売上管理とは、企業が商品やサービスを販売して得た売上データを正しく記録し、事業を継続的に成長させるための売上分析が可能な状態で管理することです。
具体的には「いつ」「何が」「どれだけ」「いくらで」売れたのかを日々記録し、売上の増減や傾向を可視化・分析して、経営判断や営業施策、在庫管理、資金繰りなどに役立てます。正しい売上管理には、データの記録・集計に加え、売上の構成要素を正確に捉えて次の施策につなげることも含まれます。
正しい売上管理とは、「なぜその数字になったのかが分かる」状態で管理することです。単に数字の記録と集計だけを行っている状態では、売上管理とは言えません。なぜなら、売上管理の目的は、売上データから経営や現場が意思決定を行えるようにすることだからです。
正しい売上管理を実践するためには、売上データを一元管理するための仕組みも欠かせません。EC、実店舗、在庫管理や受発注システムのデータを一元化し統合管理できるソリューションを導入・活用することで、売上データを「意思決定のために使える情報」として運用しやすくなります。
この記事では、インターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者が、実務視点で「売上管理」を解説します。実務で使える売上管理の無料フォーマットをダウンロードできますので、ぜひ活用してください。
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初めて売上管理を学ぶ・行うという場合には、売上管理シートを実際に見てみることが、最も早く売上管理を理解する方法になります。本記事では、売上管理の実務で使える無料フォーマットを用意しましたので、ダウンロードして使用してください。
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ダウンロードした売上管理シート(Excelファイル)は、数値を入力すると自動的にグラフも作成されますので、ぜひいろいろ入力して試してみてください。
売上管理の下準備として「売上の要素分解」を行う
売上管理を行う前に、まずは、売上の構成要素を分解して、それぞれの現状を知ることが重要です。「合計数値」だけを見ていては、適切な意思決定を行うことはできません。ここでは「売上の要素分解」の方法について、ECを運営しているA社と実店舗を運営しているB社という2社の架空の小売企業の例に沿って解説します。
A社(EC企業)の売上の要素分解
EC事業の売上の基本的な構成要素は以下の3つ(①〜③)です。
◆EC事業の売上の3つの構成要素
A社のある月の売上実績は以下のとおりだったとしましょう。
A社(EC企業)の月間売上シミュレーション
| 売上要素(月間) | 実績値 |
| ① 集客数(セッション数) | 30,000人 |
| ② 購入率(CVR) | 1.0% (300件) |
| ③ 客単価 | 1,000円 |
| 売上合計 | 300,000円 |
この場合、売上を増やすために必要なアクションとして以下の3つが考えられます。
◆A社(EC企業)が売上を増やすために必要な3つのアクション
②購入率(CVR)を高める:例)ホームページリニューアル、ランディングページ最適化(LPO)、エントリーフォーム最適化(EFO)
③客単価を上げる:例)商品単価を上げる、セット商品を販売する、アップセルを行う
このように、各要素を詳細に分析することで、「課題」と「打つべき対策」が明確になります。
B社(実店舗企業)の売上要素を分解する
EC事業と同様に、実店舗事業の売上も3つの基本要素に分解します。「集客数」は、ECでは「セッション数」でしたが、実店舗では「入店数」となります。
B社のある月の売上実績は以下のとおりだったとしましょう。
B社(実店舗企業)の月間売上シミュレーション
| 売上要素(月間) | 実績値 | 要素の補足 |
| ① 集客数(入店数) | 5,000人 | 入店者人数 |
| ② 購買率 | 10% (500件) | 入店者のうち、商品を購入した者の割合 |
| ③ 客単価 | 6,000円 | 1回の会計における平均金額 |
| 売上合計 | 3,000,000円 | ー |
この場合、売上を増やすために必要なアクションとして以下の3つが考えられます。
◆B社が売上を増やすための3つのアクション
② 購入率を高める:例)セールの実施、接客の改善、キャッシュレス決済の導入
③ 客単価を上げる:例)商品単価を上げる、複数買いの促進、買い物カゴの設置
A社と同じように、要素を詳細に見ていくことで、具体的な施策案を策定できます。
このように、売上管理では売上の構成要素を分解し、売上増加に最も効果的な対策を見極められる状態にすることが大切です。
また、施策の効果を正しく捉えるためには、日々の数値を記録し、推移を見ることです。変化をいち早く捉えることで、いち早く次の施策を打つことが可能になります。
売上管理が必要な7つの項目
正しい売上管理を行うためには、以下の7つの項目を必ず記録し、推移を見ていく必要があります。
◆売上管理が必要な7つの項目
② 実績:実際の売上合計
③ 達成率(%):目標に対する達成率。「実績÷日割予算×100」で算出
④ 客数(人):商品を注文した人の数。
⑤ 客単価(円):1回の注文における平均金額。「実績÷客数」で算出
⑥ 集客数(セッション数/来店者数):店舗(EC/実店舗)に訪れた人の数。 購買率(CVR)の算出に必要
⑦ 施策メモ:「広告を開始した」「店頭看板を変えた」など、数値に影響する、あるいは影響したイベントを記録する
売上管理は、実績を記録するだけの作業ではなく、目標に対する実績が分かるように管理することで、調子が良いのか、悪いのかを把握することができます。
売上管理の3つの方法
売上管理を行うには、以下の3つの方法があります。
◆売上管理の3つの方法
方法② 専用ソフトを使用する
方法③ POSレジやECシステムの機能を利用する
それでは、1つずつ解説します。
方法① ExcelやGoogleスプレッドシートなどを使ってファイル管理する
ファイル管理は、多くの個人・小規模事業者が売上管理を始める際に最も選ばれる方法の1つです。専用ツールを用意する必要がなく、自社の売上管理に必要な項目を設定し、手軽かつ柔軟に運用できます。
一般には、「最初に月次目標を立て、日々の実績を積み上げて月次目標を達成する」ために使用します。
売上管理シートでは、例えば以下のような項目を管理します。
◆売上管理シートにおける主な管理項目
・売上実績(日/週)
・売上実績の累計(日/週)
・売上目標の達成率(日/週)
・売上目標と売上実績の累計の差額(日/週)
これらを1つの表で管理することで、現在の売上で月の売上目標を達成できそうか、残りの期間でいくら売上を立てる必要があるのかなどを、定量的に捉えられるようになります。また、日別の売上実績や売上実績の累計の推移をグラフにすると、売上の伸びや停滞、変化を視覚的に確認できます。
ファイルを使った売上管理は、自社固有の指標に合わせて管理項目を柔軟に設計できるため、自社の売上を構成する要素を理解するためにも適しており、事業や売上の規模が小さく、販売チャネルが少ない場合に効率的な方法です。
しかし、事業規模が成長していく過程で運用課題が生じやすくなります。ファイルによる売上管理は手作業で行っていることが多く、例えばPOSやEC、受注管理などのシステムを使用している場合は、複数のシステムからデータを集めて入力していく必要があり、データ量やシステム数が増えると誤入力などのミスも増加しやすくなります。
また、入力ルールや更新タイミング、更新の責任者を明確に定義せずに運用してしまうと属人化しやすく、データの信頼性も低下するため、「正しい売上管理」からどんどん遠ざかってしまいます。
いつの間にか管理業務の負荷が高くなり売上管理が形骸化してしまい、適切なデータ活用ができなくなっている企業も少なくありません。
このように、ファイルによる売上管理は、自社の売上を理解しながら数字を見る習慣を得るために有効な方法ですが、事業規模の拡大や販売チャネルの増加とともに、手作業中心の管理では対応しきれなくなります。
方法② 専用ソフトウェアを使う
ファイル管理の次に選ばれることが多いのが、売上管理(販売管理)の専用ソフトウェアを使う方法です。売上管理ソフトウェアは、売上データの集計・可視化・分析に特化して設計されており、経営管理やマネジメントの用途で導入されます。
ファイルでの管理との大きな違いは、集計/分析機能をソフトウェアで自動化できる点です。日別・月別・部門別といった集計軸が標準機能で提供されており、グラフやレポートを自動で生成できます。
また、データの入力ルールや計算ロジックはソフトウェアの仕様に沿った運用となるため、数値の定義が明確化し、担当者による属人化が起こりにくくなります。
売上管理の専用ソフトウェアはさまざまなサービスが提供されていますが、今回は、代表的なサービスを3つ紹介します。
◆代表的な売上管理ソフトウェアの例
| サービス名 | 特徴 |
| 弥生販売 | 中小企業を中心に広く利用されている販売管理ソフト。売上・請求・在庫といった基本的な販売管理業務を一通りカバーしており、会計ソフトとの連携もしやすい |
| 商蔵奉行クラウド | 販売管理・仕入管理・在庫管理を統合的に扱えるクラウド型システム。業務フローを標準化しながら、組織的な売上管理を行いたい企業に適している |
| freee販売 | クラウド会計との連携を前提に設計された販売管理システム。受注・売上・請求の流れをシンプルに管理でき、バックオフィス全体の効率化を重視する企業に適している |
いずれも、売上管理ソフトウェアで使用する売上データは、POSレジ、EC、基幹などの売上データを取り込む必要があるため、導入時には、他システムとのデータ連携の実装と、データを取り込むタイミングの設定・管理などが必要になる点に留意しましょう。
方法③ POSレジやECシステムの売上管理機能を利用する
POSレジやECシステムでは、会計や受注が発生した時点で、売上金額・商品情報・数量・日時などのデータをそのまま記録しており、日別/月別の売上推移や商品の種類別/カテゴリ別の売上状況をリアルタイムで表示できます。
POSレジやECシステムの売上管理機能を利用すると、システム内に日々の受発注データが自動で蓄積されているため、「売上データを集める(取り込む)」作業が不要になります。そのため、データの誤入力などのミスが発生することなく、データの信頼性が高まります。
また、POSレジやECシステムの売上管理機能では、在庫情報や受発注情報のひも付け管理ができるため、例えば「売上が伸びている商品は何か」「欠品が売上に影響を与えていないか」といった観点でデータ分析を行うことで、実務レベルでデータに基づく意思決定が行えるようになります。
日々の業務と売上管理を1つのシステムで管理・運用できるため、特に、ECと実店舗を運営している企業や取り扱い商品点数の多い企業などでは、統合管理を効率的に行える点も大きな利点です。
ただし、POSレジやECシステムの売上管理機能はサービスごとに対応範囲と強みが異なるため、売上管理機能の利用を検討する際は、「どの範囲で売上を把握・分析したいか」「誰が売上データを見るのか」などの目的を明確にし、希望する運用を売上管理機能で実現できるかどうかを確認するようにしましょう。
4つのケーススタディを通して最適な「売上管理方法」を見極めるコツをつかもう
売上管理の最適な方法は、事業規模や業態、売上管理を行う人の役割によって異なります。ここでは、売上管理の事業規模や担当者の役割が異なる4つのケース別に、どの売上管理方法が適しているかを考えてみましょう。
ケース① 小規模店舗を個人運営している場合はExcelなどでファイル管理する
個人で小規模店舗を運営している場合には、売上管理に割けるリソースは限られるため、日々の業務をこなしながら売上管理まで行うのは負担になります。
また、高額な初期費用や月額費用が発生するような専用ソフトウェアの導入・運用コストを捻出するのが難しいケースも少なくありません。
さらに、売上規模が小さい場合にはデータの種類や量も少ないため、複雑な集計や高度な分析を行わなくても、売上の全体像を把握できます。
そのため費用対効果を考えると、このケースではファイルを使った売上管理が適しています。売上管理は無理なく続けられる状況であることが大切ですから、事業成長に伴い、手作業での管理が難しくなってきたら、別の方法を検討するようにしましょう。
ケース② 成長中の実店舗運営企業はPOSレジの売上管理機能を使う
実店舗運営では、売上規模が拡大するにつれ、毎日営業終了後に手作業で売上管理を行うことが、時間的にも体力的にも難しくなります。
そのため、このケースではPOSレジの売上管理機能を使用して、日々の業務と一緒に売上管理を行う方法が適しています。
例えば、クラウド型のPOSレジの売上管理機能では、売上データの自動記録だけでなく、日別/月別の売上高はもちろん、商品別・カテゴリ別の売上状況をリアルタイムで確認できます。また、複数店舗を運営している場合も、各店のPOS情報を本部で統合管理することも可能です。
成長中の実店舗運営では、日々の売上の変化をとらえて迅速に行動するための、正確かつタイムリーなデータが重要になります。
ケース③ EC運営企業はECシステムの売上管理機能を使う
24時間365日営業のECでは、時間や曜日に関係なく注文が発生し、商品点数やキャンペーン、配送方法などの種類が多いため、売上データの項目は実店舗と比べると複雑になります。
そのため、このケースではECシステムの売上管理機能を使用して、自動で売上管理を行う方法が適しています。
ECシステムの売上管理機能では、注文が確定した時点で売上データが自動的に蓄積され、日別/月別の売上推移などを確認することができます。また、売上金額だけでなく、配送方法や決済方法、キャンペーンの適用有無など、EC特有の情報も売上情報にひも付けて管理できるため、「どの商品の売上が伸びているのか」「キャンペーンの効果はどうだったか」といった分析や効果測定も可能になります。さらに、ECシステムと在庫管理や出荷情報を連携することで欠品や過剰在庫などのリスクにも気付きやすくなります。
ECシステムの売上管理機能を使うことで受注業務の中に売上管理を組み込めるため、効率的な売上管理と信頼性の高いデータ活用が実現できます。
ケース④ 経営企画部門やマーケティング部門は専用ソフトを使う
経営企画部門やマーケティング部門が売上管理を行う場合には、業務部門の実績を評価することばかりに目を向けるのではなく、現在の売上状況から、次のアクションのための最適な意思決定を行うためのインサイトを提示していくことが重要です。そのためには、「売上がどのような構造で伸びているのか」「施策によってどの数値がどう変化したのか」など、複数の販売チャネルを横断した高度な分析が求められます。
近年はPOSレジやECシステムの売上管理機能も高度化してきていますが、より高度な分析を効率よく行うためには、集計軸や指標を柔軟に設定し、レポートやグラフを自在に作成できる専用ソフトウェアを使った方法が適しています。
◆POSレジ/ECシステムの売上管理機能と専用ソフトウェアの特徴
| POSレジ/ECシステムの売上管理機能 | ・日次/月次の売上推移、商品別・時間帯別などの基本的な多軸分析が可能
・販売チャネルにひも付くデータ分析(流入経路、デバイス、顧客行動履歴など)が得意 |
| 専用ソフトウェア | ・「受注」「売上」「請求」「入金」「仕入」「在庫」「原価」など、バックオフィス全体のデータを一元管理できるため、利益率や在庫回転などの分析も容易
・会計システムとの連携を前提としているサービスが多く、粗利・部門損益・プロジェクト別収益性といった「経営管理」の視点で売上管理ができる |
出典:筆者作成
POSレジやECシステムの売上管理機能と専用ソフトウェアとでは、得意な領域が異なり、前者は業務運用視点の売上管理向きで、後者は経営視点の売上管理と分析に向いています。
売上管理は1つのツールに集約する必要はなく、同じデータを使用できる環境が整備されていればよいため、業務部門はPOSやECシステムの売上管理機能を使用し、経営企画やマーケティングでは、専用ソフトウェアを使用することで、目的に合わせてより有効にデータを活用することができます。
まとめ
正しい売上管理とは、単なる売上合計の記録ではなく、売上の構成要素を分解して各要素の状態をつまびらかにし、「なぜその数字になったのかが分かる」状態で管理することです。
本記事では3つの売上管理方法を紹介しましたが、どの方法が適しているかは、事業規模や業態、売上管理を行う部門によって異なります。
例えばECでは、流入経路、デバイス、顧客行動、キャンペーン施策など、ECならではの文脈と売上をひも付けて管理する必要があるため、ECシステムの売上管理機能を使用する方法が極めて合理的な選択となります。
インターファクトリーのクラウド型ECシステム「EBISUMART(エビスマート)」は、期間・商品・時間帯・決済方法など、さまざまな条件での集計・分析に対応可能な売上機能を提供しており、レポートはグラフやCSV形式で出力できるため運営判断から施策検証まで幅広い用途で使用できます。またPOSシステムとの連携にも対応しているので、実店舗とECの売上データと統合管理することも可能です。
売上管理は1つのツールに集約する必要はなく、自社の用途に最適な方法で正しい売上管理を継続しやすい環境を整えることが大切です。
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