BtoB向けECサイトは、企業間取引の受発注業務をオンライン化するシステムです。
導入が進む一方で、取引先ごとに異なる複雑な価格体系をどう再現するべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、既存の商慣習をオンラインへ移行するための前提知識とBtoB向けECの個別価格設定について、5つのパターンや実現方法を交えて解説します。
目次
① BtoB向けECの個別価格設定5つのパターン
② 個別価格設定のよくある4つの失敗と確認ポイント
③ 構築手法別に見る個別価格設定への対応力
④ 個別価格設定を前提としたマスタ整備の進め方
BtoB向けECの個別価格設定5つのパターン
企業間取引では、相手との関係値や取引規模によって価格が変動するのが当たり前です。システム上でこの商慣習をどう再現するかが、導入の最初の壁になります。
現場でよく使われる5つの価格設定パターンを表にまとめました。
◆BtoB向けECの個別価格設定5つのパターン
| 価格パターン | よくあるケース | ECに必要な機能 | 運用の難易度 |
|---|---|---|---|
| ①得意先別・グループ別の掛率設定 | 取引規模や販売チャネルで卸価格を分けている(一次卸・二次卸・直販店など) | ・得意先グループの階層管理 ・グループ単位の掛率一括設定 |
低〜中: グループ設計を決めれば運用は軽い |
| ②会員ID別の個別単価(契約単価) | 主要取引先とだけ個別に契約単価を締結している | ・取引先ID単位の商品別単価登録 ・CSV一括更新 |
中〜高: 対象商品と取引先の件数に比例して増える |
| ③数量・ロット別のボリュームディスカウント | ケース単位・一定数量以上で単価が下がる | ・数量帯別の価格テーブル ・最低ロット・最低注文金額の設定 |
中: 価格帯の刻み方を事前に統一する必要あり |
| ④期間限定の特価・キャンペーン価格 | 決算期の拡売、季節商品の在庫処分 | ・適用期間つき価格設定 ・通常価格との優先順位判定 |
中: 既存の掛率・契約単価との競合ルールが必須 |
| ⑤顧客別の商品出し分け | 特約店限定商品、未取扱商品を見せたくない | ・取引先別の商品表示/非表示制御 ・専用カタログ |
中〜高: 商品マスタ側の属性整備がセットで必要 |
それでは、1つずつ詳しく見ていきましょう。
① 得意先別・グループ別の掛率設定
取引で最も基本となるのが、基準の定価に対して一定の割合を掛けて卸値を決める方法です。すべての取引先に同じ価格を提示するのではなく、取引実績や発注量に応じて「Aランクは70%」「Bランクは80%」といったルールを定めます。手作業で見積書を作っていた頃の計算から解放されるため、まずはここから取り掛かるのがスムーズです。
運用時は、取引先を1つずつ設定するより、いくつかのグループに分けて掛率を割り当てるのが一般的です。グループで管理すれば、新しい取引先が増えたときも既存の枠組みに当てはめるだけで済みます。ここで全体の基準を整えておくと、例外的な価格設定が必要になった際にも、日々の手間を大幅に減らせるはずです。
② 会員ID別の個別単価(契約単価)
一律の掛率だけでは対応しきれない大口顧客の特別条件などを反映するのが、会員ID別の個別単価です。特定の顧客アカウントと特定の商品を直接ひも付け、独自の契約価格を固定で設定します。
この設定には、長年の取引関係や個別交渉の歴史が色濃く表れます。顧客がECサイトへログインすれば、常に合意済みの専用単価が表示されます。営業担当者が過去の履歴を探して都度見積もりを出す工数を削減できます。
とはいえ、過去の例外的な価格をすべて登録しようとすると、データが膨れ上がって維持できなくなりかねません。まずは取引規模の大きい重要顧客の単価から優先して移行していくのが、無理なく運用に乗せるための基準となります。
③ 数量・ロットに応じたボリュームディスカウント
まとめ買いに対して単価を下げるボリュームディスカウントも、よく使われるパターンです。客単価を引き上げるための定番の手法ですが、手動での計算は担当者の負担になりやすい部分でもあります。
ECシステムを導入すれば、「10個以上で5%引き」「50個以上で10%引き」といった段階的な割引を自動化できます。これによって、営業担当者が数量の条件を見て都度見積もりを出す手間を大きく省けます。
ただし、他の割引ルールとの兼ね合いには気を配る必要があります。たとえば、得意先別の掛率とボリュームディスカウントの両方の条件を満たしたとき、どちらの価格を優先するのかという問題です。システム構築へ進む前に、社内の適用ルールを一度整理しておくのが確実な進め方です。
④ 期間限定の特価・キャンペーン価格
期末の決算セールや新製品のリリース時など、あらかじめ決めた期間だけ適用される価格設定です。従来のエクセルや電話での受注では、担当者が開始日と終了日を常に気にかけて、手動で価格を切り替える必要がありました。
ECシステム上で期間と価格をセットで指定できれば、休日の深夜0時といったタイミングでも自動で切り替えが完結します。ここは人の手で管理すると、価格の戻し忘れによる利益の圧迫など、思わぬミスが起きやすい部分です。
導入の際に見落とせないのが、基本の掛率や得意先ごとの個別単価と、この「特価」の設定期間が重なった場合の動きです。システム側でどちらの価格を優先して表示させるか、あらかじめルールを決めておく必要があります。
⑤ 顧客別の商品出し分け(特約店限定商品・非表示制御)
オンライン化すれば、価格だけでなく、見せる商品そのものを分けることも可能です。特定の特約店にだけ限定商品を案内したい場合や、取引契約のない商品を非表示にしたい場合など、相手に応じた出し分け機能が役立ちます。
ログインした会員のIDにひも付けて、特定の商品カテゴリを出現させたり、検索結果から除外したりする制御が一般的です。見せたくない相手に情報が漏れる心配がなくなれば、オンライン上での販促も思い切り展開できるはずです。
また、Webカタログとして一般公開しつつ、価格や一部商品だけを会員限定にする運用も選べます。営業担当者が個別に行っていたカタログの配布や案内作業がシステム上で完結するため、手間を大きく省けます。
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個別価格設定のよくある4つの失敗と確認ポイント
価格設定のパターンが見えてきたら、次はシステムへ組み込む際に生じやすいトラブルを確認します。
ここを見落とすと、運用開始後に現場の混乱を招く原因になります。事前に押さえておきたい4つのポイントを見ていきます。
① 掛率と特価が競合したとき、どちらが優先されるか
価格設定で盲点になりやすいのが、複数の価格条件が重なったときの処理です。ここを曖昧にしたままシステムを構築すると、想定外の安値で受注して慌てる事態につながります。
たとえば「A社は常に定価の7掛け」という基本ルールがある一方で、「今月は一律で定価の8掛けキャンペーン」を実施したとします。このとき、A社の画面にはどちらを表示するべきでしょうか。「常に最安値を適用する」「キャンペーン特価を絶対優先する」など、企業によって正解は異なります。
ECシステムにより、標準で優先順位を選べるものもあれば、独自のロジックを組むカスタマイズが必要なものもあります。まずは現行の業務でどちらを適用しているか、社内の暗黙のルールを明文化しておきましょう。
② 取引先の階層構造(本社一括契約と店舗別特価)に対応できるか
掛率と特価の競合をクリアした次に直面しやすいのが、法人ならではの「階層構造」をシステムでどう再現するかという課題です。
例えば、本社とは「全商品20%オフ」で一括契約しつつ、特定店舗には「この商品だけはさらに特価で卸す」といったケースです。ここを後回しにすると、結局担当者が手作業で金額を調整することになり、後で手間が増えやすい部分です。
システムによっては「本社・支店・部署」といった親子の階層関係を持てないものがあります。その場合、店舗ごとのIDを独立させて別々に価格設定する運用になり、本社側での購入履歴の合算や一括請求の手間が生じます。まずは現状の取引先にこうした親子関係の契約が何社あるか、洗い出しておくのが確実です。
③ 価格改定を自社担当者だけで完結できるか
原材料費の高騰や為替の変動を受けて、単価を見直す場面が定期的に訪れます。ここで見落とされがちなのが、システム上で金額を変更する際の手間と費用です。
特定の構築手法を選んだ場合、価格の計算式を変えるたびにシステム会社へ改修依頼が必要になるケースがあります。依頼から反映まで数週間待たされるうえに、その都度追加費用が発生するのでは、機動的な対応ができません。
日々の業務をスムーズに回すには、社内の担当者だけで更新作業を完結できる機能が求められます。CSVファイルを使った一括アップロードができるか、変更日時の予約設定に対応しているかなど、実際の操作手順を導入前にデモ画面で確認しておくのが1つの判断基準です。
④ 営業の「例外対応」を吸収できるか(都度見積・承認フロー)
システム化を進めるうえで意外と見落とされがちなのが、営業現場で行われている例外的な価格対応です。日々の商談では、特定案件に向けた大幅な値引きなど、基本ルールから外れるケースが少なからず発生します。
この例外対応をEC上でどう吸収するかが、実運用の大きな焦点となります。具体的には、ECサイト上で都度見積を発行し、そのまま社内の上長承認フローへ回せる機能が備わっているかを確認することが必要です。
ただし、すべての特例をシステムに組み込もうとすると、構築費用が膨らむ要因になります。まずは定型的な見積もり作成と承認をECへ移行し、複雑な調整は引き続き営業担当者が行うといった線引きをしておくと安心です。
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構築手法別に見る個別価格設定への対応力
自社の価格ルールをシステムにどう落とし込むかは、ECサイトの構築手法によって大きく変わります。
ここを見誤ると、後から自社の業務をシステムに合わせる苦労を強いられます。各手法の違いを見ていきます。
ASP/SaaS型:低コストだが価格ロジックの自由度に制約
クラウド上で提供されるシステムを月額で利用する方式で、初期費用を抑えて短期間で導入できるのが最大の魅力です。予算に余裕がない段階でも、すぐに形にできるのは心強いポイントと言えます。
ただし、あらかじめ用意された標準機能の枠内で運用する必要があり、独自の複雑な価格ロジックを組み込むことはできない場合が多いでしょう。特例の単価設定や階層が入り組んだ割引など、例外的な取引が多いと運用で行き詰まる原因になります。まずは自社の価格ルールが標準仕様に無理なく収まるか、事前にすり合わせる作業から入ります。
クラウドEC:標準機能+カスタマイズで独自の価格体系に対応
ASP型の手軽さとパッケージ型の柔軟性を併せ持つのが、クラウドECと呼ばれる構築手法です。常に最新のシステムを利用しつつ、自社専用の作り込みができます。
自社の価格ルールが複雑だと、大掛かりな開発を検討しがちですが、費用が膨らみやすいのが難点です。そこでクラウドECを選べば、独自の価格算出や複雑な基幹連携だけを局所的にカスタマイズして補えます。
初期費用は300万円程度からかかりますが、長期的なシステムの陳腐化を防げます。まずは自社の特殊な価格要件を洗い出し、標準機能でどこまで対応できるかベンダーとすり合わせておきます。
パッケージ/フルスクラッチ:柔軟だがコストと保守負担が大きい
複雑な取引条件をそのままシステム化したい場合、パッケージソフトのカスタマイズやフルスクラッチ(ゼロからの開発)が候補に挙がります。「今の複雑な価格決定ルールを一切変えずにオンライン化したい」という場合は、この手法を選ぶことになるでしょう。
一方で、要件定義から開発完了まで半年以上かかることも多く、初期費用も数千万円規模にのぼるのが一般的です。さらに、サーバの管理や定期的なセキュリティ保守を自社で担う手間も発生します。まずは自社の独自ルールが、本当に多額のコストをかけてまで維持すべきものか、一度天秤にかけてみてください。
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個別価格設定を前提としたマスタ整備の進め方
システムが決まっても、価格の土台となるデータが整っていなければ正しい金額は表示されません。
ここは後回しにすると修正の手間が増えやすい部分です。スムーズに運用へ乗せるための手順を4段階で確認します。
ステップ① 現行の価格決定ルールを棚卸しする
システム設定へ移る前に、まずは足元の実態を整理します。BtoBの価格決定は「基本の掛率」「商品別の契約単価」「数量に応じた割引」など複数の条件が絡み合っています。そのため、現在「どの取引先に・どの商品を・いくらで卸しているか」の全パターンを一覧として洗い出します。
担当者の頭の中や個別のエクセルにしかない特別な値引きルールは、ここできっちり表に出しておく必要があります。この作業を省略すると、システム導入後も「この取引先だけは担当者に聞かないと価格が分からない」という属人化が残り、手作業との二重運用を抱えかねません。
完璧を目指して立ち止まる必要はありません。まずはルールの明確な取引先や定番商品から順に書き出していきましょう。
ステップ② 例外を「ルール化できるもの/個別対応するもの」に分類
現行ルールの棚卸しが終わったら、次はイレギュラーな価格設定の仕分けに進みます。ここを曖昧にすると、EC移行後もオフラインでの価格調整が残り、導入の手間だけが増えてしまいます。
作業としては、洗い出した例外を「ルール化できるもの」と「個別対応するもの」の2つに分けます。たとえば、特定グループへの大口割引や期間限定の特価は、条件さえ整理すればシステムへ登録可能です。
一方で、営業担当の裁量による都度の値引きなどは、無理に自動化せずECのデジタル見積機能を使うか、従来通りに残す判断が求められます。まずはすべてをシステムで完結させようとせず、できる範囲から切り分けていきます。
ステップ③ 商品マスタ・取引先マスタの粒度をそろえる
個別価格を正しく機能させるには、基礎となるマスタデータの単位を整える作業が求められます。この整理を後回しにしてシステム構築を進めると、データ移行の段階で不整合が起き、プロジェクトが停滞する原因になります。
商品マスタは、1つの取引単位に対して1つの識別コードを割り当てるのが基本です。社内で使っている品番だけでなく、取引先が発注時に使う旧称や略称も検索用にひも付けておきます。
また取引先マスタについても、本社一括請求か支社ごとの個別請求かによって必要なデータ構造が変わります。あらかじめ実際の商流に合わせて、どこまで細分化するかを社内で決めておきましょう。
ステップ④ パイロット取引先で検証してから全社展開
新しい価格ルールやECシステムがいきなり完璧に機能することはまずありません。ここで焦って全取引先へ一斉導入すると、想定外の例外処理が多発し、営業現場が混乱する事態を招きます。
まずは取引頻度が高く、関係性の良好な10〜20社程度をパイロット(試験運用)先として選び、2〜4週間ほど実際の取引を回してみます。この期間に、個別価格の反映手順やシステム上の承認フローに無理がないかを確認し、改善要望を洗い出します。
現場の感触を確かめながら運用マニュアルを微修正していくことで、全社展開で生じるシステム障害やクレームを未然に防げます。いきなり100点を目指さず、確実な移行手順を固める期間として割り切ります。
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まとめ
BtoB向けECにおける個別価格設定は、単なるシステム導入ではなく、これまでの商習慣をデジタルに置き換える一大プロジェクトです。掛率や期間限定特価といった複数の価格パターンを整理し、自社の要件に合った構築手法を選ぶことが、スムーズな運用につながります。
とはいえ、いきなりシステム選びから動くと、後から想定外の例外処理が見つかって計画が行き詰まる原因になります。社内に点在している価格決定ルールをすべて棚卸しし、システム化できるものと人の手で個別対応するものに仕分ける作業が欠かせません。
機能の制約と現場の要望をすり合わせながら進めることで、現実的で納得感のある着地点が見えてきます。まずはパイロット取引先を数社選び、現行ルールの洗い出しから着手してみてください。
インターファクトリーが提供するクラウド型のECプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」は、個別価格設定、承認制会員登録、ロット・入数対応、得意先管理、法人管理など、BtoB-ECに必要な機能を備えたECサイトを構築できます。
また、外部システムとの連携や、業務フローに合わせた個別カスタマイズにも柔軟に対応できるため、企業ごとの商習慣や運用要件を組み込んだBtoB-ECを実現できます。
BtoB-ECの構築を検討している方は、下記の公式ページをご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。



























