インターネットショッピングが普及した現在、次のような悩みを抱えるネットショップ運営者も多いのではないでしょうか。
「購入してもリピーターになってもらえない」
「顧客情報をうまく活用できていない」
「サブスクリプションサービスの利用が増えない」
こうした課題を解決する有効な手段の一つが、CRMの活用です。顧客データを統合し、顧客コミュニケーションを深めていくCRM施策は、オンラインビジネスであるネットショップの運営に役立つ機能を備えています。
顧客ニーズが複雑化・多様化する現在では、CRMを活用してきめ細やかな対応を行うことで、顧客満足度が向上し、お客様に「また買ってみようかな」と思ってもらえる可能性も高まります。また、リピート購入やサブスクリプションサービスの契約につながることも期待できるでしょう。
本記事では、ネットショップにおいてCRMが重視される理由や、導入のメリット・デメリット、CRM選びのポイントなどについて解説します。
目次
① CRMの基礎知識
② ネットショップでCRMが注目される理由
③ CRMの代表的な4つの機能
④ ネットショップでCRMを導入する5つのメリット
⑤ ネットショップでCRMを導入する3つのデメリット
⑥ CRM導入を成功させる3つのポイント
⑦ ネットショップにおけるCRMの選び方
⑧ ネットショップで役立つCRMツール9選
CRMの基礎知識
CRMとは、「Customer Relationship Management」の略称であり、日本語では「顧客関係管理」などと訳されます。CRMは、顧客情報を収集し分析・管理することによって、顧客との円滑なコミュニケーションを図り、関係性をより深めることを目的としており、そのための戦略やプロセスと、その実現に必要なツールのことを指します。
CRMを活用することで、顧客に適切なアプローチができるだけでなく、顧客満足度の向上にもつながります。
ネットショップでCRMが注目される理由
次に、ネットショップを運用するうえでCRMが注目されている理由を3つ解説します。
① 新規顧客の獲得が難しい
新規顧客の獲得は、年々難しくなっていると言われています。それは、少子化による人口減少の影響もありますが、ネットショップの場合は、競合の多さもその理由の一つです。
ネットショップで扱う商品は、日用品から衣類、家具などさまざまであり、各ジャンルで類似のサービスを展開している競合が乱立しているうえ、差別化も図りにくい状況です。こうした中で新規顧客を獲得するには、認知度を向上させるためのプロモーション費用や、受注後のフォローを行うための人件費が必要になってきます。
また、消費者もインターネットでショップや商品の情報を自ら入手できる環境にあります。そのため、新規顧客を獲得するには、プッシュ型広告のような企業側からの一方的なアプローチだけでは難しくなっているのです。
このような課題を解決する方法として、データ収集・分析を基に顧客に合わせたアプローチを可能にするCRMが注目されています。ネットショップはオンラインデータを収集しやすいため、CRMを有効に活用できるでしょう。
② LTV向上の重要度が高い
新規の顧客を獲得するのが難しくなっている昨今では、LTVの重要度が高まっています。
LTVとは、Life Time Valueの略称で、「顧客生涯価値」と訳されます。これは企業と顧客との取引期間中に顧客が使う金額のことで、顧客の利益貢献度を測る指標です。
LTVが重要視されるようになったきっかけの一つが、サブスクリプションサービスの広がりです。繰り返しになりますが、新規顧客獲得が難しくなっている現在は、サブスクリプションサービスやリピート施策のように、顧客に商品を継続して購入・利用してもらい、顧客一人あたりの購入回数や継続期間を増やす取り組みが必要となっています。
こうしたLTV向上の取り組みに役立つのが、CRMです。顧客データを管理し、顧客一人一人との良好な関係を維持することを目的としたCRMは、LTV向上施策との相性が良く、効果が期待できます。
③ 顧客ロイヤリティを高める
顧客ロイヤリティとは、企業や店舗、商品やサービスに対して顧客が抱く思い入れや愛着、信頼のことです。
顧客ロイヤリティを高めると、必然的にリピート率が上がるため、顧客単価や購入頻度が増え、LTVの向上につながります。さらに、ファンになると周囲にすすめてくれたり、SNSなどで自発的に発信・拡散してくれたりすることもあるでしょう。
顧客ロイヤリティを高め、ファンを増やすためには、多様な顧客ニーズを把握し、適切なタイミングで対応することが大切です。また、ロイヤリティのレベルに合わせた対応も、関係維持の鍵となります。こうした顧客対応の最適化を図る方法として、CRMの活用が注目されているのです。
直接対面で接客する機会の少ないネットショップにおいて、顧客ロイヤリティを向上させるには、CRMを活用して顧客データを分析し、顧客理解を深めることがとても重要です。
CRMの代表的な4つの機能
それでは、CRMには具体的にどのような機能が搭載されているのでしょうか。ここでは、代表的な機能を4つ解説します。
① 顧客情報の収集・管理
CRMで最も重要なものが、顧客情報を収集・管理する機能です。顧客の氏名、居住地、メールアドレス、職業、購買履歴、行動履歴、嗜好などの情報を収集し、一つのIDに統合して一元管理されます。
② 顧客情報の分析
収集した顧客情報を分析する機能です。収集した情報をさまざまな切り口で分析し、表やグラフとして可視化することができます。
③ メール配信・アンケート機能
顧客にメールを配信したり、アンケートを送付したりする機能です。顧客情報をセグメントに分け、それぞれの特色に合わせて配信の内容やタイミング等を設定することができます。
④ カスタマーサポート
顧客からの問い合わせやアフターフォローの内容を管理する機能です。実店舗やコールセンターのシステムなどと連携し、顧客接点におけるやりとりを記録・管理しておくことができます。
ネットショップでCRMを導入する5つのメリット
ここでは、ネットショップ運営でCRMを導入する代表的なメリットを見ていきましょう。
① 顧客情報の管理・共有が容易になる
CRMを導入すると、顧客情報を一括で管理できるようになり、必要なデータを必要なときに抽出しやすくなります。また、リアルタイム共有も可能であり、部門間のシームレスな連携が可能になることも大きなメリットです。
② 顧客アプローチを最適化できる
CRMを活用して顧客のさまざまなデータを分析することで、顧客アプローチの最適化が図れます。たとえば、顧客一人一人に合わせた最適なチャネルを把握し、最適なタイミングで施策を実施することが可能になります。
③ コストカット・収益向上に役立つ
新規顧客を獲得するための広告施策や顧客へのアプローチにコストをかけることなく、データに基づいた効果の高い施策を実施できるため、ネットショップの採算性の向上が図れます。
④ マーケティング業務の効率化を図れる
CRMのメリットの一つが、業務効率化です。データの加工や単純作業の自動化によって、業務フローの効率化を図ることができます。さらに、データや業務の属人化が解消されるため、配置転換や人材不足が生じても柔軟に対応できる体制づくりも可能です。
⑤ 戦略を立てやすくなる
CRMで顧客データを一括管理し、顧客分析の結果を部門間で共有することで、チーム全体の方向性が定まり、戦略を立てやすくなります。また、リアルタイムでの情報共有が可能になることで、迅速な経営判断ができるようになり、機会損失を防ぐことにもつながります。
ネットショップでCRMを導入する3つのデメリット
ネットショップでCRMを導入する際に注意しておきたいポイントやデメリットは以下のとおりです。
① 導入・運用コストがかかる
CRMの導入には、それなりの費用がかかります。初期費用のほか、定期的に支払うシステム利用料といったランニングコストや、リソースの確保のための追加費用が発生します。
また、これらの費用は従量課金制のケースも多く、その場合、容量が大きくなればなるほど高額になりやすい点もおさえておきたいポイントです。
② スキルやノウハウが必要
「誰でも使える」とうたったツールはたくさんありますが、CRMを運用するには、ある程度のPCスキルが求められます。また、的確な分析をするには、分析に関する知識やノウハウを理解しておく必要があるでしょう。
運用面に不安がある場合は、ベンダーのサポート体制をチェックしておくと安心です。運用していくうえで発生するトラブルや疑問に、ベンダーがどの程度対応してくれるか確認しましょう。
③ 効果が出るまで時間を要する
CRMは、効果がすぐ現れるものではありません。顧客との関係を築き、良好な関係を維持することを目的としたツールであるため、効果が現れるまで時間がかかります。そのため、中長期的な視点での運用が前提となります。
CRM導入を成功させる3つのポイント
CRMを導入し、成功させるためのポイントを3点解説します。
① 導入の目的を明確にする
まずは、CRM導入の目的を明確にしておくことが大切です。目的が定まっていないまま導入を進めてしまうと、「CRMを導入すること」自体が目的となってしまったり、分析結果を施策へ落とし込む段階まで至らなかったりするおそれがあります。
そうした事態を避けるためにも、CRMの導入時には、自社のマーケティング課題を洗い出し、具体的な目的を設定しましょう。
② 導入後の指標(KPI)を定める
CRM導入のKPIを定めるのも、CRM導入を成功させる重要なポイントです。
たとえば、「年間の売上を40%上げる」といった具体的なKPIを定めることによって、CRMの導入前と導入後を比較・分析しやすくなり、数値での成果や変化を把握できます。
③ アプローチを考え、工夫する
CRMを用いると、顧客一人一人への理解が深まり、ニーズに合わせてアプローチの内容やタイミングの最適化を図ることができます。
効果的なOne to Oneマーケティングを実施できるよう、あらゆるデータを用いたきめ細かい分析で、顧客の解像度を上げましょう。
ネットショップにおけるCRMの選び方
自社ネットショップに合ったCRMを選ぶポイントは、以下のとおりです。
① 自社に合ったCRMを選ぶ
CRMの導入を成功させるためには、自社の目的に合った機能が備わったCRMを選ぶことが大切です。機能は、多すぎても少なすぎても使いにくいものです。まずは自社にとって必要な機能を絞り込むと良いでしょう。
② サポート体制・セキュリティ対策
CRMは多くの個人情報を扱うので、情報漏えいといったリスクを避けられるよう、セキュリティ対策について調べておきましょう。また、導入後のトラブルを想定し、ベンダーのサポート体制がどのような状況になっているかも併せて確認しておくと安心です。
③ 操作性
CRMは、実際に使う担当者にとって使い勝手が良いと思えるツールでないと運用はうまくいきません。ツールによってはお試し期間を設けているものもありますので、実際に使って操作性を確認しておくと良いでしょう。
④ 他システムとの連携・拡張のしやすさ
CRMは既存システムやツールと組み合わせて使うケースが多いです。そのため、社内の既存システムや、他のシステムとの連携がしやすいCRMを選ぶことが重要です。また、運用状況やトレンドの変化によって、必要な機能が変わってくる可能性もあるため、拡張性も確認しておくと安心です。
ネットショップで役立つCRMツール9選
ネットショップでの導入・運用実績のある代表的なCRMツールを9つ紹介します。
① カスタマーリングス
カスタマーリングスは、EC通販やBtoCサービスにおいて豊富な実績を持つCRM/MAツールです。
導入実績は800社を超え、99%を超える高い継続率を誇っています。データ連携から分析、施策の立案、改善までを1つのツールで運用でき、多くのマーケティング現場で活用されています。
◆主なサービス内容
・セグメント(顧客抽出)
・分析(BI)
・アクション(MA)
◆料金
・初期費用:問い合わせ
参考:カスタマーリングス
② Repro
Reproは、顧客一人一人に対して最適なコミュニケーションを可能にするカスタマーエンゲージメントプラットフォームです。
ツールの提供だけでなく、マーケティングのプロによる伴走支援を行っていることが特徴です。導入実績は、生活インフラ企業をはじめ7,300以上、世界66か国に上ります。
デジタル接客ツール「Repro Web」と、アプリマーケティングツール「Repro App」を中心に、さまざまなソリューションを提供しています。顧客データに基づいた最適なOne to Oneコミュニケーションを実現します。
◆主なサービス内容
・コンバージョン最大化サービス(伴走型運用支援)
・Webサイト表示速度の高速化(Repro Boostar)
・アプリのプッシュ通知ツールの提供(Repro App)
・アプリ収益最大化サービス(伴走型運用支援)
・アプリストア最適化サービス(ASO対策) など
◆料金
・初期費用:問い合わせ
参考:Repro
③ Insider
Insiderは、One to Oneマーケティングを実現するマーケティングプラットフォームです。
1つのプラットフォームでさまざまなチャネルに存在するデータをつなげ、AIが作成した顧客セグメントごとにパーソナライズされた顧客体験を提供します。
顧客体験を適切にパーソナライズできるのが特長であり、これまで1,000以上のグローバル・ブランドでの導入実績があります。
◆主なサービス内容
・エンゲージメント(パーソナライズされたメッセージの最適化)
・発見(AIを活用したレコメンデーション)
・実験(ABテスト)
・調和(異なるデバイス同士のシームレスな環境づくり)
・カスタムコンバージョン(AIの拡張)
◆料金
・初期費用:問い合わせ
参考:Insider
④ うちでのこづち
うちでのこづちは、800社以上の導入実績がある、ネットショップ向けのCRMツールです。
通販システムとの自動連携が特長で、顧客分析から施策・効果検証まで、ネットショップ事業者にとって必要な機能をそろえています。また、初心者でも使いやすい、直感的に使えるUI/UXを採用しています。
サポートも充実しており、導入から運用まで、専任制のサポートチームが対応します。
◆主なサービス内容
・LINE施策
・ダッシュボード機能
・施策オートメーション(シナリオ自動作成機能)
・転換日数分析
・定期推移表
・商品転換率分析
◆料金
・初期費用:問い合わせ
参考:うちでのこづち
⑤ KARTE
KARTEは、高い拡張性が特長のCX(顧客体験)プラットフォームです。
基幹プロダクトのKARTEを軸に、Web接客、アプリマーケティング、MA、カスタマーサポート、サイト運営・改善、広告配信最適化といったソリューションを提供しており、自社の目的や課題に合わせてパッケージを選ぶことができます。
サポート体制は、導入時のレクチャーのほか、オンラインチャットやサポートコンテンツでの対応が可能です。
◆主なサービス内容
・リアルタイムユーザー解析
・Web接客・パーソナライズ
・サイト・施策分析
・セッション(動画)プレイヤー
・サイト管理・改善(ABテスト・LPO)
・クリエイティブ作成 など
◆料金
・初期費用:問い合わせ
参考:KARTE
⑥ アクションリンク
アクションリンクは、ネットショップのリピート売上を増やすことに特化したCRMプラットフォームです。
あらゆる業種でリピート売上が上がった「鉄板シナリオ®」を採用し、1クリックで顧客一人一人に最適化されたメッセージを自動で作成。体系化されたアプローチを、導入初日から自動稼働させることが可能です。
サポートも万全で、導入初日から自動で稼働させるための事前サポートから、導入後のフォローまで、ネットショップ運営のプロによるサポートが受けられます。
◆主なサービス内容
・メッセージ配信の自動化(CRM/MA)
・結果検証 施策/顧客レポート(BI)
◆料金
・初期費用:問い合わせ
参考:アクションリンク
⑦ CART RECOVERY(カートリカバリー)
CART RECOVERY®は、購入に至らずサイトから離脱してしまう、いわゆる「カゴ落ち」による機会損失を自動で解消するMAツールです。
500サイト以上での導入実績があり、ユーザーの購買意欲が高いタイミングでメールと広告を配信することで「カゴ落ち」したユーザーを自社サイトに呼び戻し、売上アップを図ることができます。
専門スタッフやエンジニアによる幅広いサポート体制も安心です。
◆主なサービス内容
・リカバリーレポート
・ダイナミック・リマーケティング広告配信
・ステップメール配信
・最短15分後配信(カゴ落ち後、ユーザーにメールを自動配信) など
◆料金
・初期費用:55,000円(税込)
参考:カートリカバリー
⑧ Probance
Probance(プロバンス)は、BtoC向けMAツールです。
AI(機械学習)を搭載し、顧客一人一人に最適化されたメッセージを自動配信。顧客ニーズを特定し、顧客との良好な関係を構築していくことができます。
さまざまなデータ活用プラットフォームとの連携が可能で、運用の悩みを解消する提案から運用支援までを一貫して伴走する体制も整っています。
◆主なサービス内容
・AIによる「顧客の興味・行動を予測」する機能
・オムニチャネルコミュニケーション
・プレッシャーコントロール(同一顧客への過剰なコンタクトを回避)
◆料金
・初期費用:500,000万円
・初期導入コンサルティング費用:問い合わせ
参考:Probance
⑨ LTV-Lab
LTV-Labは、ネットショップに特化したCRMシステムです。
主要なEC通販カートシステムや、受注管理システムとの標準連携が特徴です。また、複数の配信チャネルを一括管理できるため、効果的なアプローチでROI(投資利益率)の最適化を実現します。
1,300以上のショップで導入されており、これらの運用ノウハウを基にしたシナリオテンプレートも搭載されているため、顧客一人一人に合わせたアプローチが可能です。活用方法についてのサポート体制も整っています。
◆主なサービス内容
・メール配信
・集計・分析(RFM分析/CPM分析/LTV分析)
・高速大量配信システム
・ECカートシステムとの標準連携
・配信チャネルの一元管理 など
◆料金
・初期費用:問い合わせ
参考:LTV-Lab
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まとめ
ネットショップにCRMを導入すると、散在していた顧客情報を一元管理でき、さまざまな切り口で分析することができるため、顧客一人一人に最適なアプローチを実現できます。また、業務効率化も図れるため、分析結果を施策へ落とし込むところから、実施、検証、改善までのPDCAサイクルの高速化にもつながります。
このCRMツールを選ぶうえで重要なのが、自社のニーズや課題に合った使いやすいものを選ぶことです。操作性の高さや既存のシステムとの連携のしやすさ、将来的な拡張性などを考慮し、より効果的なCRMツールを選びましょう。サポート体制や、セキュリティ対策も確認しておくと安心です。
ただし、CRMは即効性の高いツールではありません。顧客とのコミュニケーションを通して、良好な関係を継続することを目的としていますので、中長期的な視点で捉えることが重要です。
自社のネットショップと相性の良いCRMを選び、よりよい顧客体験を提供し、自社のファンやリピーターを育てていきましょう。