Web-EDIとはインターネット回線を利用した電子商取引のこと


EDIは「Electronic Data Interchange」の略で、日本語では「電子データ交換」と訳されます。

従来のEDIは、個別または標準規格のEDIシステムで専用線や固定電話回線を使用してデータ交換を行っていますが、Web-EDIはクラウド上のEDIシステムにWebブラウザからインターネット回線でアクセスしてデータ交換を行います。

Web-EDIはWebブラウザでデータ入力やファイル送受信などの操作を行うため、専用のシステム構築やソフトウェアのインストールが不要なので、低コストかつ短期間でEDIの運用を開始できます。

しかし、Web-EDIを導入する際には留意すべき点もあります。Web-EDIには標準規格がないためWeb-EDIのプラットフォームごとにデータ交換のルールやプロトコル、フォーマット等が異なることから、取引先企業ごとに個別対応が必要となる可能性があります。また、Webブラウザを使用した手入力操作が必要なため、特に取引数や取引先企業数が多い場合には、運用が煩雑になり、オペレーションミスや誤入力などのヒューマンエラーのリスクが高まります

この記事では、インターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者が、Web-EDIについて解説します。

従来のEDIとWeb-EDIの最大の違いはインターネット回線とWebブラウザ

最初に、従来のEDIとWeb-EDIの違いを確認しましょう。

◆従来のEDI

出典(画像):筆者作成

従来のEDIは、企業間で定義した規格あるいは標準規格を使用してデータ交換を行います。EDIシステムと基幹システムを自動連携させることで、手作業で発生しやすいオペレーションミスや誤入力のリスクを解消することができます。

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◆Web-EDI

出典(画像):筆者作成

Web-EDIは、クラウド上のEDIシステムにWebブラウザからインターネット回線で接続してデータ交換を行います。インターネット回線とWebブラウザの用意があれば、簡単に導入することができますが、従来のEDIのように業界規格が標準化されていないため、プラットフォームごとに規格が異なることで取引先企業ごとに個別の対応が必要となる可能性があります。

また、基本はWebブラウザを使って、手作業で交換用データの入力あるいはファイルの送受信操作を行うため、ヒューマンエラーが発生しやすくなります(基幹システムとの自動連携を行いたい場合には別の仕組みが必要になります)。

インターネットの普及とともにWeb-EDIが登場

Web-EDIについて詳しく解説する前に、EDIの歴史について大まかに理解しておきましょう。

◆EDIの歴史

① 1970年代に、専用線や電話回線を使用したEOS(Electronic Ordering System:電子受発注システム)が大手小売企業を中心に導入され始めたことで、企業間の取引における受発注伝票の電子データ化が進みました。しかし、当初は各企業が独自の規約でEOSを構築していたため、各社の規約に対応しなければならない取引先企業の負担は大きいものでした。
1980年代に入り、EDIの原型ともいえる規約の標準化の取り組みが進み、流通小売業界の標準規格としてJCA手順、金融業界の標準規格として全銀協標準プロトコル(全銀ベーシック手順)が策定されました。

② 規約の標準化が進んだ1990年代には、業務の適用範囲を拡大したEDI(Electronic Data Interchange:企業間電子データ交換)が普及し始め、受発注業務だけでなく、請求、支払、物流などの取引に関わるあらゆる情報を電子データ交換できるようになりました。

2000年代に入ると、ついにWeb-EDIが登場しました。自社にEDIシステムを構築する必要がなく、インターネット回線とPCのWebブラウザさえあれば、EDIを利用できるようになりました。低コストで簡単に導入できる点が魅力のWeb-EDIですが、標準規格がなく、またWebブラウザでの手作業が必要となるため、取引数や取引先企業数が多い場合にはヒューマンエラー等のトラブルが増え、運用コストが大きくなりやすいというデメリットがあります。

④ 2007年には、経済産業省の主導で、消費財流通業界における唯一のEDI標準規格となることを目指した、流通BMS(Business Message Standards)が策定されました。流通BMSの通信仕様はインターネット回線によるデータ通信が前提となっており、JCA手順と比べて通信速度が速い等の特徴があります。

2024年1月にISDN回線サービスが終了することが発表されており、従来のEDI標準規格で構築されているEDIの多くのシステムが使用できなくなる可能性があります。「EDIの2024年問題」と呼ばれるこの問題により、JCA手順、全銀ベーシック手順、全銀TCP/IP手順のEDIを運用している企業は、流通BMSあるいはWeb-EDI等への移行が不可欠となっています。

すでに多くの大手企業が流通BMSを導入しているため、流通BMSが日本国内の流通業界で唯一のEDI標準規格になったとしたら、業界全体のビジネスの最適化も実現しやすくなります。しかし、中小零細企業にとってコストや導入・運用するための適任者の確保がネックとなる流通BMSは、障壁が高い選択肢となります。

そのため、中小零細企業では、低コストかつ短期間で導入できるWeb-EDIへの関心が高まっています。

Web-EDIのデメリット

前述したように、小規模事業者でも導入が容易なWeb-EDIですが、デメリットもあります。改めて、Web-EDIのデメリットを理解しておきましょう。

◆Web-EDIの2つのデメリットによる留意点

デメリット① EDIの標準規格がないため、データ交換フォーマットやプロトコル等がプラットフォームごとに異なる。
デメリット② Webブラウザで利用する仕様なので基幹システムのデータを手入力するか、自動連携するための仕組みを別に構築する必要がある。
留意点:①②より、取引数や取引先企業数が多い場合には、オペレーションの煩雑さや誤入力などにより運用コストが膨らむ可能性がある。

Web-EDIの場合、取引先企業のEDIシステムごとに、異なる運用ルールや手順、Web画面、フォーマット等で運用することになるため、取引先企業が1~数社規模であればさほど問題ないかもしれませんが、10社を超える規模の場合には運用が煩雑になります。また、Webブラウザでのデータ入力が基本仕様のため、操作ミスや誤入力などのヒューマンエラーが多発しやすくなります。

これらのデメリットを補うためには、別途、RPAツールなどにより基幹データとの自動連携の仕組みを導入する必要があります。

特定企業だけとEDI取引を行うならWeb-EDIは最適

例えば、取引数もさほど多くなく、特定企業だけとEDI取引を行えばいい場合には、Web-EDIが最も適しています。そのため予算次第で、流通BMSとWeb-EDIを取引先企業ごとに使い分ける運用などについても検討してみてもよいでしょう。

流通BMSとWeb-EDIを併用する場合には、Web-EDIで定義する項目を流通BMSにそろえることで、2種類のEDIをシンプルに運用することができます。

「EDIの2024年問題」がきっかけとなり、流通BMSとWeb-EDIが普及

先程も述べましたが、2024年1月にISDN回線のサービス提供が終了します。それに伴い、インターネットで通信を行う新しいEDIに切り替える必要があります

◆EDIの切り替えイメージ

出典(画像):筆者作成

流通BMSは従来の小売流通業界の標準規格であるJCA手順の後継となる標準規格で、すでに多くの大手企業で導入が進んでいます。また、予算や取引規模が限定的な中小企業ではWeb-EDIが主流になると見られています。

Web-EDIの代わりにBtoB-ECシステムを利用できる可能性も!

さほど取引数が多くない場合などであればWeb-EDIではなく、BtoB-ECシステムを企業間の取引管理システムとして利用するという方法も考えられます。

ECシステムにはマーケティング機能やCRM関連の機能が備わっているので、例えばバナーやレコメンド、メール配信などの機能を利用して、受発注手続きの流れの中で、取引先企業に新商品の情報を提供したり、能動的なコミュニケーションを取ったりすることも可能です。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。