誰でもネットショップを気軽に持てるようになった一方で、ネットショップの廃業率は非常に高いと言われています。
多くのショップが廃業に追い込まれてしまう中で、順調な運営を続けていくためには、プラットフォームや決済方法、販売方法などを検討する際に、廃業リスクの低いものを選ぶと安心です。また、競合他社との差別化を図り、自社の商品・サービスを選んでもらえるよう、さまざまな工夫を凝らす必要があります。
本記事では、ネットショップの廃業率の現状と、ネットショップを順調に運営し続けるための具体的なポイントについて解説します。
目次
① ネットショップの廃業率の現状
② ネットショップの廃業率が高い理由
③ ネットショップを廃業させないための7つのポイント
④ リスクの低いネットショップの始め方7選
⑤ ネットショップ運営者が覚えておきたいサービス選定の基礎
ネットショップの廃業率の現状
ネットショップの現状を、市場規模と廃業率のそれぞれの視点から見ていきましょう。
① 現在のネットショップの市場規模・動向
令和5年に経済産業省が発表したデータによると、2022年のBtoC-ECの市場規模は22兆7,449億円で、前年と比べて2兆499億円増加しました。
BtoC-EC市場は物販系、サービス(非デジタル)系、デジタル系分野の3つの分野に分けられます。物販系分野は前年比で 5.37%の増加、サービス系分野は32.43%と大幅に拡大しましたが、デジタル系分野の前年比はマイナス 6.10%となりました。
出典(データ):経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2023年8月31日掲載)
② ネットショップの廃棄率について
ネットショップの廃業率を調査した詳細なデータはありませんが、ネットショップは開設の障壁が低く競争が激しいことから、個人事業主も含めると廃業率は非常に高いと考えられます。
東京商工リサーチの発表によると、2022年度の無店舗小売業(通信販売小売業)の倒産は86件あり、前年度と比べて10.2%の増加となりました。これは2008年度以降、2番目に多い廃業数とのことです。このうち新型コロナウイルス関連の倒産は25件で、前年度の1.7倍増となっています。
ネットショップをはじめとする無店舗小売業は、時間や場所にとらわれず、多種多様な商品を販売することが可能です。店舗の賃料や人件費などのコストを抑えられるなどのメリットから、特にコロナ禍以降、数多くの事業者が参入しました。
大手の家電量販店などもネットショップに注力しはじめ、競争はさらに激化しています。資本の少ない小規模な事業者が、このような厳しい世界で勝ち残っていくためには、自社ならではの「強み」で差別化を図り、魅力的な商品の開発を継続していく必要があります。
参考:東京商工リサーチ「2022年度の『無店舗小売業』倒産 『飲食料品』などが押し上げ、3年ぶりに増加」(2023年5月1日掲載)
ネットショップの廃業率が高い理由
東京商工リサーチの発表によると、2022年度の事業倒産の原因は「販売不振」が55件で第1位、次に「事業上の失敗」が9件、「他社倒産の余波」が7件と続いています。
これらの無店舗小売業の規模について、従業員数別で見ると、10人未満の小規模事業者が84件となっており、全体の9割を占めています。なお、当該調査には個人のデータが含まれていないため、実際の廃業率はさらに高いと推測されます。
参考:東京商工リサーチ「2022年度の『無店舗小売業』倒産 『飲食料品』などが押し上げ、3年ぶりに増加」(2023年5月1日掲載)
EC市場拡大に伴い、同業他社との競争が激化している状況下では、資金力に制約のある小規模事業者は淘汰の波にのまれやすく、事業の継続が困難なほどの販売不振に陥ってしまうことがあるのです。
しかし、ネットショップの運営は、いくつかのポイントを見直すことで改善が期待できます。事業の継続を妨げてしまう原因としては、以下の7つが考えられます。
◆ネットショップの事業継続を妨げてしまう7つの原因
② コンセプトを明確に定めていない
③ 他社との差別化が足りない
④ 経費を考慮した目標利益を設定していない
⑤ 集客に力が入っていない
⑥ サイトが分かりにくい
⑦ 顧客へのフォローが足りない
それぞれのポイントについて、対処法を以下で解説していきます。
ネットショップを廃業させないための7つのポイント
ここからは、上記のネットショップが廃業となってしまう7つの原因について、改善すべきポイントを解説していきます。特にこれから個人でネットショップを始めたいという方は、開業前にきちんと戦略を練っておく必要があるため、必見です。
① 市場や競合他社について調べる
ネットショップを成功させるために、まずは参入を検討している市場や競合他社について把握しておきましょう。
具体的には、どのような顧客層が自社の提供する商品に似ている物を買っているのか、その市場規模はどれくらいか、競合他社にはどのようなところがあり、どのような売り方をしているかなどについて調べる必要があります。それらを踏まえたうえで、自社の立ち位置を確認しましょう。
② コンセプトを明確に定める
コンセプトとは、顧客に提供する価値や世界観のことです。自社のネットショップのコンセプトを明確に定めることで訴求力が増し、ユーザーの購買に対する動機付けにつながります。
明確なコンセプトを定めるためには、自身のネットショップの特徴や強みを洗い出すことが重要です。競合他社の傾向を参考に、自社が他社より優れている点や自社にしか提供できない価値について、細かく書き出してまとめてみましょう。
また、ネットショップのターゲットとなる顧客層を細分化し、年齢や嗜好などを細かく設定しておきましょう。すると、コンセプトやターゲットに合わせた施策を検討する際に、方向性が定まりやすくなります。
③ 他社との差別化
ネットショップは競争が激しく、自社の商品・サービスと検索キーワードが重複するショップすべてがライバルとなります。その中で勝ち残るには、先に述べた市場調査や競合調査を行ったうえで、他社との差別化を図ることが重要です。差別化のポイントとしては、「コンセプト」「商品」「価格」「購買体験」「集客」などが挙げられます。
また、ユーザーが自社のネットショップを訪れたとしても、商品やサービスの内容がよく分からない場合、単純に価格だけで比較されてしまうこともあります。そのため、コンセプトや商品の良さの「伝え方」も大切です。
④ 事前に利益・コストの見積を行う
ネットショップを開設する際は、前もって商品原価や各種コストの見積もりを行い、利益率を確認しておきましょう。
具体的なコストの例としては、商品の仕入れや製造コスト、ネットショップに掲載する商品画像を撮影するための機材のコスト、広告やプロモーションにかかるコスト、梱包や配送料などのコストなどが挙げられます。
商品の仕入れ等を行う前に、これらのコストを考慮した利益率を把握しておき、支出が売上より多くならないようにしましょう。また、開設後も定期的な確認が必要です。
なお、融資を受ける際のポイントや補助金に関する情報は以下の記事を参考にしてください。
関連記事:
・ネットショップの開業に必要な資金の相場とは?運用にかかる費用も解説
・【2024年版】ネットショップの開業やリニューアルで申請できる補助金とは
⑤ 集客力の向上
自社で魅力的な商品やサービスを提供していても、それを認知してもらえなければ、売上にはつながりません。ネットショップの運営において、認知度を向上させ、集客力アップを図ることはとても重要です。
集客の方法としては、SNSマーケティングやリスティング広告、ブログ、メルマガなどがあります。いずれもターゲット層へ的確なリーチができるような対策を講じることが必要です。また、アクセス解析ツールの導入や、SEO対策・SNS運用の知識も、集客力アップの一助となります。
こうした集客方法を活用し、認知度を向上させることで、新規ユーザーを獲得できる可能性も上がります。さらに、リピーターの増加も期待でき、安定的な売上につながります。
⑥ 見やすいWebサイトづくり
ネットショップのサイトづくりにおいては、ユーザー目線で見やすさや使いやすさに配慮した設計が不可欠です。ユーザーがネットショップを訪れた際に、商品を探しにくかったり、サイトが使いづらかったりすると購入につながらないためです。
こうした課題を解決するために、価格や購入ボタン(CTAボタン)を目立たせる、スマートフォンでの表示に対応させるなど、ユーザーのアクションを引き出すようなシンプルで分かりやすいデザインを心掛けましょう。
また、決済方法の選択肢が少なかったり、発送や返品方法、ショップの連絡先などが明記されていなかったりした場合、ネットショップに対する安全性や信頼性を失うリスクがあるため、注意が必要です。
⑦ 顧客へのフォロー
ネットショップの安定的な売上を維持するためには、顧客へのフォローを丁寧に行い、リピーターを獲得することが重要になってきます。
もし、問い合わせ対応や返信の早さに不満があった場合、ユーザーがリピートしてくれる可能性は低くなるでしょう。顧客の満足度を向上させ、リピーターを増やすには、アフターフォローのメールを送るなど、きめ細やかな対応が求められます。
また、アフターフォローと同時にクーポンを配布する、購入ごとにポイントを付与するといった方法も、リピーターの獲得に有効です。常に顧客を飽きさせない工夫をしましょう。
リピーターの獲得は、新規顧客の獲得に比べてコストがかかりません。そのため、ネットショップの効率的な収益向上を図るうえで、リピーターは非常に大切な存在といえます。
リスクの低いネットショップの始め方7選
廃業などのリスクを抑えてネットショップを順調に運営していくために、開業段階から意識しておきたい7つのポイントを解説します。
① 月額費用の低い構築サービスやプラットフォームを活用する
ネットショップの開設・運営には初期費用や月額費用が必要ですが、これらのコストを抑えることが重要です。
ネットショップは「ASP」「ショッピングモール」「オープンソース」「パッケージ」「フルスクラッチ」「クラウドEC」のいずれかで構築しますが、費用を抑えてスモールスタートしたい場合は「ASP」「ショッピングモール」あたりから検討するのがおすすめです。
適切なサービスの選択やコスト削減の方法を検討し、コスト効率の良い運営を心掛けましょう。
ネットショップの構築方法やサービスの選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
② 決済方法を代金回収のしやすいものにする
顧客からの入金確認後に発注することで、商品を送っても支払いをしてもらえないリスクや、支払い期限の月ずれによる資金繰りの不安を軽減できます。
クレジットカードであれば、注文と同時に決済ができるので、代金回収の遅延やリスクは比較的少ないでしょう。
③ 受注生産で販売する(無在庫販売)
ハンドメイドやクラフトアートなど、自身の作品を販売するなら、受注生産の体制をとると良いでしょう。
注文が入ってから製作するため、在庫を抱えることなくネットショップを運営できます。
④ 委託販売形式をとる(無在庫販売)
委託販売形式とは、自身のネットショップに注文が入り次第、商品の生産事業者に連絡し、そのまま直送してもらう方法です。販売委託手数料が収益となります。無在庫販売の一つで、過剰な在庫を抱えることなく商品数を増やせます。
⑤ 多店舗展開をする
自社サイトの運営だけでなく、大型ショッピングモールに出店したり、複数のショッピングモールへの出店をしたりする方法があります。
このような多店舗展開は、利益の増加やブランディング、リスク分散などに有効です。
⑥ セキュリティ対策を万全にする
セキュリティ対策を万全にしておき、ネットショップの安全性や信頼性を維持することも重要です。
具体的には、自社サイトのSSL対応、カート機能のPCI DSS対応などが挙げられます。また、定期的なセキュリティテストの実施やパスワードの変更、不正アクセスの監視、システムのアップデートも大切です。
関連記事:
・EC担当も知っておくべきWebサイトのセキュリティ対策
・クレジットカード決済を扱う事業者が知るべきセキュリティ対策
⑦ 法を遵守する
ネットショップで扱う商品には、販売者による届け出が必要なものや、宣伝に使用する文言に法律上の制限が存在するものがあります。違反した場合、罰則や罰金が課されたり、訴訟のリスクが生じたりすることがあります。そのため、ネットショップに関係する法的な知識や最新の制度は押さえておきましょう。
◆すべてのネットショップに関係する主な法律
◆販売する商品によって関係する主な法律
ネットショップ運営者が覚えておきたいサービス選定の基礎
ネットショップを開業・運営するにあたり、適切なサービスを選定して活用していくことになります。ここでは、コストを抑えた適切なサービスの選定にも役立つ、構築と仕入れの基礎についておさらいします。
① ネットショップ構築サービスの基礎
ネットショップを構築するサービスには、有料のものと無料のものがあります。それぞれのメリット、デメリットを解説していきます。
無料のネットショップ構築サービス
月額の固定費がかからないため、売上が少ない期間や資金力に余裕がない個人事業主や小規模事業者でも、手軽にネットショップを始められることがメリットです。また、単価が安ければ安いほど売上における手数料の占める割合が高くなるため、利益率を上げることがポイントです。
デメリットとしては、拡張性が低いため、デザインや機能のカスタマイズに限界があり、自社の独自性を持たせることが難しいことが挙げられます。また、外部サービスと連携ができないこともあります。
有料のネットショップ構築サービス
クーポンの発行やタイムセール、会員ポイント機能や会員ランクといった販促機能をはじめ、豊富な決済機能があることで機会損失を防ぐことができるメリットがあります。また、サイトのデザインの選択肢も幅広くあり、メールや電話などのサポート体制やマニュアルも充実しています。
デメリットとしては、当然ながら費用がかかる点が挙げられます。料金プランがいくつか設定されていますが、低価格帯のサービスの場合は、無料サービスと大差ないケースもあります。
② ネットショップの商品仕入れの基礎
ネットショップは、実店舗のようにお客様にその場で商品を手渡すことはありません。そのため、ネットショップ独自の方法で商品を仕入れ、届けることができます。代表的な仕入れ方法には以下の6つがあり、自社の状況や人材・スキルに合った方法を選ぶことになります。
仕入れサービスを利用する
インターネット上にはさまざまな仕入れサイトがあります。「仕入れサイト」といったキーワードで検索するほか、仕入れサイトが掲載されているまとめ記事を調べることで、自社の需要にマッチしたサイトを探すことができます。
海外から仕入れる
海外のサイトでは、国内のサイトより安価で仕入れることができるものもあります。また、国内に流通していない商品にも出会える可能性があります。アメリカのAmazonやeBay、中国ではAliExpressなどのサービスが有名です。
また、海外の展示会等に行き、出展メーカーと交渉して仕入れるか、海外の店舗で直接買い付けるという方法もあります。そのため英語や中国語など、外国語でのコミュニケーションが必要になります。
展示会や見本市で交渉する
展示会や見本市に出店しているショップの商品で気に入った物があれば、交渉して仕入れます。自分が見て興味を持った商品を販売できるため、商品の良さをアピールしやすいという利点があります。
メーカーや生産者から仕入れる
メーカーや生産者に問い合わせて、直接商品を仕入れる方法です。卸問屋や小売店などを介さないため、仕入れコストが抑えられます。
卸売業者から仕入れる
今はインターネット上でも商品を仕入れることができます。アパレルなどジャンルに特化したWebサイトや、あらゆるジャンルを扱う総合ネット卸も存在しています。法人でなければ利用登録できないサイトもありますので、個人事業者が利用登録できるかどうか確認しましょう。
ドロップシッピング(無在庫販売)を利用する
在庫を持たずにネットショップに商品を掲載し、注文を受けてからメーカーや卸売業者から購入者へ商品を直接配送するシステムです。在庫を抱えずに済む利点がありますが、単価が高くなったり、人気商品が売り切れてしまったりするリスクもあります。
まとめ
ネットショップは、事業の規模を問わず開設できるため参入のハードルが低い一方、競争が激しく廃業率が高いことが懸念されます。ネットショップを廃業させないために、本記事では運営のポイントとして7つの項目を解説しました。
・市場や競合他社について調べる
・コンセプトを明確に定める
・他社との差別化
・経費を考慮した目標利益を設定する
・集客力の向上
・見やすいWebサイトづくり
・顧客へのフォロー
これらのポイントを押さえることで、競合他社に埋もれにくくなり、自社のネットショップを維持しやすくなるでしょう。なかでも「顧客へのフォロー」はリピーター獲得につながるため、安定的な売上を図る上で重要なポイントといえます。
また、ネットショップ開設後は、在庫切れによる販売機会の損失や、大量の在庫を抱えることのないよう、適切な在庫管理も重要です。
このように、さまざまな廃業リスクを最小限に抑えられるよう日々の努力を重ね、ユーザーからの信頼を獲得していくことが大切です。自社のコンセプトに合った方法でネットショップを構築し、ユーザーファーストに基づいた運営を心がけていきましょう。
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