「変種変量生産」とは、市場の頻繁に変動する需要に応じて、必要な製品(変種)を必要な数量(変量)分、迅速に供給するための生産モデルです。
オーダーごとに仕様が異なる製品を必要な数だけ作るという点で、受注生産やオーダーメイドに近い方式で、大量生産はできませんが、多様なニーズに柔軟に対応していくことができます。
近年は生産モデルの主流が、従来の少品種大量生産から多品種少量生産にシフトしていることもあり、製造業を中心に変種変量生産への関心も高まっています。
そうした背景には、消費者ニーズの多様化、製品ライフサイクルの短縮化、デジタル技術や生産設備の高度化などにより、より柔軟で個別最適なものづくりが求められるようになったことがあります。
変種変量生産では、企業が扱う商品情報は膨大になり、管理が複雑化します。そのため、増加するSKUや細かく分岐する製品の仕様などの多種多様なデータの管理と運用方法を再構築する必要があります。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当する筆者が、変種変量生産が求められる背景や課題と、変種変量生産を支える商品情報管理の方法について解説します。
変種変量生産が求められている3つの背景
変種変量生産は、多品種少量生産が前提となった市場において、さらに細分化されたニーズに対応していく生産モデルです。
市場の成熟とニーズの多様化により、品種や数量が固定される多品種少量生産では年々増加する製品バリエーションに対応できないケースが生じており、より柔軟な生産体制の変種変量生産への関心が高まっています。
変種変量生産が求められるようになった背景には、次の3つの要因があります。
要因① 消費者ニーズが「画一」から「個性」へ
戦後のモノが不足していた時代から消費市場が成熟したことは、生産モデルがシフトした最大の要因と言えるでしょう。
かつては冷蔵庫や洗濯機などを「持つこと」そのものにも価値があり、多くの消費者はマスメディアなどで「皆が持っている」と言われる製品を選ぶことに一定の満足を得る傾向がありました。しかし、生活水準が向上し、多くの人が必要なモノを所有している現代の消費者行動は、「自分に合っているか」「自分らしさを表現できるか」といった価値が重視されるようになっていると言われてます。
また、人々のライフスタイルや興味関心の多様化したことで、消費者ニーズが細分化しており、企業は多数に向けた製品だけでは十分な支持を得ることが難しく、パーソナライズした製品をタイムリーに提供できることが求められています。
さらに、流行の変化と技術の進化が加速していることで製品寿命(プロダクトライフサイクル)は短縮化しています(下図を参照)。
◆ヒット商品のライフサイクル
(注)
1. ヒット商品の定義は、自社にとって売れ筋商品のことをヒット商品としている。
2. ここでは、かつてヒットしていたが、現在は売れなくなった商品を集計している。
出典:厚生労働省職業安定局「雇用を取り巻く状況について」(2009年11月)
現代のように頻繁に変動する市場ニーズに対応していくために、企業にはより柔軟な生産体制への移行が求められているのです。
要因② 製造技術とITの飛躍的な進歩
製造技術とITの進歩もまた、生産モデルの変化を加速する要因です。
かつては、製品の仕様変更が生じるたびに、設備の稼働を停止し、設定変更を行わなくてはなりませんでした。しかし現在は、プログラムを切り替えることで動作を変更できる産業用ロボットや、数値制御で加工内容を柔軟に変えられるNC工作機械などが普及しています。
「ぶぎんレポート」の2022年5月号に掲載されたレポートでは、国内で生産されている工作機械におけるNC化率は2015年に約9割に達しています。
◆工作機械の生産額とNC化率(※)

※NC化率とは、工作機械全生産額に占めるNC工作機械生産額の割合を指す
出典:ぶぎん地域経済研究所「ぶぎんレポート No.265 2022年5月号│特別レポート『中小製造業における技術のデジタル化に関する研究』」
また、生産管理システムが高度化したことで、受注状況や在庫情報をもとに「何を」「いつ」「どれだけ」生産するかをリアルタイムで制御できるようになり、仕様が複雑な製品の計画的な生産が可能になりました。
さらに、3Dプリンタやデジタルツインなどの技術が、試作や小ロット生産のコストを大きく引き下げたことで、パーソナライズ製品や高度なカスタマイズ製品を、現実的なコストで生産できる環境が整備されつつあります。
要因③ 無在庫販売への関心の高まりとサプライチェーンの変化
事業運営のコスト効率化と環境変化も、生産モデルの変更に大きく影響します。
少品種大量生産では、需要予測を誤ると過剰在庫が発生し、経営を圧迫するリスクが高くなるため、経営者にとって「在庫を持たない商売」は魅力的な選択肢の1つとなります。
また、サプライチェーンがグローバル化したことで、低コストで大量生産を行う海外メーカーに価格競争を挑み続けることは難しくなっています。そこで、価格ではなく製品の「付加価値」で差別化を図るために、パーソナライズ製品や細分化された製品バリエーションが重視されるようになりました。
下図は2015年度の「ものづくり白書」で報告された、国内生産における優位性に対する企業の回答をまとめたグラフです。
◆国内で生産することの優位性(n=666)
資料:経済産業省調べ(15年12月)
備考:海外生産拠点を有する企業に対しての設問
備考:優先度の高いものを最大3つまで回答(1位~3位までを合計したもの)
出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「平成27年度ものづくり基盤技術の振興施策(概要)」(2016年5月)
上図を見ると、海外生産拠点を有する国内企業の4割以上が、「多品種少量生産に対応できる」「短納期に対応できる」「取引先のニーズを汲み取りやすい」といった点が国内生産による優位性、すなわち付加価値と捉えていることが分かります。
これら3つの要因によって、企業の競争力を維持するための手段の1つとして、変種変量生産が注目されているのです。
変種変量生産と多品種少量生産の違い
変種変量生産と多品種少量生産は、どちらも「大量生産ではなく、需要変動に柔軟に対応できる生産」という点が共通しているため混同されやすいのですが、概念と生産体制が明確に異なります。
変種変量生産と多品種少量生産のそれぞれの特徴を下表にまとめているので、2つの生産モデルを比較して違いを押さえておきましょう。
◆変種変量生産と多品種少量生産の特徴比較
| 変種変量生産 | 多品種少量生産 | |
|---|---|---|
| 概念 | 必要とされる製品を必要とされる量だけ提供する | いくつかの製品を少量ずつ提供する |
| 生産体制 | 受注内容に応じた製品の種類・仕様・数量で完成品を都度生産する | 市場ニーズの高いいくつかの製品を少量ずつ常に生産する |
| 生産量 | オーダーによって変動する | 製品ごとに決まっている |
| 在庫 | 在庫は極力持たない | ある程度の在庫を持つ |
| 重視するポイント | 需要変動への対応力と段取り替えコストの削減 | 需要分析に応じた製品種類とロットサイズの特定と最適化 |
出典:筆者作成
2つの生産モデルはいずれも消費者ニーズの多様化に適していますが、変種変量生産は受注内容によって製品の種類・仕様・数量が異なることを前提とする生産体制のため、製品仕様や生産量をあらかじめ決定することができません。
一方、多品種少量生産は市場ニーズの高いいくつかの製品を小さいロットで作るという生産体制のため、製品仕様と生産量をあらかじめ決定しておく必要があります。
生産体制の違いにより重視するポイントも異なります。多品種少量生産では、需要分析に基づく製品種類とロットサイズの特定と最適化が重要になり、変種変量生産では、需要変動への対応力と段取り替えコストの削減が重要になります。
変種変量生産が適している4つの業界
変種変量生産は、製品仕様が多岐にわたり、オーダーごとの要件差が大きい製品を取り扱っている業界に適した生産体制です。特に次の4つは、変種変量生産に適した業界と言えるでしょう。
① アパレル・ファッション業界
アパレル・ファッション業界は、以前から変種変量生産のニーズが高く、季節ごとに変わるデザインやカラー、素材やサイズなど、複数の細かい要素の組み合わせが消費者から期待されるため、商品バリエーションが増大しやすい業界の1つです。
需要を正確に予測することは難しいので在庫リスクと常に隣り合わせとなるため、近年は、初回生産を小ロットに抑えて実際の売れ行きを見て追加生産を行う生産体制を取る企業が増えています。
② 医療機器・歯科業界
医療機器・歯科業界では、パーソナライズが必要な複数の製品を取り扱います。人工関節や義足、インプラントなどは、患者一人一人の体格や症状に合わせて設計する必要があるため、従来は受注生産しか選択肢がありませんでした。
しかし、近年は3Dプリンタなどのデジタル技術が普及したことで、個別仕様の製品を効率よく生産できる環境が整備され始めており、一品一様の製品の品質と生産性を両立できる変種変量生産への関心が高まっています。
③ 航空宇宙・防衛産業
航空宇宙・防衛産業は、極めて高い精度と安全性が求められる業界です。航空機や人工衛星は機体ごとに仕様が異なるケースが多く、生産台数も限られています。そのため、あらかじめ規格化された製品を大量に作る生産体制は適しません。
そのため、高い品質要求を満たす変種変量生産を実現する方法として、一人または少数の熟練技術者が複数工程を担う「セル生産方式」や、高度な多軸加工機を活用した柔軟な生産方式が採用されています。
④ 産業用ロボット・工作機械製造業界
産業用ロボット・工作機械製造業界でも、変種変量生産が浸透しています。これらの製品は、導入先となる工場のスペースや用途、生産ライン構成に応じて細かな仕様調整が必要になるからです。
そのため、多くのメーカーが、共通の基本構造となるプラットフォームを構築したうえで、アームの長さやセンサー、制御装置などの部品のみを組み替える生産方式を採用しており、標準化とカスタマイズを両立させることで変種変量生産を実現しています。
変種変量生産を支える5つの設備
変種変量生産を実現するためには、製品の種類や数量が変動することを前提とした生産体制が欠かせません。ここでは、そのために必要となる代表的な5つの設備(機材/システム)を紹介します。
設備① 汎用工作機械(CNC旋盤/マシニングセンタ)
変種変量生産の中核となる設備が、CNC旋盤やマシニングセンタといった汎用工作機械です。特定の用途に特化した専用機とは異なり、コンピュータ制御によって加工内容を切り替えられる点が特徴です。
刃物や加工条件をプログラムで制御することで、同一設備でも形状や寸法の異なる部品を連続して加工できます。読み込むプログラムを変更するだけで別の製品の生産を開始できるため、品種切り替えのコストを大幅に削減できます。
設備② 協働ロボット(コボット)
協働ロボット(コボット)は、安全柵なしで人と同じ作業空間で稼働できるロボットで、導入やレイアウト変更の自由度が高い点が特徴です。
従来の産業用ロボットに比べ、配置換えやプログラミング(ティーチング)が容易で、生産内容に応じて配置や作業工程を柔軟に切り替えることができるため、生産量や製品構成に応じて運用の柔軟な変更が可能になります。
設備③ 3Dプリンタ(アディティブマニュファクチャリング)
3Dプリンタは、設計データをもとに材料を積層して成形する製造技術です。金型を必要とせず、データから直接製品を作り出せる点が最大の特徴です。
少量生産や試作品であっても同じ工程で製造できるため、「1個だけ」の特注品や頻繁な設計変更にも対応できます。個別仕様が前提となる製品の変種変量生産を可能にする重要な技術として活用が広がっています。
設備④ クイックチェンジ治具(ジョー、パレットなど)
変種変量生産では、品種切り替え時の「段取り替え」が生産効率に大きく影響します。その課題に対応する有効な仕組みがクイックチェンジ治具です。
治具やパレットを工具なしで交換できる構造により、従来は時間を要していた切り替え作業を短時間で行えるようになります。
段取り替えの時間を極限まで短縮し、設備の稼働を止めずに生産する製品を変更できるため、変種変量生産に欠かせない仕組みとなっています。
設備⑤ 生産管理システム(ERP/MES)
変種変量生産では、品種や数量が固定されないことを前提に生産が行われます。そのため、生産全体を統括する指示・管理の仕組みが欠かせません。
ERPやMESといった生産管理システムでは、受注情報や在庫状況をもとに生産計画を立案し、工程や進捗を一元的に管理するため、仕様変更や数量変動が発生した場合でも、計画を見直しながら再スケジューリングが可能になります。
①〜④のように柔軟な機材や生産管理システムを組み合わせることで、変種変量生産の安定運用が可能になります。
ECにおける変種変量生産とは?
製造現場では、変種変量生産を前提とした設備やシステムの整備が進み、製品種類や生産量の変動に応じてタイムリーに製品を生産するという考え方は一般的になりつつあり、変種変量生産で生産された製品が、ECサイトやオンライン受注システムを通じて販売されるケースも増えています。
これまでECでは、仕様・価格・構成が固定された商品を登録し、SKU単位で在庫や販売を管理する仕組みを基本としてきましたが、変種変量生産の製品の場合には、この前提に当てはまらない点に注意する必要があります。
変種変量生産の製品は、一般に以下のような特徴を持ちます。
◆変種変量生産の製品の特徴
・同じ商品名でも仕様や構成が異なる
・複数の要素の組み合わせにより商品バリエーションが増大する
・生産量を計画しづらい
その結果、ECでは「商品名は同じでも内容が都度違う」という受注が増えることになります。つまり、ECの商品データも変種変量化するということになります。
◆従来生産と変種変量生産における情報構造の違い
出典:筆者作成
具体的には、以下のようなケースが増えています。
◆変種変量生産における商品のバリエーション例
・受注生産やカスタマイズが前提となる商品
・法人取引では条件別の構成/価格が設定されている商品
・販売チャネルごとに異なる表現や管理要件がある商品
変種変量生産により生産の柔軟性が高まる一方で、ECの商品情報管理は複雑化し、EC運営に大きな負担が生じるようになります。
変種変量生産におけるEC運営の課題
商品構成や仕様が固定されない変種変量生産製品の管理は、シンプルな商品登録・在庫管理の仕組みでは対応しきれません。特にECでは、下記のような課題が生じます。
◆変種変量生産製品を販売する際のECの課題
・同じ商品でも注文ごとに個別に情報を管理する必要がある
・チャネルごとに商品情報が分断され、更新や反映漏れが発生しやすくなる
・商品マスタと受注情報の境界が曖昧になりやすくなる
・情報変更時の影響範囲が広範になり、運用負荷とヒューマンエラーが増加する
これらは、従来は固定的だった商品情報が、常に変動することを前提とするようになることで、新たに生じる課題です。
変種変量生産を支える商品情報基盤としての「PIM(ピム)」
変種変量生産は商品情報が常に変動することが前提となるため、従来の静的な商品マスタを軸とした商品情報管理では対応することが困難です。
そのため、動的な商品情報を統合管理し、一貫性を保ちながら各チャネルに必要な情報を自動配信できる「PIM(Product Information Management:商品情報管理)」の導入が求められます。
変種変量生産では、商品ごとに仕様や構成が変わるため、SKUの爆発的増加や注文ベースの情報差異が常に発生しますが、そうした状況でも、PIMは商品情報の「正しい統合ポイント」として機能し、以下のようなメリットをもたらします。
◆PIMの導入によって得られるメリット
・PIMの商品情報を更新すると、全チャネルのデータが自動同期される
・商品データのバリエーションや属性が増えても、構造化された情報として効率的に管理できる
・全チャネルで商品に関する一貫した情報発信が可能になる
このように、PIMは単なるデータ倉庫ではなく、情報の可視化・整合・再利用を実現する基盤として、変種変量生産時代における商品情報管理を支える役割を果たします。
変種変量生産によって商品情報は複雑性を増し、製造や物流だけでなく、販売側の情報処理インフラにも大きな影響を与えています。そのような状況の中で、PIMはECを含むデジタルチャネル全体における情報品質と運用効率を担保する不可欠な仕組みとなっています。
PIMについては、下記の関連記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
まとめ
消費者ニーズの多様化や製品の高度化に伴い、変種変量生産を採用する企業は今後ますます増えていくでしょう。
生産モデルが変化すると、商品情報管理にも新しい管理方法が求められます。
変種変量生産では、動的な商品情報を一元管理し、複雑化するデータを正しく整理し、いつでも活用できる基盤の整備が不可欠です。
インターファクトリーでは、クラウド型の商品情報管理サービス「EBISU PIM(エビス ピム)」を提供しています。商品データを一元管理し、ECや各種システムと連携することで、変種変量生産で求められる柔軟な商品情報管理を実現します。
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