先輩には聞きづらい「掛け売り」を5分で理解する3つの事例


「掛け売り」っていきなり聞いても、普段から経理業務等を行っていないと、意味がはっきりわからない方が多いと思います。「でも、こういうことは先輩や同僚には聞きづらいな。。」と思いますよね。

「掛け売り」とは、カンタンに言うと、商品やサービスを提供した際に、その場ですぐに代金支払いをせずに、後で代金を支払うことですから、つまりは「後払い」のことです。皆さんが世の中で現金支払以外に使う「クレジットカード決済」や、企業で多い「請求書支払い」というのは、全て掛け売りのことを指します。

本日はebisumartでマーケティングを担当している筆者が「掛け売り」を理解するための3つの事例をもとに掛け売りについて徹底解説をいたします。

「掛け売り」を5分で理解するための3つの事例!

掛け売りをすぐに理解するには「掛け売りとは?」という概念や論理を聞くよりも、実際の事例を見た方が理解が早く、深まります。それでは掛け売りでよくある3つの事例を解説いたします。3つのうちのどれかは、皆さまも体験している事例だと思います。この記事を最後まで読まなくても事例だけを見れば「掛け売り」を理解できますよ!

事例①仕事の取引先に毎月送付している請求書支払も「掛け売り」のひとつ

社会人であれば、勤めている自分の会社で、取引先に請求書を発行したり、あるいは受け取ったりしている人も多いでしょう。企業が企業(あるいは個人)に請求書を発行して、代金を回収する行為は「掛け売りの代表的」なものです。

◆請求書支払いの例

企業間では毎月多くの取引が行われます。それを都度、現金のやり取りをすると請求・支払い業務のため、お互いに負荷が多く大変です。そこで生まれたのが、信用取引による掛け売りです。お互いの信用に基づき、現金の支払いを一定期間まとめて支払う方が、お互いに労力が少なく済むからです。

ちなみに代金を支払う側を「掛け買い」と言います。

事例②ECサイトに登録している自分のクレジットカードでモノを購入した!これはEC事業者による「掛け売り」です!

ネットやECサイトでショッピングは誰でも使っていますよね?

その際、支払方法で最も使われるのはクレジットカードです。総務省が集計したデータです。これによると75.9%の人がネットショッピングでクレジットカードを使っていることがわかります。

◆インターネットで購入する際の決済方法は「クレジットカード払い」が75.9%と最も多い

クレジットカード決済利用率

総務省の調査結果より引用(データ):令和4年 通信利用動向調査報告書(世帯編)

7割以上の人が、クレジットカードで買い物をしています。つまり、日本人であれば、多くの人が企業の掛け売り(クレジットカード決済)に対して、支払い(掛け買い)を行っているのです。

「私はクレジットカードを持っていない!」という方も携帯電話は持っていますよね?

携帯電話料金と買い物をした代金を一緒に払うキャリア決済を利用して支払いを行う場合や、商品を受け取った後にコンビニや銀行から支払いを行う場合も、実は企業の「掛け売り」の一つなんです。

だから、日本人であれば、ほとんどの方が企業の「掛け売り」に対して「掛け買い」を経験していることになります。

事例③若者に便利なZOZOTOWNの「ツケ払い」!これも実は「掛け売り」

少し前に話題になったZOZOTOWNが発表した「ツケ払い」、これも掛け売りの一つです。ツケ払いとは、服が欲しいユーザーがZOZOTOWNで購入する際、支払い方法の選択項目で「ツケ払い」を選択すると、先に商品が届き、支払いを2か月後に遅らせることができます

◆ツケ払いの流れ

引用(画像):ツケ払いはじめました│ZOZOTOWN

ツケ払いは、クレジットカードを持っている人が少ない、若いユーザーの利便性向上のために生まれた新しい決済サービスです。このツケ払いも、ユーザーの信用をもとに企業が掛け売りを行っているのです。このような決済方法は、ZOZOTOWNだけでなく、アパレル業を中心にいろんな企業で採用されつつあります。「ツケ払い」あるいは「後払い決済」とも言います。

「掛け売り」以外の代金の請求方法を知ることで「掛け売り」をより良く理解する!

それでは、「掛け売り」の事例を知ったところで、さらに理解を深めるために、掛け売り以外の代金の請求方法を理解しましょう。対比することで、掛け売りをより良く理解することができるからです。

◆掛け売り以外の支払い方法

①現金決済
②前払い
③デビットカードによる支払い
④プリペイド式(ポイント事前購入)による支払い

掛け売り以外の決済方法は、意外に少ないのです。現金決済や前払い以外では、デビットカードによる支払いが相当します。デビットカードで支払えば、リアルタイムでカードと紐づけられた口座から引き落とされるので、掛け売りには相当しません。

「掛け売り」を行う企業の3つのメリット!

普段何気なく使っている「掛け売り」には3つのメリットがあります。それでは一つずつ解説いたします。

メリット①都度取引による、お互いの労力を減らすこと

取引回数の多いAとBという企業があった場合、取引の度に、お互いに請求・支払い業務を行っていては、担当者は、何度も銀行に足を運ぶことになり、手間が非常にかかります。

しかし、掛け売りであれば、締め日(通常は当月末や15日締め切り)を決めて、一定期間の取引分をまとめて支払うことができれば、請求書作成業務(売手)や、支払い業務(買手)を一度にまとめることができるのです。これが掛け売りにおいては、最も大きいメリットなのです。

メリット②企業間取引は「掛け売り」が常識!現金取引ではモノやサービスが売れない!

メリットというより常識に近いですが、企業間では現金取引は、ほとんど行われません。また、前払いも、納品やサービス提供前に代金を払う行為なので敬遠されます。したがって、企業間取引では「掛け売り」が常識であり、それ以外の方法では、モノやサービスが売れにくいのです。

メリット③今、お金が無くても欲しい商品がすぐ買えるから「掛け売り」はモノやサービスがより売れる!

例えば、あなたが今財布の中に3,000円しかなくても、クレジットカードがあれば1万円の買い物をすることができます。このように、現在お金が無くても、支払いを後に回すことができるので、企業はクレジットカード決済(掛け売りのための決済)を用意すれば、顧客の購入機会を逃すことがないのです。

「掛け売り」のデメリットは取引先の支払い遅延や、貸し倒れのリスクがあること!

「掛け売り」は、お互いの信用で成り立っている「信用取引」です。ですから、最大のデメリットはその信用が崩れること、つまり「支払い遅延」や「貸し倒れ」のリスクになります。

このため、企業では貸し倒れリスクなどに備えるために、新規の企業相手と取引が始まる前に「審査」があります。しかし、金融機関や上場企業ではない限り、この審査は結構緩いもので、企業の法務担当が相手のホームページで取引実績や資本金や売上高をチェックする程度なのが実情で、どうしてもリスクを完全に防げません。

もし、取引先に「支払い遅延」や「貸し倒れ」が発生すると、企業は債権(売掛金)の回収業務に乗り出さなくてはなりません。債権の取り立てというと、金融機関だけが行うイメージかもしれませんが、このような売掛金の回収も企業の業務となることがあるのです。

「掛け売り」のデメリットを取り除く3つの方法

方法①クレジットカード決済を利用する

クレジットカード決済を使えば売手側に「支払い遅延」や「貸し倒れリスク」は生じません。なぜなら、入金はお客さんから直接されるわけではなく、クレジットカード会社から入金され、貸し倒れのリスクをクレジットカード会社に移すことができるからです。こういったリスクがあることを含めてクレジットカード会社は、企業から手数料を徴収しています。

ただし、企業間取引の場合はクレジットカード決済が使われることは稀であり、通常は請求書支払いによる「掛け売り」です。

サービス提案時にクレジットカード決済しかない旨を企業担当者に伝えれば、サービス提供を断られる場合があります。なぜなら多くの企業が「掛け売り」の取引の中、クレジットカードによる決済は社内手続きが面倒だからです。また、サービス提供側もクレジットカード会社に手数料3%~7%程度発生するため、利益を減らすことになります。

企業間のクレジットカード決済を行う場合は、売手が自社のクレジットカード決済用のURLを買手に送付し、買手がその画面にクレジットカード番号を入力して決済を行う方法が一般的です。

リスクの取り除く方法②掛け払い保証を利用する(請求代行)

取引先が多くなると、請求書発行業務の負荷が非常にかかります。

また、多くの取引先の中で1社でも、貸し倒れが発生すると会社の損益に多大な影響する場合があります。こういったリスクを回避するために「掛け払い保証」や「請求代行」というサービスがあります。

掛け払い保証とは、言葉の通り、掛け払いの売掛金を保証するサービスで、主にノンバンクや決済代行会社が提供するサービスの一つです。BtoB向けはノンバンクや決済代行会社がサービスを提供しており、BtoC向けは決済代行会社がサービスを提供しています。

毎月手数料が発生しますが、万が一、取引先が倒産しても売掛金を決済代行会社が保証してくれますので、リスクがありません。リスクが無くなるということは、積極的に小口の新規取引先を増やせるメリットがあります

また、この「掛け払い保証」は多くの場合「請求代行」サービスと一貫となっているサービスが多く、掛け売りの保証だけでなく、取引先の審査から請求書の発行、回収業務まで全てを請け負ってくれますので、経理業務の軽減のためにこのサービスが使われることもあります。

リスクの取り除く方法③ファクタリングを利用する

掛け払い保証と似ていますが、売掛金の保証ではなく、売掛金の買取になるので意味が異なります。

ファクタリングとは、企業の売掛金(掛け売りの代金)をファクタリング会社が買い取ってしまい、すぐに現金化するサービスです。

通常、企業の売掛金(掛け売り)が入金され現金化するためには1~2ヶ月先になることがほとんどですが、ファクタリング会社とファクタリング契約を結べば、売掛金をすぐに買い取るために契約後、3~10日で現金化できます。

ですから、取引先が倒産しても、すでに債券(売掛金)はファクタリング会社に売却済みのため、貸し倒れリスクが生じることがありません。

ファクタリング契約の手数料に相場はありませんが、銀行や上場企業の子会社のファクタリング会社の場合は10%未満になります。

ファクタリングについては、下記の記事に詳しくまとめました。あわせてご覧ください。

過去記事:ファクタリングの意味や仕組みを徹底解説!プロが業界の実態を暴露!

掛け売りは「信用」がベースになっている!

掛け売りとは、どんな場合であっても、払い手の信用がベースになっております。

例えば、個人で買い物をする際、クレジットカードで支払う場合は、企業はクレジットカード会社を通じて、あなたの信用によって掛け売りが成立しているのです。その証拠にクレジットカードを作る時に、年収や職業などを記入し、クレジットカード会社による与信審査があります。

そして企業間取引においても、新規取引先に対しては企業内で審査が行われます。このように、掛け売りには様々な手法がありますが、常に相手の信用がベースになって成立している取引なのです

この記事を読めば、掛け売りという言葉が深く理解できたと思うので、今度は仕事中に掛け売りという言葉を積極的に使ってみてください。


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。