2024年9月に経済産業省から発表された調査結果によると、2023年の全世界のBtoC-EC市場規模の推計値(旅行・チケット販売を除く)は821兆円※とされており、2027年まで引き続き市場成長を続ける見込みです。※1USドル=141円で計算
当記事においてデータや図は指定がない場合、経済産業省の最新の調査結果より引用:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2024年9月発表)
EC市場が急激に成長している背景のひとつとして、インターネット人口が飛躍的に増加したことが関係します。昔はインターネットにアクセスするには高額なパソコンが必要でしたが、アクセスが容易な新しいデバイスとしてスマートフォンが普及したため、インターネット人口が急激に伸びました。
そのため先進国から途上国まで、世界中で誰でもインターネットに気軽にアクセスし、ECサイトで買い物をすることが可能になりました。
今後も人口が伸び続けるインドやアジア新興国を中心に、さらなるEC市場の拡大が予想されます。
本日は経済産業省が2024年9月に発表した調査結果をもとに、ebisumartでWEBマーケティングを担当している筆者が、世界のEC市場規模について詳しく解説いたします。
世界のBtoC-EC市場規模の予測値(旅行・チケットを除く)
まずは、経済産業省の資料に世界のEC市場規模の2027年までの予測値のデータがありましたので、ご紹介いたします。
なお、このデータの出所は「eMarketer, Jan 2024」をもとに経済産業省が作成したものであり、経済産業省が他で発表している統計データと異なります、あくまで予測値であるという前提を踏まえてご覧ください。
また、下記グラフの日本円のレート換算は2023年の年間平均レート「1USドル=141円」で計算しており、未来のレートを反映していない点もご注意ください。
◆世界のBtoC-EC市場規模(単位:兆USドル)
棒グラフは市場規模、折れ線グラフはEC化率を表します。世界のEC市場は右肩上がりに堅調に今後も推移して行きます。先進国では、すでにインターネットは都市部を中心に普及していますが、物流や配送に課題を抱えていることがあり、各国によってECの普及率に差が生じます。
例えば、日本でもECの市場規模は伸びてはいますが、市場規模の大きい食品や医療業界のEC化が進んでいないこともあり、今後、画期的なサービスがこの分野において新たに生まれないと、日本のEC化率をあげるのは困難と思われていました。
しかし、2020年に世界中を覆ったコロナ禍の影響により、消費者のEC利用が飛躍的に伸長しました。上記の市場規模予測は、コロナ禍によるデジタルシフトも踏まえた予測と思われますが、今後この予測以上にEC市場が伸びる可能性も十分に考えられます。
では、次に経済産業省の発表のデータにある、世界各国のEC市場規模のランキングを見てみましょう。
世界各国のEC市場規模ランキング
下記円グラフは、2023年の国別のBtoC-EC市場規模(推計値)の上位10カ国を示したものです。
◆国別BtoC-EC市場規模トップ10(2023年)
※出所:eMarketer, Top 10 Countries, Ranked by Retail Ecommerce Sales, 2023をもとに経済産業省が作成
ECの市場規模において、中国と米国が世界の約7割のシェアを占めておりますが、中国が圧倒的な1位であり、米国も他国と比較すると市場規模は大きいものの、やはり中国との差は歴然です。
日本は市場規模において世界4位であるものの、市場規模は世界と比べるとそこまで大きくはありません。先に書いたとおり日本の中でEC化が進んでいる業界と、そうではない業界で2極化しており、日本市場に画期的な新たなサービスが生まれない限り、この状況は改善していきません。
インドのECの市場規模は、世界ランキングだと6位ですが、インド企業において「ユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)」が急増しております。
下記の記事によると、中国指導部による、中国の民間企業の締め付けにより、世界のベンチャー投資マネーの受け皿としてインド企業が注目を浴びているのが一因になっているのです。
それでは、各国EC市場の状況を解説してまいります。
各国のEC市場の状況
中国EC市場の状況
中国のEC市場規模は世界1位であり、2位の米国と圧倒的な差があります。世界のEC市場をけん引しているのは間違いなく中国と言えます。その市場規模を支えているのは、中国のインターネット人口です。最新の調査によると、中国ではコロナ禍を機にインターネット人口が大きく増加し、下記記事によると、2023年12月末時点で10億9,200万人にのぼり、普及率は77.5%に達しているとされています。
このことから、中国人のインターネット人口が、世界のEC市場の伸び率に大きく影響しているのかがわかります。
EC市場の中でも、大きな市場の日常消費財ですが、利益率の低さと、配達の遅れが大きくEC市場の伸びの妨げになっています。中国のEC大手の「アリババ」と「京東」は、フルフィルメントセンターのネットワークを構築し、この点の改善に取り組んでおり、日常消費財をECで購入するユーザーも増えていることでしょう。
しかし、このように好調な中国のEC市場において、大きな出来事がありました。それが2021年のアリババに対する行政制裁金に端を発する、中国当局による大手プラットフォーマーに対する規制強化です。
中国当局は、プラットフォーマーとは緊密な関係を築いておりましたが、アリババやテンセントなどが「出店者への価格のつり上げ」「ライバルサービスへのリンク禁止」などの独占的行為があったとして、中国当局は、市場の競争が阻害されることを懸念したために、規制強化を実施するにいたったのです。
巨大企業による寡占が進むと、第二のアリババが生まれにくくなります。そのような状況は中国当局も望まずにプラットフォーマーへの規制へとつながりました。このような規制を乗り越えて、どのように中国のEC市場が伸びていくのか、あるいは鈍化するのか、今後の推移に着目しましょう。
米国のEC市場の現状
中国に続きEC市場規模2位の米国は、絶えず新しいITサービスを生み出す国で、世界中のIT関係者がその動向に注目しております。
特に有名なECサイトはAmazonですが、実はAmazonだけではなく、アメリカにはそれぞれのジャンルで高いシェア率のECサイトがあり、大手小売で世界一のWalmartやTargetなどのチェーン店もECを展開しております。またCtoCでは、eBayが最も人気があります。
近年は、米国ではモバイルでのECショッピングが伸びており、その伸び率を支えているのがGoogle PayやApple Payといったモバイル決済です。モバイル決済は音楽や書籍などのデジタルコンテンツの決済方法として使われていましたが、ECサイトでの導入も進んでいます。モバイル決済の普及がEC化率の伸び率に影響を与えていくでしょう。
米国では、AmazonやGoogle、Apple、Facebookといった超大手インターネット企業だけでなく、Uberなどのユニコーン企業も次々と誕生しており、世界のインターネット産業の中心地であり、誰もが想像のしないサービスが生まれれば、一気にEC化率が伸びるポテンシャルがあります。
データ及び考察の参考サイト:E-commerce in the United States – Statistics & Facts
下記は、2023年の米国EC市場におけるECサイトの上位シェアの事業者の各シェア率を示したグラフです。
◆米国EC市場の上位シェア事業者(2023年)
※出所::各社売上高・推計等より試算
Amazon以外にも、WalmartやTargetなどのスーパーのECサイトが売上上位に入っており、日用品や食料品などの需要もコロナ禍を経て相当高まっています。
どの国においても、ECの普及を広めるにはこのような日用品や食料品においてのECの普及が必要であり、コロナ禍においてECの普及が進んだと言えるのではないでしょうか?
イギリスのEC市場の現状
イギリスのEC市場規模は人口(6,780万人:2023年時点)の割には大きく、人口が1億2,435万人である日本を抜いて世界で3位に位置しております。その理由は、ECサイトの高い利用率です。
少し古いデータですが、51%のイギリス人ユーザーが店舗より、オンラインでの買い物を好むデータがあります。その中でも25歳~34歳のグループが最も活発にオンラインで買い物をしており、平均で月8回の買い物をしているアンケート結果があります。この結果からもわかる通り、ECの利用率が高いために人口がイギリスの約2倍の日本よりも、ECの市場規模が大きいのです。
イギリスで人気のある大手ECサイトはAmazon、TESCO、ebayです。英語であることから、越境ECも盛んでしたが、2020年末のEU離脱によってイギリスからの越境売上は減少し、以降の越境EC市場規模は横ばい状態となっています。しかしながら、イギリスは依然としてECの最大の市場のひとつでと見られています。
決済方法は、Apple PayやGoogle Payなどの電子決済が支持されており、成人の67%が使用しています。また、昨今では「後払い決済」がトレンドとなっており、KlarnaやClear Payといったサービスが利用されています。
イギリスのEC化率の課題は、物流業者の配送の品質が高くないことですが、Amazonなどのネット事業者が物流体制の整備に乗り出しており、こういった課題は中国と同様にEC事業者によって整備されていくことが考えられます。
データ及び考察の参考サイト:Ecommerce in The United Kingdom
イギリスも、コロナ禍においてはECの重要が急激に高まりました。下記の記事によると下記のような特徴があると書かれております。
✓オンライン購入が増えた
✓食料品のオンライン購入が増えた
✓65歳以上のオンライン購入が増えた
イギリスにおいては、2019年度の2020年度のEC市場規模を比較すると34%も伸びております。ECの市場規模が近い、日本は14%しか伸びておらず、このような急激な伸びはオンラインに馴染みのない65歳以上のユーザーの利用がコロナ禍によって進んだことが一因ではないでしょうか?
多くのユーザーにオンラインの利用が広がると、ECの市場規模が増えていきます。イギリスは今後も高いEC市場規模の成長が見込めるでしょう。
日本のEC市場の現状
日本のEC市場の特徴は、EC市場規模の伸び率の低さにあります。EC市場規模が伸びない原因はいくつかありますが、筆者は以下のような点が問題だと考えます。
・食品業界など市場規模の大きい分野でEC化が進んでいない
・シニア層は特に現金決済が主流であり、クレジットカードを使うことに抵抗がある
しかし、2020年からのコロナ禍の影響により、巣ごもり需要が高まりECの利用率は急激に高まり、EC化率は2019年度の6.76%から2020年度は8.08%に大きく伸長し、さらに2023年度は9.38%まで高まりました。
◆物販系分野の国内EC化率の推移
下記記事のデータによると日本国内においても65歳以上のオンライン利用は進んでおります。
高齢者層のオンライン利用の普及は、EC化率を伸ばすための大きな要因となり、今後はイギリスのように伸びていくことに筆者は期待いたします。
なお、日本のEC市場については過去の記事で詳しく解説しておりますので、こちらをご覧ください。
ドイツのEC市場の現状
ドイツはヨーロッパ最大の経済大国で、人口もロシアに次いで多く約8,390万人で、その95%がインターネットユーザーに該当します。ドイツのEC企業は、Amazon、Otto、Zalandoの3社が市場で高いシェアがあります。
ドイツで支持されているECサイトの決済方法は、特色があります。
◆ドイツでの決済方法ベスト3(2023年)
PayPalによる決済が28%
後払い決済が27%
口座引き落としが17%
ドイツにおける決済方法の傾向は、以前とは変化してきています。伝統的に、オンライン決済では請求書による支払いが好まれてきましたが、2021年以降は利用者が減少しています。後払い決済は依然として人気がありますが、PayPalの他、Google Pay、Apple Pay、Amazon Pay などの電子決済の利用が増えてきています。
ドイツは街の買い物においては現金決済が中心でしたが、多くの店舗でカード決済が可能になり、徐々にデジタル決済へのシフトが進んできています。
データ及び考察の参考サイト:Ecommerce in Germany、ドイツで最も重要なオンライン決済手段
下記の記事によると、コロナ渦においては、ドイツも特に食料品においてECの利用が進みました。ドイツは日本と同様に、食品スーパーやディスカウントショップの利便性が高かったために、ECの利用が進んできませんでした。
しかし、2020年において、フードデリバリーの利用が高まり、ネットスーパーとフードデリバリーが融合する動きが加速しております。ネットスーパーの課題は物流にありますが、実店舗と連携することで、ネットスーパーの普及が加速しております。
少子高齢化の日本においてECの普及拡大は急務
EC化率を高めるためには、筆者は下記の要素が必要であると考えています。
① 食料品・日用品においてのEC利用
② 高齢者のEC利用
③ 新しいサービスやソリューションの誕生
しかし、世界中で新しいサービス(③)は誕生しているものの、①や②の普及においては、実店舗の利便性も高いために、多くの世代にはなかなか普及しないのではないか?と思っておりましたが、コロナ禍を経て、食料品や日用品のEC利用、そして高齢者のEC利用も大きく増加しました。
一度オンラインの利便性を知った多くのユーザーは、ECの利用を続けていくのは間違いなく、今後も世界中で、多くの業界、幅広い年代のユーザーによるEC利用が進んでいくはずです。
筆者が心配なのは日本です。先に紹介した世界各国のEC市場規模を比較してみると、日本のEC市場規模の伸び率は他国と比べると低い傾向にあります。日本は2023年においても未だEC化率は10%を切っており、全体で見るとECの利用がそれほど進んでおりません。
特に少子高齢化社会に突入している日本においては、社会の生産性、利便性を高めていく必要があり、ECの普及は絶対に必要です。
日本のEC化率については下記の記事でまとめておりますので、あわせて読んでいただくと、EC市場の理解が深まるでしょう。
今こそ越境ECで海外の販路に活路を見出す
コロナ禍もようやく過去のものとなり、2023年は訪日外国人旅行者数が大きく増加し、インバウンド需要が本格的に回復路線に乗りました。過去の訪日外国人が日本で買い物をするのが難しい状況に学び、今後は積極的に外国人向けの越境ECを構築して海外に販路を見出すべきです。
ただし、越境ECを行うにあたり3つの壁が存在します。
◆EC事業者が越境ECを行う際の3つの壁
・ECサイトの外国語対応
・決済
・海外配送
しかし、実はこれらはECサイトに1行のコードを書き込むだけで全て対応可能になる越境EC対応サービスがあります。仕組みをカンタンに説明すると越境EC対応サービスをECサイトに導入すると、海外ユーザーに対してのみ、英語や中国語等の言語でポップアップが表示され、越境EC対応サービスが海外ユーザーに代わって買い物を代行してくれるのです。
EC事業者としてみれば、何も意識する必要がなく既存の日本人向けECサイトに越境EC対応サービスが導入されていれば「言語」「決済」「配送」の全てを越境EC対応サービスが海外ユーザーに代わって代行してくれるのです。
海外転送サービスの利用を検討している方へ
海外転送サービスを利用して越境ECを始めたいとお考えの場合は、インターファクトリーが提供するECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」も他社とあわせてご検討ください。ebisumartでは、標準機能として実装されている海外転送サービス「WorldShopping BIZ for ebisumart」や、その他の提携サービスを利用して越境ECサイトを運営できます。
参考: 「ebisumart(エビスマート) - 提携サービス - 越境EC」、「WorldShopping BIZ(株式会社ジグザグ)」
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