企業で複数のWebサイトを運営している担当者の方は、一度は次のように考えたことがあるのではないでしょうか。
「BtoCとBtoBの2つのECサイトを統合して運用したい」
「ブログとECのWebサイトを1つに統合できないだろうか」
「子ども向けと大人向けの2つのブランドサイトを統合展開できないか」
1社で複数のWebサイトを運営している場合、Webサイトを1つに統合することで、事業や業務の効率化やSEO効果の最大化ができるケースもあります。
Webサイトを統合する目的を明確にすることで、期待する成果を得ることができますが、同時にデメリットについても対策を決めておかないと、思いがけない損失を生み出してしまうことにもなりかねません。Webサイトの統合を検討する際には、デメリットについても理解した上で判断することが大切です。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、Webサイトの統合における成功事例と知っておくべきデメリットを解説します。
Webサイト統合における3つの成功事例
ここでは、筆者が過去に体験した3社のWebサイトの統合の事例を紹介します。それぞれ目的を明確にして取り組んだことで、期待した成果をあげることができました。
事例①サービスサイトにブログを統合したことでSEOの信頼性が高まり集客力が向上
外壁塗装関連企業が運営していたサービス紹介サイトとブログサイトの2つのWebサイトを1つにまとめた事例です。
◆統合前に運用していたWebサイト(外壁塗装関連企業)
・ブログサイト
ブログサイトでは、専任の担当者が塗装職人や塗料メーカーに取材した内容に基づいた信頼できる専門情報を発信しており、統合前の時点で、100を超える記事を配信していました。また、ブログサイトは開設時の集客戦略の方針に沿って「塗装職人による情報発信」という個人ブログの体裁を採用し、サービス紹介サイトとは別のドメインで運用されていました。
当時のブログサイトは、GoogleのSEOにおけるクローラーのサイト巡回率が低いこともあり、なかなか検索順位の上位表示を実現できずにいました。当然、ページビュー(PV)数も頭打ちで、最大でも月間3万PVを超えることができない状況でした。
そこで、当初の集客戦略を見直し、個人ブログの体裁をやめてサービスサイト内に統合することにしました。記事はそのまま流用して企業発信という本来の形に切り替えた結果、GoogleのSEOにおけるブログページの評価が向上してブログの検索順位が急上昇し、月間7万PVを達成することができました。
事例②ECサイトと動画サイトを統合し、商品の魅力をより分かりやすく伝えることでCVRが向上
英会話スクールが運営するオンライン英語教材のECサイトの事例です。この英会話スクールでは、統合前は2つのWebサイトを運用していました。
◆統合前に運用していたWebサイト(英会話スクール)
・動画専用サイト
同スクールでは、ECサイトを訪れたユーザーに対して教材(商品)の魅力をうまく伝えることができず、売上が伸び悩んでいました。
そこで、動画専用サイトに投稿していた教材の魅力を伝える動画を、ECサイトの商品と一緒に見てもらうために、ECサイトで直接動画を配信することにしました。その結果、動画を見て教材に魅力を感じたユーザーの購入が増え、CVR(コンバージョン率)が上昇しました。
また、従来は商材やサービスに変更が生じた場合などには、2つのWebサイトをそれぞれ更新していたのですが、1つに統合したことでサイト更新作業の工数が減り、保守・運用コストの削減という副次的な成果ももたらしました(保守・運用コストの削減については、次の事例③で紹介します)。
事例③コーポレートサイトとサービスサイトを統合して運用コストを削減
FX関連企業が運営していた、4つのWebサイトの統合事例です。
◆統合前に運用していたWebサイト(FX関連企業)
・サービスサイト
・教育コンテンツサイト
・スタッフブログサイト
当時、同社ではWeb周り全般の保守・運用業務を3名で担当していたのですが、日々のサイト更新や保守対応などの業務に追われ、手が回らないという状況でした。そこで、保守・運用業務の負荷を低減するために、4つのWebサイトを1つに統合することにしました。その結果、サイト更新の処理件数が減り、Webサイトの保守・運用コストを大幅に削減することができました。
Webサイトの保守・運用業務は、一つ一つの変更は軽微であったとしても、頻繁に発生する更新作業による長期的な負担が大きくなりやすい業務です。そのため、保守・運用コストを削減できることは、Webサイトの統合による最大のメリットです。
サイト統合を決める前に、必ず「目的」を明確にする
複数のWebサイトを統合したいと思ったら、最初に統合後に期待する成果、すなわち目的を明確にしましょう。Webサイトを統合することで得られるメリットとして、例えば以下が挙げられます。
◆Webサイトを統合するメリット
・統一された企業イメージやメッセージのWeb発信
・Webサイトの保守・運用コストの削減
・ドメインおよびWebサーバの保守・運用コストの削減
もし、会社から「Webサイトを1つにまとめて!」という指示を受けた場合などには、最初に、Webサイトを統合する目的と得られる成果を明確にし、関係者と共有して検討するようにしましょう。
Webサイト統合の3つのデメリット
Webサイトを統合することで生じる可能性がある3つのデメリットを押さえておきましょう。当たり前のことかもしれませんが、デメリットとなり得ることを改めて認識することで、Webサイトの統合失敗を回避するとともに、統合後のチェックポイントとして役立つかもしれません。
デメリット①企業名あるいはサービス名の検索結果には1件しか表示されなくなる
筆者が以前勤務していた英会話スクールでは、統合前は3つのサービスごとにWebサイトを運営していました。
◆3つのサービスを異なるWebサイトで運営(イメージ)
・子ども向け英会話サイト(ドメインB)
・英語のお役立ちブログサイト(ドメインC)
そのため、Webブラウザでスクール名を指定して検索すると、検索順位の上位1~3位までに、自社のサービスサイトのページが表示されていました。しかし、Webサイトを1つに統合したことで、検索結果の表示画面には1位しか表示されなくなるため、検索結果画面内の占有率が低下し、2位以降には自社に直接関係のないサイトの情報が表示されるようになりました。
当たり前のように感じるかもしれませんが、検索結果画面を見ているユーザーが受ける印象が大きく変わることに注目すべきです。特に、スマホなどの画面の場合などでは、Webブラウザの検索結果に、自社のサービスラインナップのように表示されていたのが、画面内に他の情報も混在してくることになります。
もちろんユーザーの検索目的によって影響範囲は変わってきますが、現在運用している複数のWebサイトを1つに統合する場合には、企業名検索による検索結果画面の見え方が変わることを理解しておきましょう。
デメリット②複数のWebサイトの世界観が異なる場合、Webサイト上でのブランディングがしづらい
例えば、複数あるブランドの世界観やストーリーがそれぞれ異なる場合など、Webサイトを分けて運用するほうが適している場合があります。アパレルや化粧品などのECサイトでは、ブランドごとにドメインを分けて運営している事例も多いです。
複数の異なるブランドイメージを統合して表現しようとすると、Webサイトが煩雑になります。また、コンセプトが正反対であったり、ターゲット層が全く異なっていたりする場合には、ブランド戦略を無視することにもつながり、ファンが離れてしまう可能性もあります。
デメリット③障害時にすべてのWebサービスが提供できなくなる
Webサイトを1つに統合することで、障害時にはすべてのWebサービスを提供できなくなる可能性があります。
国内の家具・インテリア大手企業のニトリでは、2015年のECサイトリニューアル時に障害が発生し、数日間にわたってECサイトがダウンしたことがありました。同社はその間、ECサイトのトップページで「楽天市場」での購入を呼びかけることで、購入機会の損失をカバーしました。
このようにECサイトやお問い合わせサイトなど、売上に直接影響する可能性が高いWebサイトでは、万一の障害時のバックアップとなるチャネルを考慮しておくことが大切です。
参考:ねとらぼ「ニトリ公式通販サイトがダウン、復旧の目処たたず →『楽天で買って』と異例の呼びかけ」(2015年6月22日掲載)
まとめ
Webサイトの統合を検討する際には、必ず目的を明確にする必要があります。メリットとデメリットを洗い出した上で、本当に統合すべきかどうかを見極めましょう。今回紹介した3つのデメリットへの対応策を持たずに統合してしまうと、思いがけない損失を招くことにもなりかねません。
◆Webサイト統合時の3つのデメリット
✓ブランディング
✓障害時の冗長性
例えばグローバル企業の場合などでは、本社の意向でWebサイトを統合あるいは縮小せざるを得ないケースもあるでしょう。そのような場合でも、従来から変化するポイントとそれに伴う影響を把握し、対応方針を準備しておくことが重要です。
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