リピート通販は、商品を初回購入してくれた顧客に繰り返し購入(リピート)してもらうための通販ビジネスモデルで、例えば、シャンプーやスキンケアなどの美容・化粧品や健康食品といった消費財の通信販売で採用されています。
筆者の考えるリピート通販のポイントは以下の3つです。
◆リピート通販のポイント
② 初回購入率を上げる
③ フリークエンシー(購入頻度)を高める
ECで上記の②、③の取り組みを加速するためには、ECシステムの7つの機能を効果的に活用していく必要があります。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が「リピート通販」について解説します。
リピート通販モデルを選択する3つの理由
リピート通販は、顧客に繰り返し商品を購入してもらうことで継続的な収益を獲得する通販のビジネスモデルです。
事業者がリピート通販モデルを選択する理由は大きく3つあると筆者は考えています。
理由① 初回購入の確率を上げたいから
初回購入率の向上は小売企業にとって重要な課題の1つですが、売り切りモデルとは異なり、リピート通販モデルでは初回購入施策を考える際に少なくとも何回リピート購入が必要になるかまでを含めて販売計画を立案し、達成するための施策を打っていく必要があります。
例えば、新規参入したリピート通販事業で、商品Aを以下の価格設定で販売することになったとします。
◆商品Aの価格設定
原価:3,000円
粗利(定価ー原価):1,980円
この商品Aを最初から定価で販売しようとしても、ブランドの知名度もなく、商品の魅力や効果が知られていない商品を消費者に選んでもらうのは難しいでしょう。ですからリピート通販では、消費者の購買意欲を促進するために初回購入のハードルを低くして、初回購入時だけの特別価格を設定しているケースが多いです。
◆商品Aの初回購入時の特別価格設定
売価:980円 ※初回のみ定価-4,000円の特別価格で販売
原価:3,000円
粗利(売価ー原価):▲2,020円
上記の場合、定価から4,000円を値引きした金額を売価として設定しています。通常は5,000円近くする商品を1,000円以下で手に入れることができるので、消費者の関心を引きやすく、興味があれば気軽に購入してもらえる価格設定です。
しかしこの価格で売り続けると、1回の注文ごとに2,020円の赤字が計上され続けることになります。そのため、リピート通販モデルでは売り切りモデルとは異なり、最初から一定回数の購入を見込んで利益計画を立てます。
◆初回購入後、最低2回(計3回)の購入を前提とした場合の粗利計算
売価の合計:10,940円(初回特別価格 980円×1回+通常価格 4,980円×2回)
原価の合計:9,000円(3,000円×3回)
粗利(売価の合計ー原価の合計):1,940円
リピート通販の場合もまずは初回購入がカギとなるため、初回購入率を高めるために初回購入に特典を設定して消費者に訴求していきます。
◆初回購入特典の例
・初回料金ゼロ円(通常商品を無料提供)
・初回のみサンプル商品無料
このようにリピート通販では、初回購入とリピート購入を同時に追求していく必要があります。
理由② 1回あたりの購入単価が低く、初回購入だけでは利益が出ないから
2017年の調査では、ECでの1回の取引における平均購入単価は2,000~3,000円未満であると報告されています(※)。
※参考:ECのミカタ「約9割がECを利用!平均購入金額は『2,000円~3,000円未満』【GMOリサーチ調べ】」(2017年2月9日掲載)
1回あたりの購入単価が低いECでは、1人の顧客に1回購入してもらうだけでは、なかなか利益につながりませんから、いかにリピート購入してもらえるかが重要になります。
読者の皆さんも、Amazonや楽天市場、あるいはZOZOTOWNなどの大手ECモールを利用したことがあると思いますが、例えば、Amazonでは商品購入時に定期購入を選べる商品や「1-Click(ワンクリック)」で注文できる商品もあり、また受取方法に置き配を指定できるなど、購入の意思決定から手元に届くまでのさまざまな選択肢を提供することでユーザーの利便性を向上しています。
Amazonはこれらのサービスを通してユーザーの満足度を高めるだけでなく、使い勝手を良くすることでユーザーがリピート購入しやすい環境も提供しているのです。
理由③ 新規顧客の集客より既存顧客を対象としたWebマーケティングの方が低コストで効果が高いから
近年はWeb業界だけでなく、あらゆる業界でデジタルマーケティングが採用され始めたことでWeb広告料金が高騰しています。
Web広告料金が高騰している理由の1つとして、Web広告が採用しているオークション制度があります。例えばGoogle広告などのオークション制度を採用しているサービスでは、クリック単価(CPC)の上限となる入札単価を高く設定している事業者のほうがよりWeb広告が表示されやすくなります(※)。近年は潤沢なWeb広告予算を持つ大手企業などの参入も増えているためクリック単価が高騰しているのです。
※広告オークションの評価は入札単価だけではなく複数の要素が加味されますが、本記事では詳しい説明は省略します
以下は、2017~2022年の媒体別広告費の推移を示したグラフです。
◆媒体別広告費の推移
出典(図):株式会社電通「2022年 日本の広告費」(2023年2月24日発表)の媒体別広告費データより筆者作成
筆者が以前、英会話スクールでWebマーケティングを担当していた2013年頃は、新規顧客1人あたりの獲得コストの相場は大体1万円程度でしたが、グラフのとおり、2022年のインターネット広告費はおよそ3万円に値上がりしています。
このように、インターネット広告費は年々高くなっているため、予算が限られている場合には、集客を狙ったWeb広告はより効果的なタイミングで利用して、主に既存会員を対象としたリピート購入の施策に注力したほうが高い費用対効果が期待できるかもしれません。
リピート通販ECで求められる7つの主要機能
リピート通販を成功させるポイントは3つあると筆者は考えています。
◆リピート通販のポイント
② 初回購入率を上げる
③ フリークエンシー(購入頻度)を高める
今回は、ポイント②、③を実現するために必要な、リピート通販のECシステムの7つの主要機能を紹介します。
◆リピート通販のECシステムの7つの主要機能
機能① 定期購入/頒布会
機能② 会員管理
機能③ 口コミ・レビュー収集
機能④ 転売屋対策
機能⑤ 売上管理
機能⑥ ランディングページ(LP)や特設ページ
機能⑦ ブログ
それでは、機能①~⑦をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
機能① 定期購入/頒布会
ECサイトでリピート購入を促したい場合には、商品ページ等で定期購入があることを伝えるだけでなく、ユーザーが商品をカートに入れる際や決済をする際に定期購入を選択するための機能が必要になります。
通販では主に次の2つのリピート通販モデルがあります。
◆通販の2つのリピート通販モデル
・頒布会
「定期購入」は、同一商品を繰り返し提供する通販モデルです。ユーザーのもとには、最初にユーザーが選択した商品が定期的に届けられます。
「頒布会」は、毎回異なる商品を定期的に提供する通販モデルです。ユーザーのもとには、事業者が選んだ商品が定期的に届けられます。例えば、食材宅配サービスの「Oisix(オイシックス)」では頒布会モデルのサービスを提供しています。
ECでリピート通販サービスを提供するためには、「定期購入」や「頒布会」のフローに対応するための専用機能が必要になります。
ECのリピート通販(定期販売)については以下の関連記事で詳しく紹介していますので、興味のある方はあわせてご覧ください。
機能② 会員管理
通常のECと同じようにリピート通販でも会員管理機能は不可欠です。
◆ECの会員管理の主要機能
・休会/解約管理
・ポイント/会員ランク管理
・購入履歴管理
・問い合わせ履歴の登録・更新・参照
特にリピート通販では、ユーザーからのクレームだけでなく、定期購入の周期変更や決済方法の変更、あるいは休会や解約などの問い合わせが多くなります。そのためスタッフ向けの管理者機能だけでなく、ユーザー自身も会員ページで、基本情報の変更や削除、解約等の申請や申請の進捗状況などを確認できるようにしておくとよいでしょう。
機能③ 口コミ・レビュー収集
ECサイトでは商品レビューは最も強い影響力を持っています。
Amazonの商品レビューページにはたくさんのレビューが投稿されており、ユーザーが商品購入を決定する際のガイドの役割を果たしています(下図を参照)。
◆商品レビューページの例(Amazon)
引用(画像):「Amazon」の商品レビューページ
Amazonではより多くの人に商品レビューを投稿してもらうために、商品購入後に商品レビューの依頼メールを自動配信しています。
◆商品レビューの依頼メールの例(Amazon)
出典(画像):実際に筆者宛てに届いた「Amazon」の購入商品のレビュー依頼メール
このように、購入後のフローに商品レビュー依頼を組み込むことで、より多くのレビューを収集できる可能性が高くなります。
しかし、ユーザーに商品レビューを依頼する場合には、ステマ規制(ステルスマーケティングを不当表示とする景品表示法の規制)を遵守する必要があります。インセンティブを配布して商品レビューを書いてもらうことだけでは規制の対象にはなりませんが、ユーザーとの間でレビュー内容についてやり取りがあった場合、規制の対象となる可能性があります。
参考:ECzine「UGC活用、レビュー投稿依頼に注意は必要?2023年10月施行 ステマ規制と運用基準についてのまとめ」(2023年4月1日掲載)
◆ステマ規制対応で商品レビューページに掲載する注意書き文(例)
もし心配な場合は、商品ページのレビュー欄の前に上記のような文言を設置するのも良いでしょう。
機能④ 転売屋対策
リピート通販の初回購入施策で割引販売や無料提供を採用する場合には、転売目的の購入への対策が必要になります。
リピート通販では初回購入直後の退会を防ぐために初回購入時に以下のような前提条件を設定している場合もありますが、転売屋がこれらの前提条件を守ることは決してありません。
◆初回購入時の前提条件(例)
・定期購入の申し込みが必須
完璧な転売屋対策は存在しませんが、被害を少しでも減らすためには「不正検知システム」の導入が有効です。不正検知システムは、国内のECサイトへのアクセス情報データベースに基づいて自社のECサイトへの転売者と思われるアカウントからのアクセスを検知し、不正購入を制限することができます。
ECサイトに不正検知システムを導入するためには、システム連携の対応が必要になるため、新たにECサイトを構築する場合は、API連携が可能なECプラットフォームの利用をおすすめします。
転売屋対策については以下の関連記事でも紹介していますので、興味のある方はあわせてご覧ください。
機能⑤ 売上管理
ECのリピート施策ではLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)に焦点を当てるため、「一定の期間内で、1人の顧客が何回購入したか」というフリークエンシー(購入頻度)が重要な指標となります。マーケティングでは、フリークエンシーを「F+購入回数の数字」で表します。
◆フリークエンシー(購入頻度)の表記方法
F3:一定期間内に3回購入した顧客
F4:一定期間内に4回購入した顧客
(以降、F5、F6、…と続く)
フリークエンシーを高めるためには、データを分析して仮説を立てて施策を打つ、というPDCAをより多く回すことが大切です。
◆フリークエンシーデータを分析し、仮説に基づく施策を考える(イメージ)
[仮説に基づく施策] F3の解約検討を始めるタイミングに合わせて、もう少し踏み込んだ商品のメリットや口コミを紹介することで、継続購入の促進や解約判断の延長が期待できるのではないか?
このようにデータを分析して仮説に基づく施策を回していくためには、さまざまな切り口から売上実績データを見ていく必要がありますから、ECの管理画面で簡単な手順でいつでもグラフや表で参照できるようにすることで、業務効率を飛躍的に高めることができるでしょう。
機能⑥ ランディングページ(LP)や特設ページ
リピート通販の初回購入訴求では、「ランディングページ」と呼ばれる特設ページを作成し、Web広告施策と連動させながらページアクセス数と購入率を高めるという施策を実施することが多いです。
以下は化粧品通販のDHCの公式オンラインショップのランディングページです。
◆ランディングページの例(株式会社DHC公式オンラインショップ)
引用(画像):株式会社DHC公式オンラインショップのキャンペーンページ「5-ALA│健康食品ならDHC」より
特にリピート通販のECサイトでは、特設ページのデザインの自由度を高め、手軽にWebページを作成・公開できるように、ECサイト全体のテンプレートとは切り離して管理する仕組みが必要になります。
機能⑦ ブログ
Web広告やSNSだけで集客できるのであれば必要ありませんが、ブログ記事のSEOを強化してアクセス数を増やすという方法はECにおけるWebマーケティングの手段の1つです。
集客のためにブログを利用する場合は、Googleの検索エンジンの評価を高めるために自社ドメインでブログサイトを開設するようにしましょう。
ブログサイトの構築には、世界一のブログのプラットフォームのWordPressを利用するのも手軽かつ有力な選択肢の1つとなります。ユーザー数の多いWordPressでは、無料あるいは低価格で使用できるWebサイトのデザインテンプレートや機能が多く公開されているため、コストを抑えて短期間で手軽にブログサイトを開設することができます。
市場での自社のポジションを明確にしよう
ビジネスを成功させるためには市場を知ることが大切になりますので、まずは以下のようなポジショニングマップを作成することをおすすめします。
◆価格と機能を軸とした自社商品のポジショニングマップ(例)
出典(図):筆者作成
上図では、「機能」と「価格」の2軸から成る4つの象限に他社と自社の商品をマッピングしています。このように、図にすることで市場における自社のポジションが一目で分かります。
新規事業では競合がより少ない市場に参入するほうが障壁は低くなりますが、そもそも顧客二ーズがない、あるいは実現不可能な領域である可能性もありますから、市場や業界の動向などを含めて多角的な分析と判断が必要になります。
新商品は模倣されやすい
今までにない新しいコンセプトを持った商品の開発も成功したとしても、競合他社が同じような商品を販売し始めた途端に価格競争が激化します。
新商品を簡単に模倣されないようにするためには、以下のような要素を取り入れる必要があるでしょう。
◆模倣しづらい商品の要素
・独自開発成分が配合されている
・低価格で提供する
まとめ
今回は、以下のリピート通販の3つのポイントのうち②、③について解説しました。
◆リピート通販のポイント
② 初回購入率を上げる
③ フリークエンシー(購入頻度)を高める
特に、②、③をスピーディーに達成するためには、ECサイトに7つの主要機能が必要になります。
これからEC事業を始めようとしている方、あるいは、現行のECシステムでは最新化に対応できないとお悩みの方は、インターファクトリーが提供しているフルカスタマイズ可能なクラウドECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」を検討してみてください。
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