10種の代表的な「SaaSサービス」のジャンルを徹底解説


「SaaS(Software as a Service)」とは、インターネットを介してソフトウェアを提供するクラウドサービスの総称です。SaaSで提供されるさまざまなサービス(以下、SaaS型サービス)では、ユーザーはITインフラやサーバ、ソフトウェアを自前で用意することなく、ソフトウェアの機能を利用することができます。ほとんどのサービスが月額または年額のサブスクリプション方式で提供されており、SaaS型サービスを利用することで、システムの導入・運用コストを大幅に抑えられることが多いです

SaaS型サービスでは、ユーザーはいつでも最新のITインフラとセキュリティ環境で運用されている新しいサービス機能が利用できます。インターネット環境さえあれば、場所を問わず、PC、スマートフォン、タブレットなどのさまざまなデバイスでサービスを利用できるというモビリティも、SaaSの優れた特徴の一つと言えるでしょう。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、SaaSで提供されている代表的な10種のサービスジャンルを紹介します。

SaaSとPaaS、IaaSの違い

SaaSと似ている用語として「PaaS(パース)」「IaaS(イアース/アイアース)」がありますそれぞれの特徴を下表にまとめましたので、それぞれを比較しながらSaaSとの違いを理解しましょう。

「SaaS」「PaaS」「IaaS」の特徴

項目 SaaS(Software as a Service) PaaS(Platform as a Service) IaaS(Infrastructure as a Service)
提供サービス ソフトウェア プラットフォーム インフラ環境(サーバ、ストレージ、ネットワーク等)
利用者 エンドユーザー(従業員や一般ユーザー) ソフトウェア開発者やサーバ管理者 IT部門またはシステム管理者
柔軟性/拡張性 低め 中程度 高め
サービス例 ・Gmail(メール)
・Googleドライブ(ストレージ)
・freee(会計)
・ebisumart(EC)
など
・Amazon Web Services(AWS)
・Microsoft Azure
・Google Cloud Platform
など
※上記のサービスではPaaSとIaaSの両機能を提供している
・Amazon Web Services(AWS)
・Microsoft Azure
・Google Cloud Platform
など
※上記のサービスではPaaSとIaaSの両機能を提供している
特徴 システム構築不要で、必要なツール(ソフトウェア/アプリ)の機能を利用できる ソフトウェア/アプリの開発に必要なITインフラとサーバ(OS~ミドルウェア、DBなど)を、ユーザーは自由な構成で利用できる ITインフラの各リソースを自由に選定・設定して利用でき、リソースの増減にも柔軟に対処できる
主な用途 ツール(ソフトウェア/アプリ)の機能を利用する ソフトウェア/アプリ開発を行う ITインフラを構築し、システム運用を行う

PaaSとIaaSはアプリケーションやソフトウェアより下位層のプラットフォームやITインフラを提供しますが、SaaSはソフトウェア/アプリの機能をサービスとして提供します。

「SaaSサービス」の代表的な10ジャンル

現在は、世界中で数多くのSaaS型サービスが提供されています。今回は、SaaSで提供されている代表的なサービスジャンル10種を紹介します。

SaaS型サービスの代表的な10ジャンル

それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。

ジャンル① ビジネス/コミュニケーション関連

エクセルやワードのような文書作成ツールや、チャットなどのコミュニケーションツールなど、主にデスクワークで利用されるツール全般が該当します。代表的なSaaS型サービスとして、以下があります。

◆代表的なサービス

・Google Workspace
・Microsoft 365
・Dropbox(ファイル共有)
・Slack(コミュニケーション)
・Chatwork(コミュニケーション)

1990年頃から2010年代頃までは、Microsoft社のOfficeをはじめとするソフトウェア製品は、個人のPCにインストールして利用する形態が一般的でした。

その後、「Microsoft 365」のようなサブスクリプションサービスや、Googleの無料アカウントで利用できる「Google Workspace」などのサービスが次々と登場し、現在は、専用アプリをインストールして、PCやスマートフォンからサービスにアクセスして利用する形態が主流となっています。

ビジネス関連のSaaSでは多種多様なサービスが提供されているため、個人や小規模事業者でも、無料あるいは低価格で必要なツールを利用できるようになります。

ジャンル② 顧客管理(CRM)/営業支援(SFA)/マーケティング支援(MA)

顧客情報や営業活動の管理を一元化するためのツールです。有名な「Salesforce(セールスフォース)」をはじめ、以下のようなサービスがあります。

◆代表的サービス

・Salesforce(CRM)
・HubSpot(CRM)
・OmniSegment(MA)
・うちでのこづち(CRM/MA)

このジャンルのSaaSでは、基本的には企業向けサービスは有料となり、導入費用+月額費用で提供されるケースが多いです。比較的、顧客情報が多いほど効果が発揮されやすいツールなので、多くの顧客がいる大規模企業で利用されています。

また利用料金も高めで、利用契約では「年契」など契約期間が定められているケースがほとんどです。

外出や出張の多い営業担当などが外出先でいつでも利用できるため、SaaSとは相性が良いジャンルです。

ジャンル③ プロジェクト管理

タスクやプロジェクトの進行状況を管理し、関係者間の円滑なコミュニケーションをサポートするためのツールで、各タスクが可視化され、効率よくプロジェクトを進められます。

◆代表的サービス

・Asana
・Trello
・Jira(ソフトウェア開発向け)
・Notion(プロジェクト管理/ドキュメント管理)
・Backlog

「Backlog」は国内でもよく利用されているツールですね。かつてはエクセルなどの表計算シートでタスクを管理していたプロジェクトもありますが、今は便利なSaaSサービスがたくさんあります。筆者は「Trello」の無料版を使っているのですが、手軽にタスク管理ができて大変便利です。

システム開発などでは、プロジェクト単位で社内外のメンバーと一緒に仕事を進める必要があるため、パートナー企業やフリーランスのプロジェクトメンバーも、社員と同じプロジェクト管理ツールを利用します。作業場所が異なる場合も多いため、どこからでもアクセスできるSaaSとは特に相性の良いジャンルです。

ジャンル④ データ分析・レポーティング

データを収集・分析して、ビジネスの意思決定に役立つインサイトを導き出すためのツールで、経営指標を分析するBIやWebサイトのアクセス解析など、目的に応じた専用機能が提供されています。

◆代表的サービス

・Google Looker Studio (BI)
・Tableau(BI)
・Adobe Analytics(Web分析)
・Google Analytics(Web分析)

主に経営管理やEC担当者、Webマーケティング担当者が利用することが多いツールで、「Google Analytics」のようにスマホアプリを提供しているサービスもあります。経営判断や意思決定を行うためのレポート作成などに利用するためリアルタイム性が重要なので、どこにいても、素早く情報を抽出できるSaaSとは相性の良いジャンルです。

ジャンル⑤ メール配信

一斉配信やプロモーション効果を高めるための機能を持つツールです。ジャンル①で紹介したCRMやSFA、MAサービスにも含まれていることの多い機能ですが、ここではメール配信に特化したサービスを紹介します。

◆代表的サービス

・配配メール
・ブラストメール
・Sinergy!

SaaS型サービスを利用することで、どこからでもメール配信業務を行うことができますので、メール配信の業務と操作に慣れた人材に、リモートワークやアウトソーシングでの作業を割り当てられるようになります。

ただし、個人情報を取り扱う業務ですから、特に情報漏えいに関するセキュリティ対策を十分に考慮して運用する必要があります

ジャンル⑥ 会計/経理

会計や経理業務を支援するためのツールで、収支管理や税務申告なども簡単に行うことができます。

◆代表的サービス

・マネーフォワードクラウド
・弥生会計オンライン
・freee

基本的には経理担当者のみが使うツールなので、インストール型のサービスもいまだに根強いニーズがあるジャンルですが、将来的には、どこからでもアクセスできて、運用負荷も低減できるSaaS型サービスの利用が増えていくでしょう

ジャンル⑦ 人事情報管理

人材に関する情報を一元管理するためのツールで、代表的サービスには以下があります。

◆代表的サービス

・OBIC7人事情報ソリューション
・ジョブカン労務HR
・freee人事労務

基本的には人事部のみで利用されることが多いためインストール型でも問題はないケースが多いと思われますが、SaaSはサーバ管理不要で、業務に必要な基本機能や最新機能を利用的できる点が魅力的ですね。

一方でどこからでもアクセスできるため、特に情報漏えいに関するセキュリティ対策を十分に考慮して運用する必要があります

ジャンル⑧ カスタマーサポート

ヘルプデスクなどのカスタマーサポートに必要な機能を備えたツールで、顧客とのコミュニケーションや問い合わせ管理の効率化のために利用されます。

◆代表的サービス

・Zendesk
・Freshdesk
・intercom(チャット型)

昨今は、リモートでヘルプデスクのオペレーター業務を行うケースも増えており、SaaS型サービスの利用が進んでいるジャンルです。

ジャンル⑨ ホームページ作成・運用支援(CMS)

ホームページやブログを作成・公開して運用できるツールです。

◆代表的サービス

・Wix
・JIMDO
・はてなブログMedia
・ペライチ

ひと昔前は、「ホームページ・ビルダー」や「Macromedia Dreamweaver」(旧称、現在の「Adobe Dreamweaver」)などの、インストール型のツールでHTMLファイルを作成し、サーバにファイル転送してホームページを作成していましたが、現在はSaaS型のCMS(コンテンツマネジメントシステム)を利用して、簡単にホームページを作成・公開できます。

皆さんもよくご存じの「WordPress」もSaaS版サービスの「WordPress.com」が提供されていますが、自由度が高いソフトウェア版(「WordPress.org」で配布されている)を利用しているケースがほとんどでしょう。

ジャンル⑩ ECプラットフォーム

ECサイトを構築して商品情報や販売履歴、顧客情報を統合管理するためのツールで、受発注管理や在庫管理など、ECに必要な基本機能が標準で提供されています。

◆代表的サービス

・BASE(小規模)
・STORES(小規模)
・makeshop(小・中規模)
・Shopify(小・中規模)
・ebisumart(中・大規模)

近年は初心者でも気軽に利用できるECサービスが増えており、SaaSを利用することで、構築の負荷を抑えてECを始めることができますが、小・中規模向けのサービスでは、自社固有のデザインや機能のカスタマイズができない場合もあります

そのため、カスタマイズ要件が前提となる場合には、例えば「ebisumart(エビスマート)」のような中・大規模のECサイトにも対応できる、カスタマイズ可能な拡張性と柔軟性の高いサービスを選択する必要があります

参考:「ebisumart(エビスマート)公式サイト

SaaSの短所

優れた特徴を持つSaaSですが、利用目的によっては短所となることもあります。今回は主要な5つの短所を紹介します。

① 閉域NWに比べるとセキュリティリスクが高い

SaaSはインターネット経由で、さまざまなデバイスからアクセスできるサービスなので、閉域環境で利用端末が固定されているシステムよりも悪意のある第三者による攻撃リスクは高くなります

SaaSプロバイダー側でも対策が施されていますが、万が一IDとパスワードが漏えいした場合などに備えた二重認証などデータの漏えいの防止と不正アクセス対策には十分に注意する必要があります。

② カスタマイズができない

一般にSaaS型サービスは標準化された機能が多く、自社オリジナルの機能を追加するためのカスタマイズが難しい場合もあるため、特定のビジネスでは利用が適さないケースもあります。

SaaSのECプラットフォームを検討する際に、独自の業務フローに合わせた機能を追加したり、特殊な外部システムと連携したりする要件がある場合には、先述した「ebisumart(エビスマート)」のような、カスタマイズ可能で外部連携の実績が豊富なサービスを軸として検討を始めると良いでしょう。

③ インターネット環境が必須となる

SaaS型サービスを利用するためにはインターネット環境が必須となるため、通信環境が不安定な場合やネットワーク障害で通信断が発生すると、サービスを利用した業務が行えなくなります

そのため万一に備えて、例えば予備の通信回線を用意したり、オフラインでも利用できるビジネスツールへの切り替え手順を用意したりするなど、通信障害が発生しても業務を継続できるような代替手段を検討しておくことが大切になります。

④ データセキュリティを自社で担保できない

クラウドサーバでデータを管理・運用するSaaSでは、データ保護もSaaSプロバイダーに依存するため、自社だけでデータセキュリティを担保することができません

そのため、SaaSでは自社のセキュリティ基準を満たせない場合があります

⑤ 「サービス終了」や「仕様変更」の可能性がある

突然、SaaSプロバイダーが、サービスの仕様を大幅に変更したり、提供自体を終了したりする可能性があります。事前の通知を受けたとしても対応することが難しいケースもあるため、業務への影響を最小限に抑えるためのリスク管理が必要です。

特に海外プロバイダーのSaaS型サービスではその可能性が高まるため、サービス選定ではこの点についても留意するようにしましょう。

カスタマイズが可能なSaaS型サービスのECプラットフォームを利用しよう!

現在は、さまざまな種別のSaaS型サービスが多数提供されていますが、今回の記事を通してSaaS型サービスの基本的な特徴について理解できたと思います。SaaS型サービスの利用を検討する際には、これらを理解した上で、自社に合ったサービスを選定するようにしましょう。

また、SaaSのECプラットフォームを利用する場合には、ある程度カスタマイズにも対応できる柔軟性と拡張性を備えたサービスを選定すべきです。

インターファクトリーの「ebisumart(エビスマート)」は、大規模なカスタマイズが可能で、外部のさまざまなシステムやサービスとの連携にも対応できるSaaS型のECプラットフォームサービスです。ECに関するあらゆる要件にも、柔軟に対応できるサービスなので、ぜひ、下記の公式サイトで詳細をご確認の上、お気軽にお問い合わせください。

公式サイト:「ebisumart(エビスマート)


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。