C2Mは、「Consumer(Customer) to Manufacture」の略語で、製造者が消費者から直接注文を受けて商品を製造する完全受注生産型のビジネスモデルです。
中間業者を介さずに製造者と消費者が直接取引を行うという点では「D2C(Direct to Consumer)」と似ていますが、C2Mは消費者から注文を受けてから商品を製造する無在庫販売であり、両者は異なるビジネスモデルです。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、C2MのECについて解説します。
ビジネスモデルごとに異なるフローとC2Mの特徴
以下は、ECの3つのビジネスモデル(従来モデル、D2C、C2M)のビジネスフローのイメージ図です。
◆従来モデル、D2C、C2Mのビジネスフローのイメージ図
出典(画像):筆者作成
図を見ると、メーカー(製造者)とユーザー(消費者)の間で、中間業者を介さずに取引を行うという点でD2CとC2Mは類似していますが、C2Mでは、取引の主体がユーザー(①)であることが分かります。
C2Mでは、ユーザーは自分の要望をメーカーに提示して商品の購入を決定するため、メーカーは在庫を持つ必要がなく、取引ごとにユーザーの要望を満たす商品を製造・販売します。
従来モデルやD2Cの場合は既製品の在庫を管理しているので、ユーザーはECサイトで注文した後、数日内に商品を受け取ることができますが、C2Mの場合は受注生産となるので、ユーザーが商品を受け取るまでには時間がかかります。そのため、数量限定や特別装備など、ユーザーの待ち時間に値するだけの付加価値を持った商品やサービスを提供できなければ、売上につながりにくいビジネスモデルです。
以下は、メーカーとユーザー別に、従来モデルやD2Cと比較した場合の、C2MのECの主なメリットとデメリットをまとめた表です。
◆C2Mのメリットとデメリット
メリット | デメリット | |
メーカー(製造者) | ・在庫の管理が不要 | ・C2M向けのEC機能が必要(コスト発生) |
ユーザー(消費者) | ・自分好みの商品を購入できる | ・商品を受け取るまでに時間がかかる |
ECでC2Mのサービスを提供するためには、ユーザーが自分の要望を伝えて、メーカーとユーザーの間で完成品のイメージを確認・共有できる仕組みが不可欠です。
例えば、セミオーダーのオリジナルTシャツを販売する場合には、ECサイトで、Tシャツの素材、色や柄、文字などのデザインをいくつかの選択肢から指定できるようにして、注文を確定する前に、完成品のイメージ画像を表示するといった仕組みを用意する必要があるでしょう。
C2MのECサービス事例としては、テレビCMでおなじみの印刷通販サイト「ラクスル」があり、筆者も名刺作成等でよく利用しています。ラスクルのECサイトでは、条件などの要望を選択した後に完成品のイメージ画像を確認してから注文を確定することができます。
無在庫販売のC2Mでは、煩雑な在庫管理や中間業者のマージンなどのコストを排除できるため、メーカーの自助努力次第で、顧客満足度と利益率を高めることが可能です。
C2Mではユーザーの要望を直接聞いた上で注文後に商品を製造するため、提供までに時間を要するので、「多少時間がかかっても、納得のいく商品を購入できる」とユーザーに思ってもらえるサービスラインナップとマーケティングが重要になります。
ECに最適な3つのC2Mサービス
完全受注生産型のC2Mはサービス内容によって向き/不向きのあるビジネスモデルです。ここでは、ECに最適な3つのC2Mサービスを紹介します。
① 印章(はんこ)や名刺、配布用の印刷物の制作・販売サービス
印章(はんこ)や名刺、配布用の印刷物の制作・販売はもともと受注生産型のサービスで、かつてはカタログを見ながら店頭やFAXで注文するという販売方法が主流でした。
印章や名刺、企業の配布用の印刷物は、ユーザーの「顔」としての役割を持つ商品なので、商品仕上がりはとても重要です。EC化する際には、ECサイトで完成品のイメージ画像を確認するためのプレビュー機能が不可欠になります。
ラクスルのECサイトのプレビュー機能では、注文前に仕上がりイメージの画像が表示され、マウス操作で、裏と表を確認することができます。
◆ECサイト上で完成品イメージを確認できるプレビュー機能の事例(ラスクル)
引用(画像):印刷通販サイト「ラスクル」のご利用ガイド「スピードチェック入稿の仕上がり確認」ページの「仕上がりプレビューの確認方法」より
プレビュー機能は、完成品のイメージ画像と実物の商品とで大きなギャップが生じないように実装しましょう。届いた商品との仕上がりの差が大きいと、クレームや返品、ユーザーの離脱を招き、C2Mサービス自体が立ち行かなくなってしまいます。
また、ECサイトにはプレビュー機能だけでなく、クロスセルや複数商品の同時まとめ買い時の割引機能を実装することも検討するようにしましょう。例えば、企業名の印章を注文したユーザーは、起業したての可能性が高く、名刺や社名入り封筒など、他の商品も必要になるのではないかと考えることができます。
② ギフト商品などへの「名入れ」サービス
ギフト商品などへの「名入れ」も受注生産型のサービスです。他社との差別化として、「名入れ」サービスをオプションで提供しているショップも多く見られます。
ここでも、完成品のプレビュー機能が重要です。筆者も、以前ECサイトで「名入れ」した商品を購入した際に、最初のECショップでは、名入れ後の商品イメージ画像を確認することができなかったため、残念ながら手続きを途中でやめて離脱し、プレビュー機能を実装している別のECショップで同じ商品を注文し直すという経験をしたことがあります。
③ セミオーダーのアパレル商品の製造・販売サービス
例えば、Tシャツやキャップなどのアパレル商品をセミオーダーで製造・販売するようなサービスでは、ユーザーがECサイトで素材やデザインなどの要望をいくつかの選択肢の中から選びながら注文できると便利です。
◆セミオーダーのTシャツを購入する際の選択項目の例
・色
・柄
・文字(フォント、フォントサイズ、色)
例えば、上記のような項目ごとの要望をいくつかの選択肢の中から選べるようにしたり、プリントしたい写真や画像をアップロードできるようにしたりすることで、ユーザーは手軽にオリジナルのTシャツ等を作ることができます。
また、イベント用グッズや組織やチームのユニホームなど、大量注文を受け付けるための機能や、ボリュームディスカウント機能なども実装しておくとよいでしょう。
以下は、Tシャツのデザインプリントの注文サイト「TMIX(ティーミックス)」の、デザインエディタの画面です。
◆プリントTシャツのデザインエディタ機能の事例(TMIX)
既存のC2MサービスをECに移行するための5つのステップ
ここでは、現行のC2MサービスをECに移行するための5つのステップを紹介します。
ステップ① 注文書のフォーマットを定義し、受発注情報をデータ化する
アナログで運用されている受発注関連の情報をすべてデータ化する必要があります。現行の手続きや帳票に含まれている情報を洗い出して精査し、取引で使用するすべての帳票のデータ項目とフォーマットを最適化しましょう。
ステップ② カスタマイズ可能なECプラットフォームを選定する
①で定義した要件に対応したECサイトを構築するために、カスタマイズにも柔軟に対応できるECプラットフォームを選定します。追加機能やカスタマイズ規模によっては、少なくとも数百万円~以上が必要になる場合もあります。
インターファクトリーの「ebisumart(エビスマート)」はフルカスタマイズ可能なECプラットフォームです。C2MのECサイトの構築実績もありますので、C2MのECサイトをご検討中の方は、ぜひ候補の一つに加えてみてください。詳しくは下記の公式サイトをご確認ください。
ステップ③ C2Mではユーザーが使いやすいUIを設計する
ECプラットフォームが決まったら、どのようなUI(ユーザーインターフェース)を提供できるのかをベンダーと相談しながら、使いやすさに徹底的にこだわったUIを設計しましょう。他の企業や業界のC2MのECサイトを参考にしたり、アイデアを公開してユーザーからフィードバックをもらったりしてみるのも良いでしょう。
ステップ④ C2MのECサイト開設後は、マーケティング活動を開始する
C2MのECサイトを開設したら、SNSでオーダーメード商品の魅力を訴求するコンテンツを投稿します。特にリリース直後などは、インフルエンサーのYouTubeチャンネルやInstagramで、実際にオーダーしている様子の動画を投稿してもらうのも効果的です。
ステップ⑤ アフターフォローを通じて優れた顧客体験を提供する
「商品を売ったら終わり」では、リピーターを増やすことができません。特にC2Mは受注生産商品なので、商品に対する評価もユーザーごとに異なります。
そのため購入者に対して、購入後にフォローメールを配信することをおすすめします。C2Mの特性上、他のビジネスモデルと比べて、気に入ったECショップを利用し続ける可能性が高くなるのではないかと考えられます。筆者自身も、名刺を注文するときは毎回同じC2Mサービスを利用しています。注文がしやすく、仕上がり、配送サービスに満足していることに加え、アフターフォローも充実しているからです。
C2MではD2Cなどと比べると市場が限定されるため、新規ユーザーを増やすだけではなく、「お得意様の囲い込み」(リピートを増やすこと)が、安定したビジネスのために不可欠です。そのため、アフターフォローを通じて、ユーザーと長期的なつながりを育成・維持していくことが大切になります。
まとめ
C2Mでは、メーカー側は在庫管理と中間業者のマージンにかかるコストを排除できるため、自社の努力次第で収益を高めていくことができます。
新たにC2MのECを始める場合には、C2M向けのEC機能を実装するための初期コストが必要になることにも留意しておきましょう。
他のビジネスモデルと同様に、C2MのECでもリピーターを増やして売上を伸ばすためには、質の高いUIとアフターフォローサービスを備えたECサイトの構築が不可欠になります。
C2MのECサイトの新規構築やリニューアルをご検討中の方には、柔軟なカスタマイズが可能でC2M向けECサイトの構築実績もあるクラウドコマースプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」もおすすめです。詳しくは、以下の公式サイトからお気軽にお問い合わせください。