UGCとは「User Generated Content」の略称であり、日本語訳では「ユーザー生成コンテンツ」というマーケティング用語です。例えば、ユーザーにSNS投稿でのハッシュタグ利用を促し、企業ではなくユーザーが主体的に商品やブランドに関するコンテンツを投稿することで、認知拡大を行うマーケティング施策のことです。
特にBtoCのマーケティングにおいては、UGCが欠かせません。なぜなら、SNSの普及とマスコミ4媒体の影響力低下により、宣伝による商品・サービスの認知よりも、ユーザーによる投稿の方が、購買プロセスへの影響力を増してきているためです。
また、UGCは労力こそかかるものの、広告予算をあまりかけずに実施することが可能なマーケティング施策です。そのため、特に広告予算や商品単価が低いEC事業者や小規模事業者も、成功させることが可能であり、多くの事業者が取り組むべき施策と言えます。
本日は、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、UGCについて詳しく解説いたします。
3つの事例でUGCを知る!
UGCを知るには、実践している企業などの事例を見るのが一番です。UGCを知るための3つの事例を紹介します。
事例①GoPro
GoProは、アクションカメラの先駆けとして有名です。そのGoProが広がったキッカケとなったのが、YouTubeの動画コンテンツです。
以下は筆者自身がGoProを初めて知ったときに見た動画コンテンツです。
GoProは、このようにプロのサーファーやアスリートの迫力ある映像を撮影し、編集した動画を作成しています。動画はYouTubeで世界中に公開され、何千万回も再生されたことで一気に認知度を上げました。
自社で作った動画ではありますが、多くのユーザーがYouTubeのコメント欄やSNSで話題にしているため、UGCと言えます。
またGoProはGoPro Awardsというコンテストを開催しています。一般のユーザーから動画コンテンツを募集したことで、優れた動画コンテンツが集まり、さらにGoProの認知が拡大しました。
GoPro Awardsは現在でも定期的に行われています。
参考:GoPro Awards
GoPro Awards以外にも、GoProのユーザーは、自分の撮った写真や動画を一人でも多くの人に見てもらうためInstagramやYoutubeでGoProに関連するハッシュタグを付けてシェアしています。
GoProのハッシュタグが広まることで、GoProは広告予算をかけなくても、商品がどんどん認知される状況を作ることができているのです。このような好循環がGoProのBrand Awareness(ブランド認知度)を高めており、まさに代表的なUGCの事例と言えます。
事例②ドラゴンクエストウォーク
スマートフォン向けゲームでも、積極的にUGCが使われています。人気スマートフォン向けゲームのドラゴンクエストウォーク(DQウォーク)では、AR(拡張現実)を使って、スライムなどのキャラクターと一緒に写真が撮れる機能があります。こちらは、この記事を書いている時に、筆者のスマートフォンでDQウォークを利用して実際に撮影した写真です。
この機能を使って、TwitterでDQウォークフォトコンテストを行うことで、UGCを実践しております。DQウォークは国内利用者数ランキングで上位に入る人気ゲームですから、全国にいる多くのユーザーがTwitter上でハッシュタグを付けて投稿することによる拡散効果は大きいはずです。
また、SNSはスマートフォンから投稿されることがほとんどのため、DQウォークのようなスマートフォン向けゲームとUGCは非常に相性が良いと言えます。なぜなら、DQウォークのハッシュタグをSNSで見かけたユーザーがDQウォークに興味を持てば、自身のスマートフォンですぐにDQウォークのゲームアプリをインストールして、ゲームを試すことができるからです。
事例③千葉市
UGCを活用しているのは、企業ばかりではありません。地方自治体も積極的にSNSでハッシュタグによるUGCを試み、観光地の紹介などを行っています。
最近では、新型コロナウイルスにより大きな影響を受けた飲食店を応援するために、千葉市が下記のようなハッシュタグを作ってキャンペーンを行い、Twitterで飲食店の情報発信を促進しています。
◆コロナ禍の飲食店を応援するハッシュタグ
#食べよう千葉市
行政がUGCを積極的に使い、市民(ユーザー)も一緒になって飲食店を応援できる、非常に良い取り組みだと思います。
UGCが企業マーケティングで必須な理由とは?
一昔前までは、テレビや新聞・雑誌のメディア広告で自社商品の認知度を高めることができました。しかし、今ではインターネット広告が台頭してきています。以下をご覧ください。
マスコミ4媒体広告費が下がって、インターネット広告費が上昇している
◆日本の媒体別広告費
出典:「2020年日本の広告費」(電通)2021年2月25日発表
このグラフを見ると、2019年には、インターネット広告がテレビ広告を抜いているのが分かり、さらに2020年も新型コロナウイルスの影響を受けたとはいえ、インターネット広告がさらに伸びています。
比較して、いわゆるマスコミ4媒体広告費と呼ばれる、テレビ、新聞、雑誌、ラジオなどの広告費は下がり続けています。特に2020年のテレビ広告費は、新型コロナウイルスの影響もあり、さらに下げ幅が拡大しました。
しかし、このような背景から「インターネット広告を出せば良いんだ!」と考えるのは、早計です。
なぜなら一口にインターネット広告と言っても、効果が見込みやすい枠(ユーザー数が多い、見込み客が多い)は限られています。マスコミ4媒体広告費が縮小している分、インターネット広告へ集中している現状では、希望通りの広告が打てるとは限らないのです。
インターネット広告に企業が集中し、獲得効率が下がっている
インターネット広告に企業からの広告出稿が集中すると広告単価は高騰し、以前ほどの費用対効果を期待することが難しくなっている背景があるのです。
例えば、筆者が経験した業界では、10年前のリスティング広告での獲得単価(CPA)の基準は1万円でしたが、現在は3万円程度になっており、この10年間で獲得単価が3倍に跳ね上がっているのです。これはおおむねクリック単価(CPC)の向上を意味します。
このような獲得単価の上昇は多くの業界で起こっています。理由は、インターネット広告を始める企業が増えたり、企業がインターネット広告予算を増やしたりしているからです。
つまり、インターネット広告を実施しても、予算が少なかったり、WEB広告のノウハウがなかったりした場合、効果を高めて認知度を上げることは困難なのです。
また、インターネット広告は、例えば特定の検索やWEB行動を行っている特定のターゲットに広告を配信することは得意ですが、マスメディアのように広く不特定多数に広告を配信したい場合にはあまり適していません。そのためブランディングや、認知度を上げることが目的の場合にはあまり向いていないのです。
UGCを行うべき理由は、認知拡大にある!ULSSAS(ウルサス)のUこそUGC!
インターネット上の消費者の購買プロセスとしては、有名なモデルとしてAISASがあります。
◆AISAS(アイサス)
Attention(注意)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(購買)→ Share(シェア)
※「AISAS」は株式会社電通の登録商標
つまり、広告を見て、商品やサービスに関心を持ったユーザーが検索エンジンで検索し、商品を購入して、口コミレビューを行うまでの購買プロセスを概念化した定義のことです。
しかし、現在はSNSが普及したため、下記のような購買プロセスになりつつあります。
◆ULSSAS(ウルサス)
UGC(ユーザー生成コンテンツ)→Like(いいね)→Search1(SNS検索)→Search2(検索エンジン)→Action(購買)→Spread(拡散)
つまり、ユーザーがSNSを見て、その投稿に「いいね」をし、ハッシュタグ検索等を行って商品に興味を持ち、検索エンジンで商品を見つけて、購入。そしてSNSでシェアするという流れです。
SNSが一般化している現在では、宣伝よりもユーザー投稿が購買プロセスの起点となっており、さらに購買後も、SNS上でシェアされることで、商品やサービスがより多くのユーザーに認知され購買につながる循環を生んでいるのです。
もちろんSNSが普及する以前もユーザーによる「Share(シェア)」という考え方があり、例えば、商品購入後にAmazonや楽天市場などでレビューや口コミがシェアされておりました。
しかし、SNSが一般化した現在では、Amazonや楽天市場などの限られたプラットフォーム内のレビューや口コミだけではなく、TwitterやInstagram、YouTubeなどのSNSで拡散されることによる影響が大きくなっているのです。
また、特に若いユーザーは、情報検索のときに検索エンジンよりもSNSを利用するケースが増えています。このような背景からも、企業は今後、消費者行動プロセスをULSSASで考える必要があり、そのULSSASにおいて、情報拡散の起点となるのがUGCなのです。
小規模事業者でもすぐに実施可能な7つのUGC
ここまで、事例やユーザー行動プロセスの変化を解説しました。企業が今すぐUGCに取り組むべき背景が、理解できたと思います。
では、具体的にはどのように実施すれば良いのでしょうか?予算が少ない小規模事業者でも行うことができる、7つのUGC施策を紹介します。
施策①ハッシュタグを利用して、商品を知ってもらう
UGCを促すには、自社の商品やサービスを知ってもらう必要があります。まずは自社SNSアカウントでの投稿で、ハッシュタグをつけて、多くのユーザーに知ってもらいましょう。そうするうちに店舗に訪ねてくるユーザーや商品を購入するユーザーが増えて、UGCにつながります。
まずは、自社投稿をハッシュタグをつけて行うことが最初の一歩となります。
施策②公式アカウントで、優れたユーザーのコンテンツを拡散する
SNSの公式アカウントがあれば、自社商品やサービスを紹介してくれている投稿を見つけて、リツイートやリポストで拡散することもUGC施策の一つです。拡散された側も、自分の投稿が広まるのでうれしいですし、公式アカウントをフォローしているユーザーは、自社商品に興味があるので、相乗効果があります。
また、それを見た別のユーザーが、自分の投稿も取り上げてほしいと思い、ハッシュタグをつけて投稿してくれるようになる可能性もあります。このような施策はハッシュタグが認識されるまで継続して行うことが重要です。
施策③商品にハッシュタグキャンペーンを促すチラシを同梱
EC事業者であれば、発送した商品の中にハッシュタグを訴求するチラシを同梱することで、ユーザーに対して自社商品に関する投稿を促すことができます。もし予算があれば、投稿してくれたユーザーに対して抽選でプレゼントを送るなど、キャンペーン企画をあわせて実施すれば、さらに効果が見込めます。
ただし、ECで送付した商品に破損があったり、配送が遅れたりすると、ハッシュタグを使ってネガティブな内容が投稿される可能性もあるので、運用にあたっては注意が必要です。
施策④社内スタッフの投稿を紹介する
社内スタッフであれば、商品やサービスを熟知しており、商品やサービスを熟知した人ならではの投稿ができるはずです。そして、ハッシュタグを使った投稿を、公式アカウントでリツイートして拡散します。そのコンテンツが面白く、ユーザーの役に立つものであればさらに拡散されやすくなります。
その場合、自社スタッフを一般ユーザーに見せかける、いわゆる「やらせ投稿」は炎上の原因になりますし、マーケティングの姿勢として褒められたものではないので、自社スタッフの投稿であることを明確にすべきでしょう。
そのようなやらせ行為をしなくとも、GoProのような突出したコンテンツを作れば、自社あるいは自社関係者が投稿したコンテンツでも、必ずSNSで話題になるからです。
施策⑤インスタ映えしそうな商品を提供する
思わず、InstagramやTicTokなどに投稿したくなる商品を企画して、UGCが拡散する施策です。飲食店ではよく用いられます。筆者も最近、静岡県の熱海からバスで30分の「十国峠」という富士山が良く見えるスポットに行きましたが、チェロスが漢字になっておりインスタ映えを狙ったものといえます。
◆十国峠のチェロスは「とうげ」という文字の形に!
※筆者撮影の写真
このように思わず、SNSで投稿したくなる商品を企画することで、UGCを拡散することにつながります。飲食に限らずとも、あらゆる商品やサービスで企画可能であり、あなたのアイデア次第となります。
施策⑥ギフティングを行い、商品を幅広いユーザーに使ってもらう
ギフティングとは、商品を無料で提供することであり、商品を受け取ったユーザーがInstagramなどのSNSで商品のことを投稿してもらうことでUGCを増やす施策です。ギフティングの最大のメリットは、商品代と配送代以外のコストがかからないので、DMでユーザーに連絡をとる労力だけで、実施することが可能です。
ただし、ギフティングの場合は、ユーザーに「PR表記」を必ずおこなってもらうようにしないと、ステルスマーケティングになるので、PR文言等の指定もあわせて行う必要があります。ギフティングについては、下記記事をご覧ください。
施策⑦マイクロインフルエンサー施策を実施する
インフルエンサーに個別でDMで連絡をとることで、自社商品と相性の良いインフルエンサーを探し出し、タイアップ広告を依頼します。小規模事業者であれば、フォロワーが数千人からのマイクロインフルエンサーを探し出します。
マイクロインフルエンサーであれば、数万円の謝礼で商品紹介を実施してくれるからです。マイクロインフルエンサーの場合でも、商品とインフルエンサーの世界観の相性が良ければ、露出をかなり高めることも可能です。
インフルエンサー施策のデメリットは労力がかかってしまうことです。インフルエンサー施策を実施する場合は、下記の記事に費用感や実施の注意点をまとめているので、あわせてご覧ください。
UGCが向いていない業界も多い。例えばBtoB業界
UGCはこれからのマーケティング活動に必須と、この記事では主張しているものの、業界によっては、UGCが全く盛り上がらない業界もあります。例えば、BtoB業界です。
BtoB業界は、写真や動画を使って、ユーザー自身がその企業の商品やブランドをSNSに投稿していくような業界ではないためです。
もっとカンタンに説明すると「インスタ映え」しないような業界では、UGCは困難と考えるべきです。そういった業界では、UGCに取り組むよりも、自社のホームページやカタログなどを見直し、獲得効率を高める工夫がマーケティング活動では優先されます。
UGCは一過性のキャンペーンで終わってはいけない!
企業がUGCを開始するにあたっては、予算を使ってハッシュタグを拡散させるためのキャンペーンを組んだり、あるいは担当者がUGCを最大化するために公式アカウントでのSNS運用を検討したりするでしょう。
しかし、UGCの目的は、ユーザー自身が企業の優れた商品やサービスを、自然と拡散してくれる状態を作ることです。ですから決して、一過性のキャンペーンと捉えてはいけません。
例えば、ユーザーがキャンペーンに関係なく、SNS投稿時に自然と商品のハッシュタグを利用するくらいに自社商品やハッシュタグを浸透させることが目的ですから、目の前のROI(費用対効果)ばかり追うのではなく、中・長期的な視点で、商品やハッシュタグの浸透を念頭に、日々マーケティング活動を行う必要があります。
そのためには「面白コンテンツ」だけに終始すると、毎回、面白コンテンツを企画するにも、担当者も疲弊してしまいますし、そのような投稿だけでは、短期的なファンを獲得することはできても、中・長期的に商品やブランドのファンを獲得していくことは難しいでしょう。
ですから、短期的には「面白コンテンツ」で盛り上げることも良いのですが、中・長期的には、ユーザーの役に立つコンテンツや、生活の質を高めるコンテンツを提供していくことで、Brand Awareness(ブランド認知度)を高めていくべきです。
突出した商品やサービスを作ることで自然とUGCが増える!
多くの企業がマーケティングに予算も時間も使えない現実があると思います。しかし、例えばSNSアカウントを持っていない企業であっても、UGCで売上を最大化することは不可能ではありません。そのためには、今の世の中にはない、突出した商品やサービスを作ることに集中することです。
そういったプロダクトを作ることはカンタンではありませんが、例えば、現在はコロナ禍の真っ最中です。そういったところに既存のプロダクトを掛け合わせて考えることで、大衆をアッと驚かせるようなサービスが生まれるヒントがあるはずです。
もし、そういったプロダクトを作ることができれば、自然とSNS上で口コミが拡散され、それ自体がUGCとなるはずです。いずれにせよ、UGCとは短期的な盛り上げ施策ではなく、中・長期的な視点で考えるべきものなのです。
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