オムニチャネルパーソナライゼーションとは、顧客の行動や好みに基づいてパーソナライズしたメッセージや商品レコメンドなどのサービスを通じて、個々のユーザーに合わせて最適化した顧客体験を、複数の販売チャネル(ECサイト、店舗、アプリなど)で一貫して提供するためのマーケティング手法です。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、「オムニチャネルパーソナライゼーション」について解説します。
オムニチャネルパーソナライゼーションの目的は、一貫性のある接客を実現すること
オムニチャネルパーソナライゼーションの目的は、個々のユーザーに合わせて最適化したサービスを一貫性のある接客によって提供することです。
近年、国内の小売業界におけるマーケティングの主流は「商品中心」から「顧客中心」へと変わりつつあります。その背景としては以下が考えられます。
◆顧客中心のマーケティングが求められる背景
② 消費ではなく、体験に対する欲求が高まっている
③ 多くの業界で参入企業が増え、商品での差別化が困難になっている
④ スマートフォンが普及してデジタル化が進んだ
⑤ デジタル技術の進化により、高度なパーソナライゼーションが可能になった
モノがあふれている市場では商品の差別化が難しく、消費者は商品を購入する際により優れた顧客体験を求める傾向が高まっているため、企業が市場のシェアを向上・維持していくためには、優れた商品を提供するだけでなく、企業あるいはブランドのコアなファンをいかに増やすかということを追求していく必要があります。
そのため、サービスを通じて優れた体験を提供する顧客中心のアプローチである「オムニチャネルパーソナライゼーション」を採用する企業が増えているのです。
オムニチャネルパーソナライゼーション事例:資生堂
オムニチャネルに積極的に取り組んでいる大手化粧品メーカーの資生堂では、「Beauty Key」と呼ばれる共通の顧客IDとアプリを提供し、オムニチャネルパーソナライゼーションを実現しています。
◆資生堂のBeauty Keyアプリで受けられるサービス
(毎日の記録や、分析結果、美容情報をいつでも確認できる)
・資生堂のDNA検査プログラム「Beauty DNA Program」の情報を確認できる
・住んでいる地域と毎日の天気に合わせた美容情報を受け取れる
・好きなブランドの情報や動画コンテンツを閲覧できる
・オンラインカウンセリングの予約ができる
・Beauty Keyアプリがあれば資生堂の複数の会員証の持ち歩きが不要になる
・どこで買い物をしてもポイントがもらえる
・同じ店舗で買い物をするとボーナスポイントがもらえる
また、資生堂では美容部員によるライブ配信や、Instagramで商品情報や美容情報を定期的に発信するなど、オンラインとオフラインの垣根を取り払い、顧客の役に立つ一貫性のあるサービスと接客を追求しています。
オムニチャネルパーソナライゼーションの5つのステップ
資生堂のようなオムニチャネルパーソナライゼーションを実現するためには、大規模なシステムが必要になります。そのため、以下の5つのステップで、体制、システム、運用を構築していく必要があります。
◆オムニチャネルパーソナライゼーションを実現するための5つのステップ
② すべてのチャネルのデータを洗い出して収集する
③ オムニチャネルシステムの構築(データ統合、システム選定など)
④ 各チャネル固有のコンテンツやシナリオの制作およびシステム機能を実装する
⑤ ユーザーごとに最適化したコミュニケーションをサービスに組み込む
筆者が以前勤務していた会社では、経営陣が主導してオムニチャネルのシステム開発を進めていましたが、関連部門を巻き込むことができなかったために現場の反発が強まり、最終的に数億円規模のシステム開発は失敗に終わってしまいました。
そのため筆者は、複数部門に影響を与えるオムニチャネルのような全社戦略を推進していくためには、経営陣とすべての関連部門が1つの目標に向かって取り組める体制を確立すること(ステップ①)が極めて重要であると感じています。
また、オムニチャネルシステムの構築(ステップ③)では、クラウドとAPI連携を採用し、柔軟なシステムを構築するのがよいでしょう。
◆柔軟なシステム基盤を構築する3つのメリット
② 運用・保守の負担を減らすことができる
③ システムの陳腐化を防ぐことができる
例えば、インターファクトリーの「ebisumart(エビスマート)」のようなクラウドのECプラットフォームを採用することで、柔軟なシステム基盤を構築できます。
ebisumartで実現できるオムニチャネルシステムについて興味のある方は、下記の公式サイトからお気軽にお問い合わせください。
オムニチャネルシステムを構築した段階では、オムニチャネルパーソナライゼーションを実現するための準備が50%ほど完了した状態に過ぎません。ユーザーごとに最適化したコミュニケーションをサービスとして提供できるようにする必要があります(ステップ⑤)。
ステップ⑤では、競合企業だけでなく、異なる業界や業種のオムニチャネル事例や、顧客接点の最前線にいる従業員やユーザーの意見を参考にしながらアイデア出しや設計を行っていくとよいでしょう。
チャネル固有のオムニチャネルパーソナライゼーション
今回は、5つのチャネル別のオムニチャネルパーソナライゼーション例を紹介します。
① ECサイト
ECサイトでは、顧客の属性情報や購入履歴のデータを使って、パーソナライズしたコンテンツや商品情報を表示できるようにします。
◆顧客情報の例
・購入履歴
・サイトアクセス履歴
② アプリ
アプリはオンラインとオフラインをつなぐ大きな役割を担います。現代の大多数の人にとってスマートフォンは必需品となっており、企業がオムニチャネルパーソナライゼーションを実現するためには、利便性と操作性に優れたスマホアプリを介したコミュニケーションが不可欠です。
アプリは、ユーザーが毎日アプリを使用するための機能と動線を考慮して設計する必要があります。先ほど紹介した資生堂では、個々のユーザーとコミュニケーションを図るための動線となる肌分析サービスの提供などにより、オムニチャネルパーソナライゼーションを実現しています。
せっかくアプリを配布しても、店舗やECサイトでの利用だけではオムニチャネルパーソナライゼーションのパフォーマンスを最大化しているとは言えません。
アプリ開発では、今後どのような顧客接点を通じて、ユーザーにどのような価値を提供していくべきかをじっくり検討して機能やサービスを設計していく必要があります。
③ 実店舗
オムニチャネルパーソナライゼーションを実現するためには、ユーザーに実店舗内で「アプリ」を利用してもらうための施策が重要になります。
店頭にアプリのダウンロードを促進するためのリーフレットやパネルなどを設置し、その場でインストールして会員登録をしてくれたユーザーには割引やポイント付与などのサービスを用意するなど、ユーザーがアプリを利用したくなるような施策を展開しましょう。
ユーザーにアプリの会員証を提示してもらうことで、店頭でもユーザーの属性情報やコミュニケーション履歴、購入履歴などを確認できるので、チャネルを問わず一貫性のある接客が可能になります。
④ Web広告
ECサイトで、過去にECサイトを訪問したことがあるユーザーに対して広告を表示させる場合、「リターゲティング広告」という手法を利用します。
リターゲティング広告は、ユーザーを追跡するためにWebサイトを横断して付与されるサードパーティCookie(3rd party Cookie)を使用しますが、近年はWebにおける個人情報の取り扱いを規制する動き(Cookie規制)が強まっており、規制後は、ユーザーが訪問しているWebサイトのドメインが直接発行するファーストパーティーCookie(1st party Cookie)を利用しなければならなくなります。
すでに、Appleの標準ブラウザ「Safari」はサードパーティCookieを完全にブロックし、ドメインを横断したユーザーの追跡が行えないようにしています。
また、Google Chromeは2024年中にサードパーティCookieを完全にブロックすることを発表しており、以降はリターゲティング広告が利用できなくなります。
そのため、自社サイトにアクセスしてもらうためのコンテンツマーケティングが今後ますます重要になってくるでしょう。
⑤ SNS
ユーザーと直接コミュニケーションを取れるSNSは重要な顧客接点です。そのため、SNSでは、公式、ブランド別、スタッフ配信用など、複数のアカウントを開設して、より多くのユーザーにフォローしてもらえるようにすべきでしょう。
例えば、先ほど紹介した資生堂では、美容部員がInstagramに美容情報を投稿したり、ライブ配信を行ったりすることで、顧客接点の創出とより親密な関係構築にも注力しています。
まとめ
オムニチャネルパーソナライゼーションを実現するためには大規模なシステム構築が必要となりますが、これから小売企業が成長していくためには、決して避けて通ることはできないでしょう。
オムニチャネルパーソナライゼーションを実現するためのシステムをお探しの場合には、インターファクトリーが提供するクラウドのECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」をおすすめします。ご興味のある方は、下記の公式サイトからお問い合わせください。