ECサイトとは、electronic commerce(エレクトロニック・コマース)のWEBサイトの事で、インターネット上で商品やサービスの購買取引を実現する仕組みのことで、企業と消費者(BtoC)、企業と企業(BtoB)あるいは消費者と消費者(CtoC)の取引を行うものです。
ECサイトの取引が日本で一般的になってきたのは、1997年5月に楽天がサービスを開始し、約3年後に2000年11月からAmazonが日本でサービスを開始した頃からです。
日本でのECサイトの普及率を調べるには、経済産業省が出しているEC化率のデータを使います。2022年における日本国内の物販系BtoC-EC市場のEC化率は9.13%となっており、世界のEC化率(19.3%)に比べると低比率ですが、毎年右肩上がりで伸びており、ECサイト利用は今後もますます進んでいくことは間違いありません。
では、もっと具体的にECサイトには、どういう種類や構築手法があって、どのような業務があるのかを?を、インターファクトリーで、WEBマーケティングを担当している筆者が解説いたします。
現代のECサイトの定義
Wikipediaでは、ECサイトは以下のように定義されております。
ECサイト(イーシーサイト)とは、自社の商品(広義では他社の商品)やサービスを、インターネット上に置いた独自運営のウェブサイトで販売するサイトのことである。ECとは英語: electronic commerce(エレクトロニックコマース=電子商取引)の略。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/EC%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88
しかし、この定義にはCtoC、つまり消費者同士のやりとりの定義がされておりません。それを含め、ECサイトには
・BtoC(企業と消費者)
・BtoB(企業と企業)
・CtoC(消費者と消費者)
の3形態の取引があります。また独自のウェブサイトである必要はなく、楽天に出店したり、あるいはBASEのような無料のクラウドのECプラットフォームを使えば、誰でも15分でECサイトを作ることができる時代になりました。
ですから、下記定義が現代においては最新のECサイトの定義です。
ECサイトとは、企業と消費者、企業と企業、あるいは消費者と消費者の間の商品やサービスの取引を、インターネット上においたウェブサイトで、販売するサイトのことであり、企業独自のウェブサイトや、個人がクラウドのウェブサービスやショッピングモールを利用して提供するサイトで商取引を行うものである。
実例を見たほうがイメージがつきやすいと思いますので、楽天やAmazon以外の、BtoC,BtoB,CtoCで日本で有名なサイトの一部を紹介します。
BtoCで有名なECサイト
・ユニクロオンラインストア
・ヨドバシ.com
・NIKEオンラインストア
・スクウェア・エニックス e-STORE
EC業界で必ず話題に上がるのは、ECサイトの顧客満足度8年連続1位を獲得しているヨドバシカメラのECサイト「ヨドバシ.com」です。
例えばヨドバシカメラは店舗に来たお客様が製品を触って、店員の説明を受けたものを、ヨドバシのECサイトで注文したり、またはヨドバシのECサイトで注文したものを、店舗で受け取ったり、オムニチャネル戦略※1の成功事例として、扱われているからです。
※1:オムニチャネル戦略とは、店舗やネット、モバイルのあらゆる顧客チャネルを連携させた戦略の事で、たんに多くのチャネルを用意するマルチチャネルと違い、全てのチャネルを連携させて、顧客にアプローチするのがオムニチャネル戦略のポイントです。
BtoBで有名なECサイト
・モノタロウ
・MISUMI-VONA
・イプロス
モノタロウは、一般の人はあまり聞いたことがないかもしれませんが、BtoBのECサイトでもっとも成功しているECサイトで、業界のベンチマークとなっています。
ECサイトとしての特徴は、完全に顧客目線の同線設計が施されており、何十万点からある商品の中から、すぐに目的の商品をさがせることです。「工場のAmazon」とも呼ばれております。
CtoCで有名なECサイト
メルカリはスマホアプリで個人が簡単に出品できることから、一気に広まり、2017年には日本国内で6,000万ダウンロードを超えています。もともとこのジャンルは、Yahoo!オークションが圧倒的でしたが、ユーザー環境がPCからスマホに変化したのを追い風に、若い世代を中心にシェアを広げました。
ちなみに、最近ではCtoBtoCというビジネスモデルが注目を浴びております。
CtoBtoCで有名なサイト
CtoBtoCとは、CtoCはユーザー間ならでは問題である、”トラブル”や”偽物”といった問題を解決したビジネスモデルであり、C(消費者)がB(事業者)に商品を委託販売してもらい、C(消費者)に届けるリユース市場の事です。
わかりやすい例としては、中古ブランド品販売で有名なコメ兵ですが、ユーザーから高額ブランド品の委託を受けて、販売するモデルです。こういったビジネスモデルは、仕入れと販売ともに重要ですが、ECサイトを使えば、マーケットを店舗だけでなく、全国に広げれることができます。
EC化率とは、市場におけるECサイトの割合を表したもの
ECサイトの概要をつかむ上で、EC化率のデータを理解する必要があります。なぜならEC化率とは、産業におけるECサイトの普及率を示すデータだからです。
経済産業省から2023年8月に発表された、BtoCのEC化率のデータを下記に紹介します。
BtoC-ECの市場規模および EC 化率の経年推移
このデータからわかるとおり、ECの市場は右肩あがりで、しかもまだまだポテンシャルを秘めていることがわかります。
EC化率については、BtoC、BtoB、および各産業の考察をつけた過去記事がありますので、そちらを参考にしてください。
ECサイトの作り方
ECサイトの作り方について、主に3種類のECシステムを使った構築手法があります。※楽天などのショッピングモールへの出店の解説は後ほど。
①フルスクラッチ
②パッケージ(オープンソースを含む)
③ASPサービス
①フルスクラッチ
フルスクラッチとは、文字通りゼロから、その企業のためにカスタマイズしてECサイトを作る方法です。最もコストと労力がかかる方法ですが、その企業のオーダーメイドのECサイトが作れます。サーバーを独自に用意する必要があります。
初期コスト:数千万円~
ランニングコスト:数十万~
構築期間:半年~
②パッケージ
パッケージとは、すでにECサイトに必要な機能を、ある程度実装してあるパッケージのソフトウェアです。このパッケージをサーバーにインストールして、企業や個人がカスタマイズしてECサイトを構築する手法です。通常は有料ライセンスですが、オープンソースのソフトウェアを使えば、無料でライセンスを利用し、独自にカスタマイズが可能です。
初期コスト:数十万円~
ランニングコスト:数万円~
構築期間:3ヶ月~
※オープンソースではなく、有料ライセンスのパッケージの参考価格や期間です。
③ASPサービス
ASPとは、アプリケーション・サービスプロバイダーの略です。企業が提供するクラウド上のECシステムを利用して、個人や企業がECサイトを構築できる方法です。デザインや機能に制限がありますが、簡単に安くECサイトを構築することができます。
初期コスト:数万円~
ランニングコスト:数千円~
構築期間:1ヶ月~
※無料のサービスを除いた、有料のASPサービスの参考価格や期間です。
ECサイトの作り方においては、過去の記事で詳しくまとめた記事あるので、下記をご覧ください。
おすすめ記事:【全方式】ECサイトの作り方|個人から企業ECサイトまで
楽天、Yahoo!などのショッピングモールでECサイトをはじめるには?
ECサイトを自社で構築するのではなく、楽天やYahoo!ショッピング、Amazonなどのショッピングモールに出店・出品することで、ECサイトを運営することが可能です。自社ECサイトではなく、これらのショッピングモールに出店するメリットは何でしょうか?それは集客力です。
自社ECサイトは、自分の好きなデザインやカスタマイズができる反面、集客は自らコストをかけて行う必要がありますが、楽天、Yahoo!、Amazonには、最初から高い集客力がありますので、相当なメリットです。
しかし、一方で手数料やロイヤリティーのフィーが高かったり(Yahoo!ショッピングは出店無料をうたっていますが、実はアフィリエイト報酬やストアポイントなどの原資が必要です)、またサイトのデザインやシステムには縛りがあり、独自のマーケティングが難しいのです。
下記に自社ECサイトを含めて、楽天、Yahoo!ショッピング、Amazonのメリット・デメリットをまとめてみました。
◆大手モールサイトと自社ECサイトのメリットとデメリット比較
どれがいいとは、一概に言えませんが、
楽天、Amazonの場合は、はじめから高い集客力が望める反面、コストも結構かかります。また楽天内、Amazon内での価格競争に陥る危険がありますので、利益が薄くなります。
Yahoo!ショッピングは、2013年10月から、出店料やロイヤリティー無料に踏み切り、急激に出展者が増えました。しかし楽天ほどの集客力はなく、筆者の知り合いに聞いたところ、肌感覚ですが、楽天の5分の1から10分の1程度です。
そしてYahoo!ショッピングは完全無料ではありません。ストアポイントやキャンペーンの原資として各1〜1.5%以上とられますし、アフィリエイト経由の売り上げの1%以上の原資とアフィリエイト手数料が持っていかれます。しかし楽天・Amazonに比べればコストはだいぶ安く抑えられます.
自社ECサイトは、デザイン、システムも自由な反面、ECサイト構築から集客を全て自前でコストと労力をかけて行う必要があります。自社ECサイトの弱点は、自社の会社名やブランドの認知がないと、ユーザーがインターネットで購入するには、信用度がなく購入されずらいのです。またメールアドレス登録も、メルマガが来るのをユーザーは嫌がります。
ですからその点は、「Amazon Pay」を自社サイトに導入すれば、決済をAmazonで行えるので、ユーザーが自社ECサイトでも安心して商品を購入できます。しかもユーザーは新たにサイト会員にならなくても購入できます。
このようにメリット・デメリットだけみても、一長一短がありますので、どの手法でECサイトを構築するか、事前にECサイトにかけれる予算や、労力など踏まえて検討するのがいいでしょう。そして実は紹介した4つの方式以外にもECサイトを出店する方式があります。それがモール連携です。
複数のECサイトやネットショップを連携させる手法「モール連携」
もし予算も労力もあるなら、売上を最大化するために、楽天、Amazon、Yahoo!ショッピング、そして自社ECサイト全てで、ECサイトを展開する手法もありますが、大きな弱点があります。コストは当然かかるとしても、一番のデメリットは労力です。つまり4つのECサイトがあれば、それぞれに、商品管理、受注管理をする必要があり、それぞれのECサイト管理に労力が数倍かかってしまうことです。
しかし、それを解決する手段があります。それがモール連携です。下記図のように、モール連携のシステムを導入すれば、ECサイト毎に受発注や商品管理をする必要がありません。
モール連携の管理システムを入れたケース
また、自社のECサイトの管理システムに、それぞれのショッピングモールとの連携をさせることが可能です。下記の図のような連携になります。
自社ECサイトの管理システムをシステム連携させたケース
このように、システム連携を行えば労力を最小限にし、売り上げを最大化する事が可能になります。ただしこの手法はそれなりの予算がある企業に限られます。
ECサイトの運営業務は?
まず、ECサイトの業務は以下の二つに分けられます。
・フロント業務
・バックエンド業務
フロント業務
ECサイトのフロント業務とは主に「マーケティング」と「商品企画・開発・調達」の業務があります。
マーケティング
ECサイトのマーケティング業務は多岐にわたりますが、主なものは下記のとおりです。
✔SEO
✔リスティング広告
✔アフィリエイトプログラム
✔メールマガジン施策
✔ソーシャルメディア施策
SEOやリスティング広告とは、Googleの検索エンジン対策をして、企業が意図するキーワードで検索結果の表示される対策をして、ユーザーとの接触機会を増やすことで、売上を最大化する取り組みのことです。
アフィリエイトプログラムとは、商品やサービスをアフィリエイターが持っているWEBサイトやソーシャルメディア・アカウントで紹介・宣伝を行い、紹介料や成果報酬をを企業がASP(アフィリエイターを多く囲っているアフィリエイトの企業をASPと呼びます、ECサイトの構築方法と同じ言い方ですが、別物です。)を通じて、アフィリエイターに報酬を支払うサービスです。
そして最後にメールマガジンやソーシャルメディア施策は、メールマガジンであれば、メールアドレスを集め、ソーシャルにおいては、企業アカウントをフォローしてもらい、顧客の囲い込みを行う施策です。
もちろん、マーケティング業務には、ブランディングや広報の仕事も含まれますが、本日はECサイトに特化したものを紹介しております。
商品企画・開発・調達
商品企画・開発・調達は”マーチャンダイジング”ともよばれます。ECサイトで販売する商品に関する業務になりますので、売れる商品を企画・開発し、それの調達ルートを確保し、在庫管理まで行う業務です。商品企画業務についてはマーケティング業務との明確な区分けができるわけではなく、売上を最大化するために戦略的に商品を企画・計画します。
サービスを提供するECサイトにおいても、商品企画は同様に存在します。また商品調達においては、リソースの人員を計画しなくてはいけないため、ECサイトで扱うものが商品であっても、サービスであっても同様に必要な業務です。
バックエンド業務
フロント業務が、売り上げを最大化するためのクリエイティブな業務に対して、ECサイトに限りませんが、バックエンド業務とは、ルーチン業務がメインとなります。
とはいえ企業の顧客満足度を高める要素のほとんどが、バックエンド業務の質の高さとイコールです。逆に優れたマーケティング手法を使って顧客を集めることに成功しても、バックエンド業務に滞りがあれば、企業は信頼を失いますので、「フロント」「バックエンド」のどちらの業務も欠かせません。
ECサイトのバックエンド業務とは、主に下記のものになります。
✔商品情報登録
✔受発注管理
商品情報登録
※下記はクラウドECサイトプラットフォームの「ebisumart」の商品情報登録の管理画面
商品情報登録業務とは、ECサイトで販売する商品をECシステムに登録する業務のことです。ECサイトには必ず、サイト運営者が使う管理画面が用意されています。管理画面には商品登録する画面があり、そこに商品の写真や特徴のテキスト分、価格を入力します。
また商品登録には、販売期限やキャンペーン価格などの要素もあり、管理が大変な業務です。商品が数千点以上あるような大規模ECサイトの場合は、エクセルやCSVファイルによる一括商品登録の機能が求められます。また下記のようなカテゴリー管理も必要になってきます。
※下記はクラウドECサイトプラットフォームの「ebisumart」の資料より、抜粋
商品登録においては写真のクオリティや写真の数も、ユーザーの購買意欲をそそる大事なポイントで、商品の撮影所を自前でもっている企業もあります。こういった点はマーケティング要素も必要になってきます。
受発注管理
※下記はクラウドECサイトプラットフォームの「ebisumart」の受注管理の管理画面
ECサイトにアクセスしたユーザーが、カートに欲しい商品を入れて購入を行うと、ECサイト運営者側からみると、”受注”したことになります。この受注から、商品の在庫確認から手配、決済の確認、発送するという業務が発生します。ECサイトには受発注管理機能があり、受注のタイミングで、ユーザーにはメールが自動で送られます。顧客対応も受発注業務の一環であり、電話やメールの対応も担当もおこないます。
ECサイトとは?に関するまとめ
本日はECサイトに関して、概要と詳細の両方を把握できるように記事をまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?ECサイトは、すでに、企業やシステムに詳しい人でなくても、個人でITが苦手な人でも参入できる時代になりました。これにより、今後ますます、ECサイトやネットショップに参入する人は増えるでしょう。
しかし、一方でECサイトの集客は、ノウハウや経験・予算がないと難しいことも事実です。つまりECサイトは誰でも作れる・持てる時代になった反面、人が集まる集客力のあるサイトを作るのは大変ですから、もしECサイトの導入を個人や企業で、早く参入し、実践でノウハウや経験を積むしかありません。
この記事でECサイトに対する理解の助けになったのなら、幸いです。