ECサイトの運用業務は多岐にわたります。スキルを備えた人材を増員できないなどの事情から、一部の業務を外部委託(外注)する場合も多いでしょう。
外注を検討する際は、「業務負荷の削減」だけでなく、「売上向上」や「目標達成(何らかの成果創出)」につながるか、という観点からも考慮すべきです。
業務の外注化は、より効果的な運用体制を構築するきっかけとなります。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、
・Web広告運用
・ECサイトの構築/リニューアル
など、ECサイトにおけるさまざまなケースで外注を検討する際のポイントを解説します。
ECサイト運用の外注化は労働力の確保だけでなく、売上向上の視点からも検討する!
運用業務の外注を検討するきっかけの多くは「人員不足」ではないでしょうか。しかし、せっかく外注化の体制を整えるのであれば、「ECサイトの売上向上のための工夫や仕組みづくり」という点も考慮すべきです。
労働力を補う目的だけで外注先企業を選定しようとすると、評価基準が料金に偏りやすくなるため、専門のノウハウや実績を持つ外注先企業と一緒に仕事をすることで自社が獲得できるスキルと経験についても評価することが重要です。
外注先企業を選定する際には、現行ECサイトの改善案を提案してもらうなどして、外注先企業の得意とする分野や実績を見定めましょう。提案では、正論や理想だけでなく、「自社の目標と一致するか?」「自社で実現可能か?」「成功事例の紹介やリスクに対する説明があるか?」といった点も評価する必要があります。
自社のノウハウが不足している場合はまず外注して、経験を積みながら内製化を目指そう!
運用業務を外注先企業に丸投げするだけでは、業務のノウハウが社外に流出し、自社の知見や従業員のスキルとキャリアを積み上げることができなくなります。
また、自社にECサイトの運用スキルを持つ人材がいない場合には、適切な外注管理も難しくなります。業務分野と運用についての一定のスキルがなければ、外注先企業に対して工数や品質に関する適切なチェックや依頼をすることはできません。
そのため、最初はECサイトの運用全般を外注する場合でも、外注先企業と共に作業を行う機会を設けてノウハウとスキルを習得し、徐々に内製できる領域を広げていくようにしましょう。
最終的には、自社の担当者が売上向上につながる施策検討により多くの時間を割けるよう、単純作業やルーティン業務を外注する、という形が理想です。
◆自社で行う業務(例)
・プロモーション
・サイト分析 など
◆外注で効率化できる業務(例)
・梱包・出荷
・配送管理 など
上に挙げた業務の振り分けはあくまでも一般的な例であり、外注したほうがよい業務は目的によって異なります。例えば、品質とブランドイメージを高めて顧客満足度を向上させたいという場合には、バックヤード業務を含む、自社のユーザー接点となる全ての業務を内製化するという方法も考えられます。まずは、自社のECサイトが最も優先すべき戦略は何かを明確にすることが重要です。
Web広告運用は外注ではなく内製化を検討しよう!
Web広告運用では以下のサービスを利用することが多いです。
・Yahoo!広告
・ディスプレイ広告
・SNS広告
Web広告運用はECに限らず多くの事業者が外注しており、その理由として、Web広告の概念の複雑さや運用ノウハウが必要であるという点が挙げられます。
しかし、Web広告運用を完全に外注してしまうのは非常にもったいない、と筆者は感じています。ひと昔前とは違って、現在はWeb広告サービスの自動化が劇的に進み、基本的なスキルがあればある程度の運用ができるようになっています。
例えばGoogle広告ではコールセンターが開設されているため、設定方法なども丁寧に教えてもらうことができます。
代理店にWeb広告の運用代行を依頼する場合には、代理店により料金体系は異なりますが、10~20%の運用代行手数料が発生することが多いため、外注するとその分がCPA(Cost Per Action)に上乗せされることになります。
一般的なWeb広告運用では、設定方法と管理画面の見方を覚え、初期設定ができれば、あとは定期計測していくだけなのでそれほど難しくはありません。予算が潤沢な場合は問題ありませんが、定型的なWeb広告運用を外注し続けることで利益が圧迫され、かえってコスト高となってしまうということも考えられます。
運用当初はWeb広告キーワードなどをはじめとする基礎知識や設定手順のトレーニングなどが必要になるため、最初は外注で運用を開始し、安定してきた段階で定型運用は内製化して、より高度かつ最新のWeb広告戦略を外注するなど、自社のスキルと予算に応じて選択できるようにすることをおすすめします。Web広告の運用をいつでも内製化できるよう、Web広告用アカウントは自社で取得しておくようにしましょう。
SNS運用の開始当初は外注を積極的に検討しよう!
「SNSを続けていれば、いつかはフォロワーが増える」ということはありません。SNSでフォロワーを増やすためにはノウハウが必要です。実際に、大手企業でもフォロワー数が増えていないアカウントも存在しています。
自社にSNSの運用ノウハウがないのであれば、積極的に外注してみるのがよいと筆者は考えています。ただし、ECサイトやWeb広告の運用と同様に、永続的に外注するのではなく、自社のEC担当者がノウハウとスキルを習得することを目的に検討すべきでしょう。
10年以上も前の話になりますが、筆者自身もSNSの初期運用で苦戦した経験があります。当時勤めていた会社でTwitterとFacebookの運用を開始したのですが、なかなかフォロワーを増やすことができずにいました。
そこで、ノウハウを持った企業に外注してみたところ、フォロワー数が一気に増えたのです。それ以降、SNS運用のノウハウを外注先企業から学び、最終的には自分たちで運用できるようになりました。
SNS運用では特有のノウハウも必要なため、経験と知識が不足している場合には、専門の企業への外注をおすすめします。
運用業務を外注することによる3つの実践的なメリット
コスト削減や費用対効果といった一般的なメリットについてはご存じの方も多いと思うので、この記事では、10年以上にわたり100社を超える企業でECサイトの運用業務の外注化をサポートしてきた筆者が実感している「運用業務を外注することによる3つの実践的なメリット」を紹介します。
下記が3つの実践的なメリットです。
メリット② 社内の稟議を通すためにサポートしてもらえる
メリット③ 社外の人脈が増える
それぞれについて詳しく解説します。
メリット① ノウハウと実績を維持しながら運用を継続できる
人員を十分に確保することが難しい企業では、複数の運用業務を1名体制で行っている場合も多いでしょう。そのため、担当者が離職したときに、全ての業務が中断してしまうということも珍しくありません。
そのような場合でも、外注している業務であれば運用を止めずに後任に引き継ぐことができます。外注先企業とのお付き合いが長い場合には、自社の従業員よりも業務を熟知している担当者がいるというケースも多いです。
外注先企業と良好かつ安定したパートナーシップを築くことで、人材の流動と運用の継続の課題を切り離して考えることができるようになります。自社の担当者が変わっても、業務のノウハウや経験を外注先企業と共有しているため、人材に依存することなく運用を継続することができます。
メリット② 社内の稟議を通すためにサポートしてもらえる
「次々と新しい施策を打って回していきたい」と思いつつも、なかなか通らない社内稟議の対応に苦労されている方も多いのではないでしょうか。
もし、その施策が外注を前提としている場合には、稟議の段階から外注先企業の担当者に協力してもらうことで、良質な提案とプレゼンテーションができる場合もあります。社内の人間だけでは納得させることができなかった企画も、第三者の視点が加わることですんなりと通る、ということもあります。
過去に筆者も、あるWebマーケティング施策の社内承認がなかなか下りずに困っていたときに、外注先企業のコンサルタントに打ち合わせに同席してもらい、上長の説得に成功したという経験があります。
現在は逆の立場の外部のコンサルタントとして、クライアント企業の担当者と共にプレゼンテーションを実施するなど、スムーズに施策を開始できるようサポートすることもあります。
メリット③ 社外の人脈が増える
外注先企業との定期打ち合わせや問題発生時の解決対応などを通して、外注先の担当者やチームとより多くの経験を共有することで、信頼関係が構築されます。
当然、取引が長くなると外注先企業の担当者の異動や離職などもありますが、それは新しい出会いの機会にもなるでしょう。より多くの担当者と仕事をすることで、業界の知識と人脈を増やすことができるからです。
筆者も、以前一緒に仕事をした外注先企業の担当者とは業界動向などの情報を交換したり、仕事の依頼や紹介をしたりと、当時の仕事を離れてもお互いにギブ・アンド・テークの関係を続けています。
言うまでもないことですが、信頼関係を構築するためにも、常に「外注先は下請けではなく、ビジネスパートナーである」ということを忘れないようにしましょう。
ECサイトの構築/リニューアルを外注しよう!
ECサイトの新規構築や既存サイトをリニューアルする場合には、専門ベンダーへの外注を検討するとよいでしょう。主な理由は次の3つです。
✓業界の最新の知識と機能を活用できる
✓パッケージやクラウドなど自社に最適な方法を選択できる
社内にEC業界の最新の動向と技術に精通しているエンジニアがいない限り、上記の3つを満たせるECサイトを内製で構築することは難しいでしょう。
例えば最近のトレンドとして、ECサイトの決済機能にAmazon PayなどのID決済サービスを利用する方法がありますが、自社開発でECサイトを構築する場合、主流の機能であることは知っているけれど、実装方法を調べている時間が取れないというケースもあるでしょう。
サイトの保守や運用の面でも、システム部門の人員が不足していたり、EC事業の予算を十分に確保できなかったりという理由で、定期的な改修ができないという場合には、外注することで予算枠を確保しやすくなることがあります。
また、ECサイト構築の専門ベンダーに外注することで、高いセキュリティが保証されたシステムの最新機能を利用することができるため、ECサイトの改ざんや個人情報の漏えいなどのサイバーリスク対策の面でも、ベンダー側がセキュリティ対策や保守・運用を行っているクラウドサービスを利用することは大きなメリットとなります。
当社のクラウドコマースプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」は、フルカスタマイズにも対応したECプラットフォームです。運用支援サービスも利用できるので、ECサイトの構築/リニューアルを予定されている方はぜひ検討してみてください。
外注によって引き起こされた深刻なトラブル事例
本記事では、ECサイトの運用を外注することで効果を出すことを前提にメリットなどを解説してまいりましたが、自社の業務を外部に委託することで注意しておかなければならない点があります。
それは「情報の取り扱い」です。外注先企業に業務を委託するフェーズはさまざまですが、その中でもECサイトの「構築」と「運営」の大きな違いは、運営はすでに顧客データや取引先情報が含まれており、権限にもよりますが、運営を委託することは、ある程度外注先企業に顧客情報を開示することになります。
2024年2月と、つい最近の出来事ですが、委託先の不正ダウンロードにより取引先情報が流出するというトラブルがありました。詳しくは下記記事をご覧ください。
この件で注目すべき点のひとつは、委託先の再々委託先の作業者によって行われた不正行為という点です。委託先が実績もあり信用に足る企業であっても、さらに委託先が(場合によっては複数)存在しており、発注元が把握していないケースは珍しくありません。
そのため、情報のアクセス権限について慎重に検討すると同時に、契約時にしっかり再委託に関する条項や機密保持義務を明確化し、再委託先のリスク評価を行う必要があります。
まとめ
知見やスキルを習得できる機会を与えてくれる外注先企業は心強い存在です。
自社のECサイトの課題を、豊富な経験や事例を持つ外注先企業と協力して解決していくことで、ノウハウを吸収しながら共に成果を収めていきましょう。
ebisumartのEC支援サービス「ビジネスグローアップサポート」では、当社の経験豊富なコンサルタントが、お客様のEC事業の成功を支援します。
◆サービス内容
✓マーケティング
✓サイト構築
✓集客
✓CRM
✓アクセス解析・運用改善提案
✓運用代行・制作代行
ECサイトの分析、SNS運用、効果測定など多岐にわたるEC事業をサポートします。公式サイトで資料をダウンロードできますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。