企業間取引とは企業対企業で行われる取引のことで、「BtoB(Business to Business)」とも言います。対して、一般消費者を対象とする取引は「BtoC(Business to Consumer)」と言います。
企業間取引には以下のような特徴があります。
◆企業間取引の主な特徴
・専門性の高い商品やサービスの取引が多い
・契約に至るまでのプロセスが複雑で時間がかかる
・顧客との長期的な関係構築が重要になる
そのため、企業間取引には、見積書、発注書、納品書などの多くのドキュメントや、承認などの業務フローが必要となります。
この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、これからBtoB業務に携わる方向けに、企業間取引の手続きを行うための3種類の方法と7つのプロセスについて解説します。
企業間取引の手続きを行うための3種類の方法
企業間取引の手続きは以下の3種類のいずれかの方法で行われます。
◆企業間取引を行うための3種類の方法
方法② 受発注システム
方法③ EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)
◆企業間取引を行うための3種類の方法ごとのメリットとデメリット
方法① 対面、FAX、郵送、Eメール | 方法② 受発注システム | 方法③ EDI | |
主な利用シーン | 1回だけの取引、一部の無形商材取引、高額取引などで利用されることが多い | 特に、得意先との取引など取引が頻繁に生じる場合に導入されることが多い | 特に、定期的かつ大規模で高速に処理する必要がある取引などで導入されることが多い |
メリット | インフラ投資や特別な技術が不要で、すぐに利用できる | ・デジタルで効率よく受発注管理ができる
・取引に必要な文書を自動生成できる ・取引先ごとに専用管理画面を提供できる |
高速処理が可能なため、大規模取引を効率よく処理できる |
デメリット | ・手作業ですべての手続きを確認・処理する必要があるため手間がかかる
・ヒューマンエラーが発生しやすい |
・システムの導入/運用/改修コストが必要になる
・取引先が受発注システムの使用に消極的な場合は①との併用が必要になる |
・システムの導入/運用コストが必要になる
・取引先ごとにEDI規格が異なる場合は負荷が高くなる |
方法①~③をそれぞれ詳しく解説します。
方法① 対面、FAX、郵送、Eメール(取引頻度が少ない場合)
企業間取引で最も利用される方法で、一回限りの取引、一部の無形商材取引などで多く利用されています。無形商材のWebコンサルティングサービスが生業の筆者も、この方法で企業間取引を行っています。
方法② 受発注システム(特に得意先と頻繁に取引がある場合)
発注側と受注側が同一システム(あるいはBtoB-ECサイト)を利用して取引を行う方法で、取引のすべての手続きはデジタルで管理・処理されます。取引で必要な承認申請や文書の作成・発行などもすべて自動化できるため、取引業務が大幅に効率化します。
商品や原材料などの有形商材の取引では、規模が小さくても頻繁に取引が発生するため、都度の文書作成や申請・承認の作業の負荷は高くなるため、受発注システムを導入することで、手軽に取引が行えるようになります。
ただし、新しいシステムの利用やデジタル化に対して抵抗がある取引先企業からは従来の紙やEメールでの取引を求められるケースもあるため、受発注システムに代理入力機能を実装し、その場合の業務フローを作成しておく必要があります。
方法③ EDI(特に、大規模かつ大量な取引を高速処理する必要がある場合)
EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)は、企業間取引を最も高速に処理できる仕組みで、膨大な取引を高速で処理する必要がある場合に用いられる方法です。
特に卸売業界などで利用されることが多く、標準規格の「流通BMS」やベンダーが提供している「Web-EDI」など複数の規格と製品があります。
取引先ごとに異なるEDIを用いている場合には、売り手側企業が複数のEDIに対応しなければならず、運用が煩雑になりがちです。そのため、業界全体で流通BMSに統一していこうという動きが進められていますが、コスト面が障壁となっています。
EDIについては、下記の関連記事で詳しく解説しています。「EDIという用語を初めて聞いた」という方はぜひ参考にしてみてください。EDIの基本は必ず理解しておくようにしましょう。
企業間取引における7つのプロセス
企業間取引の主要プロセスは次の7つで、先述した方法①の場合は手作業、方法②③の場合は自動化、というように処理の仕方は異なりますが、いずれの方法であっても発生するプロセスです。
プロセス① 「商品カタログ」の提供
プロセス② 与信申請、与信管理
プロセス③ 見積対応(価格交渉、見積書発行)
プロセス④ 受注/発注手続き
プロセス⑤ 納品/検収
プロセス⑥ 請求処理(請求書発行)
プロセス⑦ 決済処理
プロセス① 「商品カタログ」の提供
商品カタログとは、以下のような情報を指します。
◆商品カタログの例
・PDFファイル
・Webサイトの商品ページ
商品カタログは、売り手側企業の営業が提案で使用したり、買い手側企業が商品の見積依頼あるいは商品を注文する際に使用したりする営業ツールです。
取引では、商品指定時の誤りを避けるために、商品カタログに掲載されている商品型番を使用する場合が多いです。
買い手側企業は、商品カタログで気に入った商品を見つけたら、売り手側企業に在庫の問い合わせや、提案・見積依頼をします。受発注システムを利用している場合は、受発注システムで在庫状況を確認できるようにすることも可能です。またEDIを利用している場合には、例えば複数の取引先企業の中から現在在庫がある企業をピックアップして依頼先を選択し、発注するまでの一連のフローを、EDIシステムで自動化することもできます。
プロセス② 与信申請、与信管理
企業間取引では買い手側企業の与信を判断する必要があります。特に高額取引では取引先の支払い能力を確認しておくことは極めて重要です。
一般に、インターネット上の公開データや調査会社のデータなどを利用して審査が行われ、信用度と情報開示性の高い上場企業では与信が通りやすくなります。
与信が通った企業には与信枠が設定されます。
◆取引先ごとに異なる与信枠(イメージ)
・B社:500万円まで取引可能
・C社:3,000万円まで取引可能
与信枠は企業の信用度や規模、取引実績などによって異なるため、例えば与信枠が100万円の企業と新たに100万円を超える取引を行う場合など、既存の取引先企業に対して再度与信申請を行う必要が生じるケースもあります。
プロセス③ 見積対応(価格交渉、見積書発行)
買い手側企業が購入の意思決定をするためのプロセスで、買い手側企業は見積書を取得して、他社との比較検討や社内の稟議資料の作成を行います。
取引によっては価格交渉が発生するため、確定した見積書を発行するまでに、複数の概算見積書を発行する場合もあります。
見積書には必ず有効期限を掲載します。特に、決算期などの特別値引きやキャンペーン価格などを提示する際は、買い手側企業が一目で分かるように明記しましょう。
特定の企業との間で頻繁に発生する取引などでは都度見積書を発行するのは手間に感じることもあるでしょう。筆者も以前の職場で、「取引実績のある企業だし面倒だからいいか」と軽い気持ちで見積書を取得せずに取引を進めてしまい、当時の上司から厳重注意を受けたことがあります。
言うまでもなく、見積書は企業が取引内容と価格を公正に検討、判断して取引先を決定していることの証左となる大切な文書ですので、企業規模や取引の大小に関わらず、発行/取得を徹底するようにしましょう。
プロセス④ 受注/発注手続き
買い手側企業から発注書が発行されることで売り手側企業は受注し、この段階で取引契約が成立します。
基本的には見積書の内容が発注書の内容となるため、業界や取引先企業によっては、発注書のフォーマットを売り手側企業が用意する場合や、見積書と発注書を兼ねた「見積書兼発注書」で取引を進めていく場合もあります。筆者が以前在籍していた会社でも、企業間取引の手続きを省力化するために、見積書兼発注書を利用していました。
発注書の発行をもって契約が成立し、売り手側企業は商品の手配やサービスの提供を開始します。開始後のトラブルを避けるためにも重要なプロセスです。
プロセス⑤ 納品/検収
買い手側企業が商品あるいはサービスを受領し、契約内容どおりであることを確認するプロセスです。
複数の商品や大規模な成果物の納品、あるいは、例えば近年の半導体などのように生産制限のある取引の場合には、納品が一回ではなく、複数回発生する分納となる場合もあります。納品が完了していない取引は、買い手側企業では「発注残」、売り手側企業では「受注残」として管理されます。
プロセス⑥ 請求処理(請求書発行)
基本的に、日本の企業間取引は掛売取引(「後払い」)で行われます。そのため、納品/検収の完了後に請求処理が発生します。
一般には「月末締め、翌月払い」が多いですが、取引内容や契約によっては支払いが3か月後や半年後、あるいは1年後というケースもあり、取引の原資や万一の担保として契約時に「手付金」が発生するケースもあります。
請求処理では、売り手側企業が請求書を発行し、買い手側企業は請求書に記載された期限までに支払いを行います。請求書の送付忘れや、支払い漏れが起こった場合には、企業間で再調整して、新たに支払い期限を追加したり、翌月請求分と合算請求したりして対処します。
プロセス⑦ 決済処理
買い手側企業による決済処理のプロセスです。
国内では銀行振込が基本となります。振込手数料は買手側が負担する場合が多く、銀行振込の場合には窓口やATMを利用するよりもネットバンクを利用するほうが振込手数料は安くなります。
また、Webサービスの月額サービスなどの取引や、取引先企業の信用度が低い場合には、クレジットカード決済が用いられます。
例えば、小規模企業と高額な商品を取引するようなケースでは与信が通らない場合などではクレジットカード決済を提案することで、不払い発生時のリスクをクレジットカード会社に転嫁することができます。
また取引量が多い場合は、手数料を支払うことで請求と決済処理を代行してくれるBtoB決済代行サービスを利用するのもよいでしょう。不払い発生時のリスクもサービスプロバイダーに転嫁できるので小規模事業者との取引も安全に行えます。
以上が企業間取引の7つの主要なプロセスとなります。各プロセスでは取引先との間で、発注書、納品書、請求書などの文書のやり取りが発生しますが、これらのフォーマットや送付タイミングは企業や業界によってさまざまです。特に日本では業務を独自フローで行っている企業が多く、標準化に対する理解が不足していることが、デジタル化やDX推進の高い障壁となっています。
まとめ
近年はDXの一環で企業間取引におけるデジタル化と効率化が求められており、受発注システムの導入やリプレースを検討している企業も増えています。
BtoB向けの受発注システムやEDIツールには、各種データを分析して可視化する分析機能や、ダイレクトメールを自動送信するためのマーケティング機能が備わっていない場合が多いですが、これらは業務の効率化や効果的なプロモーションを行うために不可欠な機能です。
インターファクトリーのクラウドECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」では、BtoB-ECで必要なさまざまな機能を実装することができます。
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