お店のオーナーが事前に知るべき「マイナポイント事業」のまとめ


2020年9月から、マイナポイント事業によるキャッシュバックキャンペーンがスタートしました。それにより、対象のキャッシュレスサービスを利用することでお客様は25%(上限5,000円分)のキャッシュバックを受けることができます。

では、お店はどのような手続きやメリットが受けられるのでしょうか? 結論から言えば、限定的な集客効果がある程度です。なぜならキャッシュレス・ポイント還元事業とは違い、キャッシュバック金額に上限があり、しかもお客様はキャッシュレス決済手段を一つしか選択できないからです。

ただし、良い点もあります。お店側に特別な手続きは必要なく、マイナポイント事業の対象となっているキャッシュレス決済端末を導入するだけで良いことです。ですから、お店側では、お客様の利用率が高いキャッシュレス決済端末であり、マイナポイント事業の対象となっているものを導入することが、売上を高めるために重要となります。

本日はインターファクトリーでWEBマーケティングを担当している筆者が、お店側の立場でマイナポイント事業を詳しく解説いたします。

お店側がマイナポイント事業を理解する!

まずは、下記の表をご覧ください。マイナポイント事業をより理解するために、2019年から実施されたキャッシュレス・ポイント還元事業と比較してみました。

◆お店側から見たマイナポイント事業とキャッシュレス・ポイント還元事業の比較表

お店側にとってこの表で重要なのは下記の3つです

マイナポイント事業についてお店側が知るべき3つのこと

お店側がマイナポイント事業について覚えておくべきことは下記の3つしかありません。

①お店側はマイナポイント事業への登録申請は必要ない
②キャッシュレス決済端末が必要
③お店側のメリットはキャッシュバックによる集客効果

キャッシュレス・ポイント還元事業と違い、お店側で事前に準備することは少ないのですが、その分お店側のメリットも限定的で、キャッシュバック目的のお客様への集客効果がある程度(2021年3月まで)となります。決済手数料の補助や端末導入の補助金などはありません。

しかも、マイナポイント事業は還元率が25%と高くなっているのですが、キャッシュバック金額の上限がお客様一人あたり5,000円(2万円利用時)までとなっています。以前行われたキャッシュレス・ポイント還元事業と違い、キャッシュバック金額に上限があります。つまり、キャッシュバック目当てのお客様の多くが、お店でキャッシュレス決済を利用していつもより多く買い物をするとは考えにくいのです。

しかし、コロナ禍の現在、お店にとって少しでも集客効果が得られるのなら、取り組んでみるべきです。なぜなら今回のマイナポイント事業はお店側には特に手続きが必要なく、マイナポイント事業の対象であるキャッシュレス決済端末を用意するだけなので手間がかかりません。

マイナポイント事業の対象となるキャッシュレス決済方法は5つ!だが実質3つだけしかない!

まず、マイナポイント事業の対象となるキャッシュレス決済サービスは下記URLで公開しております。最新の状況は下記のマイナポイント事業の公式サイトでご確認ください。すでに100以上の決済サービスが対象となっております。

参考:対象となるキャッシュレス決済サービス検索(マイナポイント事務局ホームページ )

ただ、対象となる決済サービスが多すぎて、一般のお店(小規模事業者)にはかなり分かりづらいものになっております。ですから、一般のお店では下記の3つのキャッシュレス決済方法が対象であると考えましょう。

①クレジットカード決済(楽天カード、三井住友カード等)
②電子マネー決済(Suica等)
③QRコード決済(PayPay、d払い等)

下記もマイナポイント事業の対象決済ではありますが、一般のお店にとっては利用するお客様は少ないので、検討から外しても影響がほとんどないでしょう。また、下記の2つの決済方法導入はカンタンではないことも、マイナポイント事業においてあまり考慮する必要がない理由となります。

◆一般のお店が考慮しなくても良いキャッシュレス決済方法

④プリペイドカード決済
⑤デビットカード決済

つまり、一般のお店では、3つの決済方法(クレジットカード決済、電子マネー決済、QRコード決済)に対応しておけば、マイナポイント事業でキャッシュバック目的のお客様がお金を使ってくれる可能性が高くなります。今回のマイナポイント事業は、カード決済端末として3つの決済方法に対応した「スマホ決済」を導入すれば、集客効果が見込めます。

また、スマホ決済端末は「キャッシュレス・ポイント還元事業」で、すでに多くのお店が導入済みだと思いますので、その端末を引き続き使用するだけで十分です。

なぜなら、Airペイ、楽天ペイなどのスマホ決済は下記の3種のキャッシュレス決済方法に対応した端末で、一般のお店でもカンタンに、手数料も安く導入できる端末だからです。

◆多くの「スマホ決済」端末が対応している決済方法

・クレジットカード決済
・電子マネー決済
・QRコード決済

QRコード決済については、対応していないスマホ決済会社もあるので、詳しくは下記のスマホ決済についてまとめた記事をご覧ください。

関連記事:【2020年版】スマホ決済大手7社比較!今から導入する決済方法は?

お店がマイナポイント事業による最大限の集客効果を得るためには「利用率の高い」キャッシュレス決済方法を導入する必要がある!

お店が、マイナポイント事業を利用して最大限の集客効果を得るためには、まず、利用率の高いキャッシュレス決済方法を導入するべきです。そして、できればお店のターゲット層に合わせたキャッシュレス決済方法を導入すると良いでしょう。

下記をご覧ください。

◆年代別キャッシュレス決済方法の利用率調査【ゼネラルリサーチ調べ】

出典:『キャッシュレス決済』に関する意識調査ゼネラルリサーチ株式会社

■調査概要:「キャッシュレス決済」に関する調査
■調査日:2020年1月16日(木)~2020年1月18日(土)
■調査人数:1,060人
■調査対象:全国20代〜60代のキャッシュレス決済ユーザー
■調査方法:インターネット調査
■調査主体:ゼネラルリサーチ

全世代にわたってクレジットカードと電子マネー決済、そしてPayPayの利用率は高い!

まず、この表を見ると年代に関わらず、利用率が高いキャッシュレス決済方法

◆利用率の高いキャッシュレス決済方法

①クレジットカード決済
②交通系電子マネー決済(SuicaやPASMOなど)
③PayPay

の3つです。

ですから、どんな年齢層をターゲットにしたお店であっても、利用率の高いキャッシュレス決済方法に対応するのでしたら、この3つに対応しておけば、ほとんどのお客様に対応できます。またマイナポイント事業での集客効果を得るには、この3つのキャッシュレス決済方法に対応していることが必要といえるでしょう。

20代・30代の若い層はQRコード決済や電子マネー決済の利用率が高い!

上記に加えて、ターゲットの年齢層が20代・30代と若い場合には、①~③の決済方法に加えて、下記の決済方法の利用率が高いです。

④iD・QUICPayなどのその他電子マネー決済
⑤LINE Payや楽天ペイ、メルペイなどのQRコード決済

多くの若いユーザーの集客を見込んでいるお店であれば、主要な電子マネー決済と、QRコード決済に対応しておくべきです。先の利用率のデータには出てきませんが

au PAY(QRコード決済)
d払い(QRコード決済)

これらのキャリア系のQRコード決済も利用者が非常に多い決済サービスなので、導入してデメリットはありません。ただ、マイナポイント事業はそこまで大きな利用者の増加につながらないと筆者は考えますので、すでにPayPayが導入されているのなら、追加で導入するほどではありません。

もしお店の近くにドコモショップやauショップがある場合などは検討しても良いのではないでしょうか?

40代以上はクレジットカードの利用率が高い!しかし、クレジットカードでのマイナポイント事業のキャッシュバックは限定的

まず、マイナポイント事業の対象は「VISA」「Mastercard」などの国際ブランド単位ではなく、発行しているカード会社単位になります。クレジットカードのショッピング取扱高において、国内シェアの大きいカード会社は以下の5社となります。そして、その5社の中で、マイナポイント事業に参加しているのは3社だけです。

◆クレジットカードのショッピング取扱高の大きい大手5社

・三菱UFJニコス
・三井住友カード(マイナポイント事業参加)
・楽天カード(マイナポイント事業参加)
・イオン銀行(マイナポイント事業参加)
・クレディセゾン

明確な取扱高シェアのデータが公表されてはおりませんので筆者の推測ですが、この5社でクレジットカードのショッピング取扱高の50~60%に達すると予想します。つまり、あなたのお店でクレジットカード決済を行うお客様は、この5社のクレジットカードであることが多いはずです。

また、クレジットカード決済の利用率は高いですが、マイナポイント事業対象のクレジットカード(三井住友、楽天カード、イオン)を持つお客様が、マイナポイントの申込を行う割合は10%以下ではないでしょうか? なぜならQRコード決済、電子マネー決済をクレジットカードと併せて持つ方が非常に多く、その中でマイナポイントをもらえるのは1社(1決済)だけだからです。

そうなると、あなたのお店でクレジットカードを利用するお客様の中の数%だけが、マイナポイント事業の対象であり、クレジットカードでのキャッシュバックによる集客効果はかなり限定的だと言えます。

ここから言えるのは、クレジットカード登録者が少ないことが予想されるため、マイナポイント事業を利用しての集客を行う場合は、「電子マネー決済」と「QRコード決済」、2つの影響が大きくなってくるのです。

スマホ決済の「Airペイ」を利用すれば、マイナポイント事業によるキャッシュレス対応はほとんどカバーできる

マイナポイント事業のキャッシュバックキャンペーンを最大限利用するのなら、スマホ決済のAirペイを導入すれば、ほとんどのキャッシュレス決済手段をカバーできます。

◆Airペイが対応しているキャッシュレス決済方法(マイナポイント事業対象のもの)

クレジットカード決済
Suica、PASMOなどの交通系電子マネー決済
iDやQUICPayなどのその他電子マネー決済
PayPay、LINE PayなどのQRコード決済

Airペイは30種類以上の決済手段に対応しており、その中にはSuicaやPayPayなどの利用率の高い決済手段が含まれているので、Airペイだけで、マイナポイント事業に十分対応することができるのです。

ただし、Airペイ以外のスマホ決済を導入している場合でも、マイナポイント事業に合わせてわざわざ新しいキャッシュレス決済端末を導入する必要はありません。なぜなら、ポイント還元の上限が5,000円に設定されているためマイナポイント事業においての集客効果は限定的だからです。

女性の方が、マイナポイント事業との相性が良い!

下記をご覧ください。男女別で、キャッシュレス決済を利用し始めたきっかけを比べた調査結果です。

◆男女別のキャッシュレス決済を利用し始めたきっかけの調査【ゼネラルリサーチ調べ】

出典:『キャッシュレス決済』に関する意識調査ゼネラルリサーチ株式会社

■調査概要:「キャッシュレス決済」に関する調査
■調査日:2020年1月16日(木)~2020年1月18日(土)
■調査人数:1,060人
■調査対象:全国20代〜60代のキャッシュレス決済ユーザー
■調査方法:インターネット調査
■調査主体:ゼネラルリサーチ

男性よりも、女性の方がポイント還元に対して、敏感なのが分かります。ですから、マイナポイント事業においての集客効果は限定的と言いましたが、お店のターゲット層の多くが女性である場合は、売上をアップさせるチャンスがあります。女性の方がマイナポイント事業との相性が良いのです。

お店の看板やレジに「キャッシュレス決済」が利用可能なことをアピールしよう

◆写真はキャッシュレス・ポイント還元事業のときにコンビニに貼られたステッカー(すでに終了のキャンペーン)

キャッシュレス決済端末を導入したのなら、レジや看板、POPなど、お客様から目立つ場所に「QRコード決済」や「電子マネー決済」が利用できることをアピールしましょう。キャッシュレス決済端末は多くの場合「シール」などを用意しているので、それを有効活用します。

マイナポイント事業によるお店の集客効果は限定的!しかし、現在はコロナ禍だからできることは全部やろう!

マイナポイント事業は、政府がマイナンバーカードを広めるための一大事業であることには間違いありませんが、キャッシュバック金額が低いため、あまり盛り上がらないのではないかと思っております。そのためお店における効果も限定的なものでしょう。

しかし、今はコロナ禍で多くの店舗は売上を下げており、その中で少しでも売上に貢献すべき施策は行っておくべきでしょう。さらに今回のマイナポイント事業は「お店」側には手続きはないので、スマホ決済などのキャッシュレス決済端末があれば、すぐに実施できることは大きなメリットです。

まずは、お店で使っているスマホ決済端末があれば、マイナポイント事業の対象かどうか?を下記から確認することから始めてみましょう。

参考:対象となるキャッシュレス決済サービス検索(マイナポイント事務局ホームページ )


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。