ECサイトで取得した会員情報を活用してメルマガ施策を実施し、リピーターによる売上を伸ばしたい、と考えるEC事業者は多いと思います。しかし実際のメルマガ運用は、定型文を少し編集するだけで精一杯という場合がほとんどではないでしょうか?
メルマガ運用は、施策を練った上で、配信後の効果測定も厳密に行わないと効果が見えにくいため、運用に労力がかかる割には成果が得られにくいと思うかもしれません。
しかし、メルマガではセグメントを絞り、ターゲットユーザーに特化したメルマガ内容で商品を訴求できていれば、必ず反応が出ます。ユーザーに
「これは自分に必要なものだ!」
「自分に関係がある!」
と思わせる、メルマガタイトルやコンテンツにすることで、開封されやすくなり、売上を高めることができるからです。本日はインターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、ECサイト事業者が行うべき5つのメルマガ施策を解説するので、最後までご覧ください。
ECサイト事業者が行うべき5つのメルマガ施策
それでは、ECサイト事業者が行うべき5つのメルマガ施策を、WEBマーケティング歴15年の筆者の体験から、成功率が高かった順に解説していきます。
施策①会員情報のセグメントを絞って、メルマガを配信する
まず、マーケティングの基本中の基本ですが、万人受けを狙ったタイトルやコンテンツのメルマガを配信しても、効果は高くありません。
なぜなら、そのようなメルマガコンテンツは内容が薄くなるため、ユーザーに悪印象を与えるリスクが少ない反面、自分に関係があることか判断しづらく、開封率は伸びません。具体的に例を挙げましょう。以下の2つのメルマガタイトルを比較してみてください。
◆春物(メンズ)のアパレル商品を訴求するメルマガの場合
タイトル①万人受け(男性全体)を狙ったメルマガタイトル例
これからのシーズンに活躍するトレンチコート、デニムジャケットなどのメンズファッションが満載♪
タイトル②特定のセグメント(30代男性)に向けたメルマガタイトル例
【30代のパパさん限定!】子供とペアルックで今春の思い出を作ろう!春のメンズファッション特集♪
この2つのメルマガタイトルを比較してみてください。前者は万人受けを狙ったタイトルではありますが、男性全体では対象が広すぎて、メルマガの開封率は可もなく不可もなくといった結果に終わるでしょう。
しかし、後者のタイトルであれば、セグメントが30代男性に絞られており、30代男性で、子どもがいる方であれば、メルマガのタイトルを見て開封する率が高くなるはずです。
筆者も、過去にこのセグメントメールの手法を使い、国内大手企業のビジネスパーソン向けに特化した内容のメルマガを配信した結果、通常のメルマガの10倍以上となる高いCV数を獲得したことがあります。
しかし、できればメルマガの内容だけでなく、配信リストもセグメントを絞って作成するとベストです。セグメントを絞った内容のメルマガをそれ以外のユーザーが見ると
「自分には関係ない内容だ、メルマガ登録を解除しよう」
という行動につながりかねないからです。ただし、セグメントを絞ったメルマガは効果が高い反面、運用に労力がかかりますし、効果測定を厳密に行わないと、効果が実感できない場合もありますので、その点は事前に把握しておきましょう。
また、このようにセグメントを絞る施策は、年齢層のほか、しばらく買い物をしていない休眠顧客にも効果的です。なぜなら休眠顧客に再びECサイトを利用してもらうには、高い訴求力が必要になりますし、仮に休眠顧客のメルマガ退会率が増えてしまったとしても、リスクが少ないからです。
施策②メルマガタイトルを工夫する
こちらも基本的な施策ですが、忙しいEC担当者の場合は、なかなかそこまで手が回らないのが、実情ではないでしょうか。ここでは、よくあるメルマガタイトルの7つのテクニックを紹介いたします。
テクニック①数字を入れる
まずは、メルマガに限らずマーケティングの基本的なテクニックですが、タイトルに数字を入れる方法があります。なぜなら、数字がメルマガタイトルやブログタイトルに含まれることで具体性が増し、開封率やCTRに影響を与えるからです。
例えば、以下のようなメルマガタイトルはいかがでしょうか?
◆数字を入れたメルマガタイトル例
トレンチコート、デニムジャケット等がたった2,980円!春のメンズファッションが満載♪
数字を入れることで具体性が増し、訴求力が強くなっています。特に価格で競合他社との差別化を図りたいEC事業者であれば、数字をタイトルに含めるメルマガテクニックは使いやすいはずです。
テクニック②「限定」という文言を入れる
やはり、特別感や「今だけ感」があるタイトルは魅力的です。限定商品や、先着順というようなオファリングがある場合は、このような文言は使ってみるべきでしょう。
先ほどの「テクニック①数字」と組み合わせて、以下のタイトルを作ってみました。
◆「限定」という文言を入れたメルマガタイトル例
【限定10着】トレンチコート、デニムジャケット等がたった2,980円!春のメンズファッションが満載♪
「限定」という文言を、タイトルの先頭に入れて訴求力を強めました。普段から商品をチェックしている、意識の高いユーザーの目を引くはずです。
テクニック③「?」をつけて理由や答えが気になるようにする
「?」をタイトルに付けて、ユーザーの関心を引くのは、マーケティングではよく使われる方法です。例えばターゲットユーザーが関心のありそうなことを考えてコンテンツを作ると、以下のようなタイトルを作ることができます。
◆「?」をつけたメルマガタイトル例
今年はトレンチコート、デニムジャケットが30代パパに流行する3つの理由とは?
できれば、「?」を使うときは、「?」後に文言を入れずにタイトルはシンプルにした方が「?」の印象が強くなるので効果的です。ただし「?」を使う場合は、事前にメルマガの企画を十分練る必要があります。
テクニック④ユーザーの名前を入れる
これは、メルマガの配信システムに依存する方法ですが、もし、ユーザーの名前をタイトルに入れることが可能であれば、開封率は一気に高くなります。以下の例を比べてみましょう。
◆ユーザーの名前を入れないメルマガタイトル例
これからのシーズンに活躍するトレンチコート、デニムジャケットなどのメンズファッションが満載♪
◆ユーザーの名前を入れたメルマガタイトル例
田中太郎様、春物のトレンチコートやデニムジャケットが入荷しました!
いかがでしょうか。名前を入れた方は、自分宛てのメールのようになり、思わず開封してしまうのではないでしょうか。このテクニックを使うのが初めての場合、必ずと言っていいほど開封率は高まります。
ただし、ユーザーから見れば個人宛てだと思って開封したものの、「何だ、ただのメルマガじゃないか」と裏切られたように感じる方もおりますし、また、開封率が高いからといって毎回のように行うと、ユーザーも慣れるので開封率は下がります。キャンペーンや期末など、ここぞ!というときに限って行い、毎回のメールでは避けましょう。
テクニック⑤過去に購入した商品名を入れる
◆過去に購入した商品名を入れたメルマガタイトル例
先日ご購入の「リラックスフィットパンツ」はいかがでしたか?春物も多数入荷しました
このテクニックも、メルマガの配信システムに依存する方法ではありますが、名前を入れるのと同様にOne to Oneメールになるため、開封率は高くなります。ただ、名前と同様に何度も配信するのではなく、回数を絞って行うのが良いでしょう。
テクニック⑥タイトルを過去形にする
タイトルを下記のように過去形にすることで、ユーザーの関心を高めることができます。
◆過去形と現在系のタイトルの比較
「痩せて見えるデニムの着こなし方」(現在系)
「痩せて見えたデニムの着こなし方」(過去形)
このように一見同じようなタイトルですが、「過去形」にすることで、すでに実績があることが強調されており、わずかな差ですが期待値が高まるのです。タイトルができたのなら、今度は過去形にすることも検討してみましょう。
テクニック⑦あえてタイトルをシンプルにする
ユーザーは多くのメルマガを受け取っており、そして多くのメルマガは、ユーザーの興味を惹くために過剰なタイトルが多くなっています。そこで、あえてシンプルにすることで、多くのメルマガからかえって目立つようにするテクニックです。
◆シンプルなメルマガタイトルの例
2024年の春物新作のデニムが入荷!春のキャンペーンも実施中!(通常)
新作のデニム入荷のお知らせ(シンプルなタイトル)
このようにすごくシンプルにすると、ユーザーの注目を惹いて、メルマガの開封率が高まります。ただし、毎回シンプルにすると、ユーザーも慣れてくるので、たまにこのようなタイトルも検討してみると良いでしょう。
施策③メルマガの配信時間を工夫する
配信のタイミングを一律にするのではなく、例えばターゲット層ごとに配信時間を変える方法があります。具体的には以下のような配信時間です。
◆メルマガ配信時間の例※
ターゲット層 | 配信時間帯 |
大学生等の若者 | 午後9時~11時 |
主婦・主夫 | 午前10時~午後2時 |
ビジネスパーソン | 午前8時頃、昼休み、午後6時頃 |
シニア | 午前8時~12時 |
※筆者の経験によるものです。ご参考まで
個人差はありますが、上記の時間帯はそれぞれのターゲット層がスマートフォンのメールをチェックする可能性の高い時間帯です。
このように、ターゲット層ごとにメルマガの配信時間を変えることで、開封率に大きく影響が出てきます。さらに「施策②メルマガタイトル」を組み合わせて、属性ごとにメルマガタイトルを変更するとより高い効果が得られるはずです。
しかし、手間をかけるほど、効果も高まる反面、メルマガ運用に労力や費用がかかるので、労力対効果、費用対効果の観点、つまりEC全体の売上に対するインパクトを考える必要があります。
施策④メルマガの差出人を個人名にする
通常、メルマガの差出人名は会社名や屋号がほとんどです。そのため、ユーザーは差出人名を見て、
「これはメルマガだから、見ない!」
「宣伝だな。」
と瞬時に判断して、メルマガを開封しません。しかし、差出人が個人名だと
「あれ、誰だろう?この女性?」
「私宛のメールかな?」
と、個人から送信されたように見えるため、メルマガの開封率は高くなります。ただし、あくまで開封率を高くするためのテクニックであり、同じ差出人名を使い続けると、ユーザーも慣れてきて開封率は伸び悩みます。
筆者はあまりおすすめしませんが、男性のターゲットユーザーが多い場合は、女性の名前を差出人に使っているケースがたびたびあります。
筆者も、そういったメルマガをいくつか受信しておりますが、数年以上も同じ女性の名前を使い続けているケースも見受けられるので、一定の効果が見込めるのかもしれません。
施策⑤メルマガでユーザーにSNSアカウントを紹介する
メルマガは重要なチャネルであることは間違いありませんが、同様にSNSも重要なチャネルです。しかも、SNSの場合は、メルマガと違ってアカウントをフォローしているユーザーへのコンテンツ配信がカンタンで、ユーザーの生活の中に溶け込みやすいというメリットがあります。
もし、SNSアカウントがあれば、メルマガでユーザーを自社のSNSに誘導してみるべきでしょう。熱心なリピーターであれば、情報を欲しているはずだからです。
ただし、単にSNSアカウントを紹介するだけでは、なかなかフォローは見込めません。そこで、フォローしてくれた方に抽選でプレゼントを送るなど、キャンペーン企画をあわせて実施します。
下記はメルマガの話ではありませんが、Twitterキャンペーンを効果的に行った取り組みの一つで、企画の参考になるはずです。
メルマガ施策の効果を最大化するには、メルマガの配信システムも必要
本日紹介した、メルマガ施策の中にある
・ユーザーの名前をタイトルに入れる
・ユーザーが過去に購入した商品名をタイトルに入れる
といった機能は、無料のECシステムに付随しているメルマガ配信システムでは、難しい場合が多いので、予算をかけて配信システムを整える必要があります。
また、メルマガ運用は文章を考えたり、配信リストを用意するなどの手間がかかりますし、誤配信をすればお詫びメールの対応が必要になることもあります。
余力がなく体制を整えることが難しい場合は、メルマガ施策を行っても、労力・費用対効果が得られず、結果的に他の施策に力を入れた方が良かった、ということもあります。
まずはメルマガ施策にどのくらい注力することができるかを見極めましょう。
HTMLメールとテキストメールのどちらが良いのか?実は答えはありません!
手間のかかるHTMLメールの方が良いのか、それともテキストメールの方が良いのか?という疑問はよくあります。データはありませんが、明確な答えがないと筆者は考えます。
なぜなら、HTMLメールはすでに10年以上前から利用されていますが、「HTMLメールの方がCVRや開封率が高い」という絶対的な法則を聞いたことがないからです。
筆者の考えですが、HTMLメールか、テキストメールか?ということより
・セグメントを絞って配信する
・配信時間を工夫する
・ユーザーが関心のあるコンテンツを作る
といった施策の方が、優先度が高いため、必ずしもHTMLメールを作成することが良いとは限らないのです。ただし、HTMLメールには、「開封率」が分かるというメリットがあります。開封率が分からないと、ボトルネックが分かりにくいため、効果測定を厳密に行うならば、HTMLメールの方が良いのかもしれません。
しかし、HTMLメールは、作成するのが大変です。体制や予算がある場合を除いては、テキストメールで問題ないと筆者は考えます。
EC事業者が行うべきメルマガ施策のまとめ
EC事業者がメルマガ施策を行う場合、2つのスタンスがあると筆者は考えます。
スタンス①労力を最低限にして、毎回定型文を少し編集したメルマガを配信する
スタンス②効果を上げるべく本気でメルマガ施策を実施する
なぜなら、メルマガの効果を上げるには、地道なABテストをしっかり行う必要があるからです。しかし、労力がかかる割には、売上への貢献度は大きくない場合がほとんどです。
ですから、最低限の労力で配信事故(情報漏えいやテストメールの誤配信等)に気を付けつつ、メルマガを配信し、体制が整った段階でメルマガ施策を始めても遅くはありません。
そして、メルマガ施策で成功することができれば、他のWEB施策でも成功しやすくなるはずです。なぜなら、メルマガというのは、WEB施策の中でも基本的なもので、
・タイトル
・コンテンツ企画
・配信リスト
・リンク先
・効果測定
など、WEBマーケティングのスキルが身に付くような要素が含まれているからです。つまり、メルマガ施策で成功することができれば、ECのマーケーティングスキルを高めることにつながるので、体制が整っているのであればぜひ取り組んでみてください。