数年前ならECサイトで注文したものが到着まで、数日かかることも違和感のない時代でしたが、現在は当日や翌日到着のECサービスも普及しつつあり物流が進歩しております。
Amazonが午前8時~深夜0時までの注文であれば、商品を注文から最短2時間以内に届けるサービス「Amazon Prime」を提供したり、楽天市場も「あす楽」という”今日買って、明日届く”というサービスを提供しており、また昨今はヨドバシカメラの独自の物流システムの「ヨドバシエクストリーム便」は配達の速さと利便性に注目されています。
こうした配達の速さや利便性の向上の流れはユーザーの配送の意識にも影響を与え「注文が当日に届いて便利で感動!」といった意識から「注文は当日に届くし、便利なのは当然」という意識になって行っており、ECサイトを運営するにおいては、物流とECのリアルタイム連携を実現し、利便性を高める努力をしていかないといけません。
では具体的にどのようにECと物流を改善して行けば良いのでしょうか?それには「ECサイト」と「物流」のシステムをリアルタイム連携を実施する必要があります。
本日はECサイトにおける物流の最適化についてインターファクトリー(ebisumart)でWEBマーケティングを担当している筆者が解説いたします。
ECと物流のリアルタイム連携
まずECと物流のリアルタイム連携について解説いたします。ここで言うリアルタイム連携とは「ECサイト」と「店舗」と「倉庫」のことです。これらをリアルタイム連携することでメリットは3つあります。
◆リアルタイム連携のメリット
①商品の注文から到着までの時間の短縮
②在庫のロスの軽減
③時差のない最新の在庫状況の把握
特に②と③の重要性とはアパレル事業者を例にとって説明いたしますと、アパレルの商品には売れるシーズンがあり、そのシーズンを逃すと、もうその商品を売ることができません。そうすると在庫の無駄というのは会社経営に直結する損失となります。
「ECサイトの在庫」と「店舗の在庫」をシステムでシームレスにつなげて在庫をなくすことを徹底しなくてはなりません。
また、多店舗展開(自社EC、楽天市場、Amazon等などのマルチチャネル)自社ECサイトで商品が売れて在庫を引き当てを実施する際に、OMS(受注管理システム)により、楽天市場やAmazon向けの在庫もリアルタイムに引き当てを行うことで、全てのチャネルにおいての在庫の適正化が必要となります。それでは、リアルタイム連携をどのように実現していけばよいのでしょうか?
リアルタイム処理のためにECシステムに求められる要件とは?
配達の速度を向上し、かつECと店舗間の無駄をなくためには、ECシステムがリアルタイムに受注処理(OMS)を行い、その受注情報を物流のシステム(WMS)にデータを渡します。
CSV連携では定期的にECシステムから注文データを取り込み、ピッキングリストとして出力されていきます。CSV連携は、1日に数回おこなわれ、朝・昼・夕方の3回行なわれている形式が一般的です。当然このようなCSV連携処理もシステム間を手作業ではなく、自動連携できる柔軟なECシステムを導入する必要があります。
例えば、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)のECシステムを使っている企業では、物流のシステムと連携するためのカスタマイズを行うことは困難なため、物流システムと連携ECシステムとしては、以下の4つになります。
①フルスクラッチEC
②パッケージEC
③クラウドEC
④オープンソース
各ECシステムのメリットやデメリットについてはここでは解説しませんので、下記の記事をご覧ください。下記記事をご覧いただければ、自社の売上規模に合うECシステムを選ぶことができるようになります。
ECシステム側を解説しましたが、一方で倉庫側の出荷処理が1日に1回ではせっかくリアルタイム処理を行っても意味がありません。ですからパートナーの物流会社の出荷処理も、リアルタイムの受注システムに対応した出荷処理体制を整えている必要があります。
つまり、まとめると「ECシステム」と「物流会社のシステム」の双方がリアルタイムの受注システムに対応している必要があるのです。
物流会社のクオリティーを理解するには、物流会社の作業を理解すること!
現代のユーザーニーズを満たす配達体制を整えるには、先にあげた出荷処理体制だけではなく物流会社としてのクオリティーの高さが問われます。おそらくほとんどのEC事業の担当者は物流会社のクオリティーと言われてもパッとはイメージできないと思います。
しかし物流会社を選定、あるいはすでにパートナーシップを結んでいる物流会社のクオリティーを見極めるためにも、入庫から出荷までの作業過程の概要を理解していないと課題を把握することも困難です。それでは、物流の作業を一つひとつ説明して行きます。
物流会社の主な8つの工程
※ピッキングという言葉が出てきますが、ピッキングとは受注情報をもとに棚から商品を取り出す作業のことです。後ほど詳しく解説いたします。
1.入庫
発注した商品と実際に届いた商品に間違いがないか検品をします。もし、間違いがあれば、即時に指摘をします。出荷の検品ばかりに、注意がいきますが、実は出荷のミスと同じくらい入庫時にも発生します。逆に入庫のチェックが高い精度で行われて入れば、出荷時のミスも減りますので、入庫作業は極めて重要な作業になります。
例えば入庫では、以下のような商品は間違いが生じやすい傾向にあります。
・同じ商品だが、バラの場合とケースで販売する両方がある場合
・同じ商品だが、ロット別だったり、期限別で商品の数量を把握必要がある
このような商品であっても、正確な商品の数量を把握し、間違いのない入庫作業を徹底することが物流会社のクオリティーにつながります。
2.検品
入庫予定のデータやリストを、取引先のECシステムなどの上位システムから受信し、そのリストを元に作業を行います。入庫作業の検品チェックは以下の項目を確認いたします。
①商品と個数は正しいか?
②出荷可能日(賞味期限等)は問題ないか?
③不良品はないか?
この検品の精度の高さが、以後の作業のミスを減らすことにもなり、そのまま物流会社のクオリティーに直結しますから、物流会社を選定の際、倉庫見学を行いこの点を念入りに確認しましょう。
これらの作業はバーコードを使って行います。検品終了後は上位システムに検品結果を送信します。
3.写真撮影(撮影を物流会社に依頼する場合)
ECサイトに使う商品の写真撮影です。自社で撮影を行っている場合を除いて、倉庫会社に商品の撮影を依頼することになりますが、撮影した写真は商品の魅力をユーザーに伝えるのですから軽視するわけにはいきません。物流会社によって単なる撮影だけでなく、画像加工も行ってくれる会社も珍しくありません。
例えば、ショッピングモールの「ZOZOTOWN」は、出品企業の写真撮影まで一括で引き受けるので、出品企業はZOZOTOWNに商品を送るだけで、全てが完了します。
また商品の魅力を伝えるために、モデルと一緒に撮影できたり、様々なシチュエーションの撮影ができるのでこうした点も確認しましょう。もちろん物流会社にお願いすればするほどコストも増えますが、単に高いから検討しないというのではなく、自社のワークロード軽減も踏まえて検討するべきです。
4.棚入
入庫した商品を倉庫内の棚(ロケーション)に保管する作業です。棚入で注意すべきは、ピッキングの際の作業効率です。棚入れ方法には3種類あり、商品によって採用される方式が異なります。
固定ロケーション
固定ロケーションとは、同じ商品をいつも同じ棚にいれる方式です。担当者が覚えやすくミスが起こりずらい半面、商品の売れ行きにより、棚が空いたりすると倉庫内のキャパシティーの観点から無駄が生じます。
ピッキングする回数が多い商品に向いています。
フリーロケーション
フリーロケーションとは、Amazonも採用している方式で、保管する場所を固定せずにシステム管理により空いている場所に保管していく効率的な方式ですので、倉庫内のスペースを有効に使えます。一方で完全にシステム管理されている必要がありますし、頻繁に一緒に出荷される同カテゴリー商品の場合は、ピッキングの際かえって時間がかかります。
単品商品や、パレット単位でまとまっている商品が向いています。
ダブル・トランザクション
固定ロケーションとフリーロケーションの両方を組み合わせた方法です。棚をピッキング用の棚(固定ロケーション)と保管用の棚(フリーロケーション)の2種類に分けます。ピッキング用の棚には2日~3日分の商品を置き、それ以上の商品は保管用の棚に入れます。こうすることによりピッキング効率が向上します。しかし保管用の棚からピッキング用の棚に移管する作業が発生します。
大量入荷・出荷作業の発生する商品に向いています。
5.保管
扱う商品によって方法は違いますが、商品の品質を維持しなければなりません。本であれば湿気は紙に悪いので、空調が大切です。また、冷凍品などは、専門の巨大冷蔵庫が必要になりますので、商品にあわせて冷蔵、冷凍、常温などの管理ができる倉庫を見極める必要があります。ただし、ピッキングの少ない商品では、ピッキング効率よりも保存費用を考慮する必要があります。
6.ピッキング
ピッキングは、受注情報に基づき倉庫の棚から商品を取り出す作業のことを言います。実際には、ピッキングリストと呼ばれる受注毎にピックアップする商品が書かれているピッキングリストを使います。
ピッキングには大きく分けて二つの方式があります。
①摘み取り方式
ピッキングリストに基づき必要な商品をピッキングしていく方式です。在庫商品に対して注文を受ける商品に使われる方式です。
②種まき方式
例えば出荷先が「A店舗」、「B店舗」というように特定の出荷先が決まっており、商品を出荷先別にピッキングする際に使われる方式です。
一般的にピッキングの作業の60%は摘み取り方式と言われており、この工程をいかに短くするかが作業全体の生産性に関わってきます。
7.流通加工
検品
出荷の前に品質確認をします。倉庫で品質を維持するように保管していますが、万が一のことがあります。お客様に質の悪い商品を出荷するわけにはいきませんから、出荷する前に商品に問題が無いか確認をします。また埃を掃ったり、商品出荷の最終チェックをします。
値札張り
値札やタグを貼りつける作業です。
8.梱包・出荷
商品を梱包し、段ボールや袋に入れます。その際に運ぶ途中で商品が壊れないように緩衝材も加えます。そして最後に送り状を添付して出荷します。
出荷は、提携している宅配業者が定期的に集荷してくれるのですが、集荷時間までに当日分の準備は終わらせておく必要があります。作業に余裕はなく、ピッキング以降の作業は時間に追われているのです。こんな時こそ、ミスがないように注意を払い作業をしています。
以上が、物流会社の作業になります。これらの作業の概要を掴んだ上で、どういった物流会社をパートナーとしていくべきか解説いたします。
物流会社選定の3つのポイント
EC事業者が最適な物流会社を選ぶ筆者のポイントは下記の3つです。
①物流をお願いしたい商品の実績が豊富か?
商品が違えば、扱い方法からその物流設計がかわってきます。物流会社によって扱う商品の強みは様々ですが、まずは自社商品の実績があるのか?その商品に対する専門性を確認します。さらにEC事業者との取組事例があるかが重要です。冒頭でも説明したとおりユーザーの利便性の要求は日々高くなってきております。だからこそEC事業者との取組実績があり、そこでどんな実績があるのかがポイントです。
②システムに対するリテラシーは高いか?
ECと物流のリアルタイム連携を実現するには、物流会社側もシステムに通じている必要があります。それを見極めるポイントとしては、ECシステムと物流システムの連動実績がポイントになってきます。また商品の特徴を踏まえた上で物流設計を行いそれをシステムに落とし込む提案力やコミュニケーション能力が問われます。
特にECサイトといっても、自社ECサイトもあれば、楽天市場やAmazonなどの出荷指示もあります。このようなEC側の出荷指示を理解しながら、どのように物流にデータを渡していくのか?ということを物流会社も理解してなくてはいけないのです。
その上で、物流会社からもシステム的にどのようにつなぎ合わせた方が効率的なのか?みたいな話をてきる関係が理想であり、そのためには、物流会社もECサイトのことを理解している企業が望ましいのです。
③コストシュミレーションを行なう。
物流会社を選定する上でコストを抑えるのは当然のことですが、コストを抑えたために、サービス品質が落ちては本末転倒です。現状のコストと、3年先までの物流コストを算出して物流のアウトソーシングコストを確認します。物流のコスト計算を行う時は単に物流会社へのコストだけを計算するのではなく、商品全体の売上からコストを算出します。
最後に
いかがでしょうか?ユーザーの利便性を向上するには、ECと物流のリアルタイム連携がかかせないことは理解できたと思います。それを実現するには。
①柔軟なECシステムの導入
②物流会社の選定
が重要です。数多くの物流会社には得手不得手がありますので、特定の物流会社が一番というものはなく、あなたの会社の商品の取り組み実績があり、情報リテラシーの高い物流会社をアウトソースパートナーに選定しましょう。
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