小ロット生産とは、同一種類の製品を少ないロット数(最小発注単位)で製造する生産方式のことです。大量の在庫を管理する必要がなく、需要に応じて生産量を調整できる点が特徴で、多品種少量生産が主流となっている今、再注目されています。
小ロット生産の大きな強みは柔軟性です。消費者や市場の反応を見て製品仕様や生産量を調整できるため、売れ残りのリスクを抑えて、付加価値の高い商品づくりが可能になります。特に仕様変更やカスタマイズのニーズが高い製品では、小ロット生産に対応できることが市場競争における強みとなります。
この記事では、株式会社インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、小ロット生産と大量生産の特徴を比較しながら、小ロット生産の考え方やメリット、課題について解説します。
「柔軟性重視の小ロット生産」と「効率重視の大量生産」
まず、小ロット生産を理解するために、大量生産との特徴を比較してみましょう。
◆「小ロット生産(多品種少量生産)」と「大量生産(少品種大量生産)」の比較
| 小ロット生産(多品種少量生産) | 大量生産(少品種大量生産) | |
|---|---|---|
| 生産目的 | 顧客ニーズに対応し柔軟に生産する | 効率化によって1個あたりのコストを下げる |
| 品種・数量 | 多品種を少量ずつ生産 | 少品種を大量に生産 |
| 製品需要の特徴 | 多様で変化が激しい | 常に安定している |
| 生産性 | 低い | 高い |
| 生産コスト | 高い | 低い |
| 柔軟性 | 高い | 低い |
| 仕様変更への対応 | 容易 | 困難 |
| 人材の特徴 | 多能工が中心 | 単能工が中心 |
| 従業員のモチベーション | 作業が変化するため低下しにくい | 単純作業なので低下しやすい |
| 生産管理の難易度 | 高い | 低い |
| 生産ライン障害発生時の影響 | 他製品の生産には影響しない | 生産ライン全体が停止、または生産量が減少する |
| 向いている製品例 | 特注品、業務用食品、アパレルOEM | 飲料、日用品、家電の量産品 |
出典:筆者作成
上の比較表からも分かるように、大量生産は効率化とコスト削減を優先し、限られた品種を大量に生産する方式です。一定以上の需要がある安定した市場が前提となるため、多品種展開や突発的なニーズに対する機動性は低くなります。
一方、小ロット生産は効率よりも柔軟な生産性を優先し、市場ニーズの多様性と変化に素早く対応できる方式です。製品仕様や注文内容の突然の変更にも対応しやすく、需要変動が大きい環境でも臨機応変に対処できることは、小ロット生産ならではの特徴です。
小ロット生産は、変化の激しい現代の市場で、リスクを抑えて事業成長を続けるために最適な生産方式と言えるでしょう。
背景にある「消費者ニーズの変化」
小ロット生産が再注目されている背景には、消費者の価値観の変化があります。従来の「価格の安さ」「画一的な性能」「流行」を重視する選択から、現在は、自分のライフスタイルや好みに合った商品を重視する選択へと変化しています。
経済産業省の2017年の消費者調査でも、商品選択において「とにかく安くて経済的なものを買う」ことを重視する人は減っており、「自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ」「気に入った付加価値には対価を払う」と考えている人が増えています。
◆消費者価値観の変化
出典:経済産業省「消費者理解に基づく消費経済市場の活性化(消費インテリジェンス研究会)」(2017年3月発表)
消費者の価値観の変化は市場に大きく影響します。同じ商品でも、サイズや仕様、デザイン、納期などに対する要望は細分化し、どの商品がどれだけ売れるかを正確に見極めることが難しくなりました。その結果、製品ライフサイクルは短くなり、需要変動も激しくなっています。
こうした市場では、同一商品を大量に生産することで効率化を図る従来の大量生産は、過剰在庫や廃棄ロスのリスクを抱えやすく、また、売れ行きの予測が大きく外れた場合には事業全体に影響が及び、軌道修正が困難です。
小ロット生産であれば、数量や仕様を柔軟に調整しながら生産できるため、需要の不確実性や個別ニーズにも対応できる生産体制を構築できます。特にBtoBや受注生産、OEM、生鮮・業務用食品業界などでは、生産の柔軟性が市場競争における強みとなっているケースも少なくありません。
このように、小ロット生産は、消費者の価値観と市場の変化に対応するための合理的な生産方式として、再注目されているのです。
小ロット生産の強みは「柔軟性」
小ロット生産の本質的な価値は、需要や状況の変化に応じて生産内容を柔軟に調整できることです。
大量生産は生産効率を高めるうえでは合理的ですが、生産が始まると途中で数量や仕様を変更することが難しいため、市場の反応が予測と大きく異なった場合には、過剰在庫や廃棄ロスのリスクが高くなります。一方、小ロット生産では在庫リスクを気にすることなく、状況に応じて軌道修正して生産していくことができます。
小ロット生産には以下のようなメリットがあります。
◆小ロット生産のメリット
・仕様変更やカスタマイズに対応しやすい
・消費者と市場の反応を見て製品を改善できる
これらのメリットから分かるように、小ロット生産の最大の効果は、試行錯誤を前提とした事業運営が可能になる点にあります。
小ロット生産を、単なる生産方式というだけでなく、顧客ニーズに寄り添い、付加価値で勝負するための戦略として捉えることが大切です。
大量生産と比較し、自社の市場環境、消費者特性、製品特性を鑑みたうえで「なぜ小ロット生産を選択するのか」を明確にすることで、小ロット生産の柔軟性を市場の競争力として生かしていくことができるはずです。
小ロット生産の3つの課題
小ロット生産は機動性と柔軟性の高い生産方式ですが、生産方式を従来の方式から変更することで新たな課題も生じます。ここでは、小ロット生産における3つの課題を紹介します。
課題① 生産効率の低下とコスト増加が起こりやすい
大量生産では、生産量が増えるほど固定費を分散でき、1個あたりのコストが低くなりますが、小ロット生産ではその効果は小さくなります。
特に課題となるのが、複数の製品を1つの生産ラインで生産している場合に発生する段取り替え(※)に伴う非稼働時間の増加です。製品を変更するたびに生産を停止していると、設備の実質的な稼働率が下がり、生産効率が低下します。
※段取り替え…生産ラインで異なる製品を製造する際に、設備や工具を交換したり、設定を変更したりする作業のこと
また、原材料の調達面でも小ロット生産は不利になり、大量購入時のボリュームディスカウントの恩恵を得られないため、価格変動や関税の影響を直に受けやすくなります。
ただし、これらの課題発生は小ロット生産が主因ではなく、小ロット生産を戦略として設計せず、大量生産と同じように運用することで生じる課題です。小ロット生産に切り替える際は、生産効率とコストの変化を前提としたうえで、生産方式の変更で生じるマイナスを何で補填するかを明確にしておくことが重要です。
課題② SKU・商品バリエーションが増え、管理が複雑化する
小ロット生産は柔軟性の高い生産方式ですが万能ではありません。製品ごとに仕様や工程が異なるため、管理する情報が増えることで全体の状況が把握しづらくなります。その結果、生産管理や進捗管理が複雑化し、納期遅延やコスト増加などのリスクが高くなります。
小ロット生産によってSKUや商品バリエーションが増え、管理対象が細分化されることで、膨大な情報を管理・運用しきれなくなり、業務負荷が増大します。
実際に、製品バリエーションやSKUの増加など製品の複雑性が高まるほど、コスト・納期・運用効率などの指標に負の影響が生じやすくなることが、海外の学術論文(製造業分野のシステマティックレビュー)論文でも示されています。
◆製品バリエーション増加のリスクについて
The negative impact of variety on most performance measures is a phenomenon experienced across industries and is a word of warning for manufacturers seeking to expand product lines.
Before a firm invests in a variety-enabling strategy in operations, such as postponement, the firm could investigate the different levels of product complexity and how they affect their key performance indicators. Firms should also consider adding product variants which are similar to existing product variants, thus imposing a lower cost on the system.製品バリエーションがほとんどのパフォーマンス指標に与える負の影響は、業界を超えて経験される現象であり、製品ラインの拡大を目指す製造業者にとっての警告となる。
企業が生産における延期(ポストポーンメント)などのバリエーション対応戦略に投資する前に、製品の複雑性のさまざまなレベルと、それらが主要業績評価指標にどのように影響するかを調査すべきである。また企業は、既存の製品バリエーションに類似した製品バリエーションを追加することも検討すべきであり、そうすることでシステムに課されるコストを低く抑えることができる。引用:ResearchGate「Product complexity and operational performance: A systematic literature review」
小ロット生産を成功させるためには、増え続けるSKUや商品バリエーションを前提とした管理体制を構築し、複雑化する運用を制御し続けていくことが重要になります。
課題③ 商品情報の更新に伴うトラブルが頻発する
商品情報は継続的に変わり続けます。特に多品種小ロット生産では、仕様や原材料、価格、パッケージ、表示内容などをロットごとに調整している場合には、1つの商品情報に対してロットごとに異なるバージョンが生じやすくなります。
1つの情報に複数の分岐情報が存在していると、「最新情報は何か」「どこにその情報が使われているのか」を把握できない状況に陥り、商品情報の更新漏れや表記の不一致などのトラブルが頻発するようになります。
特にECや複数の販売チャネルを運用している場合には、複数の媒体・目的で商品情報が使用されます。その結果、以下のようなトラブルが発生しやすくなります。
◆商品情報の個別管理で発生しやすいトラブル
・担当者によって使用している情報が異なる
・どれが正しい情報なのか分からない
小ロット生産は柔軟な生産や仕様変更を可能にする一方で多品種を取り扱うことで商品情報が急激に増えるため、データ管理の難易度が高くなりがちです。
膨大なデータを適切に管理するための仕組みがない状態では、小ロット生産の機動力と柔軟性を引き出すことは難しいでしょう。
小ロット生産とECとが好相性の3つの理由
小ロット生産はECとの相性が非常に良い生産方式です。その理由は、ECのビジネスモデルにあります。
ECの売上は、市場トレンドの変化や広告施策、SNSでの拡散などによって売れ行きが大きく左右されるため、大量生産では予測が外れた際に過剰在庫を抱えるリスクが高くなります。こうした不確実性の高い環境では、小ロット生産で市場の反応を見ながら商品を投入していくほうが合理的です。
ここでは、小ロット生産とEC事業が好相性とされている3つの理由を解説します。
理由① 在庫リスクを抑えられる
適正な在庫管理を行っていなければ、商品を保管する倉庫の賃料、管理コスト、過剰在庫の値下げ販売や廃棄などによるコストが、利益を大きく圧迫します。
小ロット生産では売れるかどうか分からない商品を大量に抱える必要はなく、売れ行きを確認しながら段階的に生産量を増やすことで、在庫リスクを抑えた運営が可能になります。
特に新商品や改良品の投入を小ロット生産を前提とすることで、失敗した場合のダメージを最小限に抑えられるため、新たな施策に挑戦しやすくなります。
理由② 多品種展開を試しやすい
実店舗のような売り場スペースの制約がないECでは、色違い、サイズ違い、仕様違いなど多品種の商品の展開が容易です。
そのため、各バリエーションを小ロットで生産・販売して売上を検証し、売れ筋が見えてきた段階で生産量を増やしたり、販売商品を絞り込んだりすることも可能になります。
このようにテストを繰り返して商品ラインナップを最適化していくECの運営スタイルと小ロット生産は相性が良く、特にデータに基づいて売れる組み合わせを見極めて商品展開ができる点は、ECならではの強みです。
理由③ テスト販売と改善を繰り返しやすい
前項で述べたように、販売状況や顧客の反応をデータで把握できる点もECの特徴です。商品ページの閲覧状況、購入率、レビュー、問い合わせ内容などのデータを通じて改善策を練ることができます。小ロット生産であれば、初回販売の反応をもとに、仕様やデザインを見直し、次の生産で改善するといったサイクルも回しやすくなります。
こうした改善を前提とした商品づくりは、大量生産では実現しにくい考え方です。ECと小ロット生産を組み合わせることで、売れる商品を育てるサイクルを確立できます。
小ロット生産はEC事業における「成長戦略」
小ロット生産は、在庫リスクを抑えるための手段としても有効な生産方式ですが、その役割は単なるリスク回避にとどまりません。
ECでは、商品を市場に投入して初めて、需要や評価、改善点が明らかになります。事前にすべてを読み切ることは難しく、商品開発と市場検証を切り離して考えること自体が現実的ではありません。
こうした環境で小ロット生産は、商品を売りながら検証し、改善を重ねていくための戦略的な生産方式として機能し、「小量で試す→反応を見て改善する→売れ筋を見極めて生産・販売量を増やす」というサイクルを回していくことが可能になります。
このサイクルを前提としてECを運営することで、失敗のダメージを抑え、成功の確度が高い商品を育てることができます。
小ロット生産は守りの施策ではなく、市場の変化に応じて商品を磨き上げ、事業を前に進めるための攻めの成長戦略と言えるでしょう。
小ロット生産の商品情報管理の鍵となるPIM(ピム)
小ロット生産では、同じ商品でもロットごとに仕様が異なったり、加工内容が変わったりするため、商品情報が複雑に分岐します。そのため、Excelなどのファイルを使った人手による方法では、すぐに管理しきれなくなります。
どの情報が最新なのか、どの変更がどこに反映されているのかを把握できなくなり、更新漏れや情報の不整合が頻発するようになります。
特にECでは商品情報が複数の販売チャネルや商品ページに展開されるため、たった1つのデータ変更が広範に影響を及ぼすことも少なくありません。仕様や表示内容の更新が遅れると誤表示や問い合わせ増加につながりやすく、多品種展開をしている場合の商品情報管理の負荷は計り知れません。
商品情報の最適化と統合管理には「PIM(Product Information Management)」の導入が有効です。
PIM(ピム)は、商品に関するあらゆる情報を集約し、正しい情報を各部門や販売チャネルに自動で配布できる仕組みです。商品名や仕様、原材料、サイズ、価格、表示文言、画像などの商品情報を一元管理し、変更や差分の履歴も管理できます。
◆PIMによる商品情報管理(イメージ)
出典:筆者作成
PIMを導入することで、仕様差分やロット別情報を構造的に管理し、その情報を製造、営業、ECなどの各部門へ展開できるため、部門ごとの認識ズレを防ぐことができます。生産プロセスの課題でもある「情報伝達の複雑さ」も情報管理の仕組みで解消できる点もPIMの優れた特徴です。
複数の販売チャネルを展開している場合には各チャネルの運用の安定性にも直結します。特に情報の量が多く、更新頻度が高いECでは、誤表示が重大なトラブルにつながりかねません。PIMで商品情報を一元管理することでリスクを抑えた多品種小ロット生産が可能になります。
PIMについては関連記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
まとめ
小ロット生産が再注目されている背景には、消費者の価値観が変化したことによる市場ニーズの多様化があります。
小ロット生産には向き・不向きの事業があり、自社の商品特性や市場環境に対して、どの生産方式が合理的かを見極めることが重要です。
ECでは、小ロット生産は在庫リスクを抑えるための手段としてだけでなく、商品開発と市場検証を同時に進めるための戦略としても機能します。「小量で試す→反応を見て改善する→売れ筋を見極めて生産・販売量を増やす」というサイクルを確立することで、低リスクで着実な事業成長が可能になります。
このサイクルをスムーズに回すためには、商品情報を正しく管理・運用していくための仕組みが不可欠です。膨大な商品情報を管理するための仕組みとしてPIM(ピム)が有効です。
インターファクトリーが提供する「EBISU PIM(エビス ピム)」は、商品名や仕様、原材料、サイズ、価格、画像、表示文言といった商品情報を一元的に管理し、ECや基幹システムなど複数の業務システムへ正しい情報を展開するためのソリューションで、SKU単位で情報を体系化し、ロット別・仕様差分といった小ロット生産特有の情報も容易に管理できます。商品情報を起点に業務全体を整理できるため、小ロット生産が前提となるEC事業の強力な基盤となるでしょう。
EBISU PIMの詳細については、下記の公式サイトをご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。






















