ECサイトの決済手段として、クレジットカードや電子マネーと並び、商品が届いてから支払う後払い決済の導入が進んでいます。
カゴ落ちを防ぐ有効な手立てとして注目される一方で、いざ自社の仕組みに組み込むとなると、手数料やシステム連携で迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、多様化する決済ニーズを背景に、ECサイトへの後払い決済の導入手順について、メリットや選び方を交えて解説します。
ECサイトに後払い決済を導入する3つのメリット
決済方法の選択肢を広げることは、より多くの方に購入へ進んでもらうための具体的な手段となります。
後払い決済の仕組みを新たに取り入れることで、どのような変化が期待できるのかを3つの視点から見ていきます。
メリット① カゴ落ちの防止による売上向上
せっかく商品をカートに入れても、最後の決済画面でサイトから離脱されてしまう。この「カゴ落ち」は、集客にかけたコストや労力を無駄にしかねない悩ましい問題です。
離脱の大きな原因の1つが、希望する支払い方法がないことです。特に初めて利用するサイトでは、クレジットカードの情報を入力する手間に抵抗を感じる方が少なくありません。ここで後払い決済の選択肢を用意しておけば、商品を確認してから支払いたいという心理に寄り添い、スムーズに購入完了まで導くことができます。
カゴ落ちを防ぐことは、すでに購入意欲が高まっている方を確実に取りこぼさないための堅実なアプローチと言えます。まずは決済画面の選択肢を見直し、購入の障壁を取り除いていくことが一つの判断軸になります。
メリット② クレジットカード非保有層の新規顧客獲得
カゴ落ちを防ぐだけでなく、そもそもクレジットカードを持たない方を取り込めるのも後払いの強みです。
株式会社ジェーシービーの調査によると、国内のクレジットカード保有率は85%です。言い換えると、残りの15%にあたる層はカード決済を利用できません。
出典:PR TIMES「JCBがキャッシュレスに関する総合調査の結果を発表」(2026年2月5日発表)
運営するサイトがカード決済のみの場合、こうした方を入り口で逃しているかもしれません。ここは意外と見落とされがちなポイントです。
後払い決済なら事前のカード発行が不要で、到着後にコンビニなどから現金で支払えます。メインの購入層に若年層が含まれているなら、導入による恩恵はより大きくなるはずです。
メリット③ 商品確認後の支払いによる顧客の安心感醸成
初めて利用するサイトでは、商品が本当に届くのか、写真通りのものが来るのかといった不安がつきまといます。ここで後払いという選択肢があれば、実物を手元で確かめてからお金を払えるため、購入に対する心理的なハードルが大きく下がります。
特にアパレルや高価格帯のアイテムを扱う場合、実物を見られないネットショッピングの弱点を補う手段として有効です。また、クレジットカード情報の入力をためらう方にとっても、身近なコンビニなどで後から支払える仕組みは大きな安心材料になります。扱っている商品が、購入前に実物確認のニーズが高いジャンルかどうかを一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
ECサイトに後払い決済を導入する際の3つの留意点
売上拡大の利点がある一方で、いざ運用を始めると新たなハードルも見えてきます。特に手数料の負担や日々の確認作業は、想定外の手間になりやすい部分です。
あらかじめ費用や審査落ちへの対応手順を整え、導入後の混乱を防ぎましょう。
留意点① 決済手数料や月額費用のコスト負担
メリットが大きい後払い決済ですが、導入する際は出ていくお金も押さえておく必要があります。ここを見落とすと、手元に残る利益が想定より少なくなりかねません。
後払い決済の費用は、主に「月額固定費」「決済手数料」「請求書発行手数料」の3つです。決済手数料の相場は3〜5%台ですが、1件あたり200円前後かかる請求書の発行手数料も、件数が重なると大きな負担になります。まずは自社の月間注文件数と平均単価を出し、固定費と手数料のどちらを抑えるべきか、概算で良いので一度試算しておきましょう。
留意点② 請求書同梱や入金確認の業務負荷
コスト面の次は、日々の運用でどれだけ手間が増えるかという実務の壁です。ここを軽視すると、現場のスタッフに想定以上の負担を強いることになります。
後払い決済では、商品と一緒に請求書を入れる同梱方式か、後から郵送する別送方式のどちらかを選択することになります。同梱は郵送代を抑えられる反面、梱包時の確認作業が一つ増えます。別送を代行会社に任せれば手間は省けますが、その分手数料が上乗せされる仕組みです。
購入者からの入金確認や未払い時の督促も日々の業務に加わります。これらを自社で抱え込むと、本来の販売業務に支障が出かねません。請求書の発行から入金管理まで丸ごと任せられる代行サービスを軸に、今の出荷フローをどこまで維持できるか一度確認してみてください。
留意点③ 審査落ちによる注文キャンセルへの対応
後払い決済は注文ごとに与信審査があり、入力不備や過去の未払い履歴などで審査に落ちるケースが発生します。せっかく購入ボタンを押してくれた人をここで手放すのは、非常にもったいないです。離脱を防ぐには、審査に落ちたあとのフォロー体制をあらかじめ決めておく必要があります。
カートシステム連携でリアルタイム与信を導入し、エラー画面からクレジットカードや代金引換などへその場で誘導するのが効果的です。自動キャンセルで終わらせず、「別の方法なら今すぐ買える」と道筋を示すことが売上を守る防波堤となります。
リアルタイム判定が難しい場合は、別の決済方法を促すメールを自動送信し、一定期間変更がなければキャンセルとするルールを整えておきましょう。
EC向け後払い決済サービスの比較ポイント
留意点を押さえたら、どの代行会社へ依頼するかが次のステップとなります。
今の環境によって適したサービスは変わるため、手数料の安さだけで決めるのは避けたいところです。比較の軸となる5つの基準を順番に確認します。
自社のECカート・システムとの連携可否
後払い決済を導入する際は、現在使っているECカートとどう連動できるかが重要な判断基準になります。ここを後回しにすると、本格稼働したあとに毎日の作業に追われて慌てかねません。
決済サービスとの連動方法は、主にAPI連携とCSV連携の2種類です。API連携なら注文情報から配送伝票番号まで自動でやり取りされるため、日々の作業負担を大きく減らせます。一方、CSV連携の場合は手動でデータを書き出して読み込ませる作業が発生します。
使っているECカートによっては、希望する決済サービスとのAPI連携に対応していない場合もあります。まずは利用中のシステムの設定画面から、どの決済手段が自動連動の対象かを確認してみてください。
決済手数料と初期・月額費用のバランス
後払い決済の導入には、一般的に初期費用や月額固定費のほか、1件ごとの決済手数料や請求書発行手数料がかかります。決済手数料の相場は2.5〜5%程度ですが、選ぶサービスやプランによって設定は大きく異なります。ここで費用体系を見落とすと、想定以上に利益が残らないという状況になりかねません。
初期費用や月額費用が無料のプランは、手軽に始められる反面、決済手数料が高めに設定されるのが一般的です。一方で月額費用が固定でかかるプランは、決済手数料が安く抑えられていることが一般的です。まずは自社サイトの月間注文件数や平均客単価の予測をベースに、どの組み合わせが最もトータルコストを抑えられるか、概算で良いので一度試算しておきましょう。
未払いリスクの100%保証の有無
代金の回収漏れは、事業を運営する上で最も避けたい事態の1つです。後払い決済を導入する際は、この未払いリスクを代行会社がどこまで負担してくれるのかを必ず確認しておく必要があります。
現在提供されている主要な代行サービスでは、事前の与信審査を通過した取引について、未払いリスクを100%保証する仕組みが一般的です。万が一買い手が支払いを遅延したり未払いになったりしても、代行会社から商品代金が立替払いされます。
ただし、保証の適用には条件が設けられていることも少なくありません。発送伝票の控えの保管義務や、指定の配送方法の利用といった細かなルールを満たしているかどうかが、いざというときの明暗を分けます。
入金サイクルの早さとキャッシュフローへの影響
売上を順調に伸ばせたとしても、手元にいつお金が残るのかは、日々のサイト運営を左右する大きな要素です。ここを見落とすと、売上はあるのに手元資金が足りないという事態を招きます。実際の入金サイクルは、「15日締め末日払い」や「月末締め翌月末日払い」など、サービスによって大きな幅があります。
後払い決済は事業者が代金を立て替えますが、入金サイクルが遅いと仕入れ代や広告費の支払いが先行し、一時的に資金繰りを圧迫します。普段の出費のタイミングと照らし合わせ、無理なくお金が回るかの確認が不可欠です。早期入金オプションを提供する会社もあるため、現在の資金状況に合うものを軸にいくつか絞り込んでみてください。
請求書の発行方式(同梱・別送・電子)
後払い決済の請求書をどのように届けるかは、日々の運用負荷に直結するポイントです。ここを見落として手間のかかる方式を選んでしまうと、注文が増えるほど現場の作業負荷が上がります。
発行方式は、同梱・別送・電子の3つに分かれます。商品と請求書を一緒に梱包する同梱方式と、商品発送後に郵送する別送方式が従来からある形です。近年は、メール等で支払い用バーコードを送付する電子方式も普及しています。
配送を外部委託しているなら、別送か電子を選ぶと物理的な梱包の手間を省けます。逆に少しでも手数料を抑えたいなら同梱を選ぶなど、現在の体制によって恩恵の受けやすさが変わります。まずは普段の商品発送フローと照らし合わせ、無理なく組み込める方式を一つ探ってみてください。
ECサイトへの後払い決済導入までの5つのステップ
サービスごとの特徴を比較したあとは、実際の導入に向けた具体的な流れを確認します。
必要な手続きは、大きく分けて5つの段階があります。事前準備から審査を経て、運用を始めるまでの全体像を見ていきましょう。
ステップ① 現状の課題分析と要件定義
まずは、今のカート周辺で起きている具体的な問題を洗い出します。ここを感覚で済ませてしまうと、後から決済の仕様が合わずにやり直す手間がかかりかねません。
課題分析の大きな指標になるのが、購入手続き中の離脱率です。イー・エージェンシーの調査によると、カゴ落ち率は平均62.9%で、半数以上がカゴ落ちしています。一度ご自身のサイトでも、決済画面から離脱した人数の割合を割り出してみてください。
出典:PR TIMES「<調査報告>ECサイトのカゴ落ち率は平均約62.9%、機会損失額は売上の約2.6倍。~株式会社イー・エージェンシー」(2026年2月19日発表)
その上で、どの年齢層がどのような決済手段を求めているかを整理し、導入するサービスの条件を固めます。クレジットカードを持たない世代が多いなら、後払いが有効な要件となるはずです。
ステップ② 後払い決済代行サービスの比較検討と選定
ステップ①で要件が固まったら、実際のサービス選びに移ります。ここからは希望条件に合う代行会社を見つける作業ですが、最初から1社に絞り込む必要はありません。まずは候補を2〜3社ほどピックアップして、大枠の違いを比べてみるのがおすすめです。
比較の軸となるのは、各種手数料とシステム連携のしやすさです。自社のECカートにそのまま組み込めるサービスなら、導入時の開発費用や手間も大きく抑えられます。これらは毎月の利益や運用体制に直結する部分なので、複数社の見積もりを取り寄せて概算を出しておきましょう。
ステップ③ 加盟店審査の申し込みと必要書類の提出
代行サービスを絞り込んだら、実際の利用に向けた加盟店審査へと進みます。申し込みには所定の書類提出が求められます。法人は登記簿謄本(履歴事項全部証明書)や印鑑証明書、個人事業主は代表者の住民票や印鑑証明書などが必要です。
役所での書類取得は手回しが遅れるとタイムロスを生むため、選定の終盤から早めに手配しておくと安心です。審査ではECサイト上の「特定商取引法に基づく表記」も確認されるため、記載に不備がないか事前に見直しておく必要があります。
ステップ④ ECカートへのシステム組み込みとテスト決済
無事に審査を通過すれば、自社のECサイトへ決済機能を実装する段階に入ります。利用中のECカートが代行会社と連携していれば、専用のプラグインを追加したり、APIキーを入力したりするだけで組み込みは完了します。独自システムの場合は、APIを用いた開発作業が必要です。
ただし、ここで焦って本番公開を急ぐと、予期せぬ決済エラーで購入者を逃がしてしまう原因になりかねません。必ず公開前にテスト環境を利用し、商品購入から与信結果の受け取り、決済完了までの動作をテスト決済で確認しておきましょう。パソコンだけでなく、スマートフォンで画面の表示崩れが起きていないかまでチェックしておくのが安全です。
ステップ⑤ ユーザー向け決済ガイドページの設定と本番運用
システム連携が無事に終われば、次は購入を検討する人に向けた案内ページの整備に進みます。この部分の説明が不十分だと、せっかく導入した新しい決済方法を選んでもらえず、効果が半減しかねません。
まずは特定商取引法に基づく表記や、お買い物ガイドのページを更新します。決済手数料の金額、請求書が商品に同梱されるのか別送されるのか、支払い期限はいつまでかといった基本情報を明記しておく必要があります。
ここまで設定を終えれば、いよいよ本番環境での運用がスタートします。実際の注文が入り始めたら、管理画面で決済が正常に処理されているかを数日間こまめにチェックしておけば、安心して日々の業務を回せます。
まとめ
ECサイトへの後払い決済は、カゴ落ちを防ぎ新たな購入層を開拓する手段です。一方で、手数料などのコストや業務負担が伴うため、メリットとデメリットの両面を見極める必要があります。ここで初めて、導入後の全体像が見えてきます。
具体的な準備は、利用中のECカートと連携できる決済サービスを洗い出すことから始まります。この確認を後回しにすると、システムの改修費用が想定外に膨らんでしまうこともあります。まずは連携可能なサービスを数社リストアップし、手数料や入金サイクルなどを比べてみてください。
審査やシステム設定から本番運用までは、一定の日数がかかります。余裕を持ったスケジュールを組み、購入者がいつでも安心して買い物できる決済環境を少しずつ整えていきましょう。
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