販売商品やブランドを1つに絞って販売している(単品通販)ECサイトにとって、不正転売を目的として商品を購入するユーザー(転売屋)の存在は頭の痛い問題です。
例えば、健康食品や化粧品などのような単品通販では、初回購入を訴求するために以下のような施策を実施しているケースが多いです。
◆単品通販サイトの初回購入訴求のキャッチコピー例
・初回購入に限り通常価格の66%OFF
こうした初回購入特典では、初回購入以降、一定回数の定期購入を前提としているケースもありますが、転売屋が初回購入以降に料金を支払うことはありません。初回購入特典は、以降も定期購入してもらうことを前提として価格を設定しているので、初回購入ばかりが増えると単品通販事業者は赤字になってしまいます。
転売屋による購入を阻止するための対策としては5つの方法が考えられます。
◆転売屋の購入を阻止するための5つの対策
対策② 転売屋と思われるユーザーの流入率が高いWeb広告やアフィリエイトを特定して出稿を停止する
対策③ 初回購入特典で割引販売を行わない
対策④ 初回購入時に特別価格で提供する商品に通常商品を使用しない
対策⑤ 不正検知システムを導入する
もちろん、いずれの対策も転売屋を完全に排除できるわけではなく、また各対策にはメリットだけでなくデメリットもあるので、自社のビジネスに適した実行可能な対策を選んで実施することをおすすめします。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを実施している筆者が、単品通販における転売屋対策について解説します。
なぜ転売屋は単品通販サイトを狙うのか?
転売屋は、単品通販サイトの初回購入特典で購入した商品を、フリマサイトで転売して売上を得ています。大幅割引で購入した商品の金額と、通常価格あるいはそれより少しお得な価格で転売した金額との差額がそのまま転売屋の収益になるのです。
◆不正転売による売上のイメージ
・商品購入時に支払った金額:初回購入特典980円
・フリマサイトで商品を転売する時の金額: 5,000円
→この場合、差額の4,020円が転売屋の売上になる
単品通販サイトでは、初回購入特典の特別価格の適用条件として、初回購入以降、一定回数の定期購入を設定しているケースもありますが、そうした場合でも転売屋は初回購入時の支払い方法にコンビニ払いなどを指定して、初回購入が終わると姿を消し、2回目以降の支払いをすることはありません。転売屋はそうして仕入れた商品を、フリマサイトで通常価格もしくは通常価格よりも少しお得な価格で転売することで収益化しているのです。
フリマサイトで誰もが気軽に商品を売買できる環境が確立されたことによって、近年の不正転売問題が引き起こされているとも言えるでしょう。
転売屋による購入を阻止するための5つの対策
転売屋による購入を阻止するためには、次の5つの対策が考えられます。
◆転売屋の購入を阻止するための5つの対策
対策① 転売屋と思われるユーザーを特定し以降の購入を拒否する
対策② 転売屋と思われるユーザーの流入率が高いWeb広告やアフィリエイトを特定して出稿を停止する
対策③ 初回購入特典で割引販売を行わない
対策④ 初回購入時に特別価格で提供する商品に通常商品を使用しない
対策⑤ 不正検知システムを導入する
対策①~⑤までをそれぞれ説明していきますが、いずれの対策も、メリットだけではなくデメリットもありますので、それらのデメリットを自社ではどこまで許容できるかを考えながら読み進めてみてください。
対策① 転売屋と思われるユーザーを特定し以降の購入を拒否する
購入履歴から転売屋と思われるユーザーを特定し、次回以降の購入をブロックする方法です。
この方法は、注文数が1日あたり10件程度の小規模なECサイトであれば担当者による目視と手作業でも対応できますが、規模の大きいECサイトでは、手作業で行うことは不可能なため、後述する対策⑤の不正検知システムなどを使った自動化による対応が必要になるでしょう。
またほとんどの転売屋は、複数アカウントを使って個人情報を偽っているケースが多いため、そうではないごく一部の転売屋に効果は限られます。
対策② 転売屋と思われるユーザーの流入率が高いWeb広告やアフィリエイトを特定して出稿を停止する
転売屋と思われるユーザーのECサイトへの流入経路を見ると、特定のWeb広告やアフィリエイトからの流入率が高い場合があります。その場合、それらの出稿を停止することも有効な方法です。
一方で、Web広告やアフィリエイトを止めることは、転売屋ではない普通のユーザーの流入も断つことになるため、慎重に見極めて判断する必要があります。
対策③ 初回購入特典で割引販売を行わない
初回購入特典で割引販売を行わなければ、転売屋は差額による収益を得ることができないため、転売目的での購入はなくなるでしょう。
しかし、単品通販の初回購入時の割引販売は、ブランドや商品の認知度を高めるために効果的な施策でもあるので、よほど人気のあるブランドでなければ手放すことは困難です。新規ユーザーに商品の魅力を知ってもらうために商品購入時のハードルを下げる手段として初回購入は割引価格としているので、これをなくしてしまうと、新規ユーザーは増えづらくなります。
対策④ 初回購入時に特別価格で提供する商品に通常商品を使用しない
初回購入特典として特別価格で提供する商品を、通常商品とは異なるサンプル品などに変えることで、転売しづらくすることができます。
そもそも不正転売は、まったく同じ商品の通常価格と割引価格との差額が大きいために生まれている行為なので、その差額を作らなければいいのです。
しかし、わずかな差額であっても不正転売を行う転売屋もいるでしょうし、初回購入特典としての「通常はもっと高い商品」という付加価値を失うことで、ユーザーを引きつける力が弱まり、新規ユーザーが増えなくなる可能性があります。
対策⑤ 不正検知システムを導入する
不正検知システムを導入すると、ECサイトの転売などの不正行為を監視・検出し、転売屋情報データベースを利用して転売屋と思われるユーザーの購入を自動でブロックすることができます。
転売屋情報データベースには日本中の転売屋情報が蓄積されているため、完全とは言えませんが転売屋の購入を自動で排除できるようになります。しかし、不正検知システムは高価なため大規模な単品通販事業者でなければ導入することが難しいでしょう。
どんな人/組織が不正転売をしているのか?
筆者がコンサルティングを行っている単品通販サイトで特定した転売屋は、以下のような人たちでした。
◆ある単品通販サイトで浮かび上がった転売屋の特徴
・外国人と思われる個人
・転売組織
特に、転売組織に狙われたら非常に厄介です。転売組織には全国各地に協力者がいるようで、ターゲットにされたと思われるECサイトでは特定のWebページのアクセス数が、突然一気に増えるということがあります。おそらく、全国にいる仲間たちにターゲットとするURLを教えて一斉にアクセスさせているのではないでしょうか。
転売組織は、全国で募った協力者に転売でもうけられる商品リストを配布しているのではないかと筆者は推測しています。
転売屋は名前や住所を次々と変えて初回購入特典を狙ってきます。ベテランのEC担当者の中には名前や住所を見て「このユーザーは転売屋かも…」と気付く方もいるかもしれませんが、推測だけでは購入を拒否できません。
不正転売を根絶するためには、商品やブランド力を伸ばすことが大切
結局のところ転売屋が商品を購入するのは「初回購入者だけが買えるお得な商品がある」という理由でしょう。
単品通販サイトが初回購入特典の施策を行っているのは、商品やブランドについてほとんど知らない新規ユーザーの関心を引き、実際に商品を試してもらいたいからです。もし、商品力とブランドの認知度を高めることができたら、初回購入特典の施策を行わなくても、別の方法で集客できるのではないでしょうか。
最善の方法を一概に言い切ることはできませんが、実際に成功を収めている事例もあります。『ひとりEC 個人でも売上を大きく伸ばせるネットショップ運営術』(インプレス、2022年)の著者である三浦卓也氏が運営しているECサイト「ミウラタクヤ商店」では、定期販売に向いた商品を取り扱っているにもかかわらず、定期販売を行っていません。
しかし、消費者からの問い合わせ対応などを通じてファンを生み出しており、定期販売という手法をとらなくても顧客の意思で繰り返し購入してくれるのだそうです。
参考:
・ミウラタクヤ商店
・インプレスブックス「ひとりEC 個人でも売上を大きく伸ばせるネットショップ運営術」
このように、真に良い商品・サービスを追求してファンを生み出すことで、初回購入特典が必要な定期購入に依存しないビジネスモデルを確立することができたら、転売屋が活動できる場所は自然となくなっていくでしょう。
まとめ
単品通販サイトにおける究極の転売屋対策は、初回購入特典の施策を行わないことですが、それで売上が下がってしまっては本末転倒です。
ECでも経営におけるバランス感覚は極めて重要で、不正転売への対策を打ちつつ、新規ユーザーとファンの両方を増やしながら、商品力とブランドの力を付けていくことが大切です。
転売屋対策には、不正検知システムの導入も効果的です。インターファクトリーのECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」でも、不正検知システムとの連携オプションを提供しています。
転売屋にお悩みの事業者の方は、転売対策の一つとして、充実したセキュリティ機能を持つ「ebisumart」へのECサイトの乗り換えなどもぜひご検討ください。