BtoBtoB(toC)向けECサイト導入と5つのポイント


一般に商品の流通経路には、生産者と消費者が直接取引する経路(DtoCやBtoC)と、生産者から消費者までの間を卸売業者が仲介するといった多階層から成る経路(BtoBtoBやBtoBtoC)があります。近年ECでは「DtoC(Direct to Consumer)」(直販EC)が盛況ですが、従来の流通経路であるBtoBtoBやBtoBtoCも堅調です。

BtoBtoB(またはBtoBtoC)とは、企業[Business]→企業→企業(BtoBtoCの場合は、企業→企業→消費者[Consumer])のプロセスで商品を販売する流通経路(商流)です。

【1つめのB】一次卸業者:生産者やメーカーから直接商品を仕入れる卸売業者(製造と卸を兼ねる製造卸も含まれる)
【2つめのB】二次卸業者:一次卸業者から商品を仕入れて次の卸売業者に販売する中間業者
【3つめのB】エンドユーザー企業。または、二次卸業者から商品を仕入れて消費者に販売する三次卸業者

BtoBtoB(またはBtoBtoC)向けECにはさまざまな販売モデルがありますが、近年は在庫を持たずに商品を販売するドロップシッピングサイトが注目されています。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、BtoBtoB向けECのドロップシッピングに焦点をあて、ECサイト導入の5つのポイントについて、卸売業者の役割や実装すべき機能などを紹介します。

※記事内では「BtoBtoB」を取り上げていますが、今回紹介する内容は「BtoBtoC」にも共通するポイントです。BtoBtoC向けEC事業者の方は、「BtoBtoB」の部分を「BtoBtoC」に置き換えながら読み進めてみてください。

ドロップシッピングの取引の流れとは?

ドロップシッピング(Drop Shipping)は、ECで在庫を持たずに一次卸業者(または生産者)が商品を消費者に直送する販売手法です。ドロップシッピングの取引は以下の流れで行われます。

◆BtoBtoBのドロップシッピングにおける取引の流れ(イメージ)

ドロップシッピングは、エンドユーザー企業の注文を二次卸業者(EC事業者)が受け付けます。その後、二次卸業者は注文内容を一次卸業者に取り次ぎ、一次卸業者は出荷指示に従ってエンドユーザー企業に商品を直送するという流れで取引が行われます。

あくまで、エンドユーザー企業の取引相手は二次卸業者ですが、実体としては、一次卸業者と二次卸業者でフロント業務とバックエンド業務を分担する協業モデルです。二次卸業者は、一次卸業者と契約を交わすことで商品在庫を管理する必要がなくなるため、無在庫販売が実現します。

ドロップシッピング型ECサイトの5つのポイント

ドロップシッピング型ECサイトにおける5つのポイントは以下の通りです。

ポイント①BtoBtoB向けECシステムの導入(企業間の連携)

BtoBtoB向けECシステムの導入方法には次の2つの方法があります。

方法①単一のECシステムを使用する

一次卸業者と二次卸業者が同じECシステムを使用する方法です。二次卸業者が使用しているECシステムの一部の機能を一次卸業者も使えるようにすることで、スムーズに連携することができます。

ただし、二次卸業者が複数の一次卸業者と取引を行う場合は、企業ごとにECシステムを導入したり、運用したりする必要が生じるため、二次卸業者の負担が大幅に増える可能性があります。

方法②ECシステムをカスタマイズして受発注情報のデータ連携機能を実装する

二次卸業者が所有するECシステムをカスタマイズして、卸売業者間で受発注情報のデータ連携機能を実装する方法です。カスタマイズも、システム連携やAPI連携、二次卸業者のECシステムが一次卸業者の受発注管理システムに発注メールを自動送信する簡易連携など、さまざまな方法があります。

方法1、方法2のどちらでECシステムを導入するかは、次の観点を踏まえた上で、卸売業者間で十分に検討することをおすすめします。

◆企業間連携ECシステムを検討する際の観点(例)

✓ECシステム導入を主導するのは一次卸業者なのか、二次卸業者なのか
✓それぞれの取引先企業が複数ある、または将来的に増やす予定があるか
✓受発注処理をECシステム以外のEDI(※)でメインに行うのか

※EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)は、企業間の商取引に関するあらゆる情報(受発注・出荷・納品・請求・支払いなど)をデータで受け渡しするためのシステムです。関連記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧ください。

関連記事:7つのポイントでEDIを優しく解説!EDIの必要性と課題

ポイント②EDI連携

一般に卸売業者間の受発注処理はEDIによる自動連携で行います。そのため各システムはEDIシステムとのデータ連携機能を実装する必要があります。卸売業者間の取引情報をEDI上で自動管理できるため、人為的ミスや在庫トラブルのリスクを低減できます。受注規模(件数や頻度)の大きい取引では不可欠の機能です。

EDIの役割をECシステムに実装することも可能ではありますが、取引先企業が複数ある場合や処理の件数と頻度が多い場合、ECシステム全体の負荷とECサイト運用への影響が極めて大きくなります

そのため、「ECシステムはフロント業務(受注・支払いを含む顧客対応全般)の処理を行い、バックエンド業務(受注後~商品配送まで)の処理はEDIシステムで実装する」というように機能を切り分けて実装するケースが多いです。

ポイント③在庫情報のデータ連携

基本的にドロップシッピングでは、二次卸業者はECサイトの集客と販売に専念し、在庫管理は一次卸業者が行いますが、注文時に在庫引き当てを行う場合には、一次卸業者が管理している在庫情報を受け取るためのデータ連携機能が必要になります。

二次卸業者の自社サイトだけでなく、楽天市場やAmazonなどのECモールに出店する場合にも実装する必要があります。

ポイント④二次卸業者ごとの出荷指示書(データ)の作成と振り分け

多くの場合、一次卸業者は複数の二次卸業者と取引を契約しているため、二次卸業者ごとに異なる出荷指示のニーズを正確に振り分けて管理する必要があります。

EDIシステムで出荷指示書を作成する場合は、二次卸業者のECシステムで発注時に、商品と同梱するツール(リーフレットやパンフレットなど)の指定や、ブランドロゴの入った梱包資材(段ボールや緩衝材、梱包テープなど)の使用指示などの必要な情報を出荷指示データに含めて送信します。

ポイント⑤追加実装が必要な法人向け機能

顧客対応の全般を担うECサイトではCRMやWebマーケティングの機能が不可欠ですが、さらにエンドユーザーが法人となるBtoBtoB向けECサイトでは、下記のような法人向け機能の実装が必要になります。

◆ECサイトに必要な法人向け機能(例)

・見積機能
・与信管理機能
・銀行振込機能
・掛け払い(後払い決済)機能
・掛け率管理機能(企業ごとの売価に応じた掛け率を設定)
・販路管理機能(取引先ごとに販売対象商品を設定)

法人向けECサイトに必要な機能については、関連記事で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひご覧ください。

関連記事:【全解説】BtoB-EC市場と4つのBtoB-ECサイト構築手法の解説

BtoBtoBの成功のカギは卸売業者間の緊密な連携!

BtoBtoB向けECシステムの5つのポイントを網羅したインフラ整備は不可欠ですが、それだけでBtoBtoB事業を成功させることはできません。

BtoBtoBでは、一次卸業者は仕入れ(あるいは生産)とバックエンド業務、二次卸業者はフロント業務というように役割分担が明確になっているため、それぞれの業務に注力して専門性を追求していくことができます。

一方で、ECサイトにおける最も困難な課題の一つである集客は、エンドユーザーが個人であっても企業であっても同様に重要です。そのため、卸売業者間で魅力のある商品企画、伝えるべき商品情報、データに基づく売上傾向や知見、売上向上施策の内容やスケジュールなどを、定期的に共有し合える協業体制を構築することが理想的です。

高度な専門性を備えた企業同士が手を組むことで、より良いビジネス成果を上げることができるでしょう。

DtoCにはないBtoBtoBの強み

記事の冒頭でも触れましたが、BtoBtoB向けECは従来の商流をデジタル化したビジネスモデルです。顧客中心のビジネスモデルという視点で考えた場合、「仲介業者を排除することで、安く・早く商品を届けることができるDtoCのほうが消費者に好まれるのではないか」という意見もあるでしょう。

しかし従来の流通機構には単純化することのできない背景があり、またDtoCには真似のできない強みもあります。

現実として、例えば、DtoCを行えるのは生産者(一次卸業者)に限られるので、生産者がDtoC事業の収益を優先させるためにBtoBtoB事業の規模縮小や撤退を行った場合、これまで二次卸業者として売上に貢献してきた企業は、事業転換や廃業を迫られることになります。

そのため余力のある大規模メーカーなどでは、DtoCを別事業として運営することで二次卸業者との関係と市場競争を維持するなど、経済市場の混乱を避けながら、消費者と企業にとってより適切な流通経路の在り方を模索しています。

また、ECサイト運営に不可欠な、知識や手法などのノウハウは、一朝一夕で習得できるものではなく、これまで専門企業に任せてきた領域で、Webビジネス経験を持たない企業が成果を上げることは簡単ではありません。BtoBtoBやBtoBtoCという分業モデルでは個々の企業が自社の強みを磨き上げることで、DtoCとは異なる消費者ニーズを満たす商品やサービスを創出することができると筆者は考えています。

BtoBtoBまたはBtoBtoC向けドロップシッピングサイトの構築を考えている方は、柔軟なカスタマイズも可能なクラウドECプラットフォーム「ebisumart」もぜひご検討ください。

よりBtoB向けの機能について知りたい方は、ぜひこちらの資料をご覧ください。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。