの条件のうち1つ以上該当するWebサイトを「大規模サイト」と定義することにします。
◆大規模サイトの条件(3つのうち、1つ以上該当すること)
条件 | 説明 | 例 |
①サイト運営に携わる人員が多い | 数十~数百人の人員が運営に携わっているWebサイト | 大規模ポータルサイト(Yahoo! JAPAN、MSN など) |
②システム構成が複雑である | 複数のサーバを使用して高度なシステム機能や外部連携機能を備えているような、複雑なシステム構成のWebサイト | Google、Amazon、楽天市場、ZOZO、IBM公式サイト など |
③1日あたりのトラフィックが著しく多い | ニュースサイトやポータルサイトなどのように更新頻度が高く、ピーク時の同時アクセス数や1日あたりのトラフィックが著しく多いWebサイト(例えば1日100万セッション超 など) | Yahoo!ニュース、BBC、CNN など |
出典:筆者が独自に作成
上表①~③の条件に該当するWebサイトでは、「システム維持費+人件費」だけで年間数億円規模となるケースが多いため、広告費を除いたシステム運用費用(システム維持費+人件費)も大規模サイトの1つの基準となります。
「中規模サイト」と「大規模サイト」の運営事例
筆者はこれまで、複数の企業でさまざまなWebサイト運営に携わってきました。それらの中から、今回は「中規模サイト」と「大規模サイト」の経験を具体的な事例として紹介します。
「中規模サイト」の事例
筆者が在籍していた全国チェーンの大手英会話スクールのWebサイトの事例です。同社は、数千ページに及ぶWebサイトを20年以上にわたって運営していました。有名企業のWebサイトなので「大規模サイト」のようにも思われるのですが、前述の大規模サイトの3つの条件には1つも該当しないことから「中規模サイト」に分類しました。
同社のWebサイトは、まず、サイト運営に携わる人員(条件①)が10名以下でした。次に、システム構成(条件②)は、当時はスクラッチで開発したCMSや入力フォームなどで構築されていたためシンプルとは言えませんでしたが、社内のインフラチームが他の業務の片手間でメンテナンスできる程度の規模でした。最後に、1日あたりのトラフィック(条件③)は1日数万セッション程度と一般的なサーバ構成で十分に処理できたため特別なトラフィックコントロールが不要でした。
また、当時サイトの運営費用の多くを占めていた「広告費」を除いた「システム維持費+人件費」は年間数千万円の範囲に収まっていましたから、この規模のWebサイトは「中規模サイト」に分類するのが適切であると判断しました。
「大規模サイト」の事例
筆者が20年ほど前に在籍していた、外資系の大手SIer企業のBtoB向けWebサイトの事例です。
同社のWebサイトは、前述の英会話スクールよりセッション数は少なかった(条件③)のですが、サイト運営には国内だけでも20~30の部門の100人以上のマーケター、デザイナー、エンジニアなどの人員が携わっていました(条件①)。また、国内外の複数のシステムと連携した非常に複雑なシステム構成だったため、大規模かつ高度な体制で運用されていました(条件②)。
この事例は、大規模システムの3つの条件のうち①②の2つに該当することから、明らかに「大規模サイト」であると判断できます。
1日あたりのトラフィック(条件③)だけが該当しなかった上記の事例とは逆に、例えば人気のゲームやアイドルなどの公式サイトの中には、1日あたり100万セッションを超えるアクセス数が発生するWebサイトもあります。
そのようなWebサイトでは、総ページ数が少なくシンプルなシステム構成であったとしても、常時高負荷のシステム環境下で、ログインや決済などの手続きが処理可能なサーバ構成とトラフィックコントロールが不可欠なため、「大規模サイト」であると判断できます。こうしたWebサイトでは、広告費以外の運営費用が年間数億円規模に達しているケースがほとんどでしょう。
大規模サイト運営における5つのポイント
複雑なシステム運用と多くの人員が求められる大規模サイトを効率的に運営していくためには、次の5つのポイントを押さえる必要があります。
◆大規模サイトの運営における5つのポイント
ポイント② カスタマイズが可能なプラットフォームの採用
ポイント③ 外部システムとの柔軟な連携
ポイント④ 負荷分散とスケーリングの設計
ポイント⑤ PIMの導入
それでは、一つずつ解説します。
ポイント① エンタープライズCMSの導入
大規模サイトのコンテンツの制作・運用では、社内の複数の拠点や部門、社外のパートナー企業が関わるケースが一般的です。そのため、大規模サイトではコンテンツをただ更新するだけのツールではなく、例えば「Adobe Experience Manager」のように、詳細な設定が可能なワークフローや権限管理、多言語対応などの機能を備えたエンタープライズCMSの導入が不可欠になります。
ニュースサイトやポータルサイトの場合には、1日に数十〜数百件もの記事ページが更新されますので、リリースの承認や差し戻し、更新履歴の管理などの機能があれば、記事の更新・リリース業務の品質とスピードを両立できます。また、コンテンツの再利用やテンプレート化による業務の標準化も進めやすくなり、運営コストの削減にもつながります。
エンタープライズCMSは、大規模サイトに欠かせない情報管理システムと言えるでしょう。
ポイント② カスタマイズが可能なプラットフォームの採用
激しく変化するビジネス環境に対応していくためには、Webサイトも柔軟にカスタマイズしていく必要があります。そのため、機能追加や外部連携も手軽に実装できる柔軟かつ高機能のプラットフォーム上でWebサイトを構築・運用していくべきです。
カスタマイズ可能なクラウド型の高機能のプラットフォームを採用することで、機能追加や既存機能の改修も迅速に行えるようになるため、変動するビジネス戦略に応じたWebサイト運営が行えるようになります。
例えばECサイトの場合、AIチャットボットやレコメンドエンジンなどの外部ツールをいち早く実装してUXを改善することで市場における競争優位を獲得できます。
ポイント③ 外部システムとの柔軟な連携
大規模サイトは、単独のCMSなどの管理画面だけで運用されることはほとんどありません。基幹システムや社内ポータルに加え、SaaS型のマーケティングツール、カスタマーサポートプラットフォーム、データ分析基盤など、多岐にわたるシステムと連動しながら機能します。
このとき求められるのが、異なるシステムとスムーズに接続できる柔軟性です。API連携を活用すれば、比較的簡単にシステム連携を実施できるため、業務の自動化と情報の一元化が進み、人的作業やミスを大幅に減らすことができます。また、新しいツールやサービスを追加する際に大規模な改修が不要となるため、事業戦略や組織体制の変化に素早く対応できます。
特に、オムニチャネルやOMO(Online Merges with Offline)を実践する大手小売や大手EC事業者においては、データ連携をスムーズにする必要があり、データ基盤がレガシーシステムの場合やAPI連携が難しい場合には、要件や機能を実現することが困難になります。
市場環境や競合環境は日々変動するため、外部システムとの連携に対する柔軟性はシステムにおける重要な要素となります。
ポイント④ 負荷分散とスケーリングの設計
ポータルサイトやニュースサイトなどでは、特定の時間帯やイベント時にアクセスが集中し、瞬間的にシステムの負荷が急増することがあります。そのような場合でもWebサイトで安定したサービスを提供するためには、高負荷時に適切に負荷分散し、サーバの処理能力を拡張できるようにスケーリング設計を行う必要があります。
負荷分散では、複数のサーバにリクエストを振り分けることでサーバ1台あたりの負荷を軽減します。スケーリング設計では、アクセス量の増減に応じて自動でサーバを拡張/縮小してくれるオートスケーリングという機能を使用することで、安定したサービス提供とコスト最適化を両立できます。
適切な負荷分散とスケーリング設計は、短時間も膨大なアクセスが発生するシチュエーションで特に効果を発揮します。そのため、トラフィックの多い大規模サイトにとって、機会ロスを防ぎ、顧客満足を維持するためには、必ず押さえておかなければならないポイントとなります。
筆者が以前在籍していたある企業のECサイトでは、当時は負荷分散とスケーリングが考慮されていませんでした。そのため、同社の商品が人気テレビ番組で紹介された際にアクセスが集中してWebサイトがダウンし、放映中から放映直後の最も大きな売上が期待された絶好の販売機会をみすみす逃してしまう結果となりました。
Webサイトの規模に関わらず、メディア露出やキャンペーンなどでサイトアクセスの急増が予想される場合には、事前に負荷分散とスケーリングの設計を見直し、不足がある場合には対策をしておくようにしましょう。
ポイント⑤ PIMの導入
特にECサイトやメーカーサイトなどの大規模サイトでは、自社の商品やサービスに関する多種多様で膨大な情報を管理しなければいけません。
商品情報は、テキスト、仕様、画像、動画、価格、在庫情報など多岐にわたるうえ、複数の部門や販売チャネルで利用されるため、一元管理された正確かつ最新の情報を、各部門や販売チャネルが手軽に利用できる状態で迅速に配信できるか否かが、「業務効率」と「顧客体験」に直接影響します。
従業員が数千人以上の大企業では、膨大な商品情報の中から自分たちが使うものだけを部門や個人が個別に管理していることも多いため、1つの情報に対して複数のバージョンが存在しているケースがあります。同じサービスや商品について、部門や担当者によって配信する情報が異なることで、複数の窓口を利用しているお客様の不信を買い、知らないうちにブランドに対する信頼を毀損してしまっている場合があります。
PIM(Product Information Management:商品情報管理)は、あらゆる商品情報を一元的に管理・運用するための仕組みで、PIMに登録した商品情報をマスタとして、ECサイト、スマホアプリ、ECモールといった複数の販売チャネルに、商品情報を自動で配信できます。情報更新はマスタだけで行えばいいため、データ更新作業が飛躍的に向上します。また、データを利用する人はPIMにアクセスするだけで最新のデータを取得でき、個別のデータ管理や必要なデータ情報を収集するなどの作業が不要になるため、作業時間が大幅に短縮できます。
PIMを使用しない場合のデメリットとしては、以下が挙げられます。
◆PIMを使用しない場合のデメリット
・チャネル間で配信する情報や訴求内容にズレや不整合が生じやすくなる
・正しい情報を取得するまでに時間がかかり、販売機会を逃す可能性が高くなる
・商品点数や関連情報が増えることで、情報管理のコストとミスのリスクが増加する
特に、大規模ECサイトや複数ブランドを展開している企業、製品ラインナップの多いBtoBサイトなどでは、PIMの有無が業務効率と売上機会に大きく影響します。
PIMの導入を検討されている場合には、インターファクトリーの「EBISU PIM(エビス ピム)」をおすすめします。サービス内容や資料請求などについては、以下の公式サイトをご覧ください。
大規模サイトの主要なSEO施策は2つ
現在のSEOではE-E-A-T(イーイーエーティー)が特に重要視されています。
◆E-E-A-Tとは?
Expertise(専門性):特定分野における高度な知識やスキルを持っていること
Authoritativeness(権威性):業界や分野における信頼性や影響力を持っていること
Trustworthiness(信頼性):情報が信頼できること
参考:Google 検索セントラル ブログ「品質評価ガイドラインの最新情報: E-A-T に Experience の E を追加」
SEOで最も重要される要素は権威性(Authoritativeness)です。大規模サイトは知名度とブランド力が高く、権威性が強いため、大規模サイトでは特別なSEO対策をしていなくても、圧倒的に有利な状況にあります。
このような背景を理解したところで、大規模サイトにおける2つの主要なSEO施策を紹介します。
SEO施策① WebページのUI改善
WebページのUIを徹底的に改善してユーザーが使いやすいサイトにしましょう。Googleの検索アルゴリズムには「QualityBoost(クオリティブースト)」と呼ばれるシステムが組み込まれており、QualityBoostでは、UIもSEO評価の対象に含まれます。そのため、例えば以下のようなポイントを押さえておくと良いでしょう。
◆QualityBoostによるUIの評価ポイント(例)
・見出しが分かりやすく設置されているか?
・リンクが分かりやすく設置されているか?
・フォントが小さかったり見にくかったりしていないか?
・関連トピックスとWebページの内容が合っているか?
上記以外にもさまざまな項目が挙げられますが、例えばサイト速度の改善もUIの評価につながります。つまり、ユーザーが使いやすいサイトは、SEOでも評価されるというわけです。
そのため、アクセス数が多くSEOの収益が売上に直結するような、SUUMOやHOMESなどの大手不動産サービスサイトでは、WebページのUIチューニングを徹底しています。このことからも、WebページのUI改善がSEOにおける重要な施策であることが分かるでしょう。
SEO施策② オウンドメディア施策
大規模サイトは大手企業が運営しているケースがほとんどなので、Webサイトのドメインの権威性も高く、特別なSEO施策をしなくてもSEOに強い状態にあります。
そのような強いドメインの配下で、オウンドメディアを運用することで、SEOで検索上位を独占し、多くの集客が期待できます。
以下は「扇風機 おすすめ」というSEOキーワードの検索結果画面です。
◆Googleで、「扇風機 おすすめ」のキーワードで検索した結果画面
引用(画像):Googleの検索結果画面、赤枠は筆者が加筆
図の赤枠で囲っているものが大手企業のオウンドメディアなのですが、検索結果の上位に表示されています。
Webサイト内に品質を確保したオウンドメディアを設置することで、売上につながりやすいキーワード検索でもSEOの上位に表示される可能性が高くなるのです。
かつては、Webに強い一部の企業だけがオウンドメディアを運営していた時代もありましたが、今は大手企業も積極的にオウンドメディアを運営しており、小規模サイトにがSEOで優位に立つのは難しくなってきています。
大規模サイトも定期的に「リニューアル」が必要になる
これから大規模サイトを構築する場合には、サイト公開から3~10年後に必要になるリニューアルについても考慮しておく必要があります。
Webサイトは年数の経過とともに以下のような問題が発生します。
・デザインの陳腐化:デザインやUI/UXのトレンドや標準は進化するため、古くなったデザインはユーザーの離脱要因となります。
・システムの陳腐化:古いCMSやフレームワーク、プラグインなどは、サポートが終了したり新しいシステムに対応できなくなったりする可能性があり、機能制限やセキュリティのリスクが高まります。
・サイト運営の属人化:特定の担当者や外部ベンダーに依存しすぎると、異動や退職、契約終了時にサイト運営のノウハウが流失してしまいます。
こうした問題を回避するために、定期的なサイトリニューアルが必要になります。そのため、大規模サイトを構築する際は将来のリニューアルのことを考慮し、以下に対応したシステムを設計するようにしましょう。
◆リニューアル時に困らないWebサイトを構築するためのポイント
・CMSの柔軟性が高いこと:テンプレートやコンポーネントの差し替えが容易で、新しいデザインや機能に素早く対応できる。
・API連携が可能であること:既存システムや外部サービスとの連携に柔軟に対応でき、リニューアル時もデータの移行や機能を再利用がしやすい。
・クラウドサービス(AWS、GCP、Azureなど)を基盤としていること:サーバの増強/縮小が容易にできる。クラウドサービスの最新のセキュリティ環境や機能を利用できる。
大規模サイトを構築する際は、「現在の要件を満たす」だけではなく、将来のリニューアルを考慮したうえで、拡張性のあるシステムを構築しましょう。
古い商品情報をどう管理するか?
大規模サイトでは大量のデータを管理しているため、古くなった商品情報をどのように管理していくかについて、あらかじめ考えておくことが重要です。PIMの導入と合わせて、削除ルールなどを定め、適切に運用していきましょう。
まとめ
大規模サイトでは、複雑なシステム運用をいかに効率化できるかが鍵となります。特に大規模ECサイトの運営では、PIMを導入することで大幅な業務効率化が可能になります。
インターファクトリーでは、統合管理された商品に関するコンテンツをさまざまな販売チャネルに配信し、販売チャネルごとで最適な形で利用できる、商品データ統合プラットフォーム「EBISU PIM(エビス ピム)」を提供しています。
現在PIMの導入を検討されている場合は、以下の公式サイトで資料請求もできますので、ぜひアクセスしてみてください。