取引先から電話・FAXで注文を受けている事業者はまだまだ多いのではないでしょうか?
特にBtoB取引では、
「昔からの方法で慣れているから!」
「ECサイトを立ち上げるコストがないから変えられない!」
という声を聞きます。しかし、時代とともに環境は変化していくものです。コロナ禍以降、テレワークが推進されましたが、上司から発注用のFAX用紙に「ハンコ」を押してもらうことが必要な仕組みであれば、上司にハンコをもらうためだけに出社することになりかねません。
そうはいっても、手作業で処理しているFAX注文は、
「取引先ごとに販売単価が異なる」
「取引先ごとに決済方法を変えている」
など独特な商習慣が存在することが多いため、なかなかECサイト化するイメージが浮かばないかもしれません。ECサイト化を検討する上で、このような、取引先ごとで異なるFAX注文独特の商慣習をいかにECサイトに落とし込めるかが最大のポイントになります。
本日はインターファクトリーでWEBマーケティングを担当している筆者が、BtoBにおけるFAX注文をECサイト化するために必要な機能を詳しく解説いたします。
年々低下していくFAXの保有率!全世帯で31.3%(2021年)
総務省発表の統計によると、2021年のFAX保有率は31.3%にまで低下しており、FAXが一家に一台の時代は終わりました。さらに、保有されているFAXの多くは使われていないのではないかと思います。また、世代別で見ると20代で1.1%、30代で5.6%と、若い人だと極端に低い保有率であることが分かります。
◆FAXの保有状況(世帯主年齢階層別 / 2021年)
.png)
引用:「全国では31.3%、最多普及は山梨県の44.0%…FAXの世帯単位での普及状況(Yahoo!ニュース)」掲載データより筆者作成
このデータから、40代以上の世代にとってFAXはなじみがあると言えます。しかし、スマートフォン全盛のインターネット時代で、若い世代がこれからFAXを利用することは考えにくいです。
FAX注文を行っているのでしたら、早急にデジタル化していかないと、回線維持のコストがかかったり、システム連携が困難になったり、あるいは若い新人社員がFAXの利用に戸惑いを覚えたりするなど、デメリットが多くあります。そのため、FAX注文をECサイトに代替してデジタル化を進めていくべきでしょう。
FAX注文をECサイト化する5つのメリット
FAX注文をECサイト化することで、下記の5つのメリットを享受することができます。
メリット② 販売促進活動やマーケティングが可能
メリット③ 請求締め作業の効率化と決済方法の多様化
メリット④ 外出先やリモートワークでも対応可能
メリット⑤ セキュリティの向上
これらを、一つずつ解説してまいります。
メリット① 受発注のスピードアップ
FAX注文をECサイト化すると、受発注のスピードアップにつながります。
例えば、FAX注文の場合は在庫状況が分からないまま発注するため、受注側から確定連絡を受けない限り注文が確定しません。そして注文が入った場合は、在庫台帳から在庫を減らして、次の注文者に対して売り越しにならないようにするといった、在庫の調整・確認を行う必要があります。
こういった作業があることから、FAX注文での受発注は非常に時間がかかるのです。しかし、ECサイト化して在庫情報をECサイト側に管理させることで、発注側がECサイトから発注したタイミングで注文を確定することができ、受発注が大幅にスピードアップします。
また、中小企業は特に人手不足です。そのため少ない人数でも多くの取引に対応できる体制にしておかなくてはなりません。日本はこれからどんどん生産年齢人口が減っていきます。
ですから、少ない人数でも受発注を行える体制を構築する必要があるのです。
メリット② 販売促進活動やマーケティングが可能
FAX注文においては、販促活動や顧客ニーズ分析、マーケティングを行える範囲は限定的です。
FAX注文:「注文を受ける」→「商品を発送する」
しかしECサイトで注文を受けることができれば、過去の注文がデータとして蓄積できます。そのデータから取引先ごとの注文履歴を詳細に確認し分析することで、過去の履歴からECサイトのレコメンド機能を使ってオススメ商品をECサイト上で提案することができます。そうすることで、売上向上につなげることも可能です。
そして、取引先の全注文データを業種、規模、地域などに分けて、マーケティング分析を行うこともできます。例えば、以下のような分析ができます。
「ロイヤルカスタマーはどの取引先なのか?」
「その取引先に対して他と同じ対応で良いのか?」
ECサイトであれば、お客様をランク付けして対応を変えていくことができるのも大きなメリットです。また、商品を発注する側から見ても「履歴から注文をする」というECサイトならではの機能を活用して、カンタンなオペレーションで発注できます。
メリット③ 請求締め作業の効率化と決済方法の多様化
FAX注文では、代金の回収は請求書を別途送付し、銀行振込や口座振替で行うことがほとんどです。月末締めで月間の取引金額を合計し取引先ごとに請求書を作成・発送します。取引先やボリュームディスカウントなどによって販売単価が変わることが多いため、この集計作業における販売者の負担が大きいものです。
ECサイトなら、取引先ごとの注文を自動集計した請求書を出力する機能を使えば、こういった集計作業や請求書作成の手間から解放されます。
また、ECサイトであれば決済方法を増やすのもカンタンです。決済方法が銀行振込しかなかった事業者でも、クレジットカードなどのオンライン決済の導入が可能となります。
クレジットカード決済には決済手数料がかかりますが、入金スピードを早めてキャッシュフローを改善したり、売掛金を確実に回収できるメリットがあります。発注する側にも経理担当が振込作業をする手間がなくなるメリットがあるので、BtoBの取引でもクレジットカード決済を積極的に導入する事業者が増えております。
メリット④ 外出先やリモートワークでも対応可能
会社のFAXで受注する場合、当然ながら会社にいなければ注文の確認や受注処理ができません。例えば土日休業の企業であれば、金曜の業務終了後のFAX注文は翌週まで確認されることがありませんし、リモートワークにも対応は難しいでしょう。
ECサイト化すれば、受注処理をある程度自動化できますし、外出先やリモートワーク中でも対応が可能になります。
メリット⑤ セキュリティの向上
FAXは紙の管理になるため、機密性も低く紛失などセキュリティ上のリスクが大きいデメリットがあります。
これをECサイト化、つまり情報が電子化されることで、不特定多数の人間に内容を見られたり、情報を紛失するなどのリスクが大きく低減されます。
ただし、情報を電子化したとしても、紙媒体とはまた別のセキュリティリスクが発生しますので、別途対応は必要になります。
BtoBのFAX注文をECサイト化するために必要な5つの機能
それでは、FAX注文をECサイト化するために必要な機能を解説いたします。この代表的な5つの機能を事前に把握しておけば、ECサイトベンダーともスムーズに協議できるようになるはずです。
必要機能② 取引先ごとの決済方法の選択
必要機能③ カート一括投入機能
必要機能④ ボリュームディスカウント機能
必要機能⑤ 承認ワークフロー機能
必要機能① 取引先ごとの取引条件の設定
取引先によって販売する商品を変更したり、販売単価を変えることはBtoBではよくあることです。
FAX注文では、都度取引先の割引率などを管理マスタから手作業で調べる必要がありますが、ECサイトであれば取引先がログインを行うと、その会員IDによって表示される商品・単価を変える機能を実装することができます。
顧客にひも付いた商品登録や販売単価のデータをECサイトに持たせることが、BtoBのFAX注文をECサイト化する上で重要となります。
必要機能② 取引先ごとの決済方法の選択
BtoBでは取引先によって、決済方法が異なる場合があります。その場合、ECサイトの管理画面で、取引先ごとに決済方法を設定します。
例えば、信用がある取引先はECサイトで「掛け売り」ができるように機能を表示しますが、反対に新規取引先には、まだ取引実績がないのでECサイトの画面に「掛け売り」を表示させずに、入金を確認してから商品発送を行う「銀行振込決済」や「クレジットカード決済」だけを選択可能とするような決済方法の制御ができます。
取引先ごとに決済方法を選択できることで、請求の締め日が異なったり、掛け売りを認めたりと、柔軟な対応が可能となります。
必要機能③ カート一括投入機能
FAX注文で一括購入を行う際は、専用の注文用紙に数量のみ記入し発注するケースが多いです。これをECサイトに置き換えた場合に、一つの商品をカートに投入して数量を定め、また別の商品で同じ作業を繰り返すとなると、FAX注文よりも時間がかかってしまうことになります。
ECサイトで、一括購入を行う場合は、専門の注文用紙のように1画面に商品一覧ページを作成し、数量の入力だけで発注できるようにします。そしてECサイトでは数量を入れた後の確認ページで、FAX注文ではできなかった「それぞれの単価と数量をかけ合わせた合計金額を表示させること」が可能になり、計算の手間が省けます。
必要機能④ ボリュームディスカウント機能
大量購入時の割引設定です。ECサイトのカートに商品を投入して数量を指定し、一定数を超えた場合は割引が適用される機能です。FAX注文であれば、都度集計する必要がありましたが、それが不要になります。
必要機能⑤ 承認ワークフロー機能
通常のECサイトでは機能の実現が困難なケースもあります。それが発注側で「上司の印鑑」が必要なケースです。
FAX注文の場合であれば、FAX注文用紙に担当者印と上司の承認印を押印してから発注することができます。しかし、通常のECサイトの機能では、上司の承認を得るという業務ワークフローを行うことができません。
ですから、ECサイトでこの業務フローを実現する場合は、下記のような承認ワークフローの機能をECサイトに実装することでFAX注文と同じように上司の承認を得てから発注することが可能となります。
◆ECサイトにおける承認ワークフロー機能の例
① 担当者がカートに投入して発注
↓
② 担当者の上司のメールアドレス宛に承認依頼メールが自動送信
↓
③ 上司はメール内のURLにアクセスし、注文確認画面に遷移
↓
④ 注文内容を確認し承認ボタンを押下することで正式発注
このように担当者がECサイトで発注を行っただけでは正式発注とはさせず、上司に承認依頼メールが届き、リンクをクリックすると「承認ボタン」が現れる仕様にすることで、FAX注文と同じ承認ワークフローを成立させるような機能が必要となります。
BtoBのFAX注文をECサイトで実現するための4つのECシステム
次に、ECのシステムの選定方法を説明いたします。日本国内のECシステムはたくさんあり、その中から1つを選び出すのは難しいものです。
それぞれのECシステムにはメリットやデメリットがあり、費用もさまざまですが、大まかには以下の4種類のシステムがあります。
② パッケージ
③ クラウドEC
④ フルスクラッチ
フルスクラッチなどのような価格が高いシステムは、カスタマイズやシステム連携が可能となるため、自社に合わせたECシステムを作ることができますが、BtoBの場合、年商が数百億円規模の大手でも、ASPという比較的安価なECシステムで事足りる場合もあります。反対に、年商が1億円程度の企業でもフルスクラッチでなければ対応できないケースもあります。
なぜならば、BtoBはBtoCと違い、個社ごとに業務フローがさまざまで、企業の売上規模ではなく、業務フローによって、選ぶべきシステムが変わってくるからです。
システム①「ASP」
ブラウザーの管理画面で、ECサイトを運営できるシステムでASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)と呼ばれるECシステムです。略してエーエスピーと発音します(ASPはECシステムに限らず、経理・会計ソフトなど様々なシステムで使われる総称です)。
個社ごとのカスタマイズが難しいために、決まった機能の中でECサイトを運用します。事業者ごとの要望を聞いて開発するものではなく「出来上がっているECサイト」を利用するため、やりたいことが制限される可能性があります。
ASPはカスタマイズやシステム連携が難しいため、BtoC業界では大企業向けのECシステムというより、主に小中規模の事業者が利用するECシステムです。
BtoB取引は、取引先ごとに商流が異なるなど複雑なため、決まった機能しかないASPはBtoBには不向きなケースが多い印象でした。しかし、最近では「Bカート」と呼ばれるBtoBに特化したASPもあります。もし、自社の業務フローをASPに合わせることができれば、費用対効果の高いECサイト運営を行うことができます。
BtoBのFAX注文を実現するための機能もあるので、事前に下記のホームページでご確認ください。
また、ASPをECシステムとして採用することを考えている事業者様は、下記のASPについてまとめた記事もあわせて読むことで、理解を深めることができます。
自社の業務フローをASPに合わせることができるのであれば、最も安価にECシステムを構築することができます。
システム②「パッケージ」
ASPと同様にECシステムに必要な機能を最初から備えているパッケージのソフトウェアのことです。最大の特徴は足りない機能があれば、パッケージをカスタマイズして事業者のニーズに合わせた機能を開発することが可能であり、FAX注文をECサイト化するにあたって、自社の業務フローに合うカスタマイズを行うことができます。
しかし、パッケージの弱点は、新しい機能を追加するたびに、追加開発が必要となり、追加カスタマイズ費用や保守費用が高くなることと、システムが古くなり、3~5年でシステムリニューアルが発生することです。
以前であれば、BtoBのシステムの陳腐化はあまり問題ではありませんでした。しかし、昨今では機能だけでなくセキュリティの問題についても機能刷新を求められる頻度が上がっているため、今後10年を考えた場合には相当な負担になっていることが予想されます。
この点、ASPやクラウドECでは、システムが自動更新されるためにシステムが陳腐化することがありません。パッケージに関しては、過去の記事でまとめたので、理解をより深めたい方は下記の記事もあわせてご覧ください。
システム③「クラウドEC」
クラウドECは実現できること、価格がパッケージとほぼ同じなために比較されることが多いECシステムの形態です。ECシステムに必要な機能が最初から実装されており、さらにカスタマイズで要望に応えることができるのはパッケージと同じです。違いは、カスタマイズが可能でありながらシステムも自動で更新されるために、システムが古くならない点です。
「欲しかった機能が、いつのまにか増えている!」
「セキュリティが年々強化されていて安心!」
といったメリットを事業者は受けることができます。そのため初期費用においてはパッケージと変わりはありませんが、中長期的には保守費用がパッケージよりも安価になりますので、パッケージと比較されることが多いECシステムなのです。クラウドECの仕組みをより深く理解したい方は、下記の記事をご覧ください。
システム④「フルスクラッチ」
ゼロから要望通りのシステムを開発する手法で、事業者のオリジナルなシステムを構築できるため、どんな要望も実現することができますが、コストと開発期間が最もかかる手法です。
また昨今、パッケージやクラウドECが、機能拡張したことで、フルスクラッチと同様のことを実現できるケースが増えたために、フルスクラッチのメリットが薄れてきております。
一方、ユニクロやモノタロウのような大規模ECサイトになると、独自の機能や、複雑なシステム連携があるために、フルスクラッチが採用されることが多くなります。フルスクラッチについては下記の記事をご覧ください。
BtoBのFAX注文まとめ
FAX注文は取引先の利便性・満足度・自社の販売戦略を考えるならば、早めにECサイト化を進めるべきです。
「慣れているから!FAX注文のままで良い!」
とそのままにしておくと、次第に競争力を失うことになりかねません。もし、FAX注文をECサイト化したいというご要望があれば、いろいろなECシステムと比較検討の上、弊社のEBISUMARTをご検討ください。BtoBのECサイト構築においても多数の実績がございます。