シェアリングエコノミーとは、個人・組織・団体等が所有する遊休資産(スキルや時間などの無形のものを含む)を売買、貸出、共有する経済モデルのことで、貸主と借主を仲介して手数料による収益を得るサービスを「シェアリングサービス」と言います。
2032年度には市場規模が15兆円を超えると予測されているシェアリングエコノミーは非常に大きな市場です。新しいシェアリングサービスを提供するためには、社会の課題解決につながるようなアイデアのサービス化、法規制を遵守した事業計画の策定、プラットフォームの構築などが必要になります。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、シェアリングエコノミーの市況とシェアリングサービスの概要を紹介します。
2024年のシェアリングエコノミー市場は3兆1,050億円
株式会社情報通信総合研究所と一般社団法人シェアリングエコノミー協会が2025年1月に発表した共同調査報告によると、2024年度の国内シェアリングエコノミー市場規模は3兆1,050億円で、2022年度比で18.7%増加しました。
◆2024年度までの市場規模推移
また、2022年の同調査では2032年度には最大15兆1,165億円にまで拡大すると予測されています。
◆国内シェアリングエコノミー市場規模予測(単位:億円)
出典:【シェアリングエコノミー市場調査 2022年版】市場規模は過去最高の「2兆6,158億円」を記録(一般社団法人シェアリングエコノミー協会)
シェアリングエコノミー市場だけの数値では、国内の事業における規模を判断しづらいと思いますので、同年の国内IT関連市場の規模と比較して見ていきましょう。
◆国内のIT関連の市場規模(2024年度)
・ゲームコンテンツ市場:2兆3961億円 ※2
・インターネット広告:3兆6,517億円 ※3
出典:
※1 経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」(2025年8月発表)
※2 KADOKAWAグループ「ゲーム業界のデータ年鑑「ファミ通ゲーム白書 2025」発刊! 創刊20周年特集は過去20年間の国内ソフト売上ランキング」(2025年8月6日)
※3 株式会社電通「2024年 日本の広告費」(2023年2月24日掲載)
2024年度の国内シェアリングエコノミーは、BtoC-ECの約8分の1の市場規模ですが、すでにゲームコンテンツより大きく、インターネット広告と同程度の規模となっており、成長市場であることが分かります。
一般社団法人シェアリングエコノミー協会の推計では、2032年度にはベースシナリオで7兆円規模、課題解決シナリオでは15兆円規模まで拡大すると予想されています。これは、2032年には、現在のBtoC-EC市場の主力である楽天市場やAmazonなどと同程度の規模でシェアリングサービスが普及している未来を示しています。
それでは、次にシェアリングサービスの具体的な種類について解説します。
5つのシェアリングサービス
新たにシェアリングサービス事業を始める場合には、現在の中核ビジネスに関連する、または相性が良さそうな領域でのサービスを検討してみることをおすすめします。
まずは、消費者庁が作成・公表しているパンフレット「あんぜん・あんしんシェアリングエコノミー利用ガイドブック」に沿って、すでにサービス化されている5つのシェアリングサービスについて理解しましょう。
◆5つのシェアリングサービス
| 代表サービス例 | 特徴 | |
| ①空間のシェア | ホームシェア・民泊・駐車場・会議室 | 使われていない空間を一時的に貸し出す |
| ②モノのシェア | フリマ・各種レンタルサービス | 不用品の売買・不使用期間の貸し出し |
| ③スキルのシェア | 家事代行・育児・知識・料理・介護・教育・観光 | 個人のスキル・知識を直接取引 |
| ④移動のシェア | ライドシェア(相乗り)・シェアサイクル・カーシェア | 移動手段の共有・配車サービス |
| ⑤お金のシェア | クラウドファンディング | 不特定多数からの資金調達・出資 |
出典:消費者庁「あんぜん・あんしんシェアリングエコノミー利用ガイドブック」(2021年10月発行)
以下に、ひとつずつ詳しく解説してまいります。
①空間のシェア
・民泊
・駐車場
・会議室
有名なサービスとして「Airbnb(エアビーアンドビー)」があります。コロナ禍以前に、低予算で気軽に宿泊できる民泊サービスとしてテレビなどのメディアで紹介されたことで、一気に認知された印象があります。
しかし、民泊を許可していないマンションを貸し出すなど、ルールを守らない事業者や、宿泊先で大騒ぎをしたり、不当にゴミを捨てたりするなどの利用者のマナー違反が相次ぎ、近隣住民からの苦情やトラブルが問題となりました。
参考:民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?」
空間のシェアサービスでは、貸し出す空間が属するコミュニティーのルールを守り、近隣住民とトラブルが生じることのないよう配慮したサービスを設計・運営することが大切です。
②モノのシェア
・レンタルサービス
国内ではフリマアプリサービスの「メルカリ」が有名です。
2019年にメルカリと三菱総合研究所が実施したシェアリングエコノミーに関する調査では、約半数以上のユーザーが、フリマアプリサービスの利用前後で、商品購入時の行動と意識が変化していることが分かりました。
ユーザーは商品購入時に、利用後にフリマアプリで売却することも念頭に置いており、フリマアプリでより売れやすい、新品や高価格帯ブランドなどの商品を購入する傾向が強まっています。
三菱総合研究所では、フリマアプリサービスの利用体験を通じ、「所有」から「一時利用」に変化した新たな消費モデルを「SAUSE(ソース)」と定義しています。
参考:メルカリ「メルカリ、三菱総合研究所とシェアリングエコノミーに関する共同研究を実施」(2019年2月26日発表)
モノのシェアサービスには、フリマアプリ以外に、衣服やアクセサリー類、家具・家電、育児用品などのレンタルサービスなども含まれます。
③スキルのシェア
・育児
・知識
・料理
・介護
・教育
・観光
家事代行などのサービスは以前から提供されています。
ただし、従来サービスは、事業者がスタッフを派遣する形でスキルを提供するというビジネスモデルだったのに対し、シェアリングサービスは、事業者が提供するプラットフォーム(Webサービスやアプリ等)を介して、サービス提供者と依頼者が直接取引を行うビジネスモデルになります。
例えば、IT関連スキルのシェアリングサービスでは、「クラウドワークス」「ランサーズ」などが有名です。
④移動のシェア
・シェアサイクル
・カーシェア
代表的なサービスとして配車サービスの「Uber」があります。米国では、Uberにドライバー登録をすることで、個人が自分の自動車で移送サービスを提供できます。
日本では、国土交通省の営業認可を受けていない移送サービス営業(いわゆる、「白タク」)は違法なので、タクシーやハイヤー事業者に配車依頼ができる「Uber Taxi」が提供されています。
2024年4月には、日本でも「日本版ライドシェア」が条件付きで解禁されました。タクシー会社の管理下でドライバーが有償輸送サービスを提供できる仕組みで、行政が定めた地域・時間帯に限定した運行が認められています。
2024年11月末時点で全国418社が参入するなど(2024年4月の56社から大幅増)、急速に普及が進んでいます。
個人の都合に合わせて、移送サービスを提供したり、選択したりできる環境は、未来の日本の労働力不足をカバーするソリューションの一つとなるのではないか、と筆者は考えています。
⑤ お金のシェア
クラウドファンディングは、アイデアをサービス化するために、インターネット上のプラットフォームを介して不特定多数の人々から出資者を募る仕組みです。寄付型を除くクラウドファンディングでは、出資額に応じたリターンを設定する必要があります。
◆クラウドファンディングのリターン(例)
・クラウドファンディングで開発した商品や割引販売
・リターン用に用意したグッズ
・株
・事業化後の売上実績に基づく配当金
クラウドファンディングのサービスプラットフォームは、目標とする支援金が集まったプロジェクトは、各サービスが設定している料率分を手数料として支払うという収益モデルで、「CAMPFIRE」や「Makuake」などのサービスが有名です。
シェアリングサービスを開発・提供するまでの5つのステップ
ここでは、新たにシェアリングサービスを開発し、提供するまでの簡単な流れについて、5つのステップに分けて解説します。
ステップ①サービス化が可能な社会課題を見つけ出す
シェアリングサービスのアイデア出しでは、「今ある社会課題を解決するために必要なサービスとは?」という視点が大切です。
社会課題の解決を促進するサービスは、コミュニティーや行政の支援も得やすく、将来的には社会インフラにつながる可能性もあります。
また、シェアリングサービスでは、サービスを貸し出す側と借りる側の両方を集めて、最適なマッチングを提供し続けることも重要です。そのため、需要と供給のバランスも重要になります。
例えば、先述したタクシー運転手の高齢化問題を解決するシェアリングサービスの例で考えてみましょう。
◆移動に関する社会課題(例)
・個人事業者のビジネス機会が少ないという地域課題
ドライバー不足の社会問題と、地方のビジネス機会の創出課題を解決するためのサービスを立案し、行政を巻き込んで規制を緩和していけるようなサービスを創造できることが理想的です。
ステップ②市場調査の結果に基づき事業計画を策定
一般の事業と同様に、サービスに関連する市場の調査は不可欠です。十分に調査した上で、事業計画を策定しましょう。
◆調査項目の例
・競合
・法規制
・地域の課題
これらの観点で、サービスを実現できるか、事業を軌道に乗せることができるかを検討します。すでに確立された大きな市場では競合が多く、革新的なソリューションがなければ新たに参入することは困難です。
例えば、多くの課題に取り組んでいる地方自治体と協力し、地域に根差したシェアリングサービスを開発・提供することで、市場を確立するとともに地方を活性化するという切り口で検討してみるのもよいでしょう。サービス化が実現すれば、成功モデルとして全国への横展開も可能になるかもしれません。
ステップ③サービスプラットフォームの構築
より多くの人が使えるように、シェアリングサービスではスマートフォンアプリの提供が基本となります。シェアリングサービスプラットフォームの主要な機能は以下の5つです。
◆シェアリングサービスプラットフォームの5つの主要機能
機能②予約
機能③マッチング・検索
機能④ポイント・クーポン
機能⑤決済
機能①会員/サービスの登録・管理
シェアリングサービスでは、利用者に会員登録をしてもらう必要があります。また、会員登録のハードルを上げてしまうというデメリットはありますが、サービスの信頼性を高めるためには、厳重な本人確認の仕組みも考慮すべきでしょう。
また、スキルをシェアするサービスなどでは、会員情報にひも付いたスキル情報を登録・管理する必要があります。また、フリマアプリのようなシェアサービスでは、商品やサービスを登録・管理するための機能が不可欠です。
機能②予約
民泊などの空間のシェアサービスでは必須の機能です。
また、予約時に決済を同時に行える「事前決済」の機能も検討することもおすすめします。予約時に事前決済を行えるようにすることで、ノーショー対策にもなります。
機能③マッチング・検索
ユーザーが目的の商品やサービスを素早く見つけるための機能です。デジタルツールの操作に慣れていないユーザーも簡単に検索できるようにカテゴリーや具体的な項目を選択形式で入力できるようにするとよいでしょう。
同時に、検索慣れしているユーザーのために検索ボックスを用意するなどして、多くの人にとって使いやすいUI(ユーザーインターフェース)を設計することが大切です。
メルカリでは、スマートフォンに特化したUIを用意することで、サービス利用時の操作性とマッチング結果(検索結果)の精度を高めています。
機能④ポイント・クーポン
新規会員を増やしたり、サービス利用を促したりするために、ポイントやクーポンを活用します。
参考までに、ECサイトでは、クーポン施策は主に新規会員獲得のために実施されることが多く、ポイントは、リピーター施策として利用されます。シェアリングサービスにおいても、ポイントやクーポンの機能を利用して、会員数を増やしましょう。
機能⑤決済
アプリの決済方法には以下のような種類があります。
◆主要な決済方法
・キャリア決済(通信会社経由での決済)
・ID決済(Amazon Pay、PayPay等)
キャリア決済は、クレジットカードを持っていないユーザーにとって便利な決済方法です。また。ターゲットとするユーザー層がAmazonユーザーと重なるようであれば、ユーザーが日頃からよく利用するAmazonアカウントで支払いができるAmazon Payを導入するなど、クレジットカード決済やキャリア決済を補完するID決済の導入も検討するようにしましょう。
ステップ④シェアリングサービスの認知度と信頼性を高める
サービスをリリースしても、多くのユーザーにサービスを利用してもらわなければ意味がありません。どんなに素晴らしいシェアリングサービスであったとしても、収益が見込めなければ、サービスを持続することができません。
新しいサービスをより多くの人に利用してもらうためには、認知度と信頼性を高める活動に注力する必要があります。
◆サービスの認知度と信頼性を高めるための活動(例)
・サービスに関係する公共機関や団体へのPR
・インフルエンサーマーケティング
・関連機関やユーザーからのフィードバックに基づく改善
集客には時間と労力がかかるため、その分の期間とコストを踏まえた上で、事業計画を立てることが重要です。
ステップ⑤データ分析と継続的な改善
サービスリリース後は、ユーザーの行動データや満足度調査を継続的に分析し、サービスの改善に活かすことが重要です。特にマッチング精度・UIの使いやすさ・決済の完了率などを定期的に測定し、課題を特定しましょう。
近年はAIを活用した需要予測や価格最適化も普及しており、データに基づいたサービス改善がシェアリングサービスの競争力を高める重要な要素になっています。
どのデータをどのように活用するかの設計を、プラットフォーム構築の段階から検討しておくことをおすすめします。
シェアリングサービスを検討する際の3つの注意点
シェアリングサービスを検討する際には、事前に理解しておくべき3つの注意点があります。
注意点①法規制
ユーザーが安心して取引できるように、各業界には法規制が存在します。
例えば、「旅館業法」では、旅館業やその種別が明確に定められており、旅館業を行うには、各都道府県で定められた条例をクリアした設備を用意しなければ、都道府県知事の許可が下りません。
また、明確な設備基準が定義されており、個人が住宅(空き家や空き部屋)を民泊サービスとして提供することは違法でしたが、2018年6月に施行された「住宅宿泊事業法(民泊新法)」によって、年間営業数の上限は180日(泊)という制限付きながらも、住宅宿泊サービスの提供が可能になりました。
このように、各業界には法規制が存在しているため、シェアリングサービス実施前に、法規制について確認しなくてはなりません。
注意点②ユーザー満足度を高めていく
ユーザーからUIに関する不満があがった場合に、サービスは利用できるからといって後回しにせず、迅速に検討・対応するようにしましょう。
メルカリの成功の理由の一つとして、スマートフォンに特化した優れたUIが挙げられます。サービスの顔でもあるUIの操作性を追求することは、ユーザー満足度の向上に直結します。
注意点③スマートフォンアプリを提供する場合、App StoreやGoogle Playの登録手数料が発生する
iPhoneやAndroidユーザーにシェアリングサービスアプリをダウンロードしてもらうためには、App StoreやGoogle Playに登録する必要があります。
その際には手数料が発生するため、事業計画時には必要コストとして必ず計上し、料金設定などを行いましょう。
注意点④プラットフォーム規約・手数料の変動リスク
注意点③の登録手数料だけでなく、プラットフォーム運営者の規約変更や手数料体系の変動もリスクとして考慮する必要があります。
特に決済手数料や手数料率は各プラットフォームの方針変更によって変動することがあるため、事業計画を策定する際は余裕を持った収益シミュレーションを行いましょう。また、利用規約の変更によってサービス内容が制限されるケースもあるため、複数のプラットフォームへの対応も検討することをおすすめします。
プラットフォームへの過度な依存は、事業リスクの一つとして認識しておくべきでしょう。
まとめ:日本のシェアリングサービスの今後
今後、シェアリングエコノミー市場の法規制等の整備が進むことで、さまざまなシェアリングサービスが登場し、普及していくでしょう。
深刻な少子高齢社会を迎える未来の日本では、あらゆる産業で労働力の不足が大きな課題となります。国民が持つ、遊休資産(スキルなどの無形を含む)を利活用することで、それらの不足を補うことができるのではないかと、筆者は考えています。
ぜひ未来を見据えて、自社ビジネスのシェアリングサービス化や、新たな領域のシェアリングサービス開発について一考してみてはいかがでしょうか?
弊社のクラウド型ECプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」は、シェアリングサービスのプラットフォームとしてもご利用いただけます。詳しくは、下記公式サイトをご覧ください。





























