「O2Oに取り組む必要性を感じているが、具体的に何をすればいいのかイメージが湧かない」
このようにお悩みではないでしょうか。
オンラインとオフラインの接点をシームレスにつなぐO2Oは、顧客との結び付きや売上の拡大に直結する重要戦略です。しかし、形だけ導入しても、うまく機能しなければコストばかり膨らむリスクがあります。

そこで本記事では、国内外合わせて12の代表的な成功事例を紹介し、それぞれが生み出す価値や成果の背景を解説します。
読み進めるうちに、自社のビジネスで活用できそうなポイントが見つかるでしょう。オンラインとオフラインを連携させる、具体的な施策イメージをつかめるはずです。
なお、「O2Oって何?」という基礎から知りたい方は、先に以下の記事に目を通してから本記事を読み進めてください。
1. O2Oの日本国内の事例 8選
まずは、国内の企業がどのようにオンラインと実店舗を組み合わせて成果を上げているか、具体的な成功例を見ていきましょう。以下では8つの事例を紹介します。
② 無印良品:会員アプリ「MUJI PASSPORT」による購買行動の可視化
③ スターバックス:モバイルアプリと事前注文によるリピーター創出
④ ビックカメラ:ポイントカードとアプリ連携による送客戦略
⑤ ユニクロ:公式アプリを核としたオムニチャネル戦略
⑥ 資生堂:パーソナルビューティーパートナーによるOMO戦略
⑦ 日本マクドナルド:モバイルオーダーによる行列ゼロの新体験
⑧ 青山商事「SUIT SQUARE」:店舗在庫のデジタル拡張
※O2O(オンラインからオフラインへ)より幅広いOMO(オンラインとオフラインの融合)の戦略にもO2Oの事例が含まれているため、ここではOMO戦略も一部扱います。
1-1. @cosme TOKYO:オンラインコミュニティのリアル店舗化
「@cosme TOKYO」は、大手コスメサイト@cosmeの運営会社アイスタイルが開設した大型旗艦店です。オンラインの口コミやランキングを実店舗に落とし込んでいます。原宿駅前の立地と豊富な品ぞろえで、多くのコスメ愛好者を呼び込むことに成功しました。
◆融合による新体験
・店内に口コミランキングを再現:サイトで人気の商品やベストコスメ受賞アイテムをまとめて並べ、オンライン情報を視覚化しています。来店者は話題商品を店頭ですぐ試せます。
・テスターのQRコード活用:スキャンすると口コミや詳細を確認でき、来店者の利便性を高めています。企業側は閲覧データをマーケティングに活用できます。
・動画配信スタジオを併設:「@STUDIO」という配信スタジオが併設されています。インフルエンサーやクリエイターが撮影・配信を行い、その様子を見た視聴者が来店する循環を生んでいます。イベントブースも設け、新商品やブランドのPRに活用されています。
オンラインコミュニティの強みをリアル店舗に展開し、店自体をメディア化する発想が斬新です。ネット発の情報で店舗への動線を生み出し、多い日は1日1万人が来店する集客力を獲得しました。
出典:
・ダイヤモンド・チェーンストアオンライン「『コロナでも化粧品は売れる』を体現した『@cosme TOKYO』の顧客体験とは?」(2022年4月21日掲載)
・株式会社フラッグ「@cosme TOKYO オープニングスペシャルLIVE」
1-2. 無印良品:会員アプリ「MUJI PASSPORT」による購買行動の可視化
無印良品は会員アプリ「MUJI PASSPORT」を通じ、店舗とECを結び付けた購買体験を提供しています。2013年から運用を開始し、年間アクティブユーザー約1,369万人を誇る成功例です。
◆顧客ロイヤリティ向上の仕掛け
・MUJIマイルで囲い込み:店頭レジでアプリを提示するとマイルが貯まり、一定数でショッピングポイントに交換できます。店舗とオンライン双方で使えるため、幅広い購買を促進しています。
・チェックイン機能を活用:店舗やネットストアでの買い物のほか、マイルはチェックインでもたまるため、ユーザーが積極的にアプリを使う流れを生み出しています。購買以外の行動も可視化され、企業サイドの顧客理解にも貢献しています。
・利用率アップによる客単価増:店頭ではアプリ提示率が拡大し、会員の客単価は非会員より高い数字を維持しています(会員は非会員の1.6倍の客単価)。
無印良品は根強いファンを持つブランドとして知られていますが、その顧客ロイヤリティをさらに強固にするために、アプリを活用したO2O施策が功を奏していることがうかがえます。
出典:
・良品計画について│良品計画
・MUJIマイルサービス│無印良品
・ペイメントナビ「無印良品で購買行動の前後を可視化するアプリ『MUJI PASSPORT』が活躍(良品計画)」(2017年4月28日掲載)
1-3. スターバックス:モバイルアプリと事前注文によるリピーター創出
スターバックスは広告よりも顧客体験に投資し、デジタル施策で来店頻度を高める戦略を打ち出しました。モバイルアプリやキャッシュレス決済の導入が、店舗の混雑緩和とリピーター拡大につながっています。
◆リピーターを増やす工夫
・モバイルオーダー&ペイの開始:2019年からアプリ注文を導入し、レジの行列に並ばずに商品を受け取れる仕組みを整えました。忙しい利用者に好評で、テイクアウト需要を大きく取り込みました。
・独自のスターリワード:公式アプリまたは登録済みスターバックス カードで支払うとStars(スターバックスにおけるポイントの概念)がたまる仕組みで、スムーズな支払い体験と常連客にとってのお得感を実現しています。
・One More Coffee特典:1杯目を登録済みカードで支払うと2杯目を割安で楽しめ、Stars(ポイント)もためやすくなります。結果として1日複数回利用する顧客が増加しました。
スターバックスは、事前注文の利便性や独自のポイント施策を組み合わせ、ロイヤリティの高い常連客を増やしています。オンラインと店舗のシームレスな連携が、売上成長を支える重要な要素と言えるでしょう。
出典:
・スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社プレスリリース「レジに並ばず、商品を受け取るだけの事前注文決済サービス『モバイルオーダー&ペイ』が全国直営のスターバックスで対応開始」(2020年11月30日発表)
・Starbucks® Rewardsとは│スターバックス コーヒー ジャパン
・ONE MORE COFFEE, ONE MORE HAPPINESS│スターバックス コーヒー ジャパン
1-4. ビックカメラ:ポイントカードとアプリ連携による送客戦略
ビックカメラは、家電量販店の激しい競争下で、ポイント戦略とアプリ連携を強化して来店機会を増やしています。グループ企業間で利用できるポイントを軸に顧客を囲い込み、オンラインとの相乗効果を狙っています。
◆アプリとポイント施策による差別化
・値下げ通知や値札タッチなど便利なアプリ機能:「ほしいもの」を登録しておくと値下げ時や入荷時に通知を受け取れたり、店頭で値札をアプリでタッチすると口コミや在庫がチェックできたりと、アプリに多彩な機能を搭載しています。
・有効期限の延長:利用のたびにポイント有効期限が2年間に更新される仕組みが、ライトユーザーの離脱を防いでいます。顧客はたまったポイントがなくなる不安から解放され、安心して利用できます。
・グループ全体でポイント共通化:ビックカメラグループのコジマやソフマップでも、同じ還元率を維持し、使い勝手を高めています。複数の店舗をまたいだ買い物がしやすくなっています。
明確で魅力的な特典設計や利便性を高めたアプリ機能が、ユーザーの来店を促しています。競合との差別化要因となるO2O施策が、売上増加に寄与している事例です。
出典:
・ビックポイントサービス│ビックSUPERサービス
・ポイントカード相互利用・ポイント交換・提携サービス│ビックSUPERサービス
1-5. ユニクロ:公式アプリを核としたオムニチャネル戦略
ユニクロは国内ファッションECで圧倒的な売上を上げ、オンラインと店舗の融合を徹底しています。公式アプリを中心に、あらゆる接点で顧客がスムーズに購買へ進める仕組みを構築しました。
◆オフラインとオンラインを結ぶ工夫
・O2Oを実現するアプリ連携の設計:ユニクロ公式アプリは、オンラインとオフラインの顧客体験をシームレスに結ぶための機能を搭載しています。店舗在庫のリアルタイム確認やクーポン配信など、実店舗へのスムーズな送客を実現しています。
・店舗会計時のアプリ提示:会員証として提示するとクーポン獲得や購入履歴を記録できます。他店舗やオンラインでの買い物の履歴が一元化され、その後のリピート購入につながっています。
・店舗受取りサービス:ECで購入した商品を店頭で受け取れば送料が無料となります。店舗受取りサービスの利用率は約40%と、多くのユーザーに支持されています。
オンラインとリアルの行き来を容易にする設計が、ユニクロの業界トップクラスの売上を支える原動力と言えます。ユーザー目線の細やかな工夫が「ユニクロは買いやすい、便利」という評価を生み出し、長期的なリピーターを増やしています。
出典:株式会社ファーストリテイリング「有明プロジェクトについて」
1-6. 資生堂:パーソナルビューティーパートナーによるOMO戦略
資生堂は、店頭で接客を担ってきた美容部員(パーソナルビューティーパートナー)によるオンライン戦略を展開し、顧客との接点を大幅に拡張しています。
◆デジタル接客のポイント
・SNS発信で集客:美容部員が多くのフォロワーを抱え、InstagramなどのSNSで資生堂ブランドを広めています。一般の美容系インフルエンサーに比較して、プロとしての専門知識に長けているのが魅力です。支持を集めやすく、大きく拡散された投稿も多くあります。
・SNSとECサイトを連携:美容部員がInstagramに投稿するだけで、自社ECサイト内にも自動表示される仕組みを構築しています。業務効率化とEC売上強化を実現しています。
・店頭での美容体験をデジタル化:美容部員が店頭で接客したサービス内容をデジタル化し、スマートフォンなどで振り返れる新サービス「パーソナルビューティープラン」を開始しています。Webカウンセリングも導入しており、オンラインとリアルの融合を進めています。
近年では、資生堂の美容部員がインフルエンサー化するケースも見られ、ファン獲得やリアル店舗への集客に貢献しています。一方、店舗でも、デジタル施策で培った情報発信力を生かし、一貫したブランド体験を実現している点が印象的です。
出典:
・株式会社visumoプレスリリース「資生堂『パーソナルビューティーパートナー』のスタッフ投稿活用ツールとしてvisumoが採用」(2024年2月7日発表)
・株式会社資生堂プレスリリース「新サービス『パーソナルビューティープラン』を導入」(2022年2月発表)
1-7. 日本マクドナルド:モバイルオーダーによる行列ゼロの新体験
日本マクドナルドはスマートフォンから注文・決済を行い、店舗で受け取る「モバイルオーダー」を2019年より導入しました。来店前にメニューを選び支払いまで済ませる仕組みで、レジ待ちを不要にする新しいファストフード体験を実現しています。
◆接触時間の短縮と満足度向上
・事前にメニューを確認:顧客は落ち着いて商品を選べるため、買い間違いを防げます。到着後は受け取りを待つだけで、スムーズな利用をかなえます。
・駐車場での受け取りや席への配膳:カウンター以外で商品を受け取る方法(駐車場、指定テーブルへの配膳など)を多様化し、行列ゼロに近い快適さを追求しています。利用者は混雑を避けられ、店舗のオペレーションも効率化します。
・スタッフの業務効率アップ:事前決済により現金の取り扱いが減るため、接客サービスや調理に集中できます。人的ミスが減少し、回転率を上げる効果が期待できます。
利用者の利便性を高めると同時に、店舗オペレーションを最適化する優れた事例です。オンラインからオフラインへ誘導する流れが円滑になり、飲食業界全体にも影響を与えています。
出典:
・McDonald’s Japan ニュースリリース「マクドナルドがお客様へのサービスを刷新!」(2019年4月9日発表)
・マクドナルドの新サービス モバイルオーダー ついに誕生!│マクドナルド公式
1-8. 青山商事「SUIT SQUARE」:店舗在庫のデジタル拡張
大手紳士服チェーンの青山商事は、デジタル技術を活用したOMOを進めています。店舗に在庫がないアイテムでも、その場でオンラインから取り寄せられる仕組みを導入しました。
◆アパレル購入の新しい形
・「デジラボ店」の導入:新コンセプトのデジラボ店の120店舗導入を進めています。デジラボは店舗でネットオーダーし、自宅で受け取る新しい形のサービスです。豊富な商品数から選べて、手ぶらで帰れる新しい顧客体験が魅力です。
・ウィジェット型の店舗「SUIT SQUARE」での試み:店舗ごとにサービスをカスタマイズするウィジェット型の店舗「SUIT SQUARE」では、タッチパネル式の大型サイネージやタブレットを活用した「デジラボ試着室」を設置しています。
青山商事は、オンライン通販の利点と店舗での実地確認を組み合わせ、顧客の満足度向上と新規獲得を目指す戦略を加速させています。O2Oを越えたOMOの先端事例として、今後の店舗モデルに影響を与えるでしょう。
出典:
・洋服の青山の新コンセプト店│洋服の青山
・青山商事株式会社プレスリリース「ウィジェット型の店舗『SUIT SQUARE』を国内有数のターミナル駅である大宮(埼玉)に初出店」(2022年10月6日発表)
・流通ニュース「青山商事/ネットとリアルの融合システム『デジラボ』120店舗に追加」(2022年6月9日掲載)
2. O2Oの海外グローバル事例 4選
一方、海外ではテクノロジーと物流を強みにしたO2Oが加速しており、既存モデルを一新する施策が数多く生まれています。国内とは違う視点が得られるため、自社の新たな可能性を検討する材料にしやすいでしょう。
ここでは4つのグローバル事例をご紹介します。
② アリババ「盒馬鮮生」:新小売モデル
③ Sephora:美容業界のオムニチャネル先駆者
④ IKEA:ARと会員データで実現する購買支援
2-1. Amazon Go:レジなし店舗による新たな購買体験
米国のAmazonが運営する「Amazon Go」は、レジ待ちを完全に撤廃した革新的な無人型コンビニエンスストアです。2018年にシアトルに第1号店がオープンし、現在では30店舗以上となっています。
Amazon Goの入店時には、ゲートで専用アプリのQRコードをかざすと顧客情報がひも付けられ、商品を棚から取り出すだけで自動的に購入リストへ追加されます。
◆レジなし運営のポイント
・自動会計の導入:監視カメラやセンサーが顧客の動作を追跡し、手に取った商品をリアルタイムにアプリに反映します。不要な商品を棚に戻せば購入リストから削除され、ミスや万引き対策にもつながります。
・店外決済システム:買い物が終わったらそのまま店を出るだけで、Amazonアカウントに保存されている支払方法やクレジットカードに請求が送られます。領収書はAmazonアプリやメールで確認でき、支払いための行列をなくす試みが顧客満足度を高めました。
・Amazonの返品も可能:オンラインで注文したAmazon商品の返品も、Amazon Goの店舗でできます。商品到着後30日以内であれば可能と案内されています。
「Just Walk Out(ただ退出するだけ)」と銘打たれたレジ不要の新体験は、多忙な利用者にとって大きな利点です。Amazon GoはO2Oの先端事例として世界的に注目され、小売の未来像を示唆する存在になりました。
出典:
・All Departments│Amazon.com
・ジェトロ「『アマゾン・ゴー』のNY第1号店が開店」(2019年5月16日掲載)
2-2. アリババ「盒馬鮮生」:新小売モデル
中国アリババグループの「盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)」は、生鮮食品の店頭販売・飲食スペース・オンライン配送を一体化した新業態の生鮮スーパーです。スマホアプリを通じて在庫状況や産地情報を確認でき、レジなしでモバイル決済まで完結させる仕組みが注目を集めています。
◆新小売モデルの特徴
・バーコード連携:店頭の生鮮食品にはバーコードが付与され、顧客はアプリでスキャンすると詳細情報を得られます。店舗内でもオンライン同様の豊富な商品データを確認できるため、顧客は安心して商品を選べます。
・セルフスキャン決済:支払いは顧客が商品を端末で読み取り、アプリから支払うセルフサービス形式が基本です。
・即時配送サービス:買い物後に自宅へ発送してもらうオプション(30分宅配)も準備されており、重い荷物を持ち帰らずに済みます。
・その場で調理サービス:購入した食材をその場で調理してもらえる調理カウンターがあるのも特徴的です。たとえば、来店客がいけすから取り出して購入した魚介類を、新鮮なまま料理人に調理してもらい、店内のテーブルで食べられます。
アリババグループが掲げる新小売(ニューリテール)(*1)という中核戦略を象徴するこの取り組みは、既存の枠組みを取り払い、新しいオンライン・オフラインのあり方を追求するOMO施策の代表例と言えます。
*1:新小売(ニューリテール)とは、2016年にジャック・マーが提唱したオンラインとオフラインを融合させた新しい小売モデルの概念を指す言葉です。
出典:
・New Retail(ニューリテール)│アリババ株式会社
・ジェトロ「注目されるアリババ集団『盒馬鮮生』の新小売り戦略」(2019年5月9日掲載)
2-3. Sephora:美容業界のオムニチャネル先駆者
フランス発のコスメチェーンであるSephora(セフォラ)は、デジタル技術と店舗接客を連携させて美容体験を高度にパーソナライズしています。
アプリには、自宅でも店頭でも自由にメイクを試せるARメイク機能(拡張現実を用いてデジタル上でメイクを試せる機能)を搭載しており、これが大きな特徴となっています。ユーザーは、アプリを通じてバーチャルにさまざまなメイクを体験できます。
◆顧客を引き付けるデジタル施策
・バーチャルアーティスト機能:自撮り画像に口紅やアイシャドウを重ね、仕上がりを画面上で確認できます。店舗でテスターを試す前に色味を比較でき、購入意欲が高まる機能です。
・パーソナライズされたレコメンド:会員データを活用して、一人一人に合った商品やクーポンをアプリ上で提案します。店頭スタッフの接客とも連動し、オンライン・オフライン両面から顧客をサポートします。
・ECと店舗のシームレス連動:在庫切れの際はその場でアプリ注文に誘導し、商品を自宅へ発送できます。オンラインで閲覧した商品レビューを店舗端末で確認するなど、あらゆる購買行動がつながっています。
Sephoraは、AR試用やロイヤリティプログラムの徹底活用で、ECと店舗の両チャネルを一体化しています。世界各地の美容市場で高い評判を得ており、オムニチャネル戦略による体験価値向上の好例です。
2-4. IKEA:ARと会員データで実現する購買支援
スウェーデン発の家具大手IKEAは、デジタルツールと店舗サービスを組み合わせ、顧客が家具選びを効率的に進められる環境を整えています。
ARアプリや会員プログラムなどを活用し、オンラインでの検討と店頭での実物確認をスムーズにつないでいます。
◆購買プロセスをサポートする仕組み
・ARによる家具配置:専用アプリ「IKEA Place」で自宅の空間をスキャンし、製品を配置したイメージを確認できます。サイズ感や色合いをリアルタイムで比べられ、購入後の後悔を減らすために役立ちます。
・店舗在庫照会:欲しい商品の店頭在庫を事前に確認できるので、無駄足を防げます。オンラインで目星を付けてから店舗へ行く流れがスムーズで、購買意欲を下げません。
・会員プログラムの活用:購入履歴や閲覧履歴を統合し、利用者ごとに特典やクーポンを提案します。店舗で得たインテリアアイデアをアプリへメモし、自宅で再度チェックしてから追加購入もできます。
デジタルとリアルの垣根を取り払う工夫によって、顧客の検討時間や買い物負荷が大幅に軽減されました。IKEAはこうしたO2O戦略によって来店者の満足度と売上を高め、小売業界の好例として語られています。
出典:Ingka Group「IKEA increases loyalty with rewards and personalized experiences」
3. O2Oを本気で成功させるための5つのステップ
ここまで、O2Oの事例をご紹介してきました。一方、形だけO2Oを導入しても、十分な成果を見込めない場合があります。
そこで最後に、店舗とオンラインを連動しながら売上と顧客ロイヤリティを伸ばす手順を、5つのステップに整理してお伝えします。
② 店舗ならではの魅力を極限まで高める
③ 在庫と会員データを一元化する
④ 短いサイクルで数値検証と改善を繰り返す
⑤ 社内組織の一体運営を目指す
3-1. ターゲット像を明確にする
まず重要なのが「ターゲット像」です。
O2Oを雑に始めると、出費ばかり増えて成果が伴わない恐れがあります。「誰に何を届けるか?」が曖昧だと、せっかくの企画も空振りに終わります。

◆ターゲット分析の基本
・データの細分化:店舗とECの購買履歴を突き合わせ、月間購入頻度や客単価を分類します。「高頻度の購入層にはポイント施策が響き、低頻度層にはクーポン配布や試着イベントが合う」といった特徴を発見できるように分析しましょう。
・オンライン情報リサーチの行動把握:たとえば、事前にECで商品を見比べる顧客が多い場合、店舗で実物を試す誘導が高い効果を生みます。自社の顧客層の行動を十分に調査しましょう。
・心理的ハードルの把握:自社の顧客心理を深く理解し、何がハードルになっているか把握しましょう。顧客理解があれば「時間のない層には事前注文を、楽しみながら買いたい層には店舗体験を提案する」といった施策が可能です。
ターゲットがはっきりすると無駄な施策を減らせます。逆に、合わない訴求を続けると顧客離れを招くため注意が必要です。
顧客の心に届く魅力のある施策を打ち出すために、ターゲット像を明確に捉えてから施策検討を進めましょう。
3-2. 店舗ならではの魅力を極限まで高める
オンライン通販が浸透し、実店舗へ行く理由を持てない消費者が増えています。そこを放置すると、コストばかりかさみ、店舗閉鎖に追い込まれる可能性が高まります。

オンライン上の施策だけに目を向けるのではなく、店舗価値を最大化していくことは、根本的に忘れてはいけないポイントです。
◆店舗価値を高める施策の例
・体験ゾーンの確立:試着やサンプル使用を気軽に行えるスペースを用意します。スタッフが専門知識を踏まえて提案すると、その場で購入する動機が強まります。
・写真映えによる認知拡大:店舗内を装飾し、SNS投稿を誘導します。投稿者へ限定クーポンを発行すれば、フォロワー層への波及と直接的な売上増が期待できます。
・限定アイテムの配置:店頭だけの先行販売やコラボ商品を用意します。オンラインにはない希少感が、来店の強い動機につながります。
店舗体験が「楽しくてお得」と感じられれば、オンライン購入にも好影響を与えます。顧客がわざわざ足を運ぶだけの理由を作り込んでいきましょう。
3-3. 在庫と会員データを一元化する
店舗とECのデータ共有が不十分な状態でO2Oを実施すると、在庫管理やポイント管理が煩雑になり、不信感につながります。管理体制が甘いまま続けると、売上機会を逃すだけではなく信用にも関わるため、注意が必要です。

◆データ連携の打ち手のポイント
・クラウドEC導入:在庫と顧客情報を一体で扱えるクラウドECプラットフォーム(EBISUMARTなど)を使うと、リアルタイムな連携が可能です。独自でシステムを構築するよりも低コストで始められます。
・ポイント共通化:店舗とECで同じ会員IDを使い、どちらで購入してもポイントがたまる方式にします。利用者はチャネルを意識せずに買い物し、企業は顧客動向を一括で把握しやすくなります。
・接客精度の向上:店舗スタッフが、オンラインでの検索履歴や購入リストを参照できるようにします。好みに合う商品を提案できれば、追加購入を促しやすくなります。
情報を一元管理すれば在庫ロスを減らせ、顧客は「在庫切れ」や「ポイント二重管理」の煩わしさを感じにくくなります。
特に、EBISUMARTのような柔軟性の高いクラウドECプラットフォームを導入すれば、O2O施策全体の実行スピードと成果を上げやすくなります。店舗とECのデータを、リアルタイムで統合しながらキャンペーン拡張やシステム改修を容易に行えるからです。
EBISUMARTについて詳しくは以下の資料にてご確認いただけます。

3-4. 短いサイクルで数値検証と改善を繰り返す
O2Oには時間をかけた大規模投資が必要というイメージがありますが、間違った方法で動かせば大赤字に陥る危険があります。顧客の反応を見ながら、小回りを利かせる姿勢が収益につながる近道です。

◆成果測定の要点
・具体的KPIの設定:「オンライン広告を見た人数に対し、店舗クーポンを使った率」など、KPIを具体的かつ明確にします。測定指標を分解して数値化すると、成功要因の切り分けが容易になります。
・小規模テストと段階展開:まずは一部店舗や限られた顧客層で実験し、良好な結果が出たらエリアを広げます。いきなり全国展開すると失敗時のダメージが大きくなります。
・逆算での改善策:想定よりKPI達成率が低いなら、キャッチコピーや割引率など考えられる原因を改善して再テストします。短いスパンで改善・修正を繰り返すと、費用対効果を引き上げやすくなります。
数字を確認せずに施策をばらまくと、社内で責任の所在が曖昧になるリスクもあります。定量分析を怠らず、根拠ある改善を重ねていきましょう。
3-5. 社内組織の一体運営を目指す
O2Oで目立つ失敗例の多くは、EC担当と店舗担当が別部署で動き、互いに目標や施策を共有できていない状態にあります。ここを放置すると、O2Oが単なる表面的なキャンペーンに終わりかねません。

◆仕組みを支える体制づくり
・部門横断チームの設置:マーケティング・EC・店舗運営が同じ目線で情報交換できれば、的確な意思決定をスピーディーに行いやすくなります。各部門の利益相反を減らす工夫が必要です。
・現場スキルの底上げ:たとえば、店舗スタッフにEC側のデータを随時共有し、顧客対応で生かしてもらいます。現場で起きる問題を定例会議で吸い上げると、組織全体で解決へ動きやすくなります。
・OMOへの進化:O2Oによるデータ蓄積を活用し、オンラインとオフラインの境目を消す戦略を目指します。将来は顧客一人一人に合わせた情報提供や在庫管理を行い、ロイヤルユーザーを増やしていきましょう。
組織内が適切に連携していれば、どの施策が成功し、どこに不満が発生しているのかを素早く共有できます。最終的には、店舗とECが融合した新しい購買体験を生み出し、市場で優位に立てるでしょう。
4. まとめ
本記事では「O2Oの事例」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
O2Oの日本国内の事例として、以下をご紹介しました。
② 無印良品:会員アプリ「MUJI PASSPORT」による購買行動の可視化
③ スターバックス:モバイルアプリと事前注文によるリピーター創出
④ ビックカメラ:ポイントカードとアプリ連携による送客戦略
⑤ ユニクロ:公式アプリを核としたオムニチャネル戦略
⑥ 資生堂:パーソナルビューティーパートナーによるOMO戦略
⑦ 日本マクドナルド:モバイルオーダーによる行列ゼロの新体験
⑧ 青山商事「SUIT SQUARE」:店舗在庫のデジタル拡張
O2Oの海外グローバル事例として、以下をご紹介しました。
② アリババ「盒馬鮮生」:新小売モデル
③ セフォラ:美容業界のオムニチャネル先駆者
④ IKEA:ARと会員データで実現する購買支援
O2Oを本気で成功させるための5つのステップは以下のとおりです。
② 店舗ならではの魅力を極限まで高める
③ 在庫と会員データを一元化する
④ 短いサイクルで数値検証と改善を繰り返す
⑤ 社内組織の一体運営を目指す
O2O施策は、時代の変化に対応しながら顧客満足度と売上の向上を狙える手段です。本記事でご紹介した事例や成功ポイントを参考に、自社に最適なO2O戦略を模索していきましょう。