BFCMとは「Black Friday, Cyber Monday」(ブラックフライデー、サイバーマンデー)の略語で、11月下旬から12月中旬にかけて開催される小売業界の大規模なセールイベントを指す用語です。
ブラックフライデーはアメリカの感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日の金曜日にあたり、小売業界ではクリスマス商戦に向けた大規模なセールが開催されています。
サイバーマンデーはブラックフライデー後の月曜日を指し、ブラックフライデーで買い逃した商品を自宅で購入してもらおうと、小売のオンラインショップを中心に大規模なセールが開催されるようになりました。
BFCMの発祥国であるアメリカでは、大幅な割引やお得なキャンペーンを期待する多くの消費者を集客できる大規模なセールイベントで、大きな売上が期待できるイベントとなっています。
近年では、BFCMのイベントは世界各国で実施されており、日本でも大手企業による大規模セールが毎年開催されています。
この記事では、株式会社インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、BFCMについて詳しく解説します。
国内で開催される「ブラックフライデー」
日本でも「ブラックフライデー」は定着しつつあり、Amazon、楽天市場、ユニクロ、ビックカメラなどのEC大手でも大規模なセールを実施しています。
◆2023年の国内大手企業のブラックフライデー開催期間
出典:各ブランドの公式サイト、プレスリリース等の情報に基づき筆者が作成
上表を見ると、国内のブラックフライデーのセール期間は、Amazonや楽天市場などの大手ECモールは比較的短めに、イオン、イトーヨーカドー、ビックカメラなどの大手小売店は比較的長めに設定されているようです。
11月に入ると、筆者のFacebookのタイムラインに、ブラックフライデーに関する投稿が目立つようになりました。また近所のイオン(実店舗)では、ブラックフライデーを訴求するための黒色のパッケージのトイレットペーパーが陳列されており、日本でもブラックフライデーが定着してきたように感じています。
実際に国内のブラックフライデーの認知度をGoogleトレンドで確認してみましょう。
◆Googleで「ブラックフライデー」を検索した人の推移
出典:「Googleトレンド」でブラックフライデーを調べた結果
上図では、2016年あたりからキーワード検索が増え始め、2022年以降は100%に達しており、国内でもブラックフライデーの認知度が高まっていることが分かります。
また下図は、ナイル株式会社が運営する情報サイト「Appliv TOPICS」が2023年12月5日~12月11日の期間で20~69歳の男女1,880人を対象として実施した、ブラックフライデーセールに関するアンケート調査における、Amazonと楽天市場のブラックフライデーセールの認知度についての調査結果です。
◆Amazonと楽天市場のブラックフライデーセールの認知度
引用(図表):Appliv TOPICS「ブラックフライデーセール1,880人調査 開催認知度Amazon86.9%、楽天76.5% 高額購入者は楽天が多い傾向」(2023年12月12日掲載)
Amazonと楽天の2023年のブラックフライデーセールの認知度についての設問では、「知っている」と回答した人の割合は、Amazonは86.9%、楽天は76.5%にのぼっています。
「実際にセールで買い物をした」と回答した人の割合は、Amazonは43.5%、楽天は29.7%にとどまっているものの、「ブラックフライデー」という大規模なセールイベントが日本でも確実に定着しつつあると言ってもよいでしょう。
小規模の自社ECサイトでもブラックフライデーを実施すべきか?
日本でも、大手企業によるブラックフライデーの大規模セールが毎年開催されるようになりました。まだブラックフライデーを実施していない中小企業も自社のECサイトでブラックフライデーを実施すべきでしょうか。
筆者は主に以下の3つの理由から、取り扱い商品がブラックフライデーで売れる可能性が少しでもある場合には、積極的に実施したほうがよいと考えています。
理由① 初回購入数を増やすため
当たり前のことですが、ECサイトの売上を増やすためには「会員数」と「初回購入」を増やす必要があります。初回購入数が少ないままでは、事業を拡大することはできません。そのため、集客の絶好の機会となるブラックフライデーでお得な商品を提供できるのであれば、初回購入数が増える可能性が高くなります。
すでによく知られている「ブラックフライデー」でキーワード検索をして、偶然ECサイトにたどり着いたユーザーが、目玉商品を見つけて購入してくれる可能性が生まれるからです。そのため、ブラックフライデーを開催する際には、ECサイトのトップページや専用ページで「お得感」や「イベント感」を演出し、ユーザーの目につきやすい場所に目玉商品の情報を掲載するようにしましょう。
理由② 既存顧客の流失を防ぐため
ブラックフライデーは小売業界で同時期に開催されるセールイベントですから、すでに競合企業がブラックフライデーを実施している可能性は十分にあります。そのため、自社の既存顧客がブラックフライデーをきっかけに、同じ商品や類似の商品を扱っている競合企業のECサイトを見つけて商品を購入してしまうかもしれません。
ブランド戦略や商品特性などによって割引販売による差別化は行わないというビジネスモデルを採用している場合は別ですが、基本的にはブラックフライデーのような業界イベントは積極的に参加してみることをおすすめします。
理由③ コミュニケーションを増やすため
ブラックフライデーのセールイベントは、既存顧客との新たなコミュニケーションの機会にもなります。メールやSNS、リーフレットなどでブラックフライデーのプロモーションを通じてイベントを盛り上げることで、ECサイトにも活気がもたらされます。
下図は、アパレルセレクトショップのアーバンリサーチのブラックフライデーキャンペーンの告知メールです。
◆アーバンリサーチのキャンペーン告知メール(2022年)
引用(画像):筆者のスマートフォンで受信したアーバンリサーチの2022年のブラックセールキャンペーンの告知メール
ブラックフライデーで実施したいWebマーケティング
今回は、ブラックフライデーで実施したいWebマーケティング施策を5つ紹介します。
① ECサイトのトップページの刷新
ブラックフライデーを実施するにあたり、ECサイトを訪れたユーザーにブラックフライデーを開催している(あるいは開催予定である)ことを伝えてイベントに興味を持ってもらえるように、ECサイトのトップページの目立つ場所にブラックフライデーを告知するバナーなどを設置しておきましょう。
同様に、告知メールやSNSの告知投稿から流入してきたユーザーにも、一目でブラックフライデーのイベントを開催している(あるいは開催予定である)ことがすぐに分かるようにしておくことで、ユーザーの関心を引いて離脱を防ぐようにします。
下図は、ジーンズセレクトショップのライトオンがブラックフライデー開催時に、オンラインショップのトップページに配置していたカルーセルバナーです。
◆ライトオン公式オンラインショップのトップページのブラックフライデー告知バナー
引用(画像):「ライトオン公式オンラインショップ|トップページ」のブラックフライデー用のカルーセルバナー
② 専用ページの設置
ブラックフライデー専用ページを作成しましょう。
下図は、下記は、おもちゃ通販のトイザらス オンラインストアの2023年のブラックフライデー専用ページです。
◆トイザらス オンラインストアのブラックフライデー専用ページ(2023年)
引用(画像):「トイザらス オンラインストア」の2023年のブラックフライデー専用ページ
トイザらスの2023年のブラックフライデー専用ページは、厳選した目玉商品情報のみを掲載することで、ユーザーが一目で確認できるようにしています。また、デジタルチラシへのリンクも掲載されており、ECサイトと店舗で連動しているイベントであることが分かります。
③ メルマガ配信
既存顧客のリピート購入を促すために、ブラックフライデーのお得感やイベント感が伝わるメールを作成しましょう。タイトルにもイベントの開催期間や最大割引率を明記するなどして、開封してもらえるように工夫する必要があります。
◆メルマガタイトルの例
「最大80%OFF/ブラックフライデーセール対象商品150点以上!」
「本日最終日!BLACK FRIDAY 人気の●●が50%OFF」
「【半額】★ブラックフライデー★スーパーセールをお見逃しなく!」
ユーザーのメールボックスの中で、他社のメールの山に埋もれてしまわないように、ユーザーがついメールを開きたくなるようなタイトルを設定しましょう。
④ SNS投稿/UGCマーケティング
SNSにブラックフライデー用のコンテンツを投稿しましょう。また、小売業界のイベントとして認知されているブラックフライデーでは、UGC(User Generated Content:ユーザー作成コンテンツ)マーケティングも取り入れることで、ブランドや商品の認知度の拡大を狙ってみるのもよいでしょう。
ブラックフライデー期間中のSNSには、「●●のブラックフライデーで××を購入しました!」といった投稿(UGC)が多くなるので、ユーザーが思わず投稿したくなるような、すなわちUGCを生みやすい目玉商品を用意するようにしましょう。
◆UGCを生みやすい商品(例)
・おすすめしやすい
・個性的で関心を引きやすい
商品を購入してくれたユーザーのUGCによって、自社発信だけではリーチできない新しいユーザーにECサイトの存在を知ってもらうことができるかもしれません。
⑤ クーポンの配布
事前に、ブラックフライデーの期間中に使えるクーポンを配布しましょう。
ECシステムのクーポン機能を使うと、事前に登録したクーポンの使用期間に合わせてステップメールを自動配信することができるので、ブラックフライデー最終日の朝に「クーポンの期限は本日まで!」という通知メールを自動で配信することも可能です。
また、SNSでもイベント用のクーポン番号を投稿するなど、ブラックフライデーの集客力を生かした効果的なクーポン施策を実施するようにしましょう。
越境ECではBFCMを開催しよう!
越境ECでは、BFCMのセールは開催するようにすべきでしょう。
BFCM期間中は、特にアメリカでは日本以上にユーザーの購入意欲が高まるので、年末商戦で売上増加を狙うための絶好のチャンスです。
特に海外向けに日本ならではの商品を取り扱っている場合には、出遅れると競合企業に先を越されて販売機会を逃してしまう可能性もありますので注意が必要です。
なお、国や地域によって好まれるWebサイトのデザインは異なるため、越境ECでBFCM向けのWebマーケティングを実施する場合には、国内ではなく現地のECサイトや事例を参考にするようにしましょう。
小規模でもOK!ブラックフライデーを実施してみよう
企業が独自に開催するイベントの場合、ユーザーに伝えてイベントを知ってもらう必要がありますが、ブラックフライデーのように業界イベントとして認知されているイベント期間中は、「ブラックフライデー期間だからあのショップもセールをしているかもしれない!」と、ユーザーが能動的にECサイトを訪れる可能性が生まれます。
また、大規模なセールイベントを利用するユーザーは購入意欲がとても高い状態ですから、新規顧客の獲得だけではなく既存顧客のリピート購入も期待できる貴重な販売機会となります。ブラックフライデーなどの業界全体のセールイベントは中長期的な売上増加にもつながる可能性があるため、小規模でも構わないので、可能な限り開催することをおすすめします。
BFCMなどのセールイベントの開催をスムーズに開催するためには、必要に応じて機能追加やスケールアップに柔軟に対応できるECサイトが不可欠となるでしょう。
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