自社の基幹業務とその他の業務のシステムを統合してデータを利活用したいけれど、バラバラに稼働しているシステムを「どうやってつなげればいいのか」「そもそもつなげることができるのか」という不安や悩みを抱え、二の足を踏んでいる企業もあると思います。
基幹システムとその他のシステムを連携する際に最初に確認すべき点は、自社の基幹システムが最新のシステム連携手法(API連携やデータ連携ツールなど)に対応できるかどうかです。もし対応できない場合は、連携機能のための大規模な開発が必要となったり、連携が困難だったりするため、基幹システムのリプレースが最善の方法となることもあります。
基幹システムとの連携が求められることが多いシステム/ツールとして、下記の7種が挙げられます。
◆基幹システムとの連携ニーズが高い7種のシステム/ツール(例)
② BI
③ 顧客管理(CRM)
④ 与信管理
⑤ 請求書発行
⑥ EDI
⑦ EC
上記はいずれも、基幹システムとシームレスに連携させることで、DX化と業務効率化に大きな効果が期待できる代表的なシステム/ツールです。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、基幹システムと連携すべき7種の業務システムと、API連携が可能なECシステムの構築方法を紹介します。
「基幹システム」と呼ばれる6つの主要な機能/システム
基幹システムは、事業の基幹となる情報を管理し、基幹業務のスムーズな遂行を支援するためのシステムです。「基幹」と呼ばれるシステムの主要機能は企業により異なりますが、一般に基幹システム群に含まれる代表的な機能/システムには、次の6つがあります。
◆基幹システム群に含まれる代表的な6つの機能/システム
② 生産管理/仕入管理
③ 在庫管理
④ 販売管理
⑤ 仕入管理
⑥ 人事給与管理
下図は、上の6つの機能/システムで構成される基幹システム群における、各機能の連携イメージです。
◆6つの機能/システムを持つ基幹システム群の連携イメージ
出典(画像):筆者作成
上図では、中央に「③在庫管理」「②生産管理」という製造企業の中心となる機能/システムがあり、その周囲を「①会計管理」(とその下の「⑥人事給与管理」)、「⑤仕入管理」「④販売管理」が取り囲んでいます。
図左端の「仕入先」との情報交換は「⑥仕入管理」の各機能を、図右端の「得意先」との情報交換は「④販売管理」の各機能を介して管理します。
「④販売管理」「⑥仕入管理」と「③在庫管理」「②生産管理」は、リアルタイムで連携しており、在庫変動や生産計画/実績、販売、仕入などの情報が共有できる構成になっています。また、「④販売管理」と「⑥仕入管理」で生成された取引情報は「①会計管理」に集約し、そこから人件費等の必要な情報を「⑥人事給与管理」と共有します。
システム間でデータ連携を行うための3つの方法
システム間でデータを連携する方法には、以下の3つがあります。
◆データ連携の3つの方法と各特長の比較表
| ①API連携 | ②ファイル連携 | ③データベース(DB)連携 | |
|---|---|---|---|
| コスト | 他の方法と比べて、実装・保守・運用のいずれも比較的低コスト
開発費用:数十万円~ |
実装は低コスト。別途、ファイルサーバの保守・運用が必要
開発費用:数十万円~ |
実装・保守・運用のいずれも高い
開発費用:数千万円~ |
| データの受け渡し方法 | HTTP/HTTPS、JSON、XMLなど、標準の通信プロトコルやデータ形式で行う | FTP/SFTPで、データファイルの受け渡しを行う | データベース同士を直接つなぎ合わせる |
| メリット | ・異なるOSや開発言語で構築されているシステム間の連携も可能 ・最新データをリアルタイムで共有できる |
・規定のフォーマットで作成したデータファイルであれば、自動でも手動でも取り込めるので、汎用性が高い ・仕組みと運用がシンプル ・データを渡すだけであればデータファイルの出力機能さえあれば良いため、実現のハードルが低い |
・大規模なデータをスムーズに処理できる ・最新データをリアルタイムで共有できる |
| デメリット | ・API連携機能で障害が起きるとシステム全体に影響が及ぶ可能性がある ・継続的な更新と保守の対応が必要 |
・ファイルの取り込みはバッチ処理で行われるため、リアルタイム性がない ・バッチ処理が使用できない場合には、手動でファイル取り込みを行う運用が必要 |
・セキュリティ対策(VPNや専用回線を使用した通信、アクセス制御、データの暗号化など)のコストが高くなる可能性がある |
出典:筆者が独自に作成
Webサービスやアプリのデータ連携では、①「API連携」が主流となっています。API連携が使用されている最大の理由は、開発コストを大幅に抑えられ、運用の柔軟性が高いからでしょう。
例えば、完成したアプリにログイン認証機能を追加実装することになった場合、SaaSの既製品(認証サービス)をAPI連携で組み込むことで、機能をゼロから開発することなく、低コストで手軽に実装できます。また、API連携はリアルタイム性が高いため、複数のシステムで常に最新データを共有したい場合にも使用される連携方法です。
②「ファイル連携」は古くから使われている方法で、FTP/SFTPを使ったファイル転送でデータの受け渡しを行います。
連携相手となる既存システム側の変更を最小限に抑えられるため、比較的低コストで導入できますが、バッチ処理なのでリアルタイム性が求められるシステムには向いていません。近年は、API連携ができないレガシーシステムとの連携時の苦肉の策として用いられることが多い連携方法です。
③「データベース(DB)連携」は、複数のDBを直接つないでデータを共有する方法です。DB連携の強みは、最新データをリアルタイムで共有できる点です。
ただし、機能の実装や安全な通信環境の構築・維持にコストがかかるため、APIに対応できないオンプレミスの独自システムやレガシー環境で採用されるケースがほとんどです。
①「API連携」は低コストで利便性も高く、多くの場面で優れた選択肢ですが、基幹システムがAPI連携に対応できない場合には使用できません。そのため、古くから稼働している基幹システムと他システムのデータ連携では、②③のいずれかの方法、あるいは、基幹システムのリプレースの検討が必要になります。
3つのデータ連携方法については関連記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
連携ニーズが高い7種のシステム/ツール
近年のシステム統合は、1つのシステムにすべての業務機能を集約するのではなく、基幹システム群や各業務に特化した専用システム/ツールをシームレスに連携させることで、DXと業務の効率化の実現を目指す傾向にあります。
基幹システムとの連携ニーズが高いシステム/ツールとして、下記の7種が挙げられます。
◆基幹システムとの連携ニーズが高い7種のシステム/ツール(例)
② BI
③ 顧客管理(CRM)
④ 与信管理
⑤ 請求書発行
⑥ EDI
⑦ EC
7種のシステム/ツールを1つずつ見ていきましょう。
① ERP
ERP(Enterprise Resources Planning)をそのまま基幹システムとして使用している場合もありますが、そうでない場合でも、基幹システムの管理領域とERPの管理領域をシームレスにつなぎ合わせて、より広範な業務データを統合的に扱えるようにすることで、組織全体の情報基盤を強化し業務プロセス全体を最適化できます。
◆基幹システムとERPの連携で実現できること(例)
・業務の効率化と標準化
・リアルタイムの情報共有
・データに基づく経営判断
ERPは複数の基幹システムを統合管理できるため、ERPに既存の基幹システムを連携させることで、企業のすべての基幹情報を一元管理・運用できるようになり、同一データの重複管理を排除して業務プロセスを効率化することができます。
また、データ活用がしやすくなるため、データに基づいた経営判断が可能になります。
② BI
BI(Business Intelligence)は、膨大なデータを収集・分析・加工して、グラフやダッシュボードなどの形で可視化するためのツールです。
膨大な量の業務データが日々生成・蓄積される基幹システムにBIツールを連携することで、必要なデータを素早く抽出・可視化し、経営・現場の双方でデータに基づく迅速な意思決定が可能な環境を構築できます。
◆基幹システムとBIツールの連携で実現できること(例)
・業務効率の向上
・経営の可視化
BIツールを使うと、売上、利益、在庫、生産などの実績データをリアルタイムで参照できるため、属人的で多くの時間を費やしていた経営レポート作成業務が自動化・標準化され、正確なデータに基づいた迅速な意思決定が可能になります。
③ 顧客管理(CRM)
顧客管理(CRM:Customer Relationship Management)システムは、顧客の基本情報と顧客との関わり(接点)の記録を管理するためのシステムです。
◆基幹システムと顧客管理システムの連携で実現できること(例)
・顧客情報と販売情報の統合
・顧客行動の正確な把握と顧客理解の深化
CRMの顧客情報と基幹の販売情報のデータを組み合わせて分析することで顧客理解を深め、商品企画・開発・営業・アフターサポートまで、事業全体のプロセスと活動内容の改善が可能になります。特に、EC・実店舗・SNSなど複数チャネルを運用している企業の顧客戦略では高い効果が望めるでしょう。
④ 与信管理
企業間取引では、取引先の信用状況を正確に把握し、適切な与信枠を設定することが欠かせません。
例えば、与信が低い(取引リスクが高い)企業に対しては、取引量(取引額)に制限を設けることでリスクを抑え、逆に、与信が高い(取引リスクが低い)企業には、取引量を増やして売上機会を最大化するなど、与信情報をもとにした柔軟な取引管理が必要となります。また多様化する販売チャネルへの柔軟な対応が求められるようになっている現在は、信用情報のリアルタイム審査に対応しきれていないということもあるでしょう。
基幹システムと与信管理システムを連携すると、受注から請求・入金までのプロセスに与信情報を自動で反映でき、与信の判断を正確・迅速に行えるようになります。
◆基幹システムと与信管理の連携で実現できること(例)
・リアルタイムの与信判断
・リスク管理の強化
基幹の販売・請求情報(受注・請求・入金など)と与信管理の情報を紐づけることで、与信に関するアラートや取引制限判定も自動で行えるようになり、未回収リスクの低減につながるため、企業取引におけるリスクマネジメントに欠かせない連携となります。
⑤ 請求書発行
請求処理は売上に関わる重要な業務プロセスです。そのため慎重な対応が必要となるため担当者による手動でのひも付け作業や手入力による運用は負荷が高く、また、ミスも発生しやすくなります。
こうした、売上データの収集・請求データの作成から送付までの一連の業務を、基幹システムと連携させることで自動化できます。
◆基幹システムと請求書発行システムの連携で実現できること(例)
・請求データの精度向上
・ペーパーレスの実現
・バックオフィスの効率化
・電子帳簿保存法やインボイス制度への準拠
電子帳簿保存法やインボイス制度の施行に伴い、請求業務のデジタル化のニーズも急速に高まっており、実現には基幹システムとの連携が不可欠になります。
⑥ EDI
EDI(Electronic Data Interchange)は、企業間で注文書・請求書・納品書などの商取引情報を電子的に自動交換する仕組みです。紙の文書やExcelなどのデータファイルではなく、標準化されたデータ形式で情報の受け渡しを行うため、誤入力のリスクを減らし、スピーディーな処理が可能になります。
◆基幹システムとEDIの連携で実現できること(例)
・受発注業務の精度向上
・取引先との情報共有のデータ化と自動化
・請求/支払い処理の自動化
・在庫/売上管理のリアルタイム性の向上
商取引に関わるデータ交換をすべて自動化するEDIと基幹システムを連携させることで、業務効率が飛躍的に向上します。また、取引状況をリアルタイムで確認できるため、データに基づく迅速な判断が行えるようになります。
EDIは事業の根幹ともいえる、取引業務を支える重要なシステムです。
EDIについては関連記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
⑦ EC
ECシステムは、商品をオンラインで販売するためのECサイトを支えるプラットフォームです。コロナ禍以降、BtoC/BtoB共にECの重要性が高まり、実店舗やアプリと連動したオムニチャネルなどにも積極的に取り組む企業が増えています。
ECサイトさえあればECを始めることはできますが、取引の規模が大きい、または1日あたりの取引量が多い場合には、受注・在庫・出荷などの情報を手動で管理していくことは困難になります。
基幹システムとECシステムを連携させると、受注・在庫・出荷・配送などのデータをリアルタイムで自動同期できるため、在庫切れや出荷の抜け漏れ、誤発注などによるトラブルを防いで、顧客に安定したサービスを提供できます。
◆基幹システムとECサイトの連携で実現できること(例)
・リアルタイムのデータ共有
・返金/キャンセル処理の迅速化
近年のECシステムの外部システム連携機能はAPIが主流なので、相手もAPI連携が可能であれば、スピーディーかつ柔軟にデータのリアルタイム連携を実装できます。
レガシーシステムがデータ連携の障壁になる
古い技術で構築されている「レガシーシステム」と外部システムとの連携では、実現の難易度が高くなります。
レガシーシステムは、最新技術を使用しているAPI連携やクラウドサービスとの接続に対応することができないため、データ連携を行うために高額かつ複雑な追加機能の開発が必要であったり、既存機能への影響が大きすぎて連携できなかったりするケースも少なくありません。
◆レガシーシステムが外部システムとの連携が困難な理由
・古い仕様のため拡張性がない
・OSやプログラミング言語が古く、最新システム/ツールとの互換性が低い
・データファイル出力はできるが独自仕様でシステムでは標準化できない
・長年使ってきたためシステム構成が複雑で手を入れられない/入れたくない
・システム全容を把握できず連携による影響範囲を特定できない
レガシーシステムは、業務効率化やDXの推進を阻み、企業成長を大きく低下させる要因となりますので、データ連携を検討する場合にはレガシーシステムのリプレースも視野に入れるべきでしょう。
外部システムとの連携が必要なECシステムは、クラウドサービスを利用して構築しよう!
現在あるいは将来的に、外部システムとの連携が必要となるECシステムは、データ連携に柔軟に対応できる方法で構築しましょう。
◆ECシステムの4つの構築方法
② カスタマイズ可能なクラウドサービス
③ パッケージ
④ スクラッチ開発
いずれの方法でもAPI連携はできますが、①ASPサービスを利用する場合は、カスタマイズ性や拡張性がほとんどないため、複雑な連携はできません。
③パッケージや④スクラッチ開発で構築する場合は、複雑なシステム連携が可能ですが要件によっては開発に膨大なコストがかかり、また、独自システムではシステムの陳腐化を防ぐために定期的なシステムリプレースが求められるため、中長期的な保守・運用コストも高くなります。
②のカスタマイズ可能なクラウドサービスを利用する場合は、他システムとの柔軟な連携も可能です。また、セキュリティや提供機能の更新対応はサービス側が実施するため、ユーザーは常に最新環境でシステムを使用できます。
以下は、ECシステムの構築方法別の特徴を一覧にした比較表です。ECシステムを構築する際の参考にしてみてください。
◆ECシステムの4つの構築方法と各特徴の比較表
| 構築方法 | 連携の柔軟性 | カスタマイズ性 | 費用感 | 最新化対応コスト(機能/セキュリティ) | 推奨ケース |
|---|---|---|---|---|---|
| ① API連携が可能なASPサービス | △ (制限あり) |
△ (制限あり) |
◎ (安い) |
◎ (サービス側が実施) |
小・中規模でシンプルなデータ連携のみの場合 |
| ② カスタマイズ可能なクラウドサービス | ○ | ○ | ○ (中程度) |
◎ (サービス側が実施) |
個別要件の実装が必要で複数システムとの連携を視野に入れている場合 |
| ③ パッケージ | ○ | ○ | △ (やや高い) |
× (自社で対応が必要) |
個別要件の実装が必要で、自社でシステム運用・保守が行える場合 |
| ④ スクラッチ開発 | ◎ | ◎ | × (高い) |
× (自社で対応が必要) |
完全に独自仕様のECシステムが必要で、自社でシステム運用・保守が行える場合 |
出典:筆者が独自に作成
②「カスタマイズ可能なクラウドサービス」を検討される際は、インターファクトリーのクラウド型ECプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」は有力な選択肢となるでしょう。カスタマイズ性が高く、あらゆる要件に柔軟に対応できるため、長期的に安定したEC運営を実現できます。基幹システムとの連携実績も豊富で、さまざまなシステム/ツールとのAPI連携も可能です。
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