ECのレコメンドとは?売上停滞を打破する手法を分かりやすく解説


「レコメンドをECに取り入れたいが、どうやればいいのか?」
このような疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。

EC市場が拡大し、商品の選択肢が広がる一方で、ユーザーにとって自分に適した商品を見つけるのは難しくなっています。そこで注目されているのが、レコメンド機能の活用です。

レコメンドを導入すると、ユーザーの興味関心に合った商品を提案し、購買体験を高められます。この記事では、EC売上を劇的に伸ばすレコメンド活用術について、実践的な手法を紹介します。

レコメンドの種類から、効果を最大化するシステム選定、運用ノウハウまで、基礎から解説しますので、まだ知識がない方もご安心ください。

最後までお読みいただき、レコメンドを活用してユーザーの心をつかみ、競合に差をつけるノウハウをお持ち帰りください。

1. 売上停滞を打破するECサイトのレコメンド戦略

まず、なぜ「ECサイトの売上向上にはレコメンドが有効」と言われるのか、その背景を把握しておきましょう。

① そもそも「レコメンド」とは?
② レコメンドの具体例
③ なぜ今レコメンドがECサイトに不可欠なのか?
④ レコメンド導入で解決できる具体的な課題

1-1. そもそも「レコメンド」とは?

レコメンドとは、ECサイトにおいて、顧客一人一人の行動履歴や嗜好に基づいて、その人に合った商品やコンテンツを自動的に提案する機能のことです。

大量の商品データから顧客に最適なアイテムを選び出し、パーソナライズされた形で提示するのがレコメンドの役割です。

◆レコメンドの特徴

パーソナライゼーション:利用者ごとに最適化された商品提案を行う点が特徴です。画一的な商品リストではなく、顧客の興味関心に寄り添った提案を行います。

自動化:システムが自動で利用者の行動を分析し、おすすめ商品を抽出します。膨大な商品データを活用して、人手では不可能な規模とスピードでレコメンドを生成できます。

リアルタイム性:リアルタイムで利用者の行動を捉え、タイムリーな商品提案を行います。最新の顧客データに基づいたレコメンドにより、提案の精度と説得力を高めます。

つまり、レコメンドとは、ECサイトで扱う多種多様な商品情報と、顧客一人一人の行動履歴などのデータを掛け合わせることで実現する、パーソナライズされた商品提案機能と言えます。顧客に新たな発見や “あなたにぴったりの商品” を届ける、ECサイトに欠かせない存在です。

1-2. レコメンドの具体例

もう少し具体的にレコメンドをイメージできるように、事例を挙げましょう。ここではレコメンドの取り組みに定評のあるAmazonやNetflixを例にします。

◆レコメンドの具体例

「この商品を買った人はこんな商品も買っています」:Amazonで商品ページを開くと、自分と似た趣味嗜好を持つ人が購入した商品が表示されます。まるで優秀な店員が「お客様、この商品もおすすめですよ」と提案してくれている感覚です。

「この商品を閲覧した人はこちらもチェックしています」:商品ページには、同じ商品を見た人がクリックした別の商品も表示されます。ついつい自分もクリックしたくなる気の利いたレコメンド機能です。

「あなたへのおすすめ」メール:Amazonは利用者の行動履歴を分析し、おすすめ商品の情報をメールで届けます。欲しいものが目の前に現れるようで、思わず開封したくなります。

「〇〇さんへのおすすめ作品」:Netflixでは、利用者の視聴履歴をもとに独自のアルゴリズムで作品をレコメンドします。まるで映画通の友人が「君の好みにドンピシャの作品だよ」と教えてくれる感覚です。

トップ画面のおすすめ作品レイアウト:Netflixのトップ画面は、おすすめ作品のサムネイルが利用者の関心を引くようになっています。利用者ごとの好みに合わせた個別のレイアウトです。

このような体験を、自社のECサイトにも取り入れれば、顧客満足度の向上や売上アップが見込めることが、想像できるでしょう。

1-3. なぜ今レコメンドがECサイトに不可欠なのか?

EC市場の急成長により、商品数は増加の一途をたどっています。その結果、ユーザーは自分に最適な商品の発見に時間を費やし、ストレスを感じています。

◆レコメンドがもたらす3つの価値

情報過多の解消:ECサイトには膨大な商品情報が存在し、ユーザーは選択に迷います。レコメンドは、ユーザーの好みに合わせて商品を絞り込み、最適な選択をサポートします。

購買体験の質的向上:ユーザーの興味関心に合った商品を提案できれば、満足度の高い購買体験が実現します。レコメンドは、ユーザーの願望を具現化する機能として機能します。

売上増加への貢献:ユーザーが求める商品を適切に提示すると、購入確率が向上します。その結果、売上の増加につながります。

レコメンドは、ユーザーのニーズを満たし、ECサイトの成長を促進します。その効果から、多くのECサイトでレコメンドの導入が進んでいます。

1-4. レコメンド導入で解決できる具体的な課題

レコメンド機能の実装は、ECサイトが抱えるさまざまな課題の解決につながります。ユーザーの興味・関心に合致する商品を提案できれば、購買体験の向上と売上の増加が実現します。

◆レコメンドによる課題解決効果

クロスセル・アップセルの促進:関連商品や上位商品をレコメンドすると、ユーザーの追加購入意欲が高まります。客単価の向上を実現します。

カート落ちの防止:買い物カゴの商品と相性の良いアイテムの提案によって、購入意欲が向上します。カート落ちのリスクを軽減し、購入率を引き上げます。

離脱率の低下:ユーザーのニーズに合う商品を提示すれば、サイト内の回遊が促進されます。滞在時間が延び、離脱せずに購入まで至りやすくなります。

休眠ユーザーの活性化:メールなどを通じて過去の購買履歴に基づいたレコメンドを実施すれば、休眠ユーザーの再訪を促せます。潜在的な購買意欲を喚起し、売上増加につながります。

レコメンドの導入は、ECサイトのさまざまな課題を効果的に解決します。ユーザー満足度の向上と売上拡大を同時に実現できるのがポイントです。

2. ユーザーの心をつかむECサイト向けレコメンドの種類:5つのアプローチ

「レコメンドは効果がある」と聞いても、具体的にどのような手法があるのか、選択肢を知らないと使いこなせません。

そこで、まずは代表的なレコメンドの種類を把握しましょう。自社のECサイトならどのように活用できそうか、イメージしながら読み進めてみてください。

① 協調フィルタリング:ユーザーの行動履歴から「似た者同士」を見つける
② 内容ベースフィルタリング:商品属性から「似た商品」を見つける
③ ルールベース:人間が「おすすめルール」を作る
④ 機械学習:データから自動的に「おすすめパターン」を学習する
⑤ ハイブリッド型レコメンド:複数の手法を組み合わせて精度を向上させる

2-1. 協調フィルタリング:ユーザーの行動履歴から「似た者同士」を見つける

協調フィルタリングは、ユーザー同士の類似性に着目し、「似たようなユーザーが好むアイテムならば、あなたも気に入るはず」という発想に基づくレコメンド手法です。

協調フィルタリングの身近な例として、「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」というレコメンドがあります。

◆協調フィルタリングの特徴

・メリット
◎ ユーザーの興味関心に合わせたパーソナライズされたレコメンドが可能
◎ データの蓄積とともに精度が向上する

・デメリット
△ 新商品や購入履歴の少ないユーザーに対してはレコメンドが難しい(コールドスタート問題)
△ 人気商品に偏ったレコメンドになりがち

協調フィルタリングの問題点として挙げられるコールドスタート問題とは、まだデータが蓄積されていない新規ユーザーに対して、適切なレコメンドを提供できないことを指します。

解決策としては、次に紹介する内容ベースフィルタリングなどを併用します。

2-2. 内容ベースフィルタリング:商品属性から「似た商品」を見つける

商品のカテゴリ・ブランド・価格帯・色・サイズなどの属性情報に注目し、ユーザーが過去に興味を示した商品と似た特徴を持つ商品をレコメンドするのが、内容ベースフィルタリングの基本的な考え方です。

◆内容ベースフィルタリングの特徴

・メリット
◎ ユーザーの履歴が少なくても一定の精度でレコメンド可能(コールドスタート問題に強い)
◎ 商品属性を細かく設定すると、よりマッチ度の高いレコメンドにできる

・デメリット
△ ユーザーの多様な嗜好に対応しにくい
△ 商品属性の設定が不十分だと、的外れなレコメンドになる恐れがある

ECサイトでの具体的な活用イメージとしては、「この商品と同じカテゴリの人気商品」「類似の属性を持つ商品」など、閲覧中の商品と共通点を持つ商品をレコメンドするケースが考えられます。

商品属性を幅広く詳細に設定しておくことが、内容ベースフィルタリングを成功させる鍵となります。レコメンドシステムが商品特徴を正確に理解できるよう、分かりやすく属性付与しておくことがポイントです。

2-3. ルールベース:人間が「おすすめルール」を作る

ルールベースは、ECサイト運営者が自らの商品知識や販売戦略に基づいて、「こういうお客様には、こんな商品をおすすめしよう」というルールを設定し、レコメンドを行う方法です。

ルールベースは、人間の判断力と経験則でレコメンドを制御するのが特徴です。

◆ルールベースの特徴

・メリット
◎ 明確な意図を持ったレコメンドが可能(キャンペーン商品、在庫処分品など)
◎ 商品データが少なくてもすぐに始められる

・デメリット
△ ルール設定に手間と時間がかかる
△ 属人的なルールになりがちで、自動化が難しい
△ ユーザーの多様な興味関心に対応できない

たとえば、「商品Aを買った人には商品Bをおすすめする」「夏場はアウトドア商品を前面に押し出す」など、明確な販売戦略に基づいたレコメンドルールを設定できます。在庫状況に応じて、在庫の少ない商品をレコメンドから外すといった調整も可能です。

ルールベースの弱点は、設定したルールが硬直的で、ユーザーごとの嗜好に柔軟に対応できない点です。必要なルールの設定、定期的なメンテナンスには人的コストもかかります。システムの力を借りたレコメンド手法との賢い組み合わせが求められます。

2-4. 機械学習:データから自動的に「おすすめパターン」を学習する

機械学習は、大量のユーザー行動データや商品データを機械学習アルゴリズムで解析し、そこから導き出された「おすすめパターン」を使ってレコメンドする手法です。人間の手を介さず、機械が自動的に法則性を見つけ出してくれるのが最大の魅力です。

◆機械学習の特徴

・メリット
◎ 大量で複雑なデータから、人間では気づきにくいパターンを発見できる
◎ データ量の増加とともに、精度が向上する
◎ 協調フィルタリングや内容ベースなどの手法も、機械学習で実現可能

・デメリット
△ 手法の実装には専門知識とコストがかかる
△ 一定量の学習データがないと効果を発揮できない
△ アルゴリズムが適切でないと、偏ったレコメンドになるリスクがある

購買履歴や閲覧履歴などのユーザー行動ログと商品属性データを組み合わせた分析によって、ユーザーごとの興味関心を学習し、パーソナライズされたレコメンドを自動生成できます。

最新の行動データをリアルタイムに反映させ、その時々のユーザーの状況に応じてレコメンド内容を変容させることも可能です。

2-5. ハイブリッド型レコメンド:複数の手法を組み合わせて精度を向上させる

ここまで紹介した4つのアプローチは、それぞれ単独で用いるだけでなく、組み合わせて活用することで真価を発揮します。複数の手法を組み合わせ、弱点を補い合うことでレコメンドの質を高めるのが、ハイブリッド型レコメンドの考え方です。

たとえば、協調フィルタリングと内容ベースを掛け合わせ、「ユーザーが好きそうな商品」と「閲覧中の商品に似た商品」を同時に提示できます。幅広い興味関心に対応しつつ、文脈にあったレコメンドが可能になるわけです。

あるいは、ルールベースで基本的なレコメンドの枠組みを固めつつ、機械学習で個々のユーザー嗜好に合わせた提案を行うのも有効です。

続いて以下では、レコメンド機能導入のシステム面について解説します。

3. ECサイトにレコメンド機能を導入する3つの選択肢

自社のECサイトにレコメンド機能を導入しようと考えたとき、具体的にどのような選択肢があるのでしょうか。大きく分けると、3つの選択肢があります。

選択肢1:ECプラットフォームの標準機能を利用する
選択肢2:外部レコメンドエンジンを利用する
選択肢3:自社開発する

それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、自社の状況に合った選択をすることが大切です。以下で詳しく見ていきましょう。

3-1. 選択肢1:ECプラットフォームの標準機能を利用する

EBISUMARTなどの主要なECプラットフォームには、標準で簡易的なレコメンド機能が用意されています。

すでにレコメンド機能が搭載されたプラットフォームを使っている場合は、簡単にレコメンド機能を導入できるのが大きなメリットです。

◆ECプラットフォーム標準のレコメンド機能を利用するメリット

・プラットフォームとの親和性が高く、安定して動作する
・一般的によく使われる機能・アルゴリズムがカバーされている
・実装や運用の手間が少ない

一方、標準機能でカバーされるのは、基本的にルールベースのレコメンドが中心となります。協調フィルタリングは不可能または部分的、機械学習は基本的に不可能な場合が多いでしょう。

上記の理由により、他社製品と差別化できるようなレコメンドを標準機能で実現するのは難しいと言えます。あくまで、標準的なレコメンド機能を手軽に利用する、という位置付けになるでしょう。

3-2. 選択肢2:外部レコメンドエンジンを連携する

近年、レコメンド機能に特化したサービスを提供する企業が増えてきました。そうした外部のレコメンドエンジンを自社のECサイトに組み込む方法があります。

◆外部レコメンドエンジンのメリット

・レコメンド専門企業の知見を活用できる
・最新のアルゴリズムや機能をいち早く導入できる
・自社でアルゴリズム開発する必要がない
・導入実績が豊富で、安定性が見込める

専門企業の提供する高度なレコメンド機能を、自前で開発するよりも短期間で導入できるのが大きな利点です。商品データやユーザーの行動ログを外部サービスと連携させれば、設定作業だけでレコメンド機能が利用できます。

具体例として、以下はEBISUMARTと提携しているサービスとなっています。

アイジェント・レコメンダー:サイトアクセスや購買状況をリアルタイムに分析し、効果的なレコメンデーションを提供します。

レコガゾウ:レコメンドメール開封時にレコメンド結果をリアルタイムに抽出し、メール上におすすめ商品を表示させます。

NaviPlusレコメンド:最先端のロジックと他サービスとの柔軟な連携で、さまざま要望をかなえるハイエンドレコメンドエンジンです。

EC RECOMMENDER:さまざまなレコメンドロジックを備えており、回遊率を向上させます。購買データがなくても商品データベースから類似商品を抽出し、高品質な結果を簡単に出力できます。

さぶみっと!レコメンド:1,600サイト以上で導入実績があるレコメンドエンジンです。サイト内の回遊率・CVアップだけでなく、ユーザーの再来訪に貢献するさまざま機能があります。

標準搭載のレコメンド機能だけではカバーできない、高度なレコメンドを実現したい場合には、外部レコメンドエンジンの活用がおすすめです。

参考:提携サービス一覧│EBISUMART

3-3. 選択肢3:自社開発する

社内のエンジニアリソースを投入し、レコメンドシステムを一から自社開発する方法です。ECプラットフォームを自社開発している場合や、レコメンド機能を自社サービスの強みにしたい場合に適したアプローチと言えます。

◆レコメンドを自社開発するメリット

・自社に最適化したレコメンドロジックを組める
・レコメンド品質を自社で管理できる
・他社にはまねのできないレコメンドを実現できる可能性がある
・ノウハウが自社に蓄積される

自社開発の大きな魅力は、外部ツールでは実現しにくい、自社オリジナルのロジックを組み込めることです。

反面、開発工数とコストは覚悟が必要です。専門的な知識を持つエンジニアの確保も欠かせません。「レコメンドまわりは社内リソースを集中投資すべき重要機能である」という戦略的な意思決定が求められるでしょう。

3-4. 3つの選択肢の比較表

最後に、3つの選択肢を表にまとめました。自社の状況や目的に照らし合わせて、コストと効果のバランス、自社の強みをどこに求めるのかをじっくり検討しましょう。

続いて以下では、レコメンドシステムの選定と連動する「プラットフォーム」について補足します。

4. 「クラウドECプラットフォーム」がレコメンドに強い理由

一方、実際のところ「どのレコメンド機能を導入できるか?」については、どのEC基盤を使っているか次第、という面があります。

ASPを利用しているのか、オープンソースで構築したのか、それともクラウドECやパッケージ製品を採用したのか、その判断がレコメンド機能の選択肢を左右します。

効果的なレコメンドを実現するためには、逆算してEC基盤を選択することも重要です。レコメンドに強いEC基盤としておすすめなのは、クラウドECプラットフォームです。その理由を解説します。

4-1. クラウドECの柔軟性で自社に最適なレコメンドを実現できる

EBISUMARTを代表とするECクラウドは、高いカスタマイズ性が大きな特徴です。

標準機能として提供されているレコメンド表示に加え、オプション機能や外部サービスとの連携により、自社のビジネスモデルや顧客特性に合わせた、最適なレコメンド機能を構築できます。

たとえば、最初は標準機能で手軽にスタートし、サイト規模の拡大とともに外部サービスと連携させたり、さらにカスタマイズによって自社専用のレコメンド機能を実装したりできます。

将来的なビジネスの拡張性が担保されているため、どのような企業にとっても選びやすい選択肢です。

4-2. 場合によってはリプレースも検討すべき

現在利用しているカートシステムや、導入しているレコメンドエンジンの機能/将来性に不満がある場合、思い切ったリプレースも検討すべきでしょう。

特に、以下の点に課題を感じている場合は、EBISUMARTのような高機能なクラウドECへのリプレースが効果的です。

・レコメンドの精度が低い、または、そもそもレコメンド機能がない
・機能が不十分で、ビジネスの成長にシステムがついていけなくなりそう
・サポート体制が不十分で、トラブル発生時の対応に不安がある
・カスタマイズ性が低く、自社のビジネスモデルに合わせた運用ができない
・外部サービスとの連携が制限されており、拡張性に欠ける
・最新のテクノロジーを活用したマーケティング施策を実行したい

EBISUMARTの詳細は以下の資料にまとめましたので、ぜひダウンロードしてご確認ください。

5. レコメンド経由の売上を最大化させる運用ノウハウ

多くの企業がレコメンドシステムを導入し、その効果を実感しています。しかし、導入しただけで満足していては、レコメンドの効果を十分に発揮できているとは言えません。レコメンドは導入後の運用にも、売上を最大化する鍵があります。

最後に、運用ノウハウに関するポイントを確認しましょう。

① ユーザー属性によってレコメンドを出し分ける
② A/Bテストで最適な表示パターンを検証する
③ 顧客の反応を分析して精度を高める

5-1. ユーザー属性によってレコメンドを出し分ける

ECサイトの特性に応じて、ユーザー属性を軸にしたレコメンドの設計方針を定めることが重要です。取り扱う商品カテゴリの広さ、ユーザー層の多様性など、各サイトの状況を踏まえながら、属性情報の活用方法を考えていきましょう。

◆ユーザー属性を活用したレコメンドの視点

基本属性の見極め:性別・年代・居住地域などのユーザー属性は、レコメンドを出し分けるうえでの基本的な指標となります。これらの属性情報をベースに、大枠の嗜好傾向をつかみ、レコメンドの土台を作ります。

ユーザーの志向性の把握:購入履歴やエンゲージメント分析から、ユーザーのブランド志向や価格志向、こだわりのポイントなどを推定します。ユーザーが商品選びで重視する要素を捉え、説得力のあるレコメンドを目指しましょう。

行動履歴からの興味関心の抽出:ユーザーの閲覧履歴・検索履歴・カート追加商品など、サイト内での行動ログを分析し、そのときどきの興味関心をくみ取ります。タイムリーな興味関心を反映させたレコメンドは、ユーザーの購買意欲を高める効果が期待できます。

ライフイベントの推定:年代や購入商品などからユーザーのライフステージを推定し、結婚・出産・就職など、人生の転機に合わせた商品提案を行います。ライフイベントに即したレコメンドは、ユーザーの潜在ニーズを掘り起こすきっかけになるでしょう。

ユーザー属性の活用方法は、ECサイトの特色に応じて工夫する必要があります。

たとえば、Amazonのような多様な商品を取り扱うサイトでは、ユーザーの行動履歴から興味関心を幅広く抽出し、あらゆるジャンルの商品を組み合わせたレコメンドが有効です。

一方、D2Cブランドのようにカテゴリを絞ったサイトでは、ブランドとの関わり方や志向性など、よりブランド特有の切り口からユーザーを分析していくと、レコメンドの精度が高まります。

5-2. A/Bテストで最適な表示パターンを検証する

レコメンドの効果を最大限に引き出すためには、「何をレコメンドするか?」だけでなく、「どのようにレコメンドを表示させるか?」の視点も欠かせません。

A/Bテストを実施し、最も効果の高い表示パターンを見極めていきましょう。

◆検証すべき表示パターン例

レコメンド枠の配置:商品ページのどの位置にレコメンド枠を配置するのが効果的か、ユーザーの視線の流れを意識しながらレイアウトを試行錯誤します。「目に留まる」「クリックしやすい」配置を見つけ出すことが勝負どころとなります。

レコメンド表示のタイミング:レコメンドの表示タイミングも、ユーザーの反応を左右する要因です。ページ遷移直後に表示するのか、スクロールに合わせて動的に表示するのか、ユーザーの行動を観察しつつ、最適な表示トリガーを割り出します。

サムネイル画像の選定:レコメンド商品を表す画像の選び方も、クリック率に直結する要素です。商品の魅力を引き出すサムネイル画像を複数パターン用意し、A/Bテストで優劣を競います。ユーザーの興味を引き付ける1枚を見つけ出しましょう。

上記は一例ですが、継続的なテストを実施し、より効果の高い表示パターンを追求することが大切です。

5-3. 顧客の反応を分析して精度を高める

レコメンドの運用において、顧客の反応を詳細に分析し、フィードバックを得ることは極めて重要です。レコメンドに対する顧客の反応を可視化し、施策の効果を定量的に評価していきましょう。

◆レコメンド効果の多角的な分析

行動ログの解析:ユーザーがレコメンド商品をクリックしたのち、どのようなアクションを取ったのかを追跡します。商品の閲覧時間、カートへの追加、購入の有無など一連の行動ログを分析して、レコメンドの影響力を可視化します。

セグメント別の反応比較:ユーザー属性やセグメントごとにレコメンドの効果を比較検証します。年代別・性別・購入頻度など、さまざまな切り口でユーザーを分類し、グループ間でのレコメンドの反応の違いを精査しましょう。セグメントに応じた最適なレコメンド戦略を導き出すために欠かせない分析です。

レコメンド商品の評価分析:レコメンドされた商品に対する顧客の評価を分析します。クリック率や購入率だけでなく、商品レビューやお問い合わせ内容なども精査の対象とします。顧客の生の声に耳を傾ければ、レコメンドの改善ポイントが見えてきます。

こうした多角的な分析によって得られた知見を、レコメンドロジックの改善にフィードバックしていきましょう。このような積み重ねが、競合サイトとはひと味違う良質な顧客体験の創出につながります。

6. まとめ

本記事では「ECにおけるレコメンド」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

最初に基礎知識として以下を解説しました。

・レコメンドとは、ECサイトにおいて顧客一人一人の行動履歴や嗜好に基づいて、その人に合った商品やコンテンツを自動的に提案する機能
・レコメンドの導入により、情報過多の解消、購買体験の質的向上、売上増加への貢献が期待できる
・ECサイトが直面する多様な課題を解決に導くレコメンドは、ユーザー満足度を高めながら売上の拡大につながる

ECサイト向けレコメンドの種類として、5つのアプローチを解説しました。

① 協調フィルタリング:ユーザーの行動履歴から「似た者同士」を見つける
② 内容ベースフィルタリング:商品属性から「似た商品」を見つける
③ ルールベース:人間が「おすすめルール」を作る
④ 機械学習:データから自動的に「おすすめパターン」を学習する
⑤ ハイブリッド型レコメンド:複数の手法を組み合わせて精度を向上させる

ECサイトにレコメンド機能を導入する3つの選択肢は以下のとおりです。

① ECプラットフォームの標準機能を利用する
② 外部レコメンドエンジンを連携する
③ 自社開発する

レコメンド経由の売上を最大化させる運用ノウハウとして、以下を解説しました。

① ユーザー属性によってレコメンドを出し分ける
② A/Bテストで最適な表示パターンを検証する
③ 顧客の反応を分析して精度を高める

レコメンドを軸にしたECの成長戦略は、もはや選択肢ではなく必須と言えるでしょう。自社の特性を踏まえながら、レコメンド施策を着実に実行していくことが、ECサイトの発展につながります。


セミナー情報

ABOUT US
首藤 沙央里
2019年9月、株式会社インターファクトリーに入社。 マーケティングチームにてオウンドメディア運用を担当し、年間40本以上の記事を掲載。 社内広報、採用広報に加え、EC業界やクラウドコマースプラットフォーム「EBISUMART」についての情報発信も行う。