近年、ふるさと納税の申し込みは急増しています。その多くがネットのショッピングモール(ふるさとチョイス、さとふる、ふるなび等)からの申し込みとなっています。
ショッピングモールでは多くの自治体を誘致し、納税者に対して多くの返礼品の選択肢を与えることで、魅力あふれるリッチなサイトにしており、各ショッピングモールとも納税者の集客に力を入れております。
しかし、ショッピングモールに掲載している自治体の中には、
「思ったより寄付金を集められていない」
「他の自治体に比べて返礼品に優位性がない」
「寄付が集まっている自治体と何が違うのか?よく分からない」
といった悩みを抱えている担当者もいるのではないでしょうか。ショッピングモールに商品を掲載すれば、中間マージンをショッピングモールに支払うことですぐに掲載できるメリットもある一方で、自治体の認知度や返礼品の魅力だけの勝負になってしまいがちです。
ショッピングモールでは、集客方法や返礼品の見せ方にショッピングモールの縛りを受けてしまうため、独自で施策を実施するのが難しい面があります。ですから他の自治体に負けずに、独自の施策や魅力を伝えることで集客するには自治体独自のドメインでのサイト運営が必要となります。
なぜならば、自治体の魅力をしっかりアピールし、一度利用してくれたユーザーに次の年も寄付してもらうには、独自の施策が可能な独自ドメインサイトの方が向いているからです。
本日は、ebisumart(インターファクトリー)でマーケティングを担当している筆者が「ふるさと納税」でのECサイト構築について詳しく解説いたします。
ふるさと納税で有名な5つのショッピングモール
多くの自治体が出店している代表的なショッピングモールを紹介します。
ショッピングモール① ふるさとチョイス
画像引用元:ふるさとチョイス
全国1,788(2023年2月時点)の自治体が参加。返礼品も50万アイテム以上から選択可能な国内最大ふるさと納税モールです。
ふるさとチョイスを利用して自治体に寄付をすることで、寄付額に応じたマイルが貯まり、貯まったマイルはAmazonギフトカードや各種電子マネーやポイントと交換することができます。また、新たな寄付の際に1マイル=1円として使用することも可能です。
ショッピングモール② さとふる
画像引用元:さとふる
さとふるも、参加自治体数が1,200以上(2023年5月時点)の大型モールです。ソフトバンクグループの資本が入っており、コンセプトは利用者ファーストです。サイトは分かりやすく返礼品のお届けも同社など運用面からサポートしていることが他社との差別化ポイントです。
また、さとふるで開催されるキャンペーンに参加して指定のアクションを行うと、「さとふるマイポイント」が付与され、たまったポイントはPayPayポイントに交換することができます。利用者の多いPayPayとの連動キャンペーンが度々開催されることは、大きな魅力のひとつでしょう。
ショッピングモール③ ふるなび
画像引用元:ふるなび
参加自治体数は1,000超、返礼品は35万アイテム以上(2022年10月時点)と大型モールになります。他との差別化は「グルメポイント」です。寄付金額に応じたグルメポイントを得られ、そのポイントで高級レストランなどで食事ができるものです。ただし利用できる店舗は首都圏がほとんどで、店舗数も200店弱と限定されています。
その他にも、寄付金額が50万以上のユーザー限定で、一人ひとりに合わせた最適な寄附プランの提案から寄附の完了まで、無料で一括代行してくれる「ふるなびプレミアム」サービスや、先に寄付だけして、あとから返礼品を選べる「ふるなびカタログ」など、独自サービスが充実しております。
ショッピングモール④ 楽天ふるさと納税
画像引用元:楽天ふるさと納税
楽天ふるさと納税は、自治体数1,569(2023年5月時点)と、ふるさとチョイスに次いで多くの自治体が参加するモールです。大きな特長は楽天グループでもあることから、寄付に対し楽天スーパーポイントが使える点です。楽天市場でのネットショッピング感覚で寄付ができる点も多くの人にはなじみやすいサイトと言えます。
また国内1億以上の楽天会員数が見込み客となるため、その圧倒的な集客力は参加自治体にとって大きなメリットのひとつです。
ショッピングモール⑤ 三越伊勢丹ふるさと納税
画像引用元:三越伊勢丹ふるさと納税
大手百貨店の三越伊勢丹HDが運営する三越伊勢丹ふるさと納税は、参加自治体数こそ約250(2022年10月時点)と少ないのですが、大手百貨店ならではの、バイヤーが厳選した高品質な品揃えが特徴です。
また、サイトだけの展開に留まらず、店舗において物産展などの催事に合わせた特産品(返礼品)の紹介など、店頭での案内も行っており、ECサイトの利用が不安という人も安心してふるさと納税を行うことができます。
これら著名なショッピングモールにふるさと納税品を出品している自治体がほとんどですが、露出や見せ方は多くの自治体との比較になってしまうため、自分の自治体だけを目立たせるのはショッピングモールでは難しいことです。
ふるさと納税の歴史と本来あるべき姿とは?
ふるさと納税は、2008年に制度が設けられました。背景としては、自治体間で税収格差が生じており、これを是正するために「ふるさと納税」の制度ができました。しかし、ふるさと納税を開始したものの、当初は思うように利用が進まず低迷が続いておりました。
なぜなら手間のかかる確定申告が必要だったからです。一般的なサラリーマンは、勤務先を通じて年末調整を行っています。しかしふるさと納税による住民税の控除手続きでは、自身で確定申告を行う必要があるため、手間がかかり利用を敬遠される要因になっていました。
この問題に対し、2015年(平成27年)「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設されました。これにより納税者が確定申告しなくても、住民税の控除手続きが可能になりました。この制度により、ふるさと納税は飛躍的に利用者を増やすことができたのです。
◆ふるさと納税制度開始からの納税実績
しかし、自治体による行き過ぎた返礼品競争により、地域の特産品とは無関係の「換金性の高いプリペイドカード」や「高額返礼品」を返礼品とし寄付を集めるようになりました。これに対し総務省は以前から地域特産品に変えるように指導をしていましたが、改善することはなく継続し続けた自治体があり問題になりました。
2019年6月以降の新たな「ふるさと納税」の制度
そのため、総務省は2019年6月1日より制度改定を行いました。加えて改善のなかった4自治体については寄付を集うことはできても、税金の控除の対象から外されてしまいました。つまり納税者の恩恵がなくなることから、寄付は敬遠されること必至で極めて厳しい状況に追い込まれました。
◆ふるさと納税の新たな制度
① 返礼品は地場産品とする(地場産品が乏しい場合は、近隣の自治体の特産品も一部容認)
② 返礼品の返礼割合は3割以下とする
これにより応援したい自治体へ寄付する、という現在の形のふるさと納税になりました。
ショッピングモールでの限界
先に挙げたふるさと納税のショッピングモールでは、テレビCMの露出度が高く、多くの自治体が参加していることから、サイトへの訪問者は非常に多いので、自治体への寄付は集まると思われますが、それだけでうまくいくものでもありません。
ユーザーはショッピングモールにある返礼品を比較して、寄付をする自治体を選びます。競争が激しいショッピングモールの中で、どうやってユーザーに注目してもらうかが非常に重要なのです。
例えば、ショッピングモールの「おすすめランキング」にどうやって自治体の商品を取り上げてもらうのかといった、ショッピングモール内で露出を高める施策が寄付に結び付くのです。こういったランキングでは、人気返礼品のブランド牛や海産物を扱っている有名自治体が有利になりがちです。
そのためショッピングモールの運営の中では「ユーザーの目に留まる差別化できる返礼品」がなければ多くの寄付を集めることはなかなか難しいことなのです。
下記は、ふるさと納税比較サイト「ふるさと納税ガイド」の集計による、人気の返礼品ランキングです。
◆人気返礼品カテゴリランキング
返礼品目的以外のユーザーの取り込み
2019年6月で制度が変わり、ユーザーは「自分だけ節税できれば良い」から「この自治体を応援したい」へと本来あるべき姿に変わっていきます。下記の記事をご覧ください。
「弊社では、高額所得者で『ふるさとチョイス』を数多くご利用いただいている方を集めてファンミーティングを開催しています。そこでお話を聞くと、『当初はお礼の品をもらえることや、税金の控除を受けられることがきっかけでふるさと納税をスタートしたけど、最近は寄付金の使い道をきちんとフィードバックしてくれる自治体を選んでいる』といった声が多くなってきました。」(川村氏)
この記事から寄付金の使い道に関心のあるユーザーが増えてきていることが分かります。特に地場で有名国産ブランドの返礼品がない自治体では「応援したくなる自治体」あるいは「寄付をしたくなる自治体」をいかにアピールできるかが重要になってきます。例えば、
自治体「環境、教育に対し、○○のような施策を考えています」
このようなアピールを行うには、他の自治体も共に出品しているショッピングモールよりも、サイト内を自由にデザインできる独自ドメインのふるさと納税サイトが向いているのです。
独自ドメインでふるさと納税サイトを構築する3つのメリット
ショッピングモールではできない独自ドメインサイトだからこそできることがあります。タイトルで挙げた独自ドメインサイトを立ち上げる3つのメリットをまとめました。
◆独自ドメインの3つのメリット
メリット① 返礼品以外の自治体としてのアピール訴求
メリット② 検索されやすい
メリット③ 会員化
メリット① 返礼品以外の自治体としてのアピール訴求
ショッピングモールではできなかった返礼品以外のアピールができることです。
返礼品を並べて表示するものではなく、ユーザーに理解してもらうために自治体としての取り組みやこれから予定している自治体の取り組みを紹介するページを作る必要があります。独自ドメインサイトであれば、返礼品以外のページもサイトに自由に制作することができます。
自治体の取り組みに納得した上で、ふるさと納税の申し込みにつなげる仕組みはショッピングモールよりも独自ドメインの方が向いているのです。
◆ショッピングモールの考え方
①返礼品を選択 → ②自治体を知る → ③使い道を知る
◆今後の自社ドメインでの考え方
①自治体の取り組みを知る → ②寄付の使い道を知る → ③返礼品を選択
自治体の取り組みは様々です。自治体の想いや考え方をユーザーに伝えるためにサイトのデザイン自由度は高くないといけません。
メリット② 検索されやすい
故郷に対し貢献したい(納税で恩返ししたい)地元の出身者は多いものです。私自身もその一人で、納税するなら親や親戚がいる故郷に貢献したいと思い、ふるさと納税を利用しています。
生まれ故郷に貢献したい、と考える出身者に対し寄付をお願いするのであれば「多くの自治体が参加するショッピングモール」よりも、自治体独自のサイトの方がはるかに検索しやすいメリットがあります。
なぜなら、ショッピングモールの場合は、最初にそのショッピングモールにアクセスした上で、検索する必要がありますが、自治体のサイトであれば、「地域名」や「商品名」でダイレクトにGoogleやYahooの検索で表示されやすいからです。
また、Googleの検索エンジンの上位表示するためのアルゴリズムは年々国や自治体などの公的機関が運営するドメイン(URL)を優遇するようになっており、基本的なSEO施策が行われていれば、上位表示しやすいメリットがあります。
そのため、自社ドメインでECサイトを構築すれば、自治体であればSEOに非常に有利な状況を作れるのです。
メリット③ 会員化
ふるさと納税においても、一度の寄付に終わらず、毎年自分の自治体へ寄付してもらえることが理想です。
一度利用したことのある寄付者には翌年のふるさと納税の案内やDMを送ることができます。もちろんショッピングモールでも同様のことは可能ですが、メールの案内が「自治体名」でなく「ショッピングモール名」になってしまうことがあるため、翌年は他の自治体で寄付する可能性があります。
独自ドメインサイトであれば、自治体の「会員」ということになります。翌年もその先もずっと自治体の会員のため、直接、好きなタイミングで案内やDMを送ることができます。
独自ドメインサイトを構築する上で必要な「5つの機能」を事前に知っておく
ショッピングモールでは、決まったテンプレートに写真や文言を登録するだけで比較的カンタンに準備ができますが、返礼品以外で自治体のアピールをするなどの自由度があまりありません。独自ドメインサイトであれば、自由度が高く自治体の「想い」を表現したサイトを構築することができます。
独自ドメインサイトを構築する上で必要最低限の機能を紹介しますので、自治体担当者はこれらの基本機能を押さえておきましょう。
独自サイトに必要な5つの機能
機能① 顧客管理機能
機能② デザイン
機能③ 決済手段
機能④ 販促機能(メルマガ、ステップメール)
機能⑤ 受注管理のカスタマイズ性
機能① 顧客管理機能
顧客管理機能は、一度だけの寄付ではなく、翌年もまたふるさと納税をする自治体として指名をしてもらえるようにマーケティングに必要な機能となります。今後のマーケティング要素に必要な項目を取得しておけば、属性別にメールを出すなど独自の施策も可能になりますし、地元の出身者なのか他地域の方なのか?年齢層は?男女比は?など分析ができるようになります。
機能② デザイン
デザインの観点は大きく2つあります。
◆自由度の高さ
ユーザーに訴求するため、アピールするページをいくつも制作する必要があります。例えば
「集めた寄付金の使い道」
「返礼品生産者の情報」
などが該当します。
また、初めてのユーザーもいることからふるさと納税についての説明ページも用意する必要があります。今まではショッピングモールが用意していた、ユーザー向けの案内も自治体サイトで行う必要があります。そのため、独自ドメインサイトのデザインは決まったことしかできないものではなく、自由度が高い必要性があります。
◆使いやすさ
デザイナー自身がコーディングでき、なおかつ使いやすいシステムが良いでしょう。独自のノウハウがないとサイトを編集できないシステムではメンテナンス費用が高くなります。自治体の中でデザイナーがいなくても、地元のWEBデザイン会社に委託することを想定し誰でもそのシステムでデザイン制作ができるものであることが望ましいです。
機能③ 決済手段
ショッピングモールのように、数多くの決済手段をそろえておくに越したことはありませんが、まずは
「コンビニ決済」
が最低限必要となります。「後払い」など、他の決済手段を後からでもサイトに追加できるのかどうかは導入前に確認しておく必要があります。
機能④ 販促機能(メルマガ、ステップメール)
会員登録者に対し、翌年のふるさと納税の案内ができるのも独自ドメインの強みとなります。ユーザーが登録したメールに案内を行うだけでなく、一人一人に合わせたストーリーに沿って自動でメールを送信するステップメールも非常に効果的です。
受付期間終了間際の年末に駆け込みでの申し込みが増えるため、そういったユーザー心理に合わせて年末にステップメールを送ると、より高い効果が得られると予想できます。
機能⑤ 受注管理のカスタマイズ性
申込を受け付けた後、返礼品を届けるための商品を出荷する事業者やその倉庫に対して出荷指示を出すために、受注情報を渡します。受注データのレイアウトはシステムにより様々ですが、事業者や倉庫が受け取りやすいデータに加工する必要があります。
ふるさと納税のまとめ
ふるさと納税は、今後法令の変更やふるさと納税の普及により
「返礼品だけで自治体を選ぶのではなく、応援したい自治体の返礼品を選ぶ」
という寄付者が増えてくるはずです。
そのために、ふるさと納税サイトは、自治体とユーザーがしっかりと向き合うための場である必要があります。そのためにもショッピングモールよりも、独自ドメインでのふるさと納税サイトの構築は不可欠ではないでしょうか。
もし、独自ドメインのふるさと納税サイトの構築であれば、ふるさと納税サイトの構築実績もあるebisumartをご検討ください。
ふるさと納税サイト構築:ebisumart(エビスマート)