eビジネスはECやインターネットを活用した企業活動の総称


eビジネスとは、電子商取引を含むインターネット技術を活用した企業活動全般を指し、マーケティングや販売活動、顧客対応などのあらゆる業務プロセスを全面的に電子化するための取り組みの総称です。

「eビジネス」は1997年に当時のIBM会長のルイス・ガースナー氏が提唱したものでしたが、2010年以降は「クラウドコンピューティング」という新しい用語が使われることが多いです。

しかし、eビジネスで目指した世界は現代社会で実現しつつあります

この記事ではインターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、eビジネスとは何か、企業はインターネット技術を活用したビジネスとして何から始めるべきかについて紹介します。

eビジネスの4つのフェーズ

今回は、eビジネスを次の4つのフェーズに区切って解説していきます。

本記事におけるeビジネスの4つのフェーズ

フェーズ① Webコンテンツによる情報発信
フェーズ② Eコマース(EC)の開始
フェーズ③ DXの実現
フェーズ④ 社会全体の変革

それでは、フェーズ①から順に見ていきましょう。

フェーズ① Webコンテンツによる情報発信

Webコンテンツによる情報発信は、eビジネスのファーストステップとも言えるでしょう。さまざまなWebコンテンツの種類と発信方法がありますが、最も代表的な方法としては以下の3つが挙げられます。

◆Webコンテンツの種類と発信方法

① ホームページ/Webコンテンツを公開する
② メールマガジンを配信する
③ SNSに投稿する

Googleなどのインターネット検索エンジンが発展・普及したことで、人々はいつでも簡単に必要な情報を取得できるようになりました。

下図が示すように、1997年には9.2%しかなかった国内のインターネット利用率は、2023年には86.2%に達しています。

◆インターネット利用率(個人)の推移

インターネット利用率の推移(〜2023)

引用(図表):総務省「令和6年版情報通信白書|第2部 情報通信分野の現状と課題」(2024年7月発表)

また、インターネット利用率の高まりとともに、SNSの利用率も上昇しており、SNS利用率は2024年末には83.2%に達する見込みです。(下図を参照)

日本におけるSNS利用者数と利用率

日本におけるSNS利用者数と利用率(〜2024年末)

引用(図表):株式会社ICT総研「2022年度 SNS利用動向に関する調査」(2022年5月17日掲載)

SNSが普及して情報を発信する人やWebコンテンツの作り手が急激に増えたことで情報過多となり、単純なWebコンテンツを作って公開するだけでは、誰の目にも止まらない可能性があります。

eビジネスにおける情報発信では、できるだけ多くの人に情報をきちんと届けるために、以下のような工夫が必要になります。

◆eビジネスにおける情報発信の工夫(例)

・ホームページやブログなどWebコンテンツの適切なSEO対策を実施する
・Google広告やYahoo!広告、Facebook広告などのサービスを活用する
・SNSのフォロワーを増やしてアカウントの影響力を高める
・メールマガジンの送付先リストを収集する

インターネットとSNSが普及したことで情報を発信するハードルはぐんと下がったのですが、今度は情報があふれすぎてしまい、本当に伝えたい相手に、適切な情報をタイムリーに届けることが少し難しい状況になってしまっているのです。

これからeビジネスの情報発信に取り組もうという場合は、最初にホームページとWebコンテンツを作ることから始めてみるとよいでしょう。

Webサイトの構築やWebページの制作にはコンテンツマネジメントシステム(CMS)を使うようにしましょう。例えば、CMSプラットフォームサービスの「WordPress(ワードプレス)」は無料で利用できます

もしSNSで情報発信したいという場合は、最初はテキスト情報を発信できる「X」(旧Twitter)や「Facebook」を選ぶと、運用しやすいかもしれません

フェーズ② Eコマース(EC)の開始

1990年代にAmazonや楽天市場などのオンラインショッピングモールが登場し、現在では、ユニクロやニトリなどの国内の大手小売企業も自社ECに注力しています。

また、DtoC(Direct to Consumer)と呼ばれる、製造者/生産者が顧客と直接取引を行うビジネスモデルも登場しており、ECは売り手と買い手の両者にとって、より身近な存在となっています。

2010年代には、個人が気軽にECサイトを開設できる「BASE」や「STORES」といった国内ECプラットフォームや、「メルカリ」のようなCtoC(Consumer to Consumer)と呼ばれる個人間取引を行うことができる国内サービスが誕生しました。

ECのプラットフォームが普及したことで、誰でも簡単にECサイトを立ち上げて電子商取引ができる時代が到来したのです。

それにもかかわらず、日本のECの利用率は未だ低く、右肩上がりに推移してはいるものの、2023年の平均EC化率は9.38%にとどまっています。(下図を参照)

◆物販系分野の国内 BtoC-EC 市場規模及び EC 化率の経年推移

引用(図表):経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2024年9月発表)

一方で、世界のEC利用率を見てみると、2023年のEC化率は19.4%と推計されており、日本のEC利用率の水準がいかに低いかが分かると思います。

◆世界のBtoC-EC市場規模(単位:兆USドル)

世界のBtoC-EC市場規模推移

引用(図表):経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2024年9月発表)

日本国内でECの利用が進まない理由としては、以下が考えられます。

◆ECの利用が進まない理由

・現金決済の人気が根強い
・コンビニやスーパーなどが多く、実店舗の利便性が高い
・巨大市場の食品・日用品のEC化率が低い
・全国に生鮮食品を配送するための物流施設やシステムを構築するためには膨大な投資が必要になる

しかし、先ほど示したグラフを見ると、国内のBtoC物販市場全体のEC化率は低いのですが、一部には、EC化率が高い産業もあります。(下図を参照)

◆EC化率の高い産業の2023年のEC化率

・書籍、映像・音楽ソフト(書籍には電子出版含まず):53.45%
・生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等(オンラインゲーム含まず):42.88%
・生活雑貨、家具、インテリア:31.54%

◆産業別の国内BtoC-EC市場規模とEC化率の推移

産業別の国内BtoC-EC市場規模とEC化率の推移(〜2023)

出典:経済産業省「電子商取引実態調査」より筆者作成

こ上図を見ると、書籍や家電、家具などのように「どこで買っても品質が変わらない」商品はECの利用率が高くなっています

逆に、食品や化粧品などのように「実際に手に取って品質を確かめたい」という需要がある商品はECの利用率が低くなっている傾向が見られます。

EC事業を始める際には、市場の概況を理解した上で、商品やサービスとの適合などについても検討しておくことが大切です。

ECプラットフォームを選ぶ

EC事業を始めるためには、ECプラットフォームを選定する必要があります。ECサイトを構築するためのプラットフォームには以下の種類があります。

◆ECプラットフォームの種類

・ASP(エーエスピー)
・オープンソース
・パッケージ
・カスタマイズ可能なクラウドEC
・フルスクラッチ

個人や中小規模、あるいは新規事業などのスモールスタートビジネスの場合には、ASPサービスを利用してECサイトを開設するとよいでしょう。ASPサービスを利用することで、ECサイトを短期間で開設し、月額数千~数万円程度の料金で運営することができます

例えば、1日に100件以上の注文数が見込まれるようなケースでは、バックエンド業務とデータ連携が可能なECプラットフォームが必要となるため、パッケージやカスタマイズ可能なクラウド型ECサービスを選択しましょう。

また、独自の機能要件が多いケースでは、自社主導で、オープンソースを利用したカスタマイズやフルスクラッチでECシステムを構築する必要があります。

新たにEコマース(EC)を始める際は、「ECで何を実現したいか」を整理した上で、自社に最適なプラットフォームを選択するようにしましょう。

ECプラットフォームの選び方については、以下の関連記事で詳しく解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。

関連記事:EC初心者が10分で理解するECサイト制作手順と費用相場

フェーズ③ DXの実現

Webコンテンツによる情報発信やECだけでなく、社内の基盤システムやビジネスプロセスのデジタル化などもeビジネスの取り組みに含まれます。

つまり、現代の用語を用いると、デジタル技術を活用して競争力のある強固なビジネス基盤を作り上げ、「DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する」ということになります。

DXとは、データとデジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセス、製品やサービス、企業文化などを根本から変革し、競争上の優位性を確立することです。

現行業務を単純にデジタル化して業務の効率化を図るだけで終わることなく、抜本から見直して従来はとらえることができなかった状態や情報を可視化し、データ駆動型の思考でサービスを追求していく姿勢が重要になります。

クラウド、AI、IoT、データ解析などの最新テクノロジーを活用し、顧客に優れたUXを提供する、自動化によって業務の効率化を実現する、データに基づいてスピーディーに経営の意思決定を行うなど、企業の存在価値そのものを再構築するための取り組みがDXなのです。

例えば、国内の大手小売企業のカルビー株式会社は、自社の会員情報とひも付いているID-POSデータとAIを組み合わせ、同社のポテトチップスを購入してくれそうな人を予測して抽出しプロモーションを展開することで、高精度の購買予測を実現しています。

参考:Web担当者フォーラム「カルビーの『リテールDX事例』を紹介! ID-POSデータを販売提案に生かす方法とは?」(2023年11月1日掲載)

データとAIを活用することで新たなビジネス機会を創造できるようになります。

DXについては、以下の関連記事で解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。

関連記事:デジタルトランスフォーメーション(DX)をECのプロが徹底解説

フェーズ④ 社会全体の変革

eビジネスが社会に与える影響は計り知れません。

インターネットが登場したことで、場所も時間も選ばずリアルタイムで商取引を行えるようになり、数多くの新たなビジネスが誕生しました。以下のような、巨大プラットフォーマーの台頭によって、世界には新しい経済圏が生まれています。

◆主要な巨大プラットフォーマー

・Google
・Amazon
・Facebook
・Instagram
・TikTok
・Netflix
・Windows
・Apple

また、「Uber」や「Airbnb」のような、個人が遊休資産を活用して収益を生み出すシェアリングエコノミーも拡大しています。

一方で、巨大プラットフォーマーによる市場の独占や個人情報の取り扱いなどをはじめとする新たな問題も生まれています。

◆プラットフォーマーへのデータの集中によって生じている2つの課題

課題① プラットフォーマーのデータ寡占による公正な競争環境の阻害
課題② プラットフォーマーによるデータの取得・活用に関する透明性・適正性への懸念

参考:総務省「令和 5 年版 情報通信白書|第2節 プラットフォーマーへのデータの集中

eビジネスが進み、DXが加速する現代社会にでは、巨大プラットフォーマーとどのように向き合っていくかということが、企業にとって重要な課題となっています。

まとめ

インターネットとスマートフォンが普及したことで、誰もが簡単にデジタルの世界にアクセスできるようになりました。

eビジネスが提唱された1997年当時は、企業がデジタルを利活用することでビジネスチャンスを生み出すことを目指していました。そして現在は、デジタルを前提とした社会が構築されつつあります。

このような従来の枠組みを破壊するような変革が加速する時代においては、従来の商習慣や考え方にとらわれることなく、新しい分野や事業にも積極的に挑戦していくべきであると筆者は考えています。

今、新たにECへの参入を検討されているのであれば、ECサイトの構築にはインターファクトリーのクラウド型ECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」をぜひご検討ください。柔軟なカスタマイズ性と豊富な機能を備えており、多くの企業でご利用いただいています。

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公式ホームページ:ebisumart(エビスマート)

また、インターファクトリーは本気でeビジネスに取り組む企業のためのEC事業支援サービス「ebisu growth(エビス グロース)」を通して、企業の継続的な成長を支援しています。

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ebisu growth「EC戦略PM支援サービス」


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。