Webサイトで、会員や従業員などのある特定のグループに属するユーザーだけに情報を提供する場合には、クローズドサイト(会員制サイト)の構築が必要になります。
クローズドサイトの構築方法は大きく以下の3つがあります。
◆クローズドサイトの構築方法
② EC専用のASPサービスを利用する
③ パッケージをカスタマイズする
もちろん、フルスクラッチでゼロから開発することもできますが、ASPやECプラットフォームなどのクラウドサービスやCMS、パッケージを利用することで、コストを抑えつつ短期間でクローズドサイトを開設できます。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、クローズドサイトの構築方法を解説します。
クローズドサイトの5つの用途
Webサイトの最も優れている点は、世界中の人々に広く情報を届けることができる点ですが、クローズドサイトは、その中でも特定のユーザーだけに伝えたい情報を提供するための方法です。そのため、次の5つの用途で利用されることが多いです。
◆クローズドサイトの5つの用途
② サービスを提供する会員制サイト
③ イントラネット(社内サイト)
④ 社内販売サイト
⑤ BtoB向けECサイト
①~⑤までそれぞれ詳しく見ていきましょう。
① 情報や交流の場を提供する会員制サイト
情報や交流の場を提供する会員制サイトのコンテンツには、次のようなものがあります。
◆情報や交流の場を提供する会員制サイトのコンテンツ(例)
・有料記事を提供するメディア
・転職サイトの口コミ
いずれも、情報そのものの価値を商品とするサービスを提供しているWebサイトで、「会員登録した人だけが、特別な情報を手に入れることができる」場所としてクローズドサイトを利用しています。
例えば、新聞や雑誌の電子版サイトや転職総合サイトの口コミなどを利用する際に、皆さんもよく目にするのではないでしょうか。
◆日経新聞(日経電子版)の有料記事
引用(画像):日本経済新聞(日経電子版)
◆転職会議の口コミサイト
引用(画像):転職会議
このようなWebサイトでは、まずは「無料会員」として登録してもらい、閲覧回数を設けたり、一部の記事を無料で公開したりしている場合が多いです。無料会員登録をきっかけに、より価値のある情報を求めるユーザーに対して有料会員登録を促し、クローズドサイトに誘導しています。
② サービスを提供する会員制サイト
サービスを提供している会員制サイトには、次のようなものがあります。
◆サービスを提供する会員制サイトのサービス(例)
・保険、クレジットカード、オンラインバンクなどの金融関連
・教材販売などの教育関連
NetflixやHuluなどの動画配信サービスや、保険やクレジットカード、オンラインバンクなどの金融関連のサービス、教材販売などを行っている教育関連サービスもクローズドサイトで提供されます。
例えば、クレジットカードの会員サイトでは、過去から現在までの支払明細や翌月の支払い(口座引落)予定の金額を確認したり、利用後に支払い方法を分割払いやボーナス払いに変更したりできる機能が提供されています。
③ イントラネット(社内サイト)
イントラネットは、特定の組織や企業に属する人だけがアクセスできるWebサイトです。従業員数が1,000人を超える規模の企業では、「社内サイト」を通じて情報やサービスを提供・共有している場合がほとんどでしょう。
企業規模が大きくなると、経営層の方針やメッセージを従業員全員に伝えることが難しくなります。そのため、企業だけのWebサイトであるイントラネットで、重要な情報を発信・共有し、部門ごと、あるいは部門横断のコミュニケーションや社内手続きを行えるようにするなどし、全従業員が効率的に働けるように各社工夫しています。
イントラネットと外部との通信にはVPN (Virtual Private Network)を用いて、セキュリティの強度を高めています。そのため、ユーザーは社外からでもインターネットを介してVPN接続でイントラネットにアクセスし、社員番号などのアカウントとユーザー自身が設定したパスワードでログインして安全に利用することができます。
④ 社内販売サイト
従業員向けに自社の商品やサービスを割引価格で提供するための社内販売サイトもクローズドサイトです。福利厚生プログラムの一部として提供している企業もあり、従業員は通常の小売価格とは異なる割引率で自社商品を購入できるため、社内販売サイトの利用をきっかけとして、自社商品に対する愛着や企業へのエンゲージメントを高める効果も期待できます。
かつて、筆者が勤めていた大手PCメーカーでも、社員販売サイトが提供されており、休憩時間になると、掘り出し物を見つけるためにアクセスしていました。
その社員販売プログラムでは、従業員の家族や知人も利用できるように紹介用の「ログインキー」が用意されており、そのログインキーを受け取った人も社員販売サイトにアクセスして一部の対象商品を閲覧できる仕組みが提供されていました。
⑤ BtoB向けECサイト
複数の取引先と取引が行われるBtoB向けECサイトでは、各取引先が他社の情報にアクセスできないようにしています。BtoBでは取引先ごとに提供価格や割引率が異なることも多いため、個社情報の管理・共有はクローズドサイトで行われます。
また、BtoBの卸サイトなどでは商品ラインナップや価格を一般には公開しておらず、会員登録を必須としている場合も多いです。そのようなクローズドサイトでは、ECサイトで会員登録をすれば必ず会員になれるというわけではありません。EC事業者は新規登録企業に対する与信審査を行い、支払い能力があることを確認できたら会員登録を許可します。
ひと口にクローズドサイトのECと言っても、販売機会を増やすためにより多くの人々に会員登録を促すBtoC-ECと比べると、BtoB-ECは取引先である既存顧客との関係管理としての機能が際立ちます。
クローズドサイトに必要な5つの基本機能
標準的なクローズドサイトで必要とされる基本機能は以下の5つです。
◆クローズドサイトで必要とされる5つの基本機能
② 会員情報登録/管理
③ 検索エンジンのクローラーからのアクセス制御
④ 与信管理
⑤ カート/決済
①~⑤の機能をそれぞれ説明します。
① ユーザー認証
クローズドサイトへのログイン時に会員IDとパスワードなどでユーザー認証を行うための機能です。
高いセキュリティが求められるクローズドサイトでは、会員IDとパスワードに加えて、ワンタイムパスワードや会員登録時に設定したテキストやコード、あるいは生体情報(指紋認証や顔認証)などを用いた二段階認証や多要素認証の仕組みも実装されています。
② 会員情報登録/管理
会員情報の登録・更新・削除と、登録情報を利用・管理するための機能です。
◆会員情報登録画面の例(筆者が運営している教材・講座通販サイト「forUSERS」)
引用(画像):forUSERS オンラインストア
会員情報登録/管理機能では、会員ごとにランクを付与し、会員ランクごとに閲覧できる情報や利用できる特典・サービスなどを設定することも可能です。
◆会員情報登録/管理の主な機能
・会員情報編集
・会員情報検索
・会員の行動履歴分析
・メール配信
・ポイント管理
・特典管理
これらの機能を利用することで、会員一人一人に対して適切な対応と最適なサービスの提供が可能になり、会員との関係性をより強化するために活用できます。
③ 検索エンジンのクローラーからのアクセス制御
不特定多数に情報の存在を知らせない、あるいは情報を広めないように、Googleなどの検索エンジンのクローラーからの特定のWebページやディレクトリに対するアクセスを制御して、検索エンジンで検索できないようにするための機能です。
例えば、以下のHTMLのメタタグを対象のWebページに記述すると、検索エンジンのインデックス化を禁止し、検索エンジンの検索結果に表示させないようにすることができます。
◆メタタグを記述して検索エンジンのインデックスに登録させないようにする方法
<meta name=”robots” content=”noindex” />
④ 与信管理
BtoBのクローズドサイトでよく利用されます。先ほども解説したとおり、BtoB向けECサイトは、既存顧客との取引管理のために開設されているケースが多いため、新規会員登録時に与信審査を行うための機能が必要になります。
与信管理機能では、過去の取引履歴(内部情報)や、インターネットに公開されている情報や第三者機関が提供している与信評価データ(外部情報)を利用して、新規登録された企業を評価します。
ECサイトの与信管理機能について、詳しくは以下の関連記事にも掲載していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
⑤ カート/決済
クローズドサイトでも、ECサイトの場合にはカート/決済機能が必要ですが、ECに特化したASPサービスやパッケージを利用して構築する場合は標準機能として提供されているので、追加開発などが必要になることはありません。
ASPサービス、パッケージシステムともに、連携可能な決済サービスが提示されているので、その中から利用するサービスを選ぶことができます。
もし特定のサービスを利用したい場合には、ECサイトのプラットフォーム選定時に、各サービスで提携している、あるいは連携可能な決済サービスを必ず確認し、ベンダーに相談するようにしましょう。
インターファクトリーのECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」ではさまざまな決済サービスを利用することができます。詳細は公式サイトでご確認ください。
クローズドサイトを構築するための3つの方法
記事の冒頭でもお伝えしましたが、クローズドサイトを構築する場合、スクラッチでゼロから開発するのではなく、ECに特化したASPサービスやパッケージの利用をおすすめします。しかし、「簡易的なサイトでいいから自由度の高いクローズドサイトを構築したい」という場合は、CMSの「WordPress」を使って構築するのもよいでしょう。
それでは、クローズドサイトの構築方法①~③をそれぞれ見ていきましょう。
① WordPressの会員制サイト用プラグインを利用する
WordPressでクローズドサイトを構築する場合には、会員制サイト用のプラグインを利用します。WordPressでは多種多様なプラグインが提供されており、会員制サイト用のプラグインも無数にありますが、有名なものとしては以下があります。
◆WordPressの会員制サイト用のプラグイン(例)
◆「WP-Members Membership Plugin」の設定画面
引用(画像):WP-Members Membership Plugin
このような専用のプラグインではクローズドサイトの基本機能を提供しているため、WordPressで必要な項目を設定するだけでクローズドサイトを構築できます。
上の画面イメージは英語表示ですが、日本語対応のパッチを適用することで管理画面を日本語表示に変更できます。
② EC専用のASPサービスを利用する
EC専用のASPサービスには、初期費用と固定費が無料で利用できるサービスもあり、小規模なクローズドサイトを構築する場合にはおすすめの構築方法です。
以下は筆者が運営している教材・講座通販のオンラインサイトで、購入してくれたユーザーだけが研修用動画を再生できるようにしています。
◆教材・講座の通販サイト(筆者が運営している教材・講座通販サイト「forUSERS」)
引用(画像):forUSERS オンラインストア
この「forUSERSオンラインストア」はクローズドサイトも含めてSTORESで構築しています。STORESは初期費用・固定費用が不要で、商品が売れたときに発生する決済手数料を支払うだけで利用できるので、気軽にECサイトを始めたい方にはおすすめのASPサービスの一つです。
ただし、無料プランでは使える機能が限定されているため、自社のWebサイトで必要な機能を網羅できるか、事前に調査・検討するようにしましょう。
例えば、筆者は「forUSERSオンラインストア」の運用開始後に、「領収書の自動発行ができない」という点が思いのほか負担に思うようになりました。今のところは手作業で対応できていますが、ある程度の規模のクローズドサイトを構築する場合には、最初から有料プランを利用することをおすすめします。
③ パッケージをカスタマイズする
クローズドシステムに独自機能が必要な場合には、パッケージを利用するとよいでしょう。ASPサービスと比べるとかなり高価ではありますが、中・大規模企業で求められる独自の業務フローや機能を個別カスタマイズで実装できます。
パッケージのデメリットは最新機能やセキュリティを維持するための自社運用が必要になることです。システムの保守・運用にはそれなりの体制と費用が必要となるため、システムの運用負荷が高くなります。
その点、「ebisumart(エビスマート)」のようなクラウド型のECプラットフォームサービスであれば、最新の基本機能とセキュリティ環境を利用しながらパッケージに近い個別カスタマイズも実装可能です。カスタマイズしたクローズドサイトを構築したい場合には、フルカスタマイズが可能なクラウドサービスも検討してみるとよいでしょう。
よりBtoB向けの機能について知りたい方は、ぜひこちらの資料をご覧ください。
資料請求:BtoB向けECサイト機能詳細
まとめ
クローズドサイト(会員制サイト)では、ユーザーである会員の満足度を高める仕組みが必要になります。すでにECシステムではそれらのノウハウが機能化されているので、クローズドサイト構築でもASPやECプラットフォームを利用することをおすすめします。また中・大規模のクローズドサイトを構築する場合には、企業独自の業務フローや機能を実装する必要があるため、フルカスタマイズにも対応しているECプラットフォームを選定すべきです。
会員管理に役立つ機能を豊富に備え、フルカスタマイズや外部連携にも柔軟に対応可能なインターファクトリーの「ebisumart(エビスマート)」を使って、自社のビジネスニーズに最適なクローズドサイトを構築しませんか?
よりBtoB向けの機能について知りたい方は、ぜひこちらの資料をご覧ください。
資料請求:BtoB向けECサイト機能詳細