コロナ禍になったことで、多くの業種がオフラインからオンラインに業務を移行しつつあり、BtoCとBtoBのどちらも、EC化率が伸びています。これからEC業界への参入を考えたり、EC業界について調査したりしている方が気になるのが「ECサイトの種類はどれくらいあるのか?」という点でしょう。
この点に明確な答えがあるわけではありませんが、結論から言えば、本日筆者が紹介する7つのECサイトの販売形式を理解しておけば十分です。
そしてECサイトの販売形式以外にも「ビジネスモデル」や「ECサイトの作り方」の種類も把握した方が良いでしょう。
なぜなら、ECサイトが出現してからの20年で、さまざまな考え方やビジネスモデルのECサイトが生まれており、「ECサイトの販売形式」や「ビジネスモデル」、「ECサイトの作り方」の3点を理解していないと、EC業界への参入を考えるときに土台となる知識が蓄えられないからです。
本日はインターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、ECサイトの種類について詳しく解説いたします。
7つのECサイトの販売形式
まず、ECサイトの種類をすぐにつかみたい人は以下の表をご覧ください。手っ取り早く全体を把握できるように一覧表を作成しました。
◆7つのECサイトの販売形式一覧表
ECサイトの販売形式 | 概要 |
①自社ECサイト | 自社独自のECサイト。通常「自社ECサイト」と呼ばれ、②のモール型とは相対する形式 |
②ショッピングモール型のECサイト | Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどが運営するモール型のECサイト。事業者がモールに出店・出品する形式 |
③越境ECサイト | 海外に向けて販売するECサイト |
④単品ECサイト | 主に1種類の商品を販売するECサイト |
⑤定期販売・頒布会のECサイト | 定期販売商品を販売するECサイト。健康食品やプロテインなど定期販売が必要なものから、グルメ食品の詰め合わせ(頒布会)などを扱う事業者向け |
⑥ダウンロード販売のECサイト | 電子書籍や動画、音楽などのデジタルコンテンツを販売するECサイト |
⑦マルチチャネル型のECサイト | 自社ECサイトとショッピングモール、など複数のECサイトを運営する考え方 |
ECサイトの販売形式というのは実は非常にあいまいであり、明確に分けることはできません。例えば、とあるECサイト内の「ダウンロード販売」で「定期販売」を行っていれば、それは両方の要素を兼ねており厳密に分けることはできません。
それでは一つずつ解説していきましょう。
①自社ECサイト
最もスタンダードな自社ECサイトから解説していきます。
◆自社ECサイトの例
上記のような、自社独自で運営しているECサイトのことを自社ECサイトと言います。自社ECサイトに対して、1つの場所にさまざまな店舗が集まったECサイトが「ショッピングモール型」です。例えば、自社の商品をAmazonや楽天市場で販売している場合のことを「ショッピングモール型」と言います。
このような解説を読んで「自社ECサイトの解説は必要ない!」と思われた方もいるかもしれません。しかし自社ECサイトを持たず、Amazonや楽天市場で販売しているケースでも、「ショッピングモール型」と相対する考え方として「自社ECサイト」という言葉はEC業界で頻繁に使われていると思います。
例えば「うちの会社もECサイトを構築して全国に商品を販売したいが、どうすべきだろう?」と上司から聞かれたときには「では、自社ECサイトにすべきか、それともAmazonや楽天市場に出店・出品すべきかそれぞれ検討します!」というように、ECサイト構築の方向性に関してサラッと言えるくらいの知識を持っておきましょう。
そのため、ECサイトの種類を覚えるときは、まず自社ECサイトを押さえておくことをおすすめします。
②ショッピングモール型のECサイト
ショッピングモール型とは、カンタンに説明すると以下のようなECサイトのことです。
◆ショッピングモール型のECサイトの例
事業者がECサイトを検討する場合は、自社でECサイトを構築するか、あるいはこのようなショッピングモールに出店・出品するといった方法があります。ショッピングモールに事業者が出店・出品するメリットは
・すぐECサイトに出店・出品できる
・有名なECサイトに出店・出品できる
という点です。しかし、デメリットは「手数料」がかかることです。
もちろん自社でECサイトを構築しても、サーバ費用や運営・広告費用がかかるので、ショッピングモールだけ費用がかさむというわけではありません。
ただし、自社ECサイトであれば、コストをサーバ費用だけにするなどして徹底的に抑えることができるので、自社ECサイトの方がコストコントロールしやすいメリットがあります。
また、出店と出品の違いは以下です。
・楽天市場やYahoo!ショッピング:出店型
・Amazon:出品型
楽天市場やYahoo!ショッピングの場合は出店であり、ショッピングモール内で、お店をアピールすることができます。例えば「スニーカーの山田商店」というお店を楽天市場内に出店した際は、以下のようにお店をアピールすることができます。
ユーザーからの見た目:楽天市場内のスニーカーの山田商店
つまりユーザーは楽天市場で買い物をしたと同時に、山田商店から商品を買ったという意識が残るのです。そのためお店の強みをアピールしてリピート施策を行うことや、ブランディングを意識することもできます。
しかし、Amazonの場合は出品型で、お店のアピールはほとんどできません。以下のようにAmazonで購入したという意識しか残らないのが出品型です。
ユーザーからの見た目:Amazonにあるスニーカー(山田商店が出品しているもの)
ここでは、大まかな話しかしませんが、出店と出品にはこれくらいの違いがあるのです。
筆者の所感ですが、事業者がECサイトの構築を考える場合、まずAmazonや楽天市場で出店・出品し、ある程度の売上を見込めるようになったり、ECサイト運営のノウハウを得たりしてから、自社ECサイトを検討する事業者が多いように感じます。
③越境ECサイト
越境ECサイトとは、言葉の意味そのままで、海外に向けて販売しているECサイトです。そのため越境ECサイトで成功するためのポイントは以下の3つです。
・多言語対応
・決済
・関税
まず、外国人がECサイトを見るので、日本語表記だけではなかなか商品が売れません。英語、中国語、フランス語など、自社のターゲット国の言語に対応させる必要があります。この点は、翻訳ができるのなら、そこまで難しいことではありません。
次に決済ですが、「クレジットカード決済」であれば主要国を中心に海外でも利用率が高いため海外の利用者にも対応できます。ただ、中国人向けのECサイトでは、中国人がよく使うオンライン決済方法の「銀聯ネット決済」や「Alipay(アリペイ)」などの決済に対応する必要があります。
最後に関税に関してですが、徴収方法は国によって異なります。関税は購入者が支払うケースが多く、その場合は、事前に購入者にお知らせしておかないとトラブルのもととなります。関税に関しては、イーベイ・ジャパンのサイトが非常によくまとまっているので、下記をご覧ください。
参考記事:「越境ECにおける関税と発送方法を学ぶ」(イーベイ・ジャパン)
海外では手に入らない日本商品は強みとなりますが、越境ECサイトを通じて日本商品を販売するためには、この3つのポイントにしっかり対応しないとなかなか商品は売れません。また、中国人向けの越境ECサイトについて、詳しくは下記記事をご覧ください。
④単品ECサイト
単品ECサイトがよく使われる業界は、主に以下の3つです。
・健康食品
・サプリメント
・化粧品
通常ECサイトには多くの商品が掲載されておりますが、それに対して単品ECサイトとは、主に1種類の商品を販売するECサイトのことです。そのため、ECサイトの見せ方も単品の商品の魅力を伝える工夫がされております。
単品ECサイトの場合、LP(ランディングページ)を作っているところもあります。LPとは1ページで完結するページのことで、商品の魅力を伝えるためにビジュアル要素や、訴求が非常に強いWEBページです。ここでは詳しく解説しませんが、LPについては下記記事がよくまとまっているので、ご覧ください。
また、単品ECサイトでは、リピート購入してもらうために、定期販売や頒布会の仕組みが使われています。定期販売のECサイトについては次に解説いたします。
⑤定期販売・頒布会のECサイト
定期販売と頒布会という、お互いが似たような意味のECサイトですが、まず定期販売から解説します。定期販売とは例えば以下のような販売形式です。
◆定期販売の例
青汁をECサイトで購入した。せっかくだから、ECサイトで定期販売に申し込んだ。以後、毎月青汁が家に届くようになり、支払いは毎月クレジットカードで自動引き落としされている。
定期販売のECサイトとは、上記のような商品を定期的に販売するものです。定期販売は事業者にとってみると、解約されない限りリピートすることが約束されており、キャッシュフロー経営を行いやすいというメリットがあります。では、定期販売と混同しやすい頒布会について例を挙げます。
◆頒布会の例
食材のECサイトで、野菜の詰め合わせのお試し商品を購入し、気に入ったので頒布会に申し込んだ。毎月、いろいろな旬の野菜の詰め合わせが家に送られてきて、月によって商品が異なるので楽しみだ。
頒布会のECサイトとは、上記のような食品の詰め合わせ(頒布会)などを扱うものです。
販売の流れは定期販売と変わりありませんが、定期販売は毎回同じものをお届けするのに対して、頒布会は、毎月違うものを届けるのです。
また、定期販売や頒布会と近いものとして「サブスクリプション」もあります。サブスクリプションは、「使い放題(上限が設置されているケースもあり)」というプランで、主に次に解説するダウンロード販売のECサイトで使われることが多いです。
定期販売や頒布会については、過去に書いた記事で詳しくまとめておりますので、こちらをご覧ください。
それでは次にダウンロード販売のECサイトを解説いたします。
⑥ダウンロード販売のECサイト
ダウンロード販売のECサイトで主に扱われるデジタルコンテンツは、以下の3つです。
・電子書籍(書籍・漫画)
・動画・写真・音楽
・ゲーム
AmazonのKindleもデジタルコンテンツを扱うダウンロード販売のECサイトの事例です。ダウンロード販売のECサイトでは主に2つの販売方法がとられています。
①商品ごとに購入金額を支払うトランザクション型
②定額料金を支払って一定期間利用するサブスクリプション型
デジタルコンテンツの課題は複製されやすいことにあります。ECサイトでダウンロード販売を行う場合は、購入者によって違法に複製されやすいため、複製を制御する技術についても考慮しましょう。ダウンロード販売については、下記の記事で詳しく解説しているので、こちらもご覧ください。
⑦マルチチャネル型のECサイト
マルチチャネルとは、自社ECサイトと並行して、Amazonや楽天市場などにも出品・出店を行う形式のことです。複数のECサイトをそれぞれ運営する手段もありますが、その場合在庫情報や受発注情報などがバラバラで管理が非常に大変です。
マルチチャネル型のECサイトを運営する場合は、以下のようなモール連携の管理システムを使います。
また、自社のECシステムとモールを連携させて、以下のように自社のECサイトの管理システムで、モールも管理する方法があります。
このように、複数のECサイトを運営する形式がマルチチャネル型ですが、モール連携のシステムを導入するなどの工夫が必要となるのです。
マルチチャネル型のECサイトが採用されるのは、特に面を広げて売上を拡大するために利用される場合ですが、その分負担が倍になるので、このようにシステム連携を実施するのがコツとなります。
さて、ここまでECサイトの7つの販売形式の種類について解説しました。しかしECサイトは販売形式だけではなく、BtoCやBtoBなどのビジネスモデルによっても違いがあります。では次に、ECサイトのビジネスモデルについて解説します。
ECサイトの5つのビジネスモデル
ECサイトについて理解するなら、ECサイトの代表的な5つのビジネスモデルについて理解しなくてはなりません。以下の表をご覧ください。
◆ECサイトの5つのビジネスモデルの一覧表
ビジネスモデル | 概要 |
①BtoCのECサイト | 企業が消費者に向けて販売するECサイト |
②BtoBのECサイト | 企業間取引で売買するECサイト |
③BtoEのECサイト | 社内販売・職域販売を行うECサイト |
④CtoCのECサイト | メルカリ(フリマアプリ)のような、消費者同士が売買するサイト |
⑤DtoCのECサイト | メーカーが仲介を通さず、直接消費者に販売するECサイト |
それでは、一つずつ解説してまいります。
①BtoCのECサイトは「ZOZOTOWN」や「ユニクロ」等の一般消費者向けサイトのこと
BtoCのECサイトとは、Business(企業) to Consumer(消費者)のことで、企業が一般消費者向けに商品を販売するサイトのことを指します。
BtoCのECサイトは、最もスタンダードなビジネスモデルと言えるでしょう。例としては、以下のようなECサイトが挙げられます。
◆BtoCのECサイトの例
・ZOZOTOWN(ファッション通販ZOZOTOWN)
・ユニクロ(ユニクロ公式オンラインストア)
・Nike(Nike.com)
・ニトリ(ニトリネット【公式】)
・オイシックス(Oisix公式)
もちろん、有名なECサイトでなくとも、例えば、あなたの住む地域にある個人商店が、アクセサリーをネットショップで販売する場合もBtoCのECサイトと言えます。
また、代表的なBtoCのECサイトとして「Amazon」や「楽天市場」もありますが、これらはBtoBも扱っているので、ここでは誤解が発生しないように例としては外し、次のBtoBのECサイトのビジネスモデルで解説します。それでは、次にBtoBを解説します。
②BtoBのECサイトは「モノタロウ」「アスクル」等の、企業向けのECサイトのこと
BtoBのECサイトとは、Business(企業) to Business(企業)のことで、企業が企業に対して商品を販売するサイトのことを指します。代表的なものとしては、以下のようなECサイトがあります。
◆BtoBのECサイトの例
これらのECサイトの特徴はBtoB向けではあるのですが、BtoBでも小口取引に特化している点です。通常、企業間取引というと、数十万円~数千万円、時には数億円以上の取引を扱うことも珍しくはありません。
しかし、そういった大きな金額の取引は事前に契約を交わしている他、決済方法としては、請求書払いなどがまだまだ主流なのが現状です。
そのため、BtoBのECサイトで扱われるのは、小口取引が中心となるのです。またBtoBサイトの中には、一部BtoC向けの販売をしているECサイトもあるため、厳密にBtoBとBtoCに境界線があるわけではありません。
では次に、BtoEを解説いたします。
③BtoEとは「社内販売」のこと。つまり従業員向けのECサイトのこと
BtoEという言葉は、聞いたことがない方が多いのではないでしょうか?BtoEのECサイトとは、Business(企業) to Employee(従業員)のことで、企業に所属する従業員向けに販売しているサイトを指します。
例えば従業員数が10,000人を超えるような大企業であれば、社員への情報提供の手段の一つとして「イントラネット」が用意されている場合が多く、そのイントラネットでは、よく従業員向けに自社や得意先の商品をECサイトで販売していることがあります。
過去に大手メーカーに勤めていた筆者の体験談ですが、自社のイントラネットには、従業員向けに自社商品を販売するBtoEのECサイトがありました。そこでは旧型モデルの商品が格安で販売されており、企業には余剰在庫を減らすことができるメリットがありました。
BtoEのECサイトはクローズドであることが多く、従業員しか見られないようにする独自の工夫が求められます。BtoEのECサイトについては下記記事でまとめてあるので、あわせてご覧ください。
では次に、CtoCを解説いたします。
④CtoCとは「メルカリ」や「ヤフオク!」等の消費者同士で商品を売買するECサイトのこと
CtoCサイトとは、Consumer(消費者) to Consumer(消費者)のことであり、消費者同士が出品して、購入するというECサイトのことです。
◆CtoCのECサイトの例
メルカリやヤフオク!は、CtoCの中でも非常に有名なサイトで、ご存じの方も多いのではないでしょうか?特にメルカリは女性の利用者が多く取引を行っており、筆者の妻もメルカリに装飾品や衣服、あるいは化粧品など数多くの商品を出品し、取引をしています。
CtoCのECサイトにおいて気を付けたいのが、違法・不正(グレーゾーンを含む)取引についてです。例えば、メルカリでは過去に紙幣が出品されたり、正規品ではなく偽物が出品されるなどトラブルが尽きません。
参考記事:「メルカリに「福沢諭吉紙幣」が出品された理由」(東洋経済オンライン)、「漫画『鬼滅の刃』 紙の海賊版がメルカリなどで流通 集英社が注意喚起」(ITmediaビジネスオンライン)
このような違法・不正取引が広がると、CtoC市場が広がっていきません。プラットフォーム側でもAIによる不正取引の自動検知など対策が進んでおります。
それでは、次にDtoCを解説いたします。
⑤DtoCは「コールマン」や「エアウィーヴ」等の、メーカー直販ECサイトのこと
DtoCのECサイトとは、Direct to Consumer(消費者直販型)を指し(D2Cとも言われます)、卸売業者や仲卸業者から仕入れず、生産するメーカー自身が直接販売するECサイトのことです。
◆DtoCのECサイトの例
・エアウィーヴ(【公式】エアウィーヴオンラインショップ)
・コールマン(コールマンオンラインショップ)
・エレコム(エレコムダイレクトショップ)
DtoCという言葉が、ビジネスの世界で一般的になってきた背景には、企業のSNS利用が進んだことも一因として考えられます。
例えば、Instagramで魅力的な投稿を継続することができれば、自然とフォロワーを増やすことができ、そこで、自社のECサイトに集客することが可能なのです。
このようにSNSや広告を使って、企業自身がECサイトの集客をすることが可能になり、卸や仲介を挟まないで、直販できるようになったのです。
また、DtoCは利益率も高いので、企業にとっては魅力的なビジネスモデルです。一方で、ブランド力のない企業ではWEBマーケティングのノウハウがないと、なかなか集客に成功しないので、担当者の経験と熱意がないと難しい面もあるのです。
DtoCについては、下記記事をご覧ください。
D2Cビジネスで売上を伸ばしたい方に! 資料でも詳しく説明しています。
資料請求:D2Cビジネス向けお役立ち資料
ECシステムは主に5種類
最後に、自社でECシステムを構築する場合にも、ECサイトの作り方はさまざまありますので、作り方の種類について解説いたします。ECシステムの種類は以下の5つに大別することができます。
①ASP
②オープンソース
③パッケージ
④クラウドEC
⑤フルスクラッチ
それでは、一つずつ解説していきましょう。
①ASP
ASPは、アプリケーション・サービス・プロバイダーの略で、エーエスピーと読みます。サーバにインストールする仕組みではなくクラウドツールであり、EC担当者はWEBブラウザーからIDとパスワードでログインして、ブラウザー上のECサイトの管理画面を使います。
最大のメリットは、安くて、導入に時間がかからない点です。ASPでは数千円から導入することが可能であり、ECサイトのデザインも割と自由にカスタマイズできることから、小規模事業者によく利用されます。デメリットは、カスタマイズ性が低いので、システム連携などが困難なことです。
②オープンソース
オープンソースとは、無料でソースコードを利用でき、カスタマイズすることができるECシステムです。世界的に有名なECシステムのオープンソースには「Magento(マジェント)」があり、理論上はオープンソースであっても、大企業向けの高度なシステム連携が可能です。
そのため、技術力がある個人から企業まで広く使われているECサイトのシステムとなります。しかし、オープンソースのECサイトは脆弱性が警告されています。
なぜなら、オープンソースはプログラムコードが公開されており、ハッカーに目を付けられやすい点と、オープンソースを導入した企業の担当者が最新のセキュリティ対策を定期的に行う必要があるため負担になり、セキュリティリスクが高い点があるからです。オープンソースのECサイトについては、経済産業省も注意を促しています。
参考記事:「経産省からEC-CUBEの脆弱性について注意喚起 EC事業者が行うべきセキュリティ対策とは?」(ECのミカタ)
オープンソースのECサイトについては、過去の記事で詳しく解説しているので、下記の記事をご覧ください。
③パッケージ
パッケージは、すでにECシステムとして完成しているパッケージがあり、それを個社ごとにカスタマイズして、提供するECシステムです(カスタマイズしないで提供するケースもあります)。
最大の特徴はカスタマイズやシステム連携ができることで、中・大規模のECサイトのプラットフォームとしてよく利用されます。
デメリットは最低でも数百万円からという比較的高額な点と、クラウドではなく所定のサーバにインストールする必要がある点です。カスタマイズしてしまうとシステムを最新にすることができないため、3~5年もシステムを利用するとバージョンが古くなってしまいます。
もちろんパッケージ会社も、最新のバージョンをリリースする際は、既存のパッケージにも適用できるようにしています。しかし、パッケージの多くは、カスタマイズをしていると最新のバージョンを適用できないケースがほとんどです。パッケージについては下記の記事で詳しく解説しておりますのでご覧ください。
そのため、カスタマイズが必要な中・大規模のECサイトでは、次に紹介するクラウド型のECシステムが主流になりつつあります。
④クラウドEC
クラウドECとは、ここでは「カスタマイズが可能なクラウドECプラットフォーム」のことを指します。通常カスタマイズやシステム連携を行うシステムのプラットフォームであれば、バージョンアップが難しいため、システムが陳腐化します。
また、ASPは常に最新に保たれシステムは決して陳腐化しませんが、個社ごとのカスタマイズやシステム連携が難しい場合がほとんどです。
しかし、カスタマイズやシステム連携を行いながら、システムが最新に保たれているECのプラットフォームがあります。それがクラウドECであり、日本国内で代表的なものは、弊社のebisumartになります。
クラウドコマースプラットフォーム:ebisumart(エビスマート)
スモールスタート向けクラウドコマースプラットフォーム:ebisumart zero(エビスマート ゼロ)
クラウドECの特徴は、カスタマイズできる柔軟性とシステムの最新性の両方があることです。最新性によってパッケージの弱点であるシステムの陳腐化が起こりません。デメリットはパッケージと同様に費用が高い点と、クラウドのシステムのため、プログラムコードが公開されていない点にあります。
昨今、多くのパッケージベンダーがクラウドECのシステムをリリースしていることからも、今の中・大規模のECシステムの主流がクラウドECであることが分かります。
⑤フルスクラッチ
フルスクラッチは、ゼロからECシステムを構築することで、その最大の特徴は、理論上、自社に最適なECシステムが実現可能な点です。デメリットは費用と開発期間の長さです。
結論を言えば、中・大規模のECサイトの場合、フルスクラッチで構築するメリットは少なくなっています。なぜなら、パッケージやクラウドECの機能が増加しており、フルスクラッチに迫る機能性・拡張性があるからです。しかもパッケージやクラウドECは、フルスクラッチと比べて費用も開発期間も少なく済みます。
また、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の問題点の一つとして、ECシステムに限らず、自社独自のシステムを構築している点が挙げられます。なぜなら、構築した当初は良いのですが、数年たつとシステム保守コストが非常にかかり、企業の足かせとなるからです。
ただ、国内アパレルECのフラッグシップとなっているZOZOTOWNがフルスクラッチを用いて開発していることからも分かるように、フルスクラッチで構築するメリットはもちろんあります。
フルスクラッチの場合は、自社に技術者がおり体制が整っている企業であれば、素早くシステム改修を行うことができるというメリットがあります。素早くシステム改修ができればPDCAサイクルも早く回すことができるので、フルスクラッチで構築することで売上を最大化できるような施策が進めやすいのです。
フルスクラッチについては、下記の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。
まとめ
ECサイトの概要を解説してまいりました。ECというと、今や誰もが利用しているものですが、それを他の人に説明することができる人はあまりいないのではないでしょうか?
今後自社でECサイトを検討していたり、あるいはEC業界に興味を持っていたりする方は、まずはいろいろなECサイトで商品を購入してみることから始めることをおすすめします。特にZOZOTOWNやユニクロ、オイシックスのような有名サイトであれば、そこには売上を高めるためのいろいろな工夫がされており、非常に勉強になるはずです。
ECの種類を把握したのなら、実際のECサイトを利用してみることが、ECを理解するための最高の教材になるでしょう。