EC担当者を目指す方が押さえる9つのECサイト運営業務


「ネットショップを開業したい!でもECの仕事ってどんなことするの?」
「EC事業部に異動になったけど、ECの運営ってどんな感じ?」

と疑問に感じる方もいるでしょう。ECサイトはAmazonや楽天ですっかり日常に溶け込んでいますが、運営業務としてはどんな仕事があるのか、意外と知られていません。

EC業務はフロント業務バックエンド業務の二つに大別され、下記の9つの業務にわけることができます。

①商品企画(フロント業務
②ECサイト制作(フロント業務
③仕入れ(フロント業務
④プロモーション(フロント業務
⑤受注(バックエンド業務
⑥在庫管理(バックエンド業務
⑦出荷(バックエンド業務
⑧配送(バックエンド業務
⑨アフターサービス(バックエンド業務

本日はインターファクトリーでWEBマーケティングを担当している筆者が、各ECサイトの運営業務について解説し、最後にECサイト運営に必要なスキルや経験も解説いたします。この記事を最後まで読んでいただければ、ECサイト運営のイメージを思い浮かべることができますよ。

9つのECサイト運営業務を知れば、全体が把握できる!

それでは、ECサイト運営のための9つの業務を図で説明いたします。(⑤受注をフロント業務と捉えたり、アフターサービスをマーケーティング業務と捉えるケースもありますが、この記事では下記のように分類します)

まず「フロント業務」と「バックエンド業務」の2つに大別することができますので、そこから解説いたします。なお、フロント業務とバックエンド業務の振り分けには業界や企業により諸説あり、明確な定義はありませんので、その点ご留意ください。

フロント業務

フロント業務は主にマーケーティング活動が主となり、商品企画やECサイトのコンセプトから制作。そしてプロモーションを行います。

ブランド力が弱い事業者であれば、ECサイトを作っただけでは、ほとんどユーザーに訪問されません。ですからWEBマーケーティングでプロモーションを行い集客を行います。そして、ブランド力が弱いECサイトは集客が上手く言っていないのが現実です。後ほど詳しく解説いたします。

バックエンド業務

バックエンド業務は、在庫管理から出荷、配送。そしてアフターサービス(問い合わせ対応)が含まれます。

個人事業主やECサイトを始めたばかりの企業の場合、最初はあまり注文がなくバックエンド業務の負担は少ないので、手作業であっても全く問題ありません。

しかしECサイトの売上が伸び、1日100件以上の注文件数になると手作業では負担が大きく、またミスが重なると、ロスが大きくなりますから、バックエンド業務専用のASPツールの導入やECシステムと基幹システムの連携などが視野に入ります。

このようにECサイトの成長とともに、バックエンド業務の効率化を考えなくてはならないのです。

9つのEC運営業務の解説

①商品企画(売れ筋商品を企画する!)
②ECサイト制作・運営(使いやすいサイトを作る!)
③仕入れ(ECの機会損失を抑える!)
④プロモーション(ECの売上を最大化する!)
⑤受注(間違えるとクレームの原因に!)
⑥在庫管理(在庫切れも過剰在庫もダメ!)
⑦出荷・梱包(ひと工夫で差が出る工程!)
⑧配送(自社と相性の良い配送業者を手配する!)
⑨アフターフォロー(クレーム対応だけではない!)

①商品企画(売れ筋商品を企画する!)

ECサイトで利益を上げるために、売れる製品を企画・検討することです。商品企画をする際は、ユーザーに受け入れられるか?トレンドや季節などを考慮し、商品企画を検討します。

そして単に売れる製品を見極めるだけでなく、原価率や利益率なども計算し、少なくとも半年から1年先まで売上や利益のプランを作成します。

「どれくらい仕入れて」
「どれくらいの期間で」
「どれくらい売れるか?」

といったこと具合に単に売れそうだから!と企画するのではなく、具体的な販売計画を作成します。仕入れが自社の場合で、自社製品を開発する場合も、このフェーズは必要となります。

現在はSNSがあるため、優れた商品を開発することができれば、SNSで拡散され話題になります。いわゆる「バズる」でことです。SNSで拡散されると、それ自体が宣伝活動となり、広告費をかけないでも商品がすごく売れます。つまり商品開発は非常に重要な業務なのです。

ECサイトで販売されるものの単価は数千円程度のものがほとんどとなるために、広告費を使ってしまうと、利益が少なくなってしまいます(数万円以上の単価の高い商品であれば、広告費を使うこともできます)。そのため、商品力を高めるというのは、ECサイトの売上と密接に関係するのです。

また、Amazonや楽天市場などのショッピングモールで販売する場合は、手数料を取られるので利益が減りますので、それを計算して利益を出るような価格設定を行う必要があります。

②ECサイト制作・運営(使いやすいサイトを作る!)

ECシステム・プラットフォーム選び

現在はECサイトは誰でも、カンタンにすぐ作れる時代です。これからECサイトを検討する小規模EC事業所の方は、まず無料のASPサービスや月額数千円のECプラットフォームを検討しましょう。無料のECサイトについては以前記事を書いたので、下記の過去記事をご覧ください。

過去記事:【完全解説】無料でECサイトを開設するための4つの方法

サイトデザイン

ECサイトのプラットフォームが決まればデザインです。事業や会社のコンセプトに沿ったものや、「売る」を意識したデザインにするかは運営者次第です。ただ、無名のECサイトには信頼感がありません。信頼感を醸成するには、会社のコンセプトを大切にしたデザインや、シンプルなデザインの方が良いでしょう。

またECサイトのデザインでよくある失敗は「デザインに凝り過ぎること」です。売手としては「カッコいい」ものをもとめるかもしれませんが、ユーザーはカッコいいサイトではなく使いやすいサイトを求めています。そのため、珍しい動きのするサイトや、複雑なサイト構造は、使い勝手が悪くなり、売上も下がる原因となります。

サイトデザインについては、下記の記事に具体的なデザインの作り方が書いてあるので、そちらをご覧いただき、ECサイトのデザインの参考にしてみてください。

過去記事:ECサイトのトップページを5つのパーツからデザインする!

商品の写真撮影、採寸、原稿(ささげ業務)

「撮影」「採寸」「原稿」の頭文字をとって「ささげ業務と言います。※「ささげ」はEC業界では一般的な言葉なので必ず覚えておきましょう!

商品の写真、商品説明文の原稿は売上を左右する大きな要素です。単価が安く広告費をかけるのが難しいECサイトでは有力なマーケティング活動とも言えます。

この「ささげ業務」は代行を行ってくれる業者や、ライターもおり、大手のアパレルECサイトの場合は、ささげ業務専門の担当や業者が業務を行うことが多いです。つまりそれだけ、ECサイトの売上に影響をあたえる業務と言えるのです。

ささげ業務については下記の記事でも、まとめておりますので、もっとささげ業務について知りたいという方は、あわせてご覧ください。

過去記事:ささげ業務とは「撮影・採寸・原稿」の頭文字の略称

商品の登録作業

撮影した写真の登録や、商品情報の登録を行います。写真と同様に商品の売れ行きを左右する重要な作業です。「サイズ」や「カラーバリエーション」も登録します。こういったバリエーションのことをSKU(エスケーユー)と言いますので、EC業界では必須の単語ですから覚えておきましょう。

また、商品登録の際は商品名を商品型番だけで表示してしまうと、ユーザーには非常にわかりづらいECサイトとなりますし、SEOを意識しすぎても、リピーターにはわかりづらいものとなります。社内の人間だけでなく新規ユーザーが見ても、リピーターが見てもわかりやすい商品名を登録することが肝要です。

③仕入れ(ECの機会損失を抑える!)

倉庫のスペースもコストとしてかかってきますから、販売予測に基づいた仕入れを行います。また人気商品の場合は、生産が間に合わず、機会損失を生むこともありますからリスクに備え、複数の仕入れ先の確保を考えたりするのが担当者の腕の見せ所です。

新規仕入れ先との契約時は、審査がある場合がほとんどです。なぜなら卸などのBtoBでは、掛け売りがほとんどですから、都度、商品代を請求することがあまりないため、商品を仕入れた翌月末の一括支払いが一般的です。そのためネットショップの実績や金融機関との取引実績などの信用が企業に問われるからです。

また、多くの商品を仕入れる場合は、割引交渉するのも担当者の腕の見せ所ですが、何の根拠もなく「値引いて」というのはスキルではありません。例えば「数ヵ月間まとまった量を仕入れるから値引きをしてください」など、相手にメリットを与えたり、Fact(事実)をベースに交渉してこそ、相手と信頼関係を結ぶことができるます。

そして、自社がメーカーで商品の生産まで行う場合でも、考え方は同じです。生産指示を依頼して、予測に基づいた商品を在庫に入れてもらうことになります。

④プロモーション(ECの売上を最大化する!)

プロモーションとは、ECサイトの場合はWEBマーケーティングによる広告がメインになります。代表的なWEBマーケーティングは下記の通りです。

①リスティング広告(Googleショッピング広告を含む)
②SEO・ブログ施策(コンテンツマーケティングを含む)
③アフィリエイトプログラムへの参加
④ディスプレイ広告やリマーケティング広告(DSP等)
⑤記事広告
⑥メールマガジン
⑦Facebook広告等

この中で最も効率の良い施策は「①リスティング広告」です。リスティング広告とは検索結果上部の広告枠に出稿する広告で、GoogleとYahooがあります。ターゲットが主婦等のITリテラシーが低いターゲットであれば、Yahooに出稿しますが、原則日本でシェアの高いGoogleリスティング広告で大丈夫です。

しかし、これらの広告は予算がかかります。ECサイトの商品の単価は数千円程度のため、広告費を使うと利益が出ませんので、こういった広告を利用するのはAmazonや楽天市場などの大手がほとんどです。そのため、予算をかけずにECサイトへの集客を行うためには、②SEO・ブログ施策(コンテンツマーケティングを含む)を行うのが良いでしょう。

なぜなら担当者の労力はかかりますが、予算をかけずにプロモーションが行える手法だからです。その方法について具体的に下記記事に書いているので、集客方法を知りたい方はご覧ください。

関連記事:自社ECサイト・ネットショップの集客方法を解説

また、あわせて、下記の記事を読んでECサイトのマーケティングの考え方を事前に把握しておきましょう。

関連記事:
ECサイトの基本的なWEB広告と優先順位の解説
【全解説】ECコンサルティングに仕事を依頼する前に知るべき事

⑤受注(間違えるとクレームの原因に!)

注文情報を受け取り、以下の作業を行います。

(1)お客様へ注文状態をお知らせするメール
(2)在庫の引き当て
(3)出荷指示

この作業は、単純ですが、間違えたりするとクレームの原因となることが多い工程です。スピードも求められるため、担当者は、細かい作業が得意で、テキパキしている方が向いています。

(1)のお知らせメールは、今どきはどんなECシステムであっても、最初にメールの設定をしておけば管理画面のステータスを変更するだけで自動的にメールが送信されます。

中規模以上のECサイトであれば、ECシステムと業務システムがシステム連携しているために(1)~(3)の工程が全て自動化されておりますが、そのシステムを構築するためには、通常数千万円の開発費がかかりますが、ECシステムの条件があえばツールを導入して自動化を行うことができます。

⑥在庫管理(在庫切れも過剰在庫もダメ!)

過剰在庫はコストになります。販売予測に過不足ない在庫を用意します。在庫管理の難しいところは、過剰在庫を注意しすぎると、品切れが多発します。それらを防ぐには精度の高い販売予測にあります。販売予測は担当者の経験が蓄積されると精度も高くなります。

またECサイトだけでなく、実店舗もある事業者は大変です。なぜならECサイトだけで引き当てを行っていても、店舗側も引き当てを行っているため、在庫切れが発生するからです。それを防止するため、在庫を二つ(ECサイト用、店舗用)に分ける手法もありますが、それだと過剰在庫を抱えたり効率は悪くなります。

これを防ぐためには在庫を一つのシステムで管理し、かつリアルタイムで連携させる必要があります。このようにECサイトの運営では、独自のノウハウが求められるのです。

⑦出荷・梱包(ひと工夫で差が出る工程!)

出荷指示に基づき倉庫から商品を取り出すことをピッキングと呼びます。お客様が注文したリストからピッキングを行い、梱包作業を行います。梱包した商品に伝票をつけて、配送業者に渡します。

梱包は商品にダメージにならないように、クッション材を入れます。新聞紙などは個人のオークションのやり取りなどで使われますが、印象が良くありませんので、クッション材を購入するか、あるいは一工夫して手抜きを思われない梱包をしましょう。

また、手間はかかりますが、一言だけ手書きのメッセージを添えると効果的です。FacebookアカウントやInstagramアカウントがあれば、QRコードの紙を入れて、ユーザーの囲い込みをするのも良いしょう。

ホームセンターなどで倉庫が実店舗の商品棚の場合は、該当する商品を商品棚からピッキングすることになりますが、在庫情報が整備されていないと、あると思っていた在庫がないというケースが発生する場合があるので、倉庫が商品棚の方はピッキングの際は在庫管理に気を使いましょう。

⑧配送(自社と相性の良い配送業者を手配する!)

出荷した製品を配送してもらう、配送業者を選ぶ時はコストだけではなく、扱う商品のサイズや特徴から最適な配送業者を選びます。商品のサイズや特徴に合わせて配送業者を使い分けるのも良いでしょう。そういった面からも複数の配送業者と信頼関係を作っていくこともEC担当者の求められます。

配送業者に関しては、下記の記事にまとめてあります。実際にヤマト運輸、佐川急便、日本郵政などを比較して考えたい場合にはあわせてご覧ください。

過去記事:ECサイトを開設する人のための宅配便大手3社のまとめ

⑨アフターフォロー(クレーム対応だけではない!)

初めて買ってくれたお客様には、商品到着から2週間以内に商品の使用感などを尋ねるメールを送るのが一般的手法です。ただ過度なメールによるアフターフォローは嫌がれることもしばしばありますので、クーポン券の乱発などでECショップの印象を悪くしないようすることが大切です。

また、お客様からクレームがきた場合も、丁寧かつ迅速に処理できれば、逆にファンになってくれる可能性が高まります。どのECショップもリピーター獲得に頭を悩ましていますが、こういった努力もリピーターを増やすことになるのです。

リピーターの獲得は、ECサイトの売上に安定をもたらします。そのためにもアフターフォローをおろそかにはできないのです。

ECを運営するにはどんなECシステム(プラットフォーム)が良いのか?

まず、個人や小規模のECサイトを作る場合は、BASEやSTORES、カラーミーショップなどは無料でECサイトをオープンできます。まずは費用の安いASPサービスのECプラットフォームを選ぶべきでしょう。

販売実績のないECサイトですからコストをなるべくかけずにスタートするべきです。最初は注文も少なく、社長や責任者が一人でECサイトを担当することができます。

ASPサービスのECシステムは少しコストをかけたものであればフロント機能に不足はありません。弱点はバックエンド業務が効率化できない点にありますが、それでも注文が少ないうちは、ASPサービスで事足ります。

1日の受注件数が100件を超え、年商が1億円を超える規模のECサイトになれば、人員を増やしても、手作業によるミスが増えて大きなロスが発生します。このあたりから、システム連携を行って自動化を検討しましょう。

その際は、ECシステムがカスタマイズできることが前提になりますので、ECパッケージやカスタマイズ可能なクラウドEC(ebisumart)を導入し、バックエンド業務を効率化します。

弊社のebisumart(エビスマート)ASPサービスのようにシステムが自動的に最新になりながらも、パッケージのような拡張性と柔軟税がありますので、これからECシステムを検討する方は、他社とともにご検討ください。

ebisumart公式ページ

フルスクラッチのECは現在マーケットの主流ではありません。その理由はECパッケージやクラウドECと比べてコストがかかり過ぎるからです。また、昨今はECパッケージやクラウドECの拡張性が高まり、フルスクラッチの意義は薄れているのが現状です。

ECサイトの作り方については過去の記事で触れていますので、そちらを参考にしてください。

関連記事:【全方式】ECサイトの作り方|個人から企業ECサイトまで

ECサイト運営に求められるスキルや経験は?

本日はECサイト運営業務を解説いたしました。この記事を読んでいる方は、

「EC業界に転職を考えている」
「異動でEC担当者になった」

という方だと思います。ECサイト運営の求められるスキルは下記になります。

・HTMLの理解・カンタンなコーディング
・SEOやWEBマーケティングの知識
・Excel(関数やグラフを扱える)
・顧客との電話・メール対応
・業者との交渉経験

つまり、EC担当者はサイト制作から顧客対応まで担当することになりますから、幅広いスキルが必要なのです。ただこれら全てのスキルや経験がある人は稀ですから、EC業務を運営しながら身につけることになるでしょう。

もし、EC業界にこれから入る方は、下記の記事にはEC業界の知識必要なことがまとめられているので、あわせて読んでください。

関連記事:【2021年版】10分で理解するEC業界の概要とトレンド

また、これからEC業界を目指すという人でスキルや経験に自信がない人は、メルカリやYahoo!ショッピングで商品を販売してみましょう。商品の仕入れはリサイクルショップでもかまいません。そうすることで、本日解説した多くの業務を実際に経験することができます。

ECのプロの知見を聞きたい方には「ビジネスグロースアップサポート」

もし、ECサイトでの運営にお困りでしたら、弊社、ebisumartのEC支援サービス「ビジネスグロースアップサポート」までお問い合わせください。経験が長い、弊社のコンサルタントが貴社ECサイトの成功に導きます。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。