メディアコマースは、情報を発信するメディア(特にブログ記事、動画、SNSなどのWebコンテンツ)とECを組み合わせた造語で、ユーザーに商品やサービスの魅力を配信してアクセス数を増やし、商品やサービスをオンライン販売するビジネスモデルです。
すでにインターネットにはさまざまなWebコンテンツが溢れています。そのため、多くの予算と労力を費やしてより多くのコンテンツを配信する、といった行動には意味がありません。メディアコマースを成功させるためには、高度な専門知識と豊富な経験に基づいた、ユーザーにとっての有益な情報を配信することが大切です。
専門性と信頼性の高いWebコンテンツを配信することで、アクセス数を増やし、オンライン購買に誘導しやすくなります。
この記事では、株式会社インターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者が、メディアコマースのデジタルメディア別の事例と特徴、メディアコマースを成功させる5つのポイントについて解説します。
メディアコマースで用いられる5つのデジタルメディア
メディアコマースで用いられる主なデジタルメディアは、以下の5つです。
◆メディアコマースで用いられる5つのデジタルメディア
メリット | デメリット | 向いている業界 | |
①ブログ | ・優れた情報を配信することで、SEOの評価を高めることができる
・ファンを育成することで、定期的に一定のアクセス数を獲得できる |
・SEOで検索結果の上位に表示されるまでに、半年以上など時間がかかる
・掲載後も情報の最新化などで記事をメンテナンスしていく必要がある ・競合が多い |
・専門サービス ・コンサル ・BtoB ・物販 |
②デジタルカタログ (商品ページ) |
・特に商品ラインナップが多い場合、検索をしやすくするなどしてユーザーの利便性を高めることができる | ・定期的なメンテナンスが必要になる | ・物販 ・BtoB ・アパレル |
③動画 | ・①、②と比べてユーザーエンゲージメントが高まりやすく、コンバージョンにつなげやすい | ・コンテンツの準備に費用と労力がかかる
・人気動画の作成やブラッシュアップが難しい |
・専門サービス ・コンサル ・BtoB ・物販 ・アパレル |
④SNS | ・フォロワーが多い場合は広告メディアとしての効果が期待できる
・他のメディアと比べてWebマーケティング施策を素早く簡単に展開できる |
・フォロワーを増やすことが難しい
・質の低い投稿が続くとエンゲージメントが下がり、アカウントの影響力も下がる ・公式アカウントは、「いいね」や「コメント」が集まりづらい |
・アパレル ・コスメ ・ヘルスケア |
⑤スマホアプリ | ・ユーザーが気軽にアクセスできる
・プッシュ通知ができる |
・開発費用がかかる
・ダウンロード数を増やすために、ASO(アプリストア最適化)対策が必要になる |
・アパレル ・飲食チェーン |
出典:筆者の経験に基づき作成
以降では、これらのデジタルコンテンツを1つずつ解説します。
① ブログ
② デジタルカタログ(商品ページ)
③ 動画
④ SNS
⑤ スマホアプリ
① ブログ
SEO対策キーワードを決めたブログ記事を配信し、GoogleやYahoo!などの検索エンジンの評価を高めて検索結果の上位に表示されるようにすると、アクセスユーザー数が増えやすくなります。
このブログ記事は、インターファクトリーが運営している「ebisumart Media(エビスマートメディア)」というブログメディアのコンテンツの1つですが、Google検索で「ECサイト構築」「DtoC」「EC業界」というキーワードをそれぞれ検索したときに最初のページに表示される順位は以下のようになります(2024年3月時点)。
◆「ebisumart Media(エビスマートメディア)」
◆「ebisumart Media(エビスマートメディア)」Google検索の表示順位(2024年3月時点)
・「DtoC」2位
・「EC業界」1位
※スポンサーリンク(広告)を除く
ebisumart Mediaでは、SEO対策を施した上でECに関する知見と経験に基づいた記事を定期配信しているため、Googleの検索エンジンに信頼性が高いと評価され、キーワード検索結果の上位に表示されています。
そのため、ebisumart Mediaでは広告費をかけなくても毎月数万のPV数があり、問い合わせ、資料請求、セミナー参加などのコンバージョンに結び付いています。
ブログによるメディアコマースはあくまでも中長期的な施策です。筆者の経験上ですが、例えば3,000文字以上のブログ記事を月に2本以上書いた場合、キーワード検索で上位に表示されるようになるまでには、半年から1年以上かかります。
ブログを使ったメディアコマースについては、以下の関連記事で詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
② デジタルカタログ(商品ページ)
豊富なラインナップを展開しているECサイトでは、カタログページや便利な商品ページをデジタルカタログとして設置して、ユーザーが商品を見つけやすく、購入しやすいようにします。
下図は、2,000万点以上の商品を取り扱っているBtoBのECサイト「モノタロウ」のトップページです。
◆2,000万点以上の商品を取り扱っている「モノタロウ」
引用(画像):モノタロウ 公式通販サイト
ネットショップ全体が、従来の紙カタログと同じような構成を残しつつ、大量の商品の中から必要な商品を手軽に探して購入できるように作られています。
また近年は、メガネのオンライン通販「JINS」などのように試着ニーズの高いECサイトでは、バーチャルトライオン(オンライン試着)サービスを提供して、これまでECの弱点だった「商品装着時のイメージのズレ」を解消し、UX(ユーザー体験)と満足度を高めるための仕組みを導入している企業も増えてきていますが、このバーチャルトライオンサービスとSNSを組み合わせたメディアコマースなども登場しています。
③ 動画
スマートフォンが普及し通信環境が整ったことで、動画コンテンツを視聴する人が爆発的に増加し、YouTubeはテレビに匹敵する影響力を持つメディアとなりつつあります。
文字情報のブログと比べると動画は制作コストが大きくなりますが、視聴者と強固なエンゲージメントを構築できるメディアです。
筆者もYouTubeの「forUSERSチャンネル」というSEOライティングに関する情報を配信し、メディアコマースを行っています。現在のチャンネル登録者数は1,200人で、毎月3~5件の問い合わせがあります。
◆動画を使ったメディアコマース「forUSERSチャンネル」
参考:筆者が運営しているYouTubeチャンネル「SEOライティング講座_forUSERSチャンネル」
動画は、他のメディアと比べて、登録者数がそれほど多くなくてもユーザーとの距離が近いためかエンゲージメントが高まりやすいので、問い合わせなどのコンバージョンにつながりやすくなります。
④ SNS
InstagramやXなどのSNSで魅力的なコンテンツを発信し、商品購入に誘導します。
下図は資生堂が運営しているInstagramアカウントです。資生堂ではメイクのポイントなどの情報を投稿して、コスメ商品の販売を促進しています。
◆Instagramアカウント「資生堂 ビューティージャーニー」
引用(画像):資生堂のInstagram公式アカウント「資生堂 ビューティージャーニー(@shiseido.beauty.journey)」
SNSで商品に関する魅力的な情報を発信することで、ユーザーの商品購入意欲を高めることができます。また、ユーザーが気に入った公式アカウントをタグ付けして関連情報を投稿してくれる可能性もあり、UGCとしての効果も期待できます。
⑤ スマホアプリ
ユーザーにスマホアプリをダウンロードして使ってもらうことで、日常的にメディアコマースを実施することができます。
株式会社ZOZOが運営しているファッションコーディネートアプリ「WEAR」では、ユーザーがコーディネートを簡単に投稿することができ、他にも世界中のユーザーが投稿した画像の中からお好みのコーディネートをチェックすることができます。
◆「WEAR」(株式会社ZOZO)のスマホアプリ
引用(画像):ファッション コーディネートアプリWEARについて
WEARでお気に入りのインフルエンサーなどのコーディネートをチェックして、そのままアプリからECサイトの「ZOZOTOWN」で商品を購入することもできます。
このアプリはユーザーのニーズを満たすだけでなく、ユーザー投稿がコンテンツとなるため、運営企業はコンテンツを作成する必要がなく、UGCでメディアコマースを実現できるという点でも優れています。
またスマホアプリでは、通知機能を許可しているユーザーに対してプッシュ通知もできるので、ユーザーにアプローチがしやすくなり、効果的なマーケティング活動を行うことができます。
プロの知見と経験に基づいた情報を発信すべき
例えば、ブログの月間PVが100万以上のメディアでも、メディアコマースとしては成功していないという企業もあります。そのようなメディアでは、アクセス数は多くても内容が薄い(有益ではない情報)コンテンツを量産しているケースが多いです。
メディアコマースを成功させるためのポイントは以下の5つです。
◆メディアコマースを成功させるための5つのポイント
② 企業が「言いたいこと」だけでなく、ユーザーが「知りたいこと」を発信する
③ 投稿や記事のアクセスログを分析する
④ 競合するメディアを調査する
⑤ ユーザーのコメントやレビューに返信する
上記5つはいずれもWebビジネスの基本項目ですが、中でもポイント①は、優位性を高めるために重要です。ユーザーの期待に応えるためには、専門情報を分かりやすく伝えるための知識と経験が不可欠となるからです。
また、どんなに専門的な情報であっても、ユーザーが興味のない情報や難解で伝わらない情報では人を集めることができませんから、より多くの人が関心を持っている情報を分かりやすいコンテンツで発信する必要があります(ポイント②)。
「人々が何に関心を持っているか」を検討するために役立つ「ラッコキーワード」というツールがあります。
◆「ラッコキーワード」のGoogleサジェストリスト
引用(画像):無料のキーワード分析ツール「ラッコキーワード」で「肌荒れ」を検索した結果
このツールを使うと、世界中の人々がGoogle検索で何を検索しているかを知ることができるため、コンテンツのテーマを決めるための参考情報として活用できます。
コンテンツを作成して配信した後は、必ずアクセスログを分析してコンテンツの効果測定と評価を実施しましょう。今回のコンテンツは何が良かったのか、何が悪かったのかを振り返り、次のコンテンツ作成で改善していきます(ポイント③)。
また、定期的に競合メディアを調査して、良い点や気づいた点を参考にするとよいでしょう(ポイント④)。
発信した情報に対するユーザーのコメントやレビューには速やかに返信し、エンゲージメントを高めていきましょう(ポイント⑤)。
いずれのデジタルメディアでも、上記の5つのポイントを実践して情報を発信し続けることでユーザーが集まり、メディアコマースの成功につながります。
ECサイトの土台は、商品ページと口コミが充実したデジタルカタログ
メディアコマースの最初のステップとしては、ECサイトの商品ページと口コミを充実させることで、デジタルカタログとしての効果を得られるようにしましょう。
商品を仕入れて販売している場合には、多くの競合企業が同じ商品を販売しているため差別化が困難ですが、例えば、メーカーから提供される商品情報だけでなく、実際に商品を使用している写真や動画を商品ページに掲載するなどして、商品を検討しているユーザーにとって役に立つ情報を発信していきましょう。また商品を実際に購入したユーザーの声は、購入を迷っているユーザーにとっての有益な情報ですから、購入後のユーザーにはレビューを依頼してレビューやコメントを増やしていきましょう。
商品の使用感や利用イメージが伝わりやすい商品ページを作っていくことで、付加価値のあるデジタルカタログが出来上がります。
このようなWebページは検索エンジンでも独自性や信頼性が高いと評価されるため、SEO対策としても効果的です。
アパレル・コスメ業界は世界観が伝わりやすいInstagramを活用する
アパレル・コスメ業界では世界観も購入時の意思決定に大きく影響します。
アパレルやコスメなどのように、商品のスペックだけでなく見た目やイメージが鍵となる商品の訴求には、画像で情報を伝えられるInstagramが相性抜群のSNSです。
Instagramはすでにレッドオーシャン化していますから、完全にゼロの状態から始めるのは困難です。そのため、最初は既存客にフォローを促して、限られたファンに喜んでもらえるコンテンツと通じてコミュニケーションを増やしていくことから始めて、強固なエンゲージメントを構築しながら徐々に露出を増やしていくとよいでしょう。
また実店舗がある場合は、Instagramで店舗アカウントを開設してみるのもよいでしょう。例えば、資生堂ではビューティーアドバイザーの方がInstagramアカウントを開設しています。フォロワーが1万人に達しているアカウントもあり、ライブコマースなどを開催するなど人気を博しています。
士業やコンサル業は、YouTube動画やブログでお役立ちノウハウを提供する
士業やコンサル業などのようにサービスを提供している場合には、YouTube動画やブログがおすすめです。YouTube動画やブログはユーザーが能動的にアクセスすることが多いため、そこで有効な解決策が提示されるとユーザー登録や問い合わせなどのコンバージョンにつながりやすくなります。
ブログは誰でも簡単に始めることができますが、特に士業ではブログはすでにレッドオーシャン化しています。筆者の印象では、ブログと比べるとYouTubeはまだ成長の余地があると思います。
YouTubeチャンネルを開設する場合は、コンテンツの制作では、編集を外部の専門企業に委託して、自社は撮影に注力するといった分業体制を確立しておくことをおすすめします。
健康管理やお役立ち情報の配信にはアプリが効果的
もし、300万~数千万円の投資が可能であればアプリ開発をおすすめします。
例えば、ヘルスケア業界などでは以下の機能を備えたアプリを開発することで、より多くの人がダウンロードしてくれる可能性があります。
◆ヘルスケア関連のアプリのお役立ち機能(例)
・摂取/消費カロリーの記録
・体重の記録
・ウォーキング状況の計測
・心拍数の計測・記録
利便性の高いアプリは日常的に利用されるようになりますから、アプリを介して効果的な情報配信やマーケティング活動が可能になります。
まとめ
ECサイト内にブログメディアを開設する場合には、CMS機能も実装できるカスタマイズが容易なクラウド型のECプラットフォームを選定すべきでしょう。
さまざまな外部システム連携が可能なクラウド型のECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」はメディアコマースにもおすすめです。ぜひ下記の公式ホームページをご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。