時計ECサイトの構築を成功させるために必要な7つの機能


時計販売では、高価格帯商材ならではの特性を踏まえたECサイトを構築することが重要です。一般的なECサイトの平均購入単価はおよそ5,000円と言われますが、高級時計の場合は数万~数十万円の商品も多く、購入時の心理的なハードルは高くなります

そのため、時計ECサイトでは、実際に商品を手に取れる実店舗の紹介や、商品マニュアル、延長保証サービスの提供有無、分割払いなどの支払い方法の選択肢を明確に提示し、顧客に安心して購入してもらえる環境を整備する必要があります。

時計ECサイトには、以下の7つの機能が必要になります。

時計ECサイトに必要な7つの機能

機能① 取扱店舗の掲載
機能② 顧客情報の管理
機能③ 予約販売と再入荷通知
機能④ 高度な商品検索
機能⑤ ギフト対応
機能⑥ Webマニュアル
機能⑦ レコメンド

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、時計ECサイトの構築を成功させるために必要な7つのEC機能を解説します。

2023年の時計物販市場規模は前年比26.6%増の1兆1,036億円

矢野経済研究所が2025年2月に発表した調査報告では、2023年の国内腕時計小売の市場規模は、前年比26.6%増1兆1,036億円に達し、2024年には前年比10.2%増の1兆2,160億円に達すると予測されています。

◆国内ウォッチ(腕時計)小売市場規模と予測

時計ECの市場規模

注1:小売金額ベース
注2:2017~2023年データ(実績値)は一般社団法人日本時計協会より引用。2024年は矢野経済研究所予測値

出典(グラフ):株式会社矢野経済研究所|プレスリリース「国内時計市場に関する調査を実施(2025年)」(2025年3月28日発表)より筆者作成

2023年に国内市場が活況を呈した要因としては、若者世代の富裕層による高級時計への投資需要、環境に配慮した機械式時計の再評価、そして訪日外国人観光客による需要の回復などが挙げられています。

2024年の市場傾向では、高級時計ブームが落ち着き、中堅ブランドが高品質の新作商品を展開するなどして一部の消費者の需要を獲得しているなど、成長が予測されています。ただし、時計市場規模の拡大基調もまた、近年の原材料費や人件費、輸送コストの高騰などによるブランド各社の値上げが大きく影響している点は留意する必要があります。

参考:株式会社矢野経済研究所|プレスリリース「国内時計市場に関する調査を実施(2025年)」(2025年3月28日発表)

国内時計ブランドに求められるECサイトとは?

ECサイトは「売る場所」であると同時に、「選ばれる理由を伝える場所」でもあります。世界的に有名な高級ブランドのようにブランド名だけで売れる商品はごくわずかですから、製品の品質と魅力、製造におけるこだわりなどを具体的に伝えるためのコンテンツ設計が重要です。

また、ECサイトで安心して数万〜数十万円の時計を買ってもらうためには、実際に商品を手に取れる実店舗紹介やWebマニュアル、延長保証、分割払いなどのサービスを提供する必要があります。

時計ECサイトに必要な7つの機能

それでは、時計ECサイトに必要な7つの機能を、1つずつ見ていきましょう。

機能① 取扱店舗の掲載(トップページ、商品ページ)

ECサイトで高価格帯商品の購入を検討する際は、「実物を見たい」「専門のスタッフに詳しく話を聞きたい」という消費者心理が働きやすくなります。そのため、メーカー直営のECサイトの場合でも、取扱店舗の情報を積極的に掲載しましょう。

例えば、スイスの時計メーカー「Swatch」の日本の公式ECサイトでは、商品ページの「カートに入れる」ボタンのすぐ下に、近隣の実店舗を探せる「ストアで探す」クリックコンテンツを表示しています(下図の赤枠内を参照)。

◆Swatchの商品ページ

swatchのECサイトの商品ページ

引用(画像):「Swatch」日本の公式サイトの商品ページ、赤枠は筆者が加筆

カートに入れる前に、対面で実物を確認するための方法を提示し、高額商品の購入における不安を軽減しています。

このように、取扱店舗の情報はECサイトのトップページや店舗情報ページだけでなく、すべての商品ページに表示する方法が理想的です。商品ページでは「この商品を取り扱っている店舗」などの情報を提供するなどの工夫をすることで、ECサイトで商品に興味を持ったものの購入を迷っている消費者を、最も関心が高いタイミングで実店舗に誘導することができます。

高級時計のような高付加価値商品の販売では、ECサイトと実店舗の強みを生かし、弱みを補完し合う形で購入体験を設計することが重要です。

機能② 顧客情報の管理

時計のように日常的に使用する商品は必ず部品の摩耗や故障が生じます。筆者が愛用している有名ブランドの腕時計も、数年に一度は調子が悪くなりメンテナンスが必要になります。また、カシオの「G-SHOCK」などのように、どんなに耐久性に優れている商品であっても、バンドの劣化や部品の摩耗を避けることはできません。

そのため、ECサイトにも顧客情報と購入履歴を管理するための機能が重要になります。例えば、商品を購入時に会員情報と商品のシリアルナンバー、購入日などを登録し、ECサイトでいつでも参照できるようにしておくことで、メンテナンスが必要になったときに、スムーズに依頼・対応することができます。

また店舗側では、過去の購入履歴に基づいてバンド交換などの事前メンテナンスの案内や買い替えの提案などの、長期的なアフターサービスとアプローチも展開しやすくなります

特に高級時計は売れたら終わりという商材ではなく、購入後のサポートも、優れた顧客体験を提供するために重要なサービスです。顧客接点の記録として顧客情報を管理・運用することで、ブランドと商品に対する顧客ロイヤリティが高まり、長期にわたるファンを育成することができるでしょう。

機能③ 予約販売と再入荷通知

限定モデルやキャンペーン商品など、特に注文が集中しやすい商品をECで販売する場合には、「予約販売」機能が不可欠です。ECサイトの予約販売は、企業側には売上予測と在庫管理の調整がしやすくなり、受注と発送を分けて対応できるといったメリットがあり、顧客側には、購入の機会損失を低減したり、商品への期待感を高めたりといった効果があります。

ECサイトの予約販売機能は、必要に応じて「先着順」か「抽選」かを選択できるようにしましょう。例えば、数量限定商品などでは抽選方式で予約を受け付け当選者に購入権を付与するなどすることで、消費者に対して公平性を示しつつ、販売時の混乱を回避することができます。

また、在庫がなくなっても再入荷の予定がある商品には、「再入荷通知」機能を実装しましょう。商品が再入荷したら案内を自動送信することで、販売機会の損失を防ぎ、顧客の期待に応えることができます。

機能④ 高度な商品検索(ブランド検索、価格帯検索、スペック情報検索)

多種多様な商品を販売するECサイトでは、顧客が目的の商品ページにスムーズにたどり着けるように、「高度な商品検索」機能を提供する必要があります。キーワード検索だけでなく、ブランド名、価格帯、駆動方式(自動巻き・クォーツなど)、防水機能の有無など、複数条件で対象商品を絞り込める検索フィルターを実装しましょう。

高級時計の購入では、希望条件に沿った商品を探している人も多いため、訪問したECサイトで希望に合う商品をすぐに見つけられない場合は、すぐに離脱して別の時計ECサイトに移動してしまうでしょう。「〇〇円台で購入できるフォーマル用の時計」「日常で気軽に使える高性能モデル」などの多様な消費者ニーズに応えるためには、柔軟な検索機能と直感的なUIが求められます。

また、検索結果表示画面で並び替え(価格順・人気順・発売日順)、お気に入り登録、商品比較などができるようにして、ECサイト全体の利便性を向上させましょう。

ECサイトでは、商品を検索して購入するというのが一連の行動となるため、商品の探しやすさは売上に直接影響します。

機能⑤ ギフト対応

ジュエリーなどと同様に、時計もギフト需要の高い商品です。誕生日、就職祝い、結婚記念日、退職祝いなど、人生の節目に贈るギフトとして選ばれることが多く、必ずしも購入者は時計ファンであるとは限りません。そのため、ECサイトに「ギフト対応」を提供することで、時計ファン以外の新たな顧客層を取り込める可能性があります

ECの「ギフト対応」機能としては、ギフトラッピングの指定、メッセージカードの有無、納品書を同封しないなどのオプション設定が挙げられます。

また、贈る相手の性別や年齢、ライフスタイルに応じたギフトを提案する専用ページを用意することも有効です。例えば、「男性向けギフト」「30代に人気のモデル」「仕事で使える時計」というように、購入目的に沿った導線を用意することで、何を贈れば良いか迷っている人を呼び込むことができます。

ギフト需要を丁寧にすくい上げることで、ブランド認知度の向上と新たな購入層の開拓が期待できます。ECサイトの「ギフト対応」機能については、関連記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事:ギフト向けECサイトに必要な5つの機能をECのプロが徹底解説

機能⑥ Webマニュアル

高額商品をECサイトで購入することにためらいがある人は少なくありません。商品ページの情報だけでは、「設定方法は難しくないのか」「メンテナンスは何をどうすればいいのか」といった細かな疑問が解決されず、不安を解消することができません

ECサイトに「Webマニュアル」機能を実装することで、消費者の不安を軽減することができます。商品ページに取り扱い説明書(PDF)やオンラインマニュアル、使い方動画などを掲載しておくことで、商品の仕様や操作性、使用イメージを明確に伝えることができます。例えば、自動巻きや複雑な機構を持つ時計の場合には、ゼンマイを巻く方法、日付の設定方法、防水性能の注意事項などを分かりやすく伝えることで、顧客は安心して購入を決めることができ、ECサイトへの信頼度が高まります

また、Webマニュアルは購入後サポートアイテムとしても役立ちます。ECサイトでいつでも確認できるようにしておくことで、サポート窓口への問い合わせ前に顧客が自分で確認することができます。

高級商品を取り扱うECサイトでは、「商品を安心して購入し、長く使ってもらうための大切な情報」のコンテンツとしてWebマニュアルを提供するようにしましょう。

機能⑦ レコメンド

実店舗では、店舗スタッフの提案を受けながら、価格帯が同じでデザインが似ている複数の商品を比較して購入商品を検討します。

ECサイトでも、実店舗と同レベルの購入体験を再現できることが理想です。商品比較についてはECサイトの得意分野なので、「店舗スタッフの提案を受けながら」に相当する部分を「レコメンド」機能で補完する必要があります。

「この商品を見た人はこんな商品も見ています」「同じシリーズの別カラー」「同価格帯の人気モデル」というように、消費者の興味関心に合わせてパーソナライズした商品を提案することで、ECサイト内を回遊して複数の商品を比較検討してもらうことができます。

AIによるレコメンドや、過去の閲覧履歴・購入履歴に基づくレコメンドなどを実装して、パーソナライズされたオンライン接客を提供していきましょう。

売上アップを後押しする2つのサービス

時計ECサイトの売上向上を後押しするための2つのサービスを紹介します。

サービス① 延長保証

購入後の長期使用を前提とした商品を購入した顧客は、「保証期間が過ぎたらどうしよう」という不安を抱えています。一般的なメーカー保証では1年保証が多く、購入から1年を過ぎたタイミングで故障や不具合が発生すると修理費が高額になる可能性があり、購入をためらう要因となります。こうした不安を取り除くためには、「延長保証サービス」の提供が有効です。

「proteger(プロテジャー)」などの延長保証サービスを利用することで、ECサイトでも商品購入時に延長保証のオプションを提供することができます。

参考:ECのための延長保証「proteger」(株式会社kiva)

延長保証サービスは、高額商品を安心して購入してもらうための道具の1つとも言える機能で、延長保証の有無が購入の決め手となる場合もあります。

延長保証サービスについては、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

参考:proteger(プロテジャー)「延長保証サービスを徹底解説!サービスに加入すべき理由とは?」(2022年12月6日)

サービス② 分割払いサービス「ペイディ」

高級時計の一括購入はハードルが高く、欲しい商品があっても予算の都合で購入を見送る人も少なくないでしょう。そういった高額支払いにおける消費者の負担を軽減するために有効なのが、あと払い・分割払いサービス「ペイディ」の導入です。

ペイディを導入すると、ECサイトの商品ページやカート画面に「月々●●円から購入可能」といった分割払いのウィジェットが表示されるようになるため、価格に対する購入時の心理的なハードルを下げることができ、コンバージョンの増加が期待できます。高額商材に対して「分割払い」は、とても相性が良い支払い方法なのです。

ペイディは、クレジットカード登録不要で、メールアドレスと電話番号だけで利用できるため、特にクレジットカードを持っていない若者にとって便利な支払い方法です。

参考:ペイディ公式サイト

購入の意思は強くても資金調達で躊躇されやすい高額商材の販売では、ペイディをはじめ、複数の支払い方法を提供することで、販売機会の拡大につながります。

ECサイトにおける分割払いの導入については、関連記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事:事業者が「分割払い」をECサイトや店舗で導入する理由と方法

まとめ:顧客体験を通じて、ブランディングを確立する

時計は人生の節目となる記念の品として選ばれるアイテムでもあり、時計ECサイトは、商品を売るだけの場所ではなく、購入検討から購入後のアフターケアまで、長期的な顧客接点の場所として優れたブランド体験を提供していくことが大切です。

今回紹介した時計ECサイトに必要な機能やサービスは、顧客の不安を軽減し、ブランドに対する信頼を高めるために役立ちます。インターファクトリーのクラウドECプラットフォーム「EBISUMART(エビスマート)」では、時計ECサイトに必要な機能とサービスをすべて実現できます。

興味のある方は、以下の公式サイトをご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。

公式サイト:「EBISUMART(エビスマート)


ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。