BtoBでAmazonのようなマーケットプレイス型や、楽天市場やYahoo!ショッピングのようなテナント型のショッピングモール型ECサイトを始めるためには、システム構築だけでなく、「人と商品を集める」ための戦略と道筋を立てておくことが大切です。
BtoCや自社のECサイトでも「集客」は重要かつ困難な課題の一つですが、モール型ECサイトはさらに、商品を「出品」(マーケットプレイス型)、または「出店」してくれる企業(テナント型)をいかに集め、活気のあるモールを維持し続けていくために何をするか、といった初期戦略が成否を分ける鍵となります。
多くのユーザーを擁するECモールには、魅力的な商品や店舗が集まりやすくなります。その結果、さらに新規/リピートユーザーが増える…、というように、ECモールで好循環を生み出すことが極めて重要です。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、BtoBのショッピングモール型ECサイトを始めるために不可欠な戦略とシステム構築方法の種類について紹介します。
ユーザーと参入企業(出品/テナント)をいかに集められるかが成功の鍵!
冒頭でもお伝えしたように、BtoBのマーケットプレイス型など、モール型ECサイトの運営では次の2つの戦略が必要です。
◆モール型(マーケットプレイス型)ECサイトを立ち上げる際に必要な2つの戦略
・どのように商品となる参入企業(出品/テナント)を集めるか
一般にBtoBのECサイトはBtoCよりも集客が難しい傾向があり、サイトアクセス数がBtoCの10分の1以下となることも珍しくありません。
BtoBでは、BtoC以上にECサイトに人を集めることが難しいということを理解しておきましょう。その上で、ECモールをオープンする前に集客のための戦略を立案し、施策を実行しておく必要があります。同時に参入企業(出品/テナント)をどのように増やしていくかについても検討しておきましょう。その際には、参入企業の選定基準と、販売および運用フローを明確にしておくことが大切です。
マーケットプレイス型ECサイトでは、参入企業のユーザーの流入や集客施策効果によるアクセス数の向上も期待できるため、参入企業にとってもメリットのある条件とシステム環境を整備していくことが重要になります。
BtoBのマーケットプレイス型では商品を購入してくれるユーザーを集めることが大切
筆者が以前勤めていた職場でも、ある大手企業が運営するBtoCのモール型ECサイトへの出店の誘いを受けたことがあります。業界大手のECモールということもあり、当初から多くの有名企業が出店していたのですが、そのECモールはわずか数年で閉鎖してしまいました。
その敗因は、ECモールに消費者が集まらなかったことにあると、筆者は考えています。同社では広告やメルマガなどを活用した集客施策にも積極的に取り組み、月間のサイトPV数は100万を超えていました。しかし、「購入してくれるユーザー」が集まらず、売上につながるビジネスモデルとして確立するまでに至らなかったのでしょう。
モール型(マーケットプレイス型)ECサイトの集客では、より多くの消費者を呼び込み、より頻繁に訪れてもらい、商品を購入してもらうための継続的な戦略と施策が求められます。
モール型(マーケットプレイス型)ECサイトの3つの主要機能
さて、以降はモール型(マーケットプレイス型)ECサイトを構築・運営するために必要な機能について解説していきます。まずは、モール型(マーケットプレイス型)ECシステムの主要機能3つを見ていきましょう。
機能①運営企業と参入企業のアカウント権限管理
BtoBのモール型ECシステムでは、運営企業アカウントと参入企業アカウントは、全く異なる事業を運営することになります。そのため、明確に異なる2つの役割を網羅した機能と、権限を管理するための機能が不可欠です。
例えば、運営企業アカウントでは自社の取引だけでなく、参入企業の運用状況を含めたECモール全体を管理するための機能と権限が必要になります。一方、参入企業アカウントでは、商品登録や店舗運営に必要な機能と権限が必要になります。
モール型ECシステムのプラットフォームの選定や開発をする際には、事前に役割ごとに求められる機能と運用の必須要件を洗い出し、精査しておきましょう。
機能②レポート機能
参入企業単位、ECモール全体などの複数の切り口で、実績情報を参照・取得できるレポート機能が必要です。また標準様式の画面や帳票だけではなく、参入企業が自社の実績データを自由に活用できるように、データエクスポート機能もあわせて実装しておくとよいでしょう。
機能③ロイヤリティ管理
運営企業は定期的に参入企業からロイヤリティ(出店手数料)を徴収することになります。そのため、参入企業ごとに支払い料金や手数料率を登録・管理するための機能が必要です。料金や料率は全社一律の場合にも、企業ごとに変わる場合にも対応できるよう、参入企業アカウントにひも付けて管理できるように実装しましょう。
小・中規模のマーケットプレイス型ECサイトでは直送モデルから始めるべき
モール型(マーケットプレイス型)ECシステムに求められる機能は、採用する物流形態によっても変わってきます。ECモールでは以下の2つの物流形態があります。
◆モール型(マーケットプレイス型)ECサイトの2つの物流形態
・運営企業が一旦商品を預かり管理・配送するモデル
小・中規模のモール型ECサイトでは、基本的には直送モデルで始める企業がほとんどでしょう。例えばAmazonのように、運営企業が商品の在庫や配送管理までを行う場合には、莫大な維持・管理コストが発生します。既存の倉庫や物流拠点を流用できる場合には検討の余地もありますが、在庫管理、配送管理などのシステムとECシステムとの連携機能を実装するとなると、大規模な開発が必要になってきます。
そのため、モール型ECサイトは商品を売る場所としての役割にとどめ、参入企業による直送モデルでスタートすることをおすすめします。
参入企業の定着化を実現する3つの施策
BtoBのモール型(マーケットプレイス型)ECサイトを成功させるには、企業を集めるだけでなく、定着させる仕組みを設計することも重要です。出品企業が「継続して販売活動を行う価値がある」と感じるような運営体制がなければ、初期集客がうまくいっても徐々に過疎化するモールになりかねません。
以下に、参入企業にとって魅力的なモールにするための具体的な施策を紹介します。
施策①成果が可視化される管理画面とサポート体制を用意
出品した後に「どの商品が、どのターゲットに、どの経路から売れたのか」がわかるようなダッシュボード機能やレポート機能は、出品企業にとって非常に有用です。さらに、操作や運用に関する問い合わせに対応できるチャットやFAQ、営業サポートが整備されていると、EC経験が浅い企業も安心して継続できます。
施策②販売を後押しするモール内キャンペーンや露出支援を実施
たとえば「カテゴリ別ランキング」「おすすめ出品企業」「月間特集ページ」など、出品企業にとって“がんばれば売上につながる導線”が設計されているかどうかは、モールの魅力に直結します。こうした露出枠のロジックや掲載基準を明確化し、出品者にとってフェアな運営がなされていることを示すことも大切です。
施策③商品ページや購入導線の最適化支援
多くのBtoB企業は、カートボタンやスペック表記、見積対応などに関して、EC運営のノウハウを持っていません。そのため、商品ページ作成テンプレートの提供や、受発注プロセスの標準化・支援ツールがあると、運営負担が軽減され、定着率が向上します。
例えば「最初の10商品は出品支援を無償提供」「定期的にUI改善レポートを配布する」といったサポート設計も有効です。
モール型ECサイトの運営では、出品企業もユーザーも“集める”施策と“育てる”仕組みの両方が重要です。特にBtoB領域では、取引単価が高く検討期間も長いため、一度参入した企業と中長期的に成長できるモデル設計が成功の大きなポイントとなります。
このようなBtoBのマーケットプレイス型ECでは、単なる商品掲載の場を超えて、業界内での信頼性や商流のハブとしての役割を果たすことが求められます。
そのためには、出品企業・購入企業の声を拾い、UIや機能改善に反映していく共創姿勢が不可欠です。さらに、BtoBビジネス特有の商慣習や価格交渉、継続取引といった要素にも対応できる、柔軟な設計こそが長期的な成長を支える鍵となるのです。
マーケットプレイス型ECサイトの4つの構築方法
他のECシステムと同様に、モール型(マーケットプレイス型)ECサイトも下表のいずれかの方法で構築します。
◆モール型(マーケットプレイス型)ECサイト構築の4つの方法
方法 | 価格 | リリース までの期間 |
カスタマイズ | システム連携 | システムの状態 |
ASPサービス | 低 | 短 | △ | △ | 常に最新 |
パッケージ | 低~高 | 短~長 | ○ | ○ | 自社対応が必要 |
カスタマイズ可能なクラウドEC | 低~高 | 短~長 | ○ | ○ | 常に最新 |
フルスクラッチ | 高 | 長 | ◎ | ◎ | 自社対応が必要 |
最初は最小限の機能を活用して、コストをかけずに、早く開設したいという場合には、ASP(Application Service Provider)サービスが最適でしょう。
しかしBtoB向けECサイトでは、「請求書払い」や「後払い」などの決済機能、アカウントを階層で管理できる取引先管理機能や承認フローなど、BtoB取引固有の機能も必要になるため、標準機能だけでは対応できない可能性があります。そのため、ある程度のカスタマイズを前提として、以下の中から最適な構築手法を選択すべきです。
・カスタマイズ可能なクラウドEC
・フルスクラッチ
「フルスクラッチ」の場合、自社固有の機能なども自由に開発することができますが、ゼロからの開発とリリース後の運用保守に膨大な労力と費用がかかります。
「パッケージ」や「カスタマイズ可能なクラウドEC」の場合は、標準提供されているBtoB向けECサイトの基本機能をベースにカスタマイズできるため、その分コストを抑えることができます。ただし、「パッケージ」の場合は、基本的に初期の開発以降は、フルスクラッチと同様の運用保守コストが発生します。
一方、「カスタマイズ可能なクラウドEC」の場合は、ECシステム機能を含めたシステム環境全体の管理をサービスプロバイダーに任せられるため、常に最新のシステム状態でECサイトを運用することができます。また、多くのユーザーが利用するサービスならではの知見やノウハウ、ECの最新トレンドなどを自社のECビジネスに取り入れることができる点も大きなメリットと言えるでしょう。
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