ECサイトに見積機能を実装させる前に!担当者が見るべき記事


BtoBサイトにおいて、見積機能は必ず必要な機能の一つと言えるでしょう。

なぜなら、BtoCと違い、BtoBでは、企業の発注担当者は、最初に取引先企業の見積書を取得し、社内で承認を得た後に購入するという流れとなることが多いので、ユーザーの企業がECサイトで見積書の取得や価格交渉を行うための見積機能が不可欠です。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、BtoB向けECサイトに必要な見積機能とその実装方法を紹介します。

「BtoB向けECサイト」には欠かせない見積書作成機能

近年は多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を目指したデジタル化に取り組んでいます。BtoBでも、カタログやFAXなど文書をベースに行ってきたすべての取引をECに置き換える企業が増えています。

◆BtoBのECサイトで見積機能が求められる背景

・取引先の社内稟議に見積書が必要
・取引先の発注担当者は取得した見積書の社内承認を得なければ購入できない
・取引先のルールでは、必ず相見積が必要となる

見積書作成機能を提供している事例として、事業者向けに間接資材を販売している株式会社MonotaROが運営する「モノタロウ」のECサイトが参考になります(下図)。

ECカート(図では「バスケット」)にある「見積書を表示」(下図の赤枠内)をクリックすると、カートに入れた商品の見積書を簡単に作成できます。

◆「モノタロウ」のECサイトの画面

◆作成される見積書イメージ

引用(画像):株式会社MonotaROモノタロウ|ご利用ガイド-見積書について

では、実際に見積にどのような機能が必要となるのか具体的な13の機能を紹介します。

BtoB向けECサイトに不可欠な見積機能(主要13機能)

BtoB向けECサイトで見積書作成機能を提供するためには、以下のような機能が必要になります。

◆BtoB向けECサイトで見積書作成機能を提供するために必要な主要13機能

①会員登録機能

BtoB向けECサイトでは原則として会員(取引先企業)登録が必要になります。取引形態等により例外もありますが、BtoBの新規取引ではほとんどのケースで取引先の審査と与信管理が必要になるからです。

また会員情報は、1企業に対して複数の担当者(および権限等)を登録できるようにしておいた方がよい場合もあります。

例えば、発注担当者がECサイトで見積書を作成し、社内承認を得て発注書を提出し、後日、決済担当者が見積書、発注書、請求書をそれぞれ確認して決済手続きを行う、というフローが発生するため、1企業に複数のユーザー(および権限等)をひも付けて管理できるように実装する必要があります。

②マイページ(会員ページ)機能

BtoBの取引では、ユーザーの企業側で社内承認手続きが必要となるため、見積書の作成と発注のタイミングは異なることが多いです。

そのため、作成した見積書の一覧(履歴)や見積書を、マイページ画面からいつでも検索・参照できる機能が必要になります。また、それらの画面からスムーズに発注手続きを行えるようにシンプルで分かりやすい画面遷移をデザインすることも大切です。

③割引率設定機能

BtoBの取引では、取引先企業ごとの割引率や大口取引の際のボリュームディスカウントを設定・管理できるようにする必要があります。

EC事業者の管理者アカウントのみが入力・管理可能な項目とし、各取引先企業は自社の割引率をマイページ画面で確認できるように設計します。

④個別割引やキャンペーン特価等の設定と管理

BtoBの商談では交渉の結果、見積書の作成後に個別割引やキャンペーン価格を適用するケースもあります。このフローをECサイトで実現するためには割引方法の詳細な検討が必要です。

例えば、割引額は一定の割引率を設定できるようにするのか、任意の金額を都度入力できるようにするのか、割引対象は明細単位とするのか、一括割引とするのか、など採用する割引方法によってECシステム側に実装するデータ項目や計算処理が異なります。

自社のECでどのような割引方法を採用するのか事前に十分検討し、将来変更が必要となった場合にも迅速に対応できるよう、可能な限り拡張性を考慮して設計することをおすすめします。

またキャンペーン特価にはキャンペーン期間を設定するケースが多いため、あらかじめ見積書に掲載する有効期限とキャンペーンの終了期日を自動で整合させるような仕組みを実装できると便利です。

⑤消費税率設定機能

2022年10月現在の消費税率は10%ですが、税率は今後変更される可能性もあります。消費税率変更のたびにシステム改修を行うのは費用も労力もかかるため、消費税率設定機能を備えたECシステムを採用することをおすすめします。

そうすることで、消費税率が変更になっても、システム改修費用が発生しないからです。弊社のBtoB向けのECプラットフォームのebisumart(エビスマート)にもこの機能が実装されております。

⑥カタログ掲載コードの入力機能

カタログを公開または配布している場合は、商品選択(または検索)や注文画面でカタログ掲載コードを指定して注文や見積書作成を行えるようにする必要があります

企業によっては、カタログ掲載コードとデータベースの商品コードが違っているというケースもあるため、自社の商品データとカタログ情報をチェックして確実にひも付けができるようにデータ設計を行いましょう。また、カタログや商品データの更新運用で不整合が生じることのないよう、あらかじめカタログ製作フローとデータ管理・運用フローの連携と最適化を考慮しておくことも重要です。

⑦会員情報の自動取込機能

見積書に記載する企業名、部署、担当者名などの会員情報は、手入力ではなく会員情報データから自動取込できるように実装しましょう。

部署変更などの軽微な修正は見積書上で行いたくなりますが、データの整合性と精度の維持と、一元管理の観点から、原則として情報変更はすべてECシステムで行うフローを構築すべきです。変更が必要な場合にはワンクリックで変更画面に遷移させるなど、画面設計等を工夫することでユーザビリティを担保できるように設計しましょう。

⑧明細の自動取込または自動計算機能

ECサイトのカート内容(明細)、各種割引を自動計算した明細または合計金額、消費税などの情報もECシステムから見積書に自動で取り込めるようにします。

見積書が複数ページにわたる場合も、正しく出力されるように設計しましょう。

ECシステム側で管理または自動計算した項目をどこまで見積書に自動で取り込むかによってカスタマイズの規模や難易度は変化するため、必要な要素と拡張性を考慮した上で要件を固めていくことが重要です。

⑨有効期限の自動設定機能

見積書には有効期限を明記する必要があります。一律で、見積書発行日から〇か月後まで有効とするケースもあれば、商品の特性や在庫状況等に応じて有効期限を都度変更するケースもあるでしょう。

キャンペーン価格を用意している場合などは、有効期限を設置しないとキャンペーンが終わった後に取引先が見積書を根拠にキャンペーン価格を要求されてトラブルの原因になってしまうこともあります。

また、ECシステムで自動計算した結果を手入力で変更できるようにする場合には、変更時の運用ルールも合わせて検討しておきましょう。

⑩見積書番号の自動採番機能

見積書をつくるごとに見積書の番号が自動的に採番されます。見積書番号はECシステム側でユニーク番号を自動で付与される必要があります。

また、取引先や商品カテゴリーによって見積書番号を変更する場合などはカスタマイズが必要となります。

⑪備考欄の自動生成機能

商品や注文によっては見積書に注意書きが必要となる場合があります。例えば、大量発注などで複数の倉庫から配送する場合などでは、配送日や配送料が変わることも考えられます。特記事項がある場合には備考欄に自動出力できるように、備考欄のデフォルト値を設定できる画面が必要となります。

⑫見積書保存機能

すぐに発注に至らない場合でも、ユーザーが作成・保存した見積書は、いつでもマイページ画面で参照できるようにしておきましょう。過去の見積書を流用して新規注文や再注文などができるため、ユーザビリティが向上します。

ただし、過去の見積書を流用するときには単価や割引金額が変わっている可能性もあるため、見積書を複製する際は、商品が現在も販売しているのか?などのチェックが必要となります。

⑬発注書も同時に自動生成する機能

BtoBでは見積書と同時に発注書も生成したいという場合もあります。そのため、見積書の作成時に発注書も自動生成する機能を実装することをおすすめします。見積書兼発注書のように見積書と発注書を兼ねた一枚の帳票を使用する企業もあるでしょう。ECでどのような帳票が必要になるのか精査しておきましょう。

見積機能をECサイトに実装するための3つの方法

方法①見積書作成機能を提供しているECカートシステムを利用する

例えば、BtoB向けのECカートシステム「Bカート」では、見積書作成機能(「見積機能」)が標準提供されています。

参考:株式会社Dai(ダイ)Bカート

Bカートでは月額9,800円~79,800円のプランが用意されており、手軽に見積書作成機能を導入したい場合には適していると言えます。

方法②自社のECシステムにカスタマイズ実装する

ECパッケージや、カスタマイズが可能なクラウド型のECプラットフォームで自社のECサイトを構築する(またはしている)場合にはカスタマイズで見積書作成機能を実装できます。

弊社のebisumart(エビスマート)も、カスタマイズが可能なクラウド型のECプラットフォームに該当します。

ebisumart(BtoB向け ECサイト構築・導入)

BtoB向けECサイトでは、与信管理、得意先管理、基幹連携などの機能と一緒に、見積関連機能を実装するケースが多いため、カスタマイズ費用は数千万円規模となる場合が多いです。

方法③フルスクラッチでECサイトを構築する

自社専用のECシステムを丸ごとすべて開発する方法です。フルスクラッチの最大のメリットはオリジナルのECシステムを構築できるという自由度と柔軟性です。

しかし近年は、クラウド型ECやECパッケージが急速に進化しており、高い拡張性とBtoBに特化した高度な機能を備えたサービスや製品が増えています。

フルスクラッチでECサイトを構築する場合には、開発費用だけでも数千万円~数億円の規模となるため、大規模サイトや自社開発体制が整備されていて開発スピードと柔軟性を実現できる企業でない限りは、フルスクラッチの費用対効果は期待できません

まとめ

BtoBの取引でもデジタル化が進んでおり、従来の文書やFAXなどの紙をベースとした取引から、ECサイトへの切り替えを検討している企業は増えています。ECサイトに移行する際は、取引先企業や自社の現場部門への丁寧なヒアリングとすり合わせを行うことが大切です。ユーザーに現状以上の利便性と安全性を実感してもらうことが、ECサイトへ切り替える際のポイントです。

今回紹介した見積機能はBtoB向けECシステムの多くの機能の中の一つにすぎませんが、細部まで考慮されているECサイトはユーザーに支持されます。「ebisumart(エビスマート)」は、BtoB向けECサイトの豊富な構築実績とノウハウを持ち、柔軟なカスタマイズもできるクラウド型ECプラットフォームです。BtoB向けECシステムのリプレースやECサイトの新規構築を予定されている方は、ぜひ検討してみてください。

ebisumart(BtoB向け ECサイト構築・導入)


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。