近年のキャッシュレス決済の普及に伴い、特に現金や銀行振込などの従来の決済方法で店舗事業を運営している方の中には、「カード決済に対応したいけれど予算がない」あるいは「そもそも何をしたらいいのか分からない」と迷われている方もいるのではないでしょうか。
キャッシュレス決済手段の1つである「カード決済」に対応するためには3つの方法があり、どの方法も簡単に導入・利用することができます。
◆カード決済の3つの導入方法
② リンク型決済サービスを利用する(メールやLINEで決済用リンクを送付する)
③ ネットショップサービスのカード決済機能を利用する
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、カード決済の3つの導入方法を解説します。
カード決済の3つの導入方法とは?
カード決済の導入方法は主に3つあり、それぞれ使用方法が異なります。
◆カード決済の3つの導入方法[使用方法]
② リンク型決済サービスを利用する[メールやLINEで決済用リンクを送付する]
③ ネットショップサービスのカード決済機能を利用する[通販で使用する]
①~③のいずれの方法も、決済サービス会社が提供しているカード決済サービスを利用することで、低コストかつ短期間で導入・利用できます。また、カード決済サービスには固定費不要のプランもあるため、小規模事業者の場合でもコストを抑えた運用が可能です。
◆導入方法別の主なカード決済サービス
導入方法[使用方法] | 主なサービス例 |
① スマホ決済サービス[店頭] | ・Square ・Airペイ ・STORES 決済 ・楽天ペイ 等 |
② リンク型決済サービス[決済用リンク(URL)の送付] | ・Square オンラインチェックアウト ・PayPal ・Stripe 等 |
③ ネットショップサービスのカード決済機能[通販] | ・BASE ・STORES ネットショップ ・Squareオンラインビジネス 等 |
上表の①~③の導入方法と決済サービスについて、以下で詳しく解説します。
導入方法① スマホ決済サービスを利用する[店頭で使用する]
スマホ決済にはさまざまな方法がありますが、ここでは、店頭でカード決済用端末とスマートフォンアプリを利用する方法を紹介します(下図)。
◆カード決済用端末とスマートフォンアプリを利用したスマホ決済(例:Square)
以下は、国内の4つの代表的なスマホ決済サービスを比較した表です。
◆国内4社のスマホ決済サービスの比較表(2023年10月末時点)
出典:各サービスの公式サイト「Square」、「Airペイ」、「STORES 決済」、「楽天ペイ│店舗向けサービス」、「楽天ペイ│店舗決済サービス」(2023年10月末時点)を基に筆者作成
上表のようなサービスを利用することで、カード決済を簡単に導入できます。
表に示した代表的な4つのサービスは、いずれも決済手数料は3%前後です。
初期費用として決済用端末の料金が必要になりますが、無料(0円)サービスやキャンペーンを実施している場合もあるので、導入を検討する際は、必ず公式サイトで最新情報を確認するようにしましょう。
また上表の4つのサービスでは、カード決済以外の以下のキャッシュレス決済にも対応しています。
◆カード決済以外のキャッシュレス決済
・電子マネー決済(交通系電子マネー等)
スマホ決済を導入する場合には、カード決済以外の決済方法にも対応できるようにしておくことをおすすめします。キャッシュレス決済の選択肢を増やすことで来店した顧客の利便性を高めることができ、日本のキャッシュレス化を促進することにもつながります。
スマホ決済の導入ステップ
スマホ決済は、以下の5つのステップで導入できます。
◆スマホ決済の5つの導入ステップ
② 審査を受ける
③ 審査通過後に、サービスのアカウントが発行される
④ 決済用端末を入手して、スマホアプリのダウンロードと設定を行う
⑤ 店舗でスマホ決済の運用を開始する
スマホ決済サービスの申し込み後、おおよそ1~2週間程度でスマホ決済の運用を開始できます。筆者がイベント販売時の決済でスマホ決済を利用したときは、1週間ほどで導入することができました。
決済用端末は各サービスの公式サイトで購入できますが、審査通過後から運用開始までの期間を短縮したい場合には、ビックカメラなどの大型家電店舗で決済用端末を販売している場合もあるので探してみるとよいでしょう。
決済用端末が届いたら、スマホアプリをダウンロードして必要な設定と動作テストを実施します。なお、動作テストで入力した決済情報はキャンセルできます。キャンセル手順の訓練も兼ねて、運用開始前に必ずキャンセルしておくようにしましょう。
導入方法② リンク型決済サービスを利用する[メールやLINEで決済用リンクを送付する]
リンク型決済は、カード決済サービスへのリンク用URLを顧客にメールやLINEなどで送り、顧客は届いたURLをクリックして支払うことができる決済方法です。
例えば、学習塾などの教育関連サービスなどの月会費の支払いでは、現金や銀行振込という従来の決済方法にしか対応していないという場合も多いと思いますが、リンク型決済を導入すると、顧客はメールやLINEで送られてくるリンク用URLをクリックして、どこでもすぐに支払いができるようになるので、現金を準備したり持ち歩いたりする手間がなくなります。
リンク型決済は次のようなシーンで利用されています。
◆リンク型決済の利用シーン(例)
・寄付を募るために、SNSや公式サイトにカード決済サービスのリンク用URLを設置する
・宿泊施設やサロン、飲食店などの事前決済用に、メールやLINE、SMSなどでカード決済サービスのリンク用URLを送付する
以下は、国内の3つの代表的なリンク型決済サービスを比較した表です。
◆国内3社のリンク型決済サービスの比較表(2023年10月末時点)
出典:各サービスの公式サイト「Square オンラインチェックアウト」、「PayPal」、「Stripe」、(2023年10月末時点)を基に筆者作成
上表の「継続課金」について、例えば、特定継続的役務に該当するサロンや学習塾などでは、リンク型決済を使った継続課金を可能にすることでサービスの利便性を高められるのですが、決済会社の審査が通らなくて導入できない可能性もあります。
Square(スクエア)では他の決済代行会社と異なる審査プロセスを採用しているため、規定の条件を満たしていれば特定継続的役務サービスの提供事業者でも利用できる可能性がありますので、あきらめずに検討してみるとよいでしょう。
表で比較した3つのサービス(Square、PayPal、Stripe)はいずれも決済手数料を支払うだけで利用できます。ただし、PayPalは決済手数料に加えて1回の決済ごとに40円を支払う必要があり、総合的に見ると割高となる可能性もあるため、決済サービスの選定時には、トータルコストを試算して各サービスを比較検討することをおすすめします。
リンク型決済の導入手順
リンク型決済は、以下の4つのステップで導入できます。
◆リンク決済機能の4つの導入ステップ
② 審査を受ける
③ 審査通過後、アカウントが発行される
④ リンク型決済の運用を開始する
リンク型決済の導入はとても簡単です。申し込み後、審査が通ればすぐに使い始めることができます。
顧客がリンク型決済で支払いを完了した場合には、事前に登録したメールアドレスに通知が届きます。また、スマホアプリやWebブラウザの管理画面でも、支払い状況などを確認することも可能です。
導入方法①で紹介したスマホ決済と同様に、運用開始前には必ず動作テストを行うようにしましょう。
導入方法③ ネットショップサービスのカード決済機能を利用する[通販で使用する]
実店舗を経営している方でまだネットショップを開設していない場合には、固定費無料のネットショップサービスのカード決済機能を利用することをおすすめします。
新たにネットショップを開設するということは新規事業を始めるということになるため、軌道にのるまでは、固定費が大きな負担となります。
しかし、固定費がかからないサービスを利用することで、ネットショップであまり商品が売れなかったとしても運用コストは現状とほとんど変わらないため、既存の店舗経営とネットショップ運営を並行して継続していくことができます。
以下は、国内の代表的な3つの固定費不要のネットショップサービスのカード決済機能を比較した表です。
◆国内3社の固定費不要のネットショップサービスの比較表(2023年10月末時点)
出典:各サービスの公式サイト「BASE」、「STORES ネットショップ」、「Square オンラインビジネス」(2023年10月末時点)を基に筆者作成
総務省の調査によると、2022年のネットショップの買い物でクレジットカード決済を利用するという割合は75.9%※で、最も多く利用されています。
※出典:総務省 情報流通行政局「令和4年 通信利用動向調査報告書(世帯編)」(2023年5月29日発表)
そのため、いずれのネットショップサービスでも、カード決済機能は標準機能として提供されています。もちろん、BASEやSTORES ネットショップのようにコンビニ決済や銀行振込決済にも対応しているサービスもありますので、自社にとって必要な決済方法を備えているサービスを選ぶようにしましょう。
ネットショップの開設とカード決済の導入手順
ネットショップの開設とカード決済機能の導入は、次の6つのステップで行います。
◆ネットショップの開設とカード決済導入の6つのステップ
② カード決済の審査を受ける
③ 審査通過後、アカウントが発行される
④ ネットショップのWebデザインをテンプレートから選び、基本項目を登録する
⑤ 商品情報を登録する
⑥ ネットショップを公開し、カード決済の運用を開始する
ネットショップサービスを利用すると簡単にネットショップを作成・開設できますが、もしかすると、以下の作業工程に時間がかかってしまうかもしれません。
◆ネットショップの開設で特に時間がかかりやすい作業
・商品情報を登録する
筆者は現在STORESでデジタルコンテンツを販売しているのですが、ネットショップの開設時には、デザインと文言を決めるまでに約1か月を要しました。
また商品情報の登録も実は時間がかかる作業です。筆者の経験上、商品数が少ない場合でも最低1週間程度、商品数が多い場合には最低でも1か月程度の登録期間をあらかじめ導入スケジュールに組み込んでおくようにしましょう。
カード決済手数料(月額)の試算例
カード決済サービスでは1回の決済ごとに手数料を支払う必要がありますので、導入検討時には、決済手数料を試算しておきましょう。
以下に、筆者が作成した売上別の決済手数料(月額)の試算表を掲載していますので、自社ではどれくらい決済手数料がかかるのか参考にしてみてください。
◆月ごとの売上別カード決済手数料の試算表(目安)
決済方法と 手数料率 |
月間売上 1万円 |
月間売上 5万円 |
月間売上 10万円 |
月間売上 30万円 |
月間売上 50万円 |
月間売上 100万円 |
スマホ決済 3.24% |
324円 | 1,620円 | 3,240円 | 9,720円 | 16,200円 | 32,400円 |
リンク型決済 3.60% |
360円 | 1,800円 | 3,600円 | 10,800円 | 18,000円 | 36,000円 |
ネットショップ決済 5.00% |
500円 | 2,500円 | 5,000円 | 15,000円 | 25,000円 | 50,000円 |
カード決済手数料以外にかかる費用としては、ネットショップの売上が入金される際の振込手数料などがあります。振込手数料の有無や金額等はサービスによって異なるので、売上の入金タイミングとあわせて確認しておくようにしましょう。
カード決済の導入が販売機会を拡大する
カード決済に対応することで、販売機会の拡大につながる可能性があります。今回は、すぐに効果が期待できる3つの例を紹介します。
例① インバウンド需要
ニッセイ基礎研究所の調査報告によると、2023年6月には訪日外国人数がコロナ禍前の約7割まで回復しており、韓国、台湾、アメリカ、中国などの旅行者が日本を訪れています。
参考:ニッセイ基礎研究所「訪日外国人消費の動向-円安で消費額はコロナ禍前の95%、インバウンドもモノからコトへ」(2023年8月9日掲載)
海外、特に韓国やアメリカでは「クレジットカード大国」と呼ばれるほどクレジットカード決済が普及しています。そのため、インバウンド需要をつかむためにはカード決済の導入が不可欠です。
また、単にカード決済を導入するだけでなく、店舗の入口やレジ周りに以下のようなシールを貼るなどして、カード決済対応店であることが誰にでもすぐに分かるようにしておくことも大切です。
決済用端末には以下のようなシールが付属している場合が多いので、ぜひ活用しましょう。
◆決済用端末に付属しているシール(例:Square)
国内旅行が大好きな筆者は観光地などにもよく足を運ぶのですが、先日高尾山を訪れた際に、ケーブルカー乗り場の近くのお土産物店で、外国人旅行者と店員が次のような会話をしているのが聞こえました。
◆外国人旅行者と観光地のお土産物店の店員との会話
店員「Sorry, Cash only.」(ごめんなさい、支払いは現金のみです)
その後、外国人旅行者は商品を買うのを諦めて去っていきました。つまり、そのお店はカード決済ができないというだけで販売機会を逃したことになり、これは非常にもったいないことだと思います。その時は多くの人が高尾山を訪れており、私が見る限りでもそのうちの2~3割が外国人旅行者のようでしたし、日本人の私でも、現金だけでなく、カードで支払いができると、現金の持ち合わせを気にすることなく買い物を楽しめるようになるため購入意欲が高まります。
外国人旅行者や観光客が訪れる地域で店舗を運営している場合には、一度スマホ決済を導入して、導入前後1か月間の収益を比較してみるとよいかもしれません。
例② 通販需要
旅行などで実店舗を訪れたユーザーに向けた通販の場合などでも、決済方法は複数用意しておくことをおすすめします。
筆者は北海道のある食品が好きでよく購入するのですが、そのお店では代引き決済しか選べず、商品価格は800円なのですが代引き料金が265円かかるので、少しお得感が損なわれたような気持ちになります。また、荷物を受け取るために、現金を用意しておく必要があるため、購入するたびに少し手間だなと感じます。
地方の特産品などを販売しているお店の通販では、キャッシュレス決済に未対応で従来の決済方法にしか対応していないという場合も少なくありません。
◆従来の決済方法
・銀行振込
これらの決済方法の場合には手数料が必要になるため、支払い額が少ない場合には手数料の高さが気になりますし、キャッシュレス決済に慣れている顧客にとっては少し面倒に感じられるでしょう。
例えば、リンク型決済では、注文メールに決済URLを付けて返信することで、事前決済も可能になり、顧客も手軽に支払いをすることができます。
また、単品通販の場合には短期間でネットショップを開設できるので、ネットショップのカード決済機能を使用するのもよいかもしれません。
決済方法の選択肢を増やすことで通販の利便性を高めるとともに販売機会を拡大していきましょう。
例③ 予約サービスの事前決済
「ノーショー」と呼ばれる、ホテルや旅館、飲食店の無断キャンセルは大きな問題の一つです。特に宿泊施設などではノーショーによる損失が大打撃となります。
参考:朝日新聞デジタル「正月の宿泊無断キャンセル、業界悩ます『ノーショー』」(2020年1月21日掲載)
「ノーショー」の対策として「事前決済」という方法があります。予約時に決済用URLを送付し、入金が完了すると予約が成立するというルールにすることで、「ノーショー」による損失を回避することができます。
「分割払い」「リボ払い」「ボーナス払い」に対応したスマホ決済サービス
ジュエリーショップやハイブランドのアパレルショップなどでは、店頭でのカード決済時に分割払いやボーナス払いの需要があるかもしれません。
例えば、以下のスマホ決済では、カード決済時の分割払い、リボ払い、ボーナス払いにも対応しています。
◆「分割払い」「リボ払い」「ボーナス払い」に対応しているスマホ決済サービス
ただし、クレジットカードのサービスで、購入時に一括払いで指定した取引をあとから分割払いやリボ払いなどに変更できる「あと分割」や「あとリボ」などの機能が提供されている場合もありますので、スマホ決済サービスに必ず必要な機能というわけではありません。
スマホ決済、リンク型決済、ネットショップのカード決済機能を1つのサービスで運用する
スマホ決済、リンク型決済、ネットショップのカード決済機能を、1つのサービスで運用したい場合には、Squareなどのように1つのサービスで3つの決済方法に対応しているサービスを選択しましょう。
決済機能を1つのサービスに統合することで、管理画面や売上の入金タイミングを統合できるなどの運用メリットがあります。
まとめ
ひと昔前までは、カード決済機能の導入は初期費用も決済手数料も高く、また運用開始までに時間とコストがかかるなど、事業者側の負担が大きかったのですが、現在はスマホ決済、リンク型決済、ネットショップサービスのカード決済機能などの多様なカード決済の機能を手軽に利用できるようになっています。
本記事で紹介したサービスはいずれも初期費用・固定費用がかからないため、興味のあるサービスがあったら、ぜひ気軽に申し込んで実際に効果を試してみてください。